ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録 作:マキシマムとと
36.いもうと
◯月◯日 晴れ。
何かが、変だ。
昨日遊んだ筈の『だいす』の記憶が無い。
これは以前にもあった。
確か…そう。
グラフィリオンの隠し要素をクリアした(らしい)翌日の状況と同じ。
記憶が途切れる直前までの事柄は覚えてる。
朝食の後に『だいす』の筐体に入る前までの数時間。
そこまでは確かに記憶にあるんだ。
いつも通り朝5時に起きて、トイレやら歯磨きやらをすませて、それからアリーナで2時間金を稼いで。そんで朝ごはんを食べて、俺の対面にある食器の回りにはいつも通り食べカスが散乱してて。
「左手で皿を持って食べなさい」
と注意した記憶があるんだが、肝心の【誰】にそう言ったのかがわからなくて。
本当に【コイツ】は何でも出来る癖に幼稚な部分は何度注意しても直らないんだと、呆れるような…その上で『…年上?』として【コイツ】をしつけてあげなくてはと、思うような。
…誰も、居ないのに。
そして、そこから先『だいす』の筐体を開いた所で記憶が途切れている。
ーーー何かが、変なんだ。
家を回って思う。
静か…すぎる。
この家は、こんなに静かだっただろうか。
いや。
そもそも、この家はなんだ?
俺が買ったのか?
こんなバカ広い家を、俺が??
てか、アレ? 『だいす』の筐体…え? 筐体って、自宅にあるモノだっけ??
一億したんだよな、コレ。
あのクソみたいな値段と大きさの筐体を、俺が、買ったのか??
設置した記憶はないし、そんな業者? も呼んだ覚えがない。どこに連絡すればそんなことが出来るのかも知らない。
ーーー最初からこの家にあった…わけ、ないよな。
ん…んんん??
困惑していると『ピンポーン』とチャイムが一つ。
現れたのは『おたすけクモちゃん家事代行サービス』の従業員で、とても物腰の柔らかいおばちゃんだった。
そう言えば頼んでた気がする。
…家事代行サービスなんてモノを、俺が??
すべてが違う気がする。
答えを知っている気がする。
知っているのに、辿り着けないように道を封鎖されているような、どうしようもない違和感ともどかしさ。
現在『だいす』には何故かログイン出来ない。
無職、三十代後半、低学歴&低職歴の男性。
現状は非常に不味い。
今月の支払いは大丈夫。
だけど、来月は?
そんな生活の不安もある。
なのに、心がまるで動かない。
それよりも遥かに重大な問題を抱えていて、動けない。
なのに、それがなんなのかーーー。
意味もなく室内をうろついた後、不意に思い立って車庫に行った。
「ーーーーーーあ」
そこには俺のバイクがあった。
キリサキモータースの誇るAshigaruシリーズ、その250cc・SE / SE KRT エディション。
そして、そのプレートは。
【へ00-22】
俺が、選ぶ、わけがない。
金をかけて、わざわざプレートの文字や数字を選ぶような神経は無い。
そもそも『好きだから』を理由にして100万近い金額のバイクに手を出すような人間じゃない。
『◼️◼️ちゃんのにーにーの大好きなバイクだから、プレートにもこだわらないと勿体ない、でしょ!?』
得意気に、自慢気に。
ふんすふんすと鼻を鳴らす、お馬鹿で可愛い。
俺のーーー!!
「◼️◼️ッ!!」
声が出ない。
何故なら俺に◼️は存在しない事になっているから。
気付いた瞬間、まるで一粒の絵の具に大量の温水が押し寄せてくるように、容赦なく世界が俺の認識を溶かそうとしてきた。
身動きした瞬間、記憶も気持ちも、すべて押し流されてしまいそうで。
しかし、このまま耐えたところで結果はーーー
『ーーーへぇ…やるじゃないか。まさか自力でこじ開けるだなんて。流石は魔王様の片割れ…と言ったところか』
知っているのに知らない。
背後にそんな不思議な声を聞いた…ような気がした。
◯月◯日 晴れ
『だいす』は今日もクソ。
なんでログイン出来んのよ。
レンに問い合わせしてもらってるけど全く返事がないらしい。
宇宙人の怠慢?
いや、もしかしたら忙しくて返事できないとか…う~ん、いや。
でも、なんぼ忙しくてもメール一通くらい返せるやろ。
もしかして死んでる………とか。
ない…。
ない…よな?
相手宇宙人だし?
…ハァ。
まったく、話が出来んと話にならんのですよ。
やきもきやきもき。
苛々しながら居間でテーブルの周りをぐるぐる歩く。
ーーーすると。
「まったく…君は困った兄上だねぇ」
腰に腕をあて、ドカンと高らかに主張する胸を張り、白の短パン&黒のタンクトップな姿のブロンド美女が、俺の進路に立ち塞がった。
「ーーーえっ…と?」
何故か頭が混乱する。
「おやおや、どうしたんだい僕の最後の希望の兄上。まるでキツネに叩かれたような顔だよ?」
本気でボケてたのか、なんなのかわからん。
レンを大人にしたような美女を見て、何故俺はあんなに混乱したのか今でもわからん。
(宇宙人のイタズラ? とか??)
「どうしたのさ? まさか可愛い妹の顔を忘れてしまったのかな?」
言われて再度、相手を見つめる。
透明な深海。見える筈なのに底がない。
そんな、とらえどころのない碧眼。
金色の頭髪は頭の後ろで一括りに纏められ、優美な馬の尾のように揺れては人心を捉える。
見せ付けるように谷間を強調するタンクトップ。
パンツとそう違いないような面積の短パン。
そこから覗く胸も股も、それはそれは白く瑞々しい柔肌で。
きっとあの肉厚な尻は男の魂を狂わせる。
「あ…えっと」
何を言おうとしたのか、今ではもうわからない。
「新しい口紅を試してみたんだ、どうかな? 桜色もわるくないけど、僕にはこのくらい鮮やかな朱色も合うと思うんだ」
指をあて、視線を集めるあざとい仕草。
その唇の形が、奇妙な記憶の泡となる。
ーーー『画面の向こうには黄色と黒のツートンカラー。
トラロープ模様の目隠れ美女』ーーー
ーーー『ぷりっと潤んださくら色の唇と、ライダースーツの真ん中に主張する純白の谷間。細首との対比により、超絶に起伏したマシュマロの谷間。
アクセントのように右胸の上乳に打ち込まれた一粒のホクロの黒が、その谷間の白さをより際立たせて』ーーー
ーーー地雷…座長?
いや…あれ? この顔と、身体…唇の小生意気な歪め方、コイツ、地雷座長じゃ
「兄上? 僕に見とれちゃったのかな?」
ボケている間に俺を兄と呼ぶ美女の腕が極自然に俺の首に巻き付き、柔らかな胸が俺の身体に密着してむっちりと形を崩す。
唇が、重力に従うリンゴのように、俺の顔にーーー「ヒギィァァァァァァァァァア!!」ーーー途端、猿すら怯える
「おやおや、僕の可愛い母…姉上さま。そんなに慌ててどうしたのかな?」
押し倒されて尻餅をついた俺と、その上に乗っかるレン。
それを見下ろして 『妹』 がにこやかに笑った。
◯月◯日 ハレ
さいあくだ。
本体とのせつぞくが切れた。
それだけなら、まだ平気だった。
ミレン…本来の時空では完全にマッショウされていたヘレンを復元した奇妙なそんざい。
ベースはあのいけ好かない地雷座長。
そこにヘレンの因子を混ぜてへんしつさせている。気色悪いし気味が悪い。
本体とせつぞく出来れば、こんなじゅーだいなシンリャク行為、カンタンに止められるのに…!!
中枢の存在はカンペキだと思ってた。
間違えないし、間違いない。
少しくらい無茶しても、それが『だいす』ダンカンの一助になるのなら、きっとヘーキだと思ってた。
なのに、なんだよ、この、バカみたいな…!!
にーにーのマネをして日記にしてみる。
本体とせつぞくしてない状況がこわい。とつぜん目が見えなくなった人のインタビューを見て、はじめて自分のふわふわしてイライラする気持ちの正体がわかった。
不安、なんだと思う。
ヘレンは、いま、毎日が不安だ。
たぶん、向こうはこのプラントの異常じたいに気付いていない。バカなヤツラ。ザコ、クズ、きゅーりょードロボー。にーにーが言ってた、いきなり責任者が変わったショクバは大抵ヒサンな事になるって。
しかも、あのビッチだよ?
にーにーが大好きなヘレンの因子で、にーにーを誑かそうとする害虫が、ここを支配してるんだ。
何が「姉上」だ! バカにしてっ!!
しね! しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねぇぇぇぇぇぇぇえ!!
…はぁゲシュタルトほーかい、した。
明日目が覚めたら、この悪夢が終わってますように。
唐突に開始した毎日更新はここまでです。
のんびりボチボチ頑張るのでこれからもよろしくお願いします。
次はそろそろ掲示板を挟みたいと思ってるのですが、内容はまだ未定です。
あ、あとアンケートとってみます。
地雷座長についてどう思います?
今後あの人をどうするか悩んでるので、興味ある人は参加してくださいませ。
地雷座長、生存させる?
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俺は毒舌ビッチを推すぜ!!
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毒舌は嫌いだし、ミレン融合→消滅でok
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心をへし折ってハーレム要員にしようぜ!
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マジでどうでも良いからもっと書け!