ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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38.だいすの旅

 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 『ーーーはいッ! と言うわけで始まりました今回の企画!』

 

 撮影した旅の映像を見ながら日記を開く。

 

 『ニホン全国ゥ! だいすの旅~!!』

 

 のどカスカスでまともに喋れないおじさんが、懸命に大泉要のモノマネをしていた。

 

 『…おぅおぅおぅおぅ!!』

 

 画面の奥からガニ股で詰め寄ってくるのは金髪少女。

 ビシリと着こなした白いライダースーツ(お高い)で肩を揺らして風を切る、その口もとには水性マジックで雑なドロボウ髭が描かれていた。時刻は早朝06:10。

 

 『われぇ! ここはククルスおじさんの島やぞ! 誰に許可とってキャ~メラ回しとんじゃおら、うぉら!!』

 

 服ポケットに両手を突っ込んだまま(無い)胸をおじさんに押し付けながらオラつく少女ーーーレンーーーに取り合うこと無く、画面の中の俺が話を進める。

 

 『生命線である『だいす』にログイン出来なくなったヨシム=ラヒル!! しかし彼は思った【他の筐体でなら行けるんじゃね?】その閃きを確める伝説の旅が、今ここに始まるぅぅぅぅ!』

 

 『ぁホカ! 天才のレンちゃん様が無理や言っとるんやぞ、この、ぁホカ! ホカホカのアタマか、うぉら! いてるまうぞ!』

 

 『初日となる第一段はここ! 沖縄からスタートします。沖縄と言えば海! 水族館! 美味しいお酒!! ぜんぶ無視します! 我々の目的は『だいす』だけ! ゲーセンが開くと同時に突入、無理ならその足で空港に直行予定で御座います。それで良いのか沖縄旅行! 正直私も妹も、沖縄を訪れるのはーーー』

 

 話が無駄に長いし喋りが早すぎる。

 緊張しぃだとしてもダメ過ぎるやろ。

 

 ミレンに見せたら終わりの映像だし、別に問題はないのだがこうやってみると大泉先生を始めとするプロの方々の凄さを改めて実感するわ。

 

 しかしレンもヒドイな。

 見れたものじゃないのだが、原作再現としてはある意味完璧なのがまたキツイ。

 

 ボケッとしてる間に画面は次のシーンに切り替わっていた。

 

 『無理ッ! 次行ってみよぉー!』

 

 『おー!』

 

 沖縄は流石に狭いからな。

 『だいす』のある場所は一ヶ所だけ。

 この後は予定通り鹿児島へ直行。

 

 レンはこの時点で口ひげと一緒にキャラを忘れてただの美少女になってしまっている。

 

 

 ◇

 

 

 『と! 言うわけでやって参りました九州地方最南端! 鹿児島県!!』

 

 『いぇーい!!』

 

 レンはアロハ。

 …俺もアロハだったりする。

 

 いや、楽しかったのよ…沖縄。

 特にどこを巡ったわけでもないのだが、独特の空気があって若干浮かれちゃったんだよな。

 気合い入れて着込んでたライダースーツも暑くて着れたもんじゃなかったし、空港のお土産屋さんでちょうど良いのが売ってたんだが。

 …思えばこれも悪かったんだろうな。

 

 『そして我が愛車『K-Ashigaru-250』のこの勇姿!!』

 

 バイク輸送で先に届けてた愛車をバックに、俺とレンの笑顔が眩しかった。

 

 『ここからは鹿児島→宮崎→大分→熊本をバイクで走破予定! 強行軍となります、オッス!!』

 

 『にーにー! はやくー!』

 

 事故に遭遇した場合を想定して、バイカーは常に長袖が基本だ。なのだが、やはり暑すぎた。そして楽しかった。

 

 俺たちはアロハで九州を爆走した。

 

 

 ◇

 

 

 『ふーつーかーめー(о´∀`о)』

 

 とびっきり元気なレンのドアップから再開。

 時刻は前日と同じ06:10ーーー早朝。

 

 流石に朝は冷えるからライダースーツ姿だ。

 

 『今日は久留米→長崎→佐世保→福岡→北九州、昼過ぎからは中国地方へ突入。山口県宇部市でロンギヌスの鉾を拝んでから→広島→福山→岡山までの超行軍予定となっております!! 本日の目玉はガノタの魂が叫ぶガン◯○ベース福岡!! 伊達じゃないぜ! ガンリ~~~ングッ!!』

 

 『しゅし変わってるやんけー』

 

 …なんとも。

 ため息しか出ない。

 ほんっとうに、俺はなんでこんなに馬鹿なんだろうか。

 

 『いやいや我が妹よ『だいす』は『だいす』これはこれだから。俺はガノタとしては未熟な半端者だが、それでもここだけは蔑ろに出来ない。アジアの玄関口となるこの場所で海外のガノタを迎え入れる機神像だぜ? もはやガン◯○は神の領域に至っているのだよ…! 見たい、拝みたい、共有したい! そんなーーー』

 

 切られた。

 …なんかレンがごそごそしてると思ってたんたが、なるほど。

 あの時録画ボタン切ってたのか。

 流石にやるなぁレンは。

 

 俺の熱弁は軽やかにカットされ、各地のゲーセンで接続敗北記録を更新した映像の後ーーー真っ昼間、照り付けるような日の光を浴びた『PX-93ff v』ニューガン◯○の姿が映し出された。

 

 『すげぇ…おぃガチか、チラ見え程度の内部泌構造まで…嘘だろ、なんだこの作り込み。人類、人類しか勝たんぞ。おぃレン良く見ーーーー』

 

 切れたーーー!?

 

 は!?

 嘘だろ? 俺のクソみたいなトークだけならまだしもトリコロールカラーのニュー様やぞ!? ロングレンジのアレを担いだ愛と正義と平和の象徴を!?

 

 思わず後ろのベッドで爆睡中のレンへ振り向いたのだが。

 

 「……ふ…ふぅ、はぁ」

 

 まだ少し荒い息。

 顔は赤く、寝汗がしっとりと金髪を濡らす。

 

 「ーーー」

 

 その一瞬で、逃避していた意識が現実に戻った。

 

 

 

 レンの不調。

 思い返せばあの時から様子が変だったんだ。

 ちょうどお昼時だったし、チュキ屋の牛丼屋さんでミニモニムーンがコラボしてたから入店して。

 

 普段少食な癖に無理して食ってたのはコラボだからだと思い込んでたし、その後レンのお眠スイッチがONになってたのは食い過ぎが原因だと思ってた。

 直前まではゴリラ並みの元気を発揮してるのに、スイッチが切れた途端カクッと寝ちまう。そんないつものレンだと思ってたし、そんなだからまるで気遣いが出来てなかった。

 

 

 

 午前中だけであんな頭おかしい距離を走破してるんだ。

 なんで気付けなかったのか、俺は…。

 

 

 

 どうにも、俺は改造人間らしい。

 いつ改造されたのか定かじゃないが、昨日今日の走破距離とその上でまったく疲れ一つ感じられないこの肉体からしても間違いないだろう。

 

 だが、レンは人間だ。

 乗り物に乗れば疲れるし、疲れれば体調を崩す普通の女の子だ。

 

 なんでこんな当たり前の事にも気付けない。

 なにが大人だ、兄貴だ。

 馬鹿じゃないのか。

 改造されて脳ミソまで人間辞めたのかクズが。

 

 妙に元気の無いレンを連れて予約した旅館に入ってすぐ。トイレに行って目を離した間だから、それこそ5分もしないうちにレンは布団の上にうつ伏せで倒れてて、なんか顔が赤いと思ったら手でハッキリと熱いと感じられるほどに発熱していた。

 

 レンは絶対に病院は嫌だと言ってきかないし寝てれば治ると言うのだが、何も出来ないでいるこの判断は正しいのか。

 今から無理矢理にでも病院へ連れていくべきか…けど、動くのも辛そうなのに知らない場所の知らない病院で長時間待たせるのはどうなのか…とか。

 

 幸い熱は38度前後で推移してるし水分補給も出来てる。今すぐ解熱剤が必要なレベルじゃなさそうなんだが、けど万が一容態が急変したらーーーん?

 

 気配の後声がかかる。

 

 「こんばんは、お加減はいかがでしょうか?」

 

 現れたのはこの旅館の女将さんだった。

 落ち着いた雰囲気の方で神谷さんと言う。名前の通り、俺からすれば神みたいなお人だ。

 

 「お陰さまでずいぶん落ち着きました」

 

 土下座と言えば土下座になる姿勢で頭を下げる。

 

 感染症には区切りがついたとは言え、客商売でもしもの事があっては取り返しがつかない。それにも関わらず女将さんは俺たちの様子を気にかけてくれた。

 

 気が動転した俺に変わって病院へ連絡し、看護師さんに容態を伝えて緊急性の有り無しを確認してくれたり、その後も水分補給や汗で湿っていたレンの服を着替えさせてくれて、遅い時間にも関わらずお粥まで用意してくれた。

 

 「こちら、お召し物…洗濯して乾燥も済ませておりますので」

 

 ホカホカになったレンのパジャマと俺の下着。

 温かい。

 そう感じられたのは乾燥機の性能ではなく、この人の優しさを強く感じたからなんだと思った。

 

 人間は怖い。

 けど、有り難い優しさを分けれくれる。

 

 そんな当たり前の繋がりを強く認識した夜だった。

 





 「女将さん!!」

 「なんですか皆して集まって、仕事はまだーーー」

 「それどころじゃ無いです!!」

 「事案! 事案ッ!!」

 「警察!!」

 「…どうしたの?」

 「藤ノ間のお客さん絶対にヤバいです!」

 「パパ活です!」

 「犯罪です!」

 「春が売られてハルウララですっ!!」

 「はぃ?」

 「だから! おじさんが、まだ小学生みたいな金髪の女の子を連れ込んだんですよ!?」

 「な…! いや、何を馬鹿な事を」

 「絶対家族なんかじゃ無いですって! 女の子なんか目も虚ろで足元もフラフラしてたんですよ!?」

 「アルコール!」

 「薬物!!」

 「強制わいせつ!!」

 「どうします!? 今すぐ警察を呼んだほうが!」

 「待ちなさいッ! 私が、確かめてきます…!」

 「女将さん!」

 「女将ッ!」

 「ちゅき!」

 「…いいですか? 中井さんは部屋から大声や物音がしたら助けられるように厨房のタクさんを呼んできて」

 「ハイッ!」

 「大河原さんは武器の準備、宴会場の薙刀を」

 「了解です!」

 「小鳥ちゃんは2分で良いから口を閉じて」

 「おけまる!!」

 「…黙れよ小娘」

 「ぴよ!?」

 そんなやり取りがあったとか、無かったとか。
 信じるどうかは…あーなーたーしぃーだぁーいぃぃぃ。
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