ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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 評価に協力して下さった皆様のお陰で再びランキングに乗ることが出来ました。
 ありがとうございます。

 さてさて、しかし初見さんがここに辿り着ける確率は現時点で1/40…どんだけ厳選されたコアパーツなのかと。

 超一流コアパーツの皆様には、この場を借りて深く感謝申し上げます。
 本当に、読んでくれて有り難う。



43.地獄/極楽

 

 ◯月◯日 晴れ (3ページ目)

 

 

 『だいす』と『アマギア』のコラボはクソなんじゃないかと、それが初日の感想になった。

 

 序盤は割と忙しかった。

 

 ライバルとなる他プレイヤーの数も多くて、他人の失敗に巻き込まれるパターンもあるから気が抜けなかった。

 あと単純に序盤の電子戦はレンにとっては小学校低学年の算数程度の難易度らしく、俺が足を止める間も無くサクサクと片付けていたから、基本的に俺は操縦し続けていた。

 

 だが中盤に差し掛かる頃には他プレイヤーの姿は無くなり、電子戦がレンへ要求する時間と難易度は右肩上がりに上がり続けた。

 

 そうなると俺は暇だ。

 基本的にレンかミレンの指示があるまでは何も出来ない。

 地味に、ジワジワと、精神が腐る。

 

 更にはちょくちょく用意されたセーブポイントで記録し、筐体から離脱して飯を食べたりして休憩を挟んでいる。

 この部分もまた怪しい。

 休憩が必要な拘束時間。

 それでまだ、中盤に差し掛かった程度の進捗なのだ。

 

 恐らく今日中のクリアは不可能。

 そしてたぶん明日も。

 

 レンはもう限界だ。

 俺は3時間睡眠に慣れているが、レンは違う。

 

 妹が寝てる間、防音の部屋で俺はライザさんと一緒に汗をかいた。

 

 悪いことだという自覚はあった。

 してはいけないと言う自戒もあった。

 だがペレさんとの会話と言う日常(いやし)を失なった俺は。

 性交の快楽(いやらしい)を思い出した俺は、どうしようもなく沸き上がる欲求を抑えられなかった。

 

 ライザさんは温かくて、やわらかくて。

 何も考えられなくなるほど………良かった。

 

 

 

 

 

 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 基本的には落ちていく。

 迷宮の最奥へ挑むイモータルギアのように、時にコンテナへ忍び込み、時に遠隔操作で警報を作動させては力業で物資搬入口の扉を開き。

 

 そうして警備の隙間を縫うように地下を目指した。

 

 電子戦に対する理解は無い…が、レンのしている事はわかるようになってきた。

 

 例えば人間で言う所の視覚にあたるセンサーをジャックして在るものを無いものとして認識させたり、通行許可を偽造して堂々とゲートをくぐったり。

 

 ずいぶん集中してやってるから、わかる人からすれば奥が深いゲームなのかもしれない。

 まぁ俺からすれば目隠しで歩かされてるような不安しか無いのだが。

 

 それにしても人が居ない。

 レンが天才すぎて付いてこられないのか…?

 何か違和感があった。

 

 ーーー昼食後。

 

 その辺りからレンの不調が目立ち、それに伴いミレンの機嫌が悪くなった。

 

 昼の時点での進捗はまだ全体の半分にも満たず、月末の借金支払日までにクリアできるかどうか微妙な状況に追い込まれたのが悪かったのだろう。ミレンは些細なことで攻撃的な言葉を放ち、それによってレンがまた調子を落とした。

 

 『何故、予定通り進まないのかな? 姉上が行けると判断したスケジュールだ。もしかして僕を謀る気じゃないよね? さっきのトラップは初日に5秒で無力化したモノと同じだろ? 何故そんなモノへの対処に3分も費やしたのか、答えてもらおう』

 

 後半はずっとそんな調子。

 クソみたいな雰囲気。

 趣味を仕事にするとこうなる。

 そんな実例を見せつけられているようで気分が悪い。

 

 レンは反論こそしなかったが、バックモニターで確認したその顔はかつて見たことの無い表情で固まっていた。

 

 

 ◇

 

 

 夕食の最中。

 カレーの入ったスプーンを握ったまま、レンが頭からテーブルに突っ伏した。

 

 意識をなくすほど疲労を溜め込んでいたらしい。

 カレーまみれになった顔を拭いて風呂場に運び、後の事はミレンに任せて今日の『だいす』はお開きにした。

 

 

 

 …俺は辛かった。

 レンは心を閉ざし、ミレンは苛立ちを隠そうともしない。

 

 俺たちは何をやってるのか。

 

 ゲームだよな?

 日本語に直せば遊戯なんだろ??

 何だあの絶望的な空気。

 

 気持ちはわかる。

 レンは家を増築したし、ミレンなんか裏山をまるごと買い取っていた。俺に無断で、俺の名義でだ。

 そらぁ不安だろう。

 

 俺だって不安で不安で眠れやしない。

 やらかした当人たちは俺よりも不安に決まってる。

 

 

 

 ゲームをしていない空白の時間が重かった。

 1秒が長い。

 1分が惜しい。

 

 少しでも家計の足しになればと、一人でアリーナをしようと思い立ったのだが、ケルベロスの使用はコラボに限定されており、それ以外で遊ぶなら新規にオルボーンを買うか【ウチトさん】を借りるしかないらしい。

 

 ペレさんも居ない。

 【ウチトさん】では満足に歩くことすら難しい。

 今の『だいす』には価値が無い。

 

 …だから仕方なかった。

 今日こそはと思ったのだが…。

 人肌に触れている間だけは、何も考えなくてすむ。

 

 

 

 

 

 ライザさんについてはこの数日で少しだけ理解が進んだ。

 

 まず知能。

 もしかしたら未就学児(4~5才)と同レベル。

 簡単な単語は使えるし、難しくない指示であれば反応してくれるが、基本的に本能に忠実。

 嬉しければ笑い、嫌なことには泣き、気持ちの良い事にはとことんまで貪欲。

 

 記憶力はあるし、あの事件の事も、その前に『だいす』で地雷座長をしていた事も覚えているらしい。

 だが、以前の私生活について質問したり、実家や現在の住所を尋ねたりするとまるで反応せず、猫のように身体を俺に擦り付けてくるだけだった。

 

 

 

 正直、俺のしている事はあの現場のクズ共と大差無い。

 

 

 

 理性が無い状態の女性を自慰の道具のように使っている。

 

 例えば俺が「座ったまま股を開いて、両手でピースしなさい」と言えば、ライザさんはたぶん笑顔でその通りに動くだろう。

 

 実際、どんな体位を要求しても拒まれた事はない。

 

 唯一、派手な髪の毛の下で彼女の目を隠している帯に触れた時だけは拒絶されたが、それ以外なら何処を触っても舐めても、嬉しそうに喘ぐだけだ。

 

 最初の段階から今まで、俺は一度も避妊していない。

 

 目覚めた時のアレがアレだったから。

 そういう言い訳はある。

 一度出したなら、二度も三度も変わらない。

 

 そもそも本人が『ソレ』を望んでいるから…。

 

 そんな、外道にも劣る言い訳を盾にして、俺は未来ある美しい女性の肉体を貪り、新雪のような肢体を俺の体液で汚し続けた。

 

 お互いに愛情など無い。

 肉欲に支配され、獣のように交わる。

 未来の事も、命の事も。

 責任も過去も何一つ考えない。

 

 それを理解して行う、

 邪悪で、醜悪で、鬼畜のような行為。

 

 最低だった。

 俺は自分が、こんなにも下衆な人間だとは思っていなかった。

 死ねば良いと思う。

 自らへの怒りと絶望が、更に腰の動きを早めた。

 

 一方で『何も問題ない』と。

 そう思う自分がいる。

 

 『コレは俺のモノなのだから、ナニも気にする必要はナイ』

 

 本気でそう思えている自分が、間違いなく。

 

 

 

 ーーー唐突に胃が痙攣して、急いで駆け出した先の便所に中身をぶちまけた。

 

 …でも、それでもきっと、俺は自分を止められない。

 そんな嫌な確信だけがあった。

 

 

 

 

 

 

 ◯月◯日 晴れ

 

 

 「今日は温泉に行こう」

 

 レンが起きてから、朝食後に切り出した。

 

 【スニーク・ハイド・ブレイカー】攻略。

 初日と2日目を終えて、このままでは立ち行かないと判断したからだ。

 

 「温泉…? にーにー? 急になに言ってるの? にーにーは頭がホカホカになったの?」

 

 「ありえないね、この状況で温泉だなんて」

 

 機嫌最悪・絶不調更新中のレンのジト目、真冬の東北のように冷たいミレンの拒絶。そして我関せずと美味しそうにサラダを食べるライザさん。

 それでも俺は揺らがなかった。

 

 「行かないなら俺はもう二度と『だいす』はしない」

 

 どうせこのままやっても賞金ゲットなんて有り得ない。

 よろしい、ならば戦争だ…と。

 

 正直、ライザさんが付いてきたら温泉どころじゃなくなる。たがら今日はお留守番してもらって、俺は妹二人を強引に外に連れ出した。

 

 足がないって?

 バイクに3ケツすれば良い。

 幸い山を下る所まで行けばそこからはバスが走ってるからヘーキヘーキ…あん? タクシー? そんな金の無駄遣いが許される状況じゃねぇだろJKーーーッ!!。

 

 「ムリだって…にーにー!」

 

 騒ぐレンを強引に俺の前に、

 

 「これは、流石に僕ですらダメだと思うよ?」

 

 珍しく青い顔のミレンを後ろに、俺のAshigaruが山道を駆け抜けた。

 

 「ひゃー!」

 

 騒ぐレンの悲鳴が心地よい。

 

 「スピード! ムリだって! ゆっくり行けバカ!!」

 

 かなり本気で背中を殴るミレンの拳が楽しくて、俺は益々アクセルを捻った。

 

 「なんか行ける気がする!!」

 

 なんか行ける気がしたからバス停を無視して温泉に直行した。

 妹にはクソ怒られたが、運の良い事に警察のお世話になる事なく目的地に到着。

 

 ここには温泉は当然として、大きなサウナにキンキンの冷水、そしてゆったり空間となる、のびのび外気浴場が完備されている。

 

 そう…俺の目的はサウナ。

 人類の叡智が家族を救う!!

 

 『だいすの旅』で俺は知ったのだ、あの脳ミソの中の絡まって張り詰められた緊張の線が、溶けてドロドロになって新しく生まれ変わるような独特の『ととのう』と言う現象を。

 

 アレを知ってから、即座に地元の温泉や銭湯をリサーチしていて、その中で最も俺の理想に適した場所がここ『ハルノ温泉』だったのだ。

 

 「…ふむ」

 

 何故か陰気な笑顔の番台さん(しわくちゃのお婆さん)が、高台から俺たちを見定めるように見下ろして。

 

 「家族風呂、今なら予約無しでも入れるぞよ? ん? 若いの、どうするんね? イヒヒッ…」

 

 なんて言ってくれた。

 

 「マジかッ! お婆さん話がわかる!」

 

 俺は嬉しかった。

 どうせならサウナ未経験者の2人に正しい入り方を直に教えてやりたいと思っていたから、お婆さんの提案は渡りに船だった。

 

 唯一財布の中にあった一万円を手渡す。

 

 「ほぅ…? へぇ? ふぅ~ん? …スケベな男やのぉ、いんやでもジイ様もこんなじゃったか、うんうん」

 

 なんて言いながら諭吉様を襟の中に突っ込むお婆さん。

 

 ………お釣りは? え? なんで??

 てかスケベなって、何をモウロクしとんのよ。

 誰がどう見ても兄妹やぞ? オババ様大丈夫か?

 

 そんな思いで数秒待つ。

 ーーーが、どれだけ待ってもお釣りが無い。

 

 解せぬ。

 

 そしてオババはそれっきり電池が切れたように動かなくなり、レンとミレンは勝手に先に進む。

 

 クソババア。

 

 その言葉が喉の先まで出かかったのだが、言えば何かが終わる気がして仕方なく飲み込んだ。

 

 

 ◇

 

 

 「ほわ………」

 

 「じんるい…じんるい………」

 

 「はふぁ…」

 

 全裸の三人が椅子に腰掛けて頭の中身をホカホカにする。

 

 まずは5分だ。

 身体を清めてから5分間サウナで頑張る。

 シャワーで軽く汗を流してから、キンキンの最高の冷水で30~60秒、自分で十分だと思えるまで身体を冷やし、それから外気浴場に移動して椅子に座る。

 

 …最高の時間が始まる。

 

 意識のあるまま気絶するような、幽体離脱ってこんな感じなのかしら? みたいな。

 難しい事から解放されて、ただ心臓が脈打つ感覚だけに意識が吸い込まれるような。

 風の匂いを感じて、葉の揺らめきに感動して。

 世界が綺麗なんだと思い出せる一瞬があって、でも同時になにも考えられない一瞬が連続している奇跡のような体験。

 

 身体と脳ミソが落ち着いて、少し肌寒さを感じたらそれが頃合い。すぐさま2回目に突入する。

 

 今度は身体が慣れているので自分の限界までサウナで頑張る。

 頭の奥にこびりついた考え事がグシャグシャになる程度が最適。

 そしてまた冷水。

 頑張れば頑張った分だけ、外気浴のフィーバータイムは質と量が向上する。

 

 

 「ほわ………」

 

 「じんるい…じんるい………」

 

 「はふぁ…」

 

 

 アタマをホカホカにして。

 俺たちはそれを2時間の間ひたすら繰り返した。

 





 バイクの三人乗りは法律で禁止されています。

 「山奥の田舎道だから」とか、

 「子供は二人で一人分の体重だから」とか、

 「楽しいって! マジでヘーキヘーキ!」とか。

 そんな頭ホカホカでやらかす時に限ってパトカーに遭遇したりします。本当に止めておきましょうね?
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