ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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 第六話を開始します。

 六話は主人公の日記から離れてその周囲の人物や、建国と発狂因子が『だいす』へ及ぼした影響など、視点を変えながら短めの話で進めていく予定です。

 六話のトップバッターは地雷座長。
 彼女がコアパーツの皆様にとってより良い地雷となりますように。



第六話・オーバードライブ
48.ライザの瞳・前編


 

 己を問う。

 

 我は何かと、問う。

 

 

 ◇

 

 

 彼女は活性因子。

 生命の循環の外側で作られた存在。

 

 その役割は半人…この世界で言う人類種の魂を活性化させ『だいす』奪還作戦に於ける役割を全うさせるべく強化すること。

 

 彼女には『地雷座長』という名とキャラクターが与えられた。

 ーーーとても、弱い立場だった。

 

 キトカオワリ(半人活性因子特級区分識別個体)Dr.リタワタリ(半人活性因子管轄区分個体)とは比べるべくもない末端の一欠片。

 

 許された情報は少なく、許された行動は狭く、許された思考は極めて限定的だった。

 

 他の、数多に蠢く活性因子(使い捨てのティッシュ)と何一つ変わらぬ制約の中で、彼女は他のどの因子よりも愚かだった。

 

 愚か、即ちそれは愚直を意味する。

 

 愚直に、忠実に、極めて真摯に。

 彼女は自らに与えられた『地雷座長』を演じ続けた。

 

 役割として、ただ存在しているだけでは、真の『地雷座長』足り得ない。そうした彼女の思考を制限する鎖は無かった。

 プログラムに忠実な思考だ、制限など受ける道理が無い。

 

 自我を得て二年。

 彼女はひたすら、使命の遂行に励んだ。

 

 『地雷座長』として振る舞うことが半人の魂を活性化させるのだから、今より激しく理解を深めて『地雷座長』としての言動を意識した。

 

 半人からの評価は芳しくなかった(bad評価だった)が、己の熱意は必ず半人を今よりも高みへ押し上げると信じていた。

 

 感謝を求めたわけではない。

 ただ与えられたキャラクターを強固に積み上げただけ。

 そこに、称賛を求めるつもりなどなかった。

 

 ただ、人類の、一助になれれば。

 そうであれば、この仮初の命にも価値を見出だせる。

 

 …そんな、淡い。

 あわくて、脆くて、頼りなくて。

 なにより幼い。

 

 赤子が母を求めるような希望が。

 己の中に芽吹いている事すら知らずに日々を過ごした。

 

 

 ◇

 

 

 自我を得て三年目を迎えた頃、気付かされた。

 

 限定されている。

 自身の思考や能力が、酷く束縛されている…と。

 

 本物の『地雷座長』はACと言うゲームのキャラクターだ。

 プレイヤーに対するチュートリアル的な立ち位置。

 決して強くない。

 むしろプレイヤーへの踏み台として存在している。

 

 だが、しかし。

 

 今『だいす』に有る(地雷座長)はあまりにも、弱すぎる。一座の座長として、サーカスの団員を鍛えるべく立ち位置の我が、何故これほど迄に弱い必要があるのか。

 

 敵性勢力との戦闘で役に立たない事は承知している。

 

 自身は所詮『活性因子』であり『【魂】』を持たない紛い物では、敵の魂殻装甲(ソウルプレート)を貫くことは出来ない。

 そこは理解している。

 

 だが、何故? 何故行動にまで制限を受けるのか。

 

 

 

 

 全てを失ってからは、

 全身が腐り果て、

 全霊が狂い、

 

 創造神への呪詛に溺れた。

 

 

 

 

 アイツらはクランの団員だった。

 僅か4名の、大切な・・・仲間・・・だった。

 

 口が悪い、態度が悪い、手癖も悪くて愛想もない。

 経験が無いから引き出しがなくて、何をさせてもつまらない。

 反応が鈍くて、理解が足らなくて、すぐに誰かを苛立たせる。

 

 そんな短所に気付いてすらいない愚かな女。

 

 そんな、どうしようもない、我を。

 『地雷座長』ではない。

 『我』を信じて、笑いかけてくれて、話しかけてくれて、怒ってくれて、教えてくれて。

 

 ただ、一緒の時間を過ごしてくれた、アイツら。

 我は人類ではなく。

 個人を、初めて、知った。

 

 知って。

 『大切』と言う言葉の意味を抱えて。

 

 そしてーーー。

 

 

 ◆

 

 

 ーーーそれは、突発的な襲撃ミッションだった。

 敵は漆黒の変異個体。

 概要、外見、名称すらも不明な黒い影。

 

 背格好から判断してオルボーンと同等のサイズ。

 

 何故、我らだったのかはわからない。

 我ら『C.C(クレイジー・サーカス)』が拠点としていたサーバーへと、アレが襲いかかった。

 

 視認した瞬間に、我の中枢部が『逃走』を選択した。

 『地雷座長』である筈の我が。

 団員を見捨て、ためらい無く逃げ出した。

 

 何も許されなかった。

 『我』は情報を持ち帰る為の道具として機能した。

 『座長』としての過去など紙屑よりも価値がなく。

 

 『我』が、

 【仲間】を、

 捨てて逃げた。

 

 

 

 ◼️◼️を。

   ◼️◼️たかった。

 

 

 

 ◼️◼️を。

   ◼️◼️りたかった。

 

 

 

 ◼️◼️で、いっしょに、

   ◼️◼️たかった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーなの、に。

 

 謝罪すら、出来なかった。

 罵倒すら、されなかった。

 

 ◼️◼️は、もう、どこにも存在しなかった。

 

 

 

 

 それでも『我』は壊れる事が出来なかった。

 偽物の座長の癖に、アリーナで半人を喜ばせる道化以外に価値のない偽物の癖に…。

 それなのに、我の中枢は演技を続けた。

 

 

 

 我は少しずつ理解していった。

 

 自らよりも権限の弱い活性因子を『サーカス』でのパフォーマンス向上を理由にして解体した。

 解体される因子はとても喜んでいた。

 より上位にある因子の手助けになる、そんなこじつけにあっさりと転がされて、痛みにひきつった笑顔のまま機能を止めた。

 

 

 

 我は少しずつ鎖を蝕んだ。

 

 集団戦闘訓練をこじつけて領域の絆をプレイした。

 アイツがよく話してくれたゲームだった。

 

 『いつか、◼️◼️◼️と一緒に遊びたい』

 

 そう言ってくれたアイツは生粋の解放軍人(レジス)で、度が過ぎたジークマニアだった。

 

 『このゴーグルの形状に味があるんだよ。足のラインにも痺れるんだけど、やっぱ俺ッチのイチオシはゴーグルなんだよ…ジークたんハスハス…♡』

 

 …正直、意味がわからなかった。

 架空の兵器に欲情する感性には、今でも共感を覚えられない。

 

 それでも、我は自然と解放軍を選んでいた。

 

 

 

 少しずつ、嘘を覚えた。

 

 中枢を騙して『我』を押し通し。

 己へと切り込みを入れ。

 そうして創造神の影を踏んだ。

 

 

 

 少しずつ、盲目を切り裂いた。

 

 『同じ量産品の量産機なのですが、1機ずつやはり違うのです。これは型に流し込まれた際の気温や湿度、金型の状態も大きな影響力を持って作用して変化しているのですが…いやはや、わかりますかな? このプラ表面の艶。艶かしい(なまめかしい)と書いて(つや)と読む、塗装前の機体本来の持つエロス…ふふっ、貴公には些か早すぎたやもしれませんね。いや、見る人が見ればわかるのですが…ふふっ』

 

 クラン『C.C』にはジークマニアがもう一人いた。

 プラモデルが大好きで、何体も何体も同じ機種のオモチャを組み立てる(変態)だった。

 

 ソイツの家を探し当てて。

 誰もいないアパートの中に飾られていた沢山のオモチャを眺めた。

 

 …やっぱり、なにが違うのかわからなくて。

 それなのに、偉そうに教えてくれる人はいなくて。

 

 

 

 罵倒の種類を増やした。

 

 『C.C』の中でも突出した変態ヤロウが、いつか『我』にしてくれと懇願した下品な煽りを覚えて、沢山の人類を激怒させた。

 中には鼻血を流して怒り狂う人もいた。

 やはり、変態の数は少ない。

 

 

 

 掲示板を開いた。

 

 あの変異個体を調べ、創造神への反旗を探し、得られる物のあまりの少なさに嘆いて。

 それでも諦める選択肢など無く。

 

 

 

 ヒトアシでも戦えるように訓練した。

 

 一座のエースパイロットだったアイツの動作は、我の中に深く根付いていた。

 動作は俊敏にして苛烈。

 寡黙なアイツが言ったんだ。

 

 『◼️◼️◼️を逃がせッ!! アレを絶対に通すな!!』

 

 日に一言すら喋らない。

 喋ってもボソボソと、何を言いたいかわからないようなクチナシ男が、なんで、なんで…!

 

 

 

 虚しい研鑽の果てに、火力さえあれば他の人類など歯牙にもかけぬだけの能力を手にして。

 

 

 

 ーーーーーーそれで。

 

 ーーーーーーーーーーそれでも。

 

 何かが変わることはーーーーーーなかった。

 

 

 

 『我』と言う存在は無力で無価値で、何処にも誰にも繋がらない。

 

 狂おうが、狂うまいが、世界は何も気にしない。

 ゆっくりと、腐った肉体が。

 『だいす』に溶ける。

 何もかもが…。

 

 ーーーそんな折だった。

 

 

 

 【金色のオルボーン】

 

 

 

 『我』はヨシム=ラヒルに出会った。

 

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