ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録 作:マキシマムとと
◯月◯日 雨
「がんばれ」
悪意の赤文字で強制終了させられた翌日。
こりずに『だいす』した俺にペレさんが告げた一言がコレ。
いつもより短文だからか、それとも他に理由があるのか。
珍しく正しい日本語で応援された。
「いや、え…強制終了ブチかましてきた件はガン無視なん? マジで?? つか昨日と操作の劣悪感が全然変わってないですし? ヒトアシが俺に合わないならせめて脚部変更をお願いしたいんだが………なぜ、他の脚種が装着不可にされてるのか、俺が納得出来る説明はあるんだよな?」
このゲームはロボ耐久値(HP的なアレ)とは別に活動限界ってのがあってな?
要は時間制限が設定されてて、どれだけ耐久値が残ってても活動限界が来てエネルギーが切れたらその場で終了となるんだけどさ。
前回はゲーム開始直後にペレさんがバグったやん?
んで活動時間がほっっっとんど減ってない状態で強制ゲームオーバーにされたんだ。
(1.000円は返却してもらえませんでした)
普通に詐欺やん?
P.O.Dから叩き出され、その上リトライすら拒絶された怒りと憎しみに困惑を添えて長々と長文の宇宙人批判を書き殴って、その後少ししてやっばりどうしてもペレさんの悪口を書き残すのは嫌だったし、大人として恥ずかしいなと思ったからその大部分は消したんだがよぉ…ん? んんん?? なんなんこのクソ対応? 書くよ? 長々と1.000文字越えて4.000文字クラスの批判文章ブチあげちまうぜおぉん??
…と、思ったんだが。
「がんばれやのす!」
この一言がなぁ…。
なんつーか、AIが出していい声じゃねんだよクソがよぉ。
無理で無茶で申し訳ない気持ちはあるんだけど、それでも頼むから頑張ってくれ的な? テメーなら絶対出きるって! な!! みたいな?
繰り返されれば繰り返されるほど、そんな熱を感じさせる系の「がんばれ」なんだわ。
ズルいわなぁ。
この台詞を設定した宇宙人は死んでくれよ本当に。
てなわけで『ヒトアシ』の項目以外が封印された脚部換装画面から離れてとりあえず上半身をオート、下半身を手動の練習モードに切り替えようとしてーーー?
「ん…え? ペレさんペレさん、なんかオートの切り替えスイッチが反応しないんだが?」
「むしゃ、ガン、バム!」
武者ガンバム?
ペレさんダンバイアニメ知ってる人なん?
て、いやいや。
それは置いといて。
ーーーえ?
半身オートを封印されたら動かせなくね?
いやうん、動けねーわ。
あの…ん??
がんばれにも限度があるのでは??
ーーー今日はそれで終わりました。
足の換装禁止。
オートの使用禁止。
リザルト→人差し指の稼働を達成。
…なんだろうか。
俺はペレさんの「がんばれ」コールを聞きに行ったのか?
1.000円払って??
一応マッサージ効果はちゃんとしてるからマイナスではないんだが、、、え? 指しか動かせねーとか振り出しに戻ってるっつーか、あの強烈に不快な頭痛を加味すれば余裕でマイナスな上に敵を倒す事でしか得られない満足感は完全にお預け状態。
ん…?
クソゲー?
いやうん完全にクソゲーなんだが。
これ…なんなん??
……うんち?
◯月◯日 晴れ
楽しいゲームが拷問じみた金縛り体験コースに変化して一週間。
俺は耐えた、全力で耐えた。
…たが、今日ついに遊び用のアブク銭が尽きてしまった。
やめるならこのタイミングなのは間違いない。
金もない上に楽しくないんだ。
ペレさんペレさん言ったところで所詮相手はAIだし、義理立てする意味はない。
やめるべきだと頭では理解してるんだが、後少しでモンジャモさんを売り払って得たマネーが尽きるし。それまでは…あと数回だけ。
そんな感じだらだらと続けての、ただ、今、ナウだ。
進捗の方はというと、強烈な耳鳴りと脳ミソを握り潰されてるような頭痛を堪えながらのヨチヨチ歩きまでは来た。
いや、初日と2日目は絶望的だったぜ?
だって動こうとしたら頭痛いし、指先を曲げ伸ばしてる間に活動限界がくるんだもんよ、ホンッキで宇宙人に対する殺意しかなかった。
それが変わったのは2日目の夜だ。
家に帰ってからふと、フィギアやプラモを入れたクリアケースの中にある【魔法警察パトレイアーズ】の暴銃神イサオスを見た瞬間、脳に電撃が迸ったんだ。
レイアーズの話の中に大型二足歩行が前提のマシンってのはただ立ってるだけでも大変なんだよ! みたいな話があったんだ。
間接が多くて柔軟で、頭悪いくらいに重たい機械を真っ直ぐ立たせて微動だにさせない、その為にはエンジンもシステムもパイロットも、凡てをフル稼働させて全力で立たなくてはならんのだよ! わかるかねチミィィィ~↑↑
みたいな、確かそんな話があって、個人的には納得と感心を覚えながら笑って見てた記憶があってな?
それを『だいす』に当てはめて気付いたんだわ。
俺のロボはオートスイッチを受け付けなくなったんじゃなくて、既に俺の意識の外にある部位を管理してくれてるんじゃないか、と。
だってそうだろ?
指先に集中してる間にも俺のロボはブレずに直立してる。
パンピーはゲームだからで片付けるかもだが、俺からすればゲームだから『こそ』この挙動に意味があると思えたんだわ。
そんなこんなで翌日からはそれまでの停滞ムードが一新。
ペレさんの声援に押されてモリモリ励んだ。
漫画でよく見るやろ? 足先で発生させた活力をゆっくりと上に移動させて足→腰→背骨→肩→拳へと繋げる事で威力の高いパンチが打てる、みたいな概念。
どうせ全身の操作なんて無理なんだし?
だったら各部位の操作をひとつだけ達成すれば良いのでは、と考えたのな?
足の爪先を曲げる動作をひとつ達成させて、その直後に反対側の足先へと操作部位を切り替えて着地させる。
運動エネルギーが途切れないように連続して達成と切り替えを続けて繋げてーーーそれで、ようやくヨチヨチ歩きまで来たんだわ。
だからまぁなんだ、間違いなくキツかったしカネ払って体験するような地獄じゃないのは事実だが、それでも本気でどうしようもなくクソだった訳ではなかった。
だが…金は有限なんだよ。
◆◆◆
「ーーーあんよーおまさんgoodヴォ~イでおるよ!」
ペレさんには悪気なんて無いと思うんだけどな?
この歳で「あんよが上手!」をリアル体験するのはキツイ。
腰をやってリハビリした経験があるから許せるけど、正直屈辱なんだが。
頭が痛い&操作が地味なおかげでゆとりだけはある。
だから俺はこのゲームは好きだし、ペレさんには感謝してる旨を伝えた。
しかしだ。
脚を換装してからこっちはマジで苦痛なだけのクソゲーだし、遊びに使える金は尽きた。金の問題が解決したとしても、どうせもうすぐ工場が繁忙期に入るから遊びに回せる時間もなくなる。
たまには来るかもしれんが、今までのようには会えなくなるから少し寂しい…と。
そんな事をつらつら話した。
本当に感謝してた。
所詮ゲームのAIだと切り捨てる頭と、現実で関わる人間より遥かに深く繋がってくれた大切な存在だと叫ぶ頭。
両方が俺で両方が事実だった。
だからかな。
誰にも話したことの無い過去の失敗と、その先にある俺の現状とか、そんなしょうもない身の上話まで垂れ流して。
ペレさんはやっぱり優秀なAIなんだよ。
ただ聞いてくれる存在がいるってのは有難い。
聞いて、受け止めて、理解を示してくれる。
ただそれだけの、文字にすれば一行未満の奇跡。
けど、仕方ない。
もともと俺みたいなクズには釣り合わない幸福だったんだ。
ここで終わりにしよう。
そう思った。
だがーーー。
「明日、遊ぼぼやん」
話し聞いてなかったわけじゃないっぽい。
他の人間や他のAIならまだしも、ペレさんはそんなクソじゃ無い。
「明日が最後でも、明日が遊ぼぼ」
相変わらずの日本語。
ペレさんほど優秀なら、このゲームの完成度を考えるなら。
とっくに直っている筈の壊れた日本語に、どうしようもなく俺の決意が揺らいだ。
【武者ガンダム】
現時点で作者が最後に作ったガンプラの片割れ。
相方は当然ナイトガンダム。
子供にプラモの楽しみを知ってもらいたくて購入したのだが、結局は2機とも自分でつくる羽目になった。
つや消しとかスミ入れとかゲート処理とか、事前に道具を用意してワクワクしていたのだが久々にやってみると素組みより上の作業に手を出すような気力は消え失せていた。
マジで無理だ。
SD戦士でこの疲労度。
子供の頃は下手くそだったとは言えMGとか部品数が多いプラモを幾つも作れてたんだぜ? ほんっとに若さって凄い。