ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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53.明日から缶詰生活

 

 ○月○日 雨

 

 

 困った事になった。

 

 

 まずな?

 オジボニさんが嫌すぎたんだ。

 

 いや、オジボニさんの人格否定がしたいわけじゃない。

 (あの後会話して、彼は以前フェルシャフレームに入っていたオジボさんとは別個体だと判明した為、オジボニさんと名前を改めました。記憶が無いだけで同一人物の可能性もあるけどな)

 

 彼の声はオッサンの中では好きな部類だしユーモアもある。オペレーターとしての仕事はしてくれないが、ペレさんが請け負ってくれていたオペレーター業務の方法を聞けば答えはキチンと返してくれる。

 

 悪いAIだが悪いAIじゃない。

 問題は、ペレさんに会えない事。

 

 普通にキツイ。

 どうにかしようと思ってもそれはペレさんでしか補給出来ない成分で、だから永遠と気持ちが好転しない。

 ペレさんに会いたい、会えない、塞ぐ、それなのに仕事には忙殺されて、ゲームで得られていた楽しみがただの作業以下のクソみたいに摩耗した感情の残りカスのようになって、その感覚を反映してロボの動作が劣化する悪循環。

 

 レンは俺の気持ちを察してくれて、いつものアレと比べれば驚くほど俺に気遣いをして見せてくれるし、ミレンはいつも通りの無理難題の殺人スケジュールに俺を叩き込むチャンスを狙ってた。

 (ミレンは実は頭がおかしいのかもしれない)

 

 そこまではまだ、困る事じゃないんだよ。

 ミレンの○チガイっぷりは魂で理解してるから『そんなイキモノなんだ』と思ってるフシがあるし。

 

 問題は、、、あの人。

 

 

 ◆

 

 

 ーーー今日もまた、緊急でラウンド3に缶詰。

 

 ラウンド3はこれまでと違って防衛系のミッションになる。訓練基地の北にある森より、もっも暗くてデカくて広いのに鬱陶しい森の中、無秩序に出現して襲い掛かってくるタイキングシリーズからコボットの開拓村を守るのが任務なのだが…。

 

 ヤツらは本当にところ構わず出現して『跳ね回る』攻撃で木々を薙ぎ倒しながら開拓村、と表示される丸い虹色の玉(たぶん、経費削減の一環だと思う)を目指して進撃してくる。

 

 外見はヴォルケーノ・ゲート(略してヴォケ門)に出てくる作中屈指の雑魚キャラクター、タイキングそのまんま。

 

 …まぁ、いつもの丸パクリやね。

 

 お魚の鯛に王冠を被せた姿で、タイキング・ソルジャーやタイキング・マジシャン、タイキング・シーフにタイキング・ヒーラーが存在するのだが、外見上の違いは間違い探しレベルで、性能は全て同じと言う絶妙な雑魚具合。

 

 『跳ね回る』以外にする事が無いところまで再現度は完璧で、ただ問題はその大きさにあった。

 

 クソ広い空間に点在する開拓村の数は5個。

 その1つでも壊されたらアウトなのだが、ヤツら(タイキング)の巨体は余裕でソレを圧し潰す事の出来る質量を誇っている。

 

 現状、唯一ヤツらに対抗できるケルベ…あ。

 そうそう、オルボーンの脚種が増えたから脚ごとに名前を変える事にした。

 

 

 

◇           ◇

 

 アシガル=ヒトアシ形態。

 

 ポチ=ヨツアシ形態。

 

 ケルベ=トリアシ形態。

 

◇           ◇

 

 

 ケルベの両腕(浮遊外装)は魂糸と言う伸縮自在の見えない糸で本体腕部と連結している。

 俺はその特性を使って【太陽(サン)・進撃無双】の立体機動機構を再現する事に成功したんだ。

 

 進撃無双そのままに腕を射出して木に食い込ませ、本体を引き寄せて木々の間を駆け抜ける。

 

 超速で軌道を描いてタイキングへと肉薄し、出会い頭に【悪重(アクアクロス)】を叩き込んで即死させる。それを防衛終了まで永遠とエンドレスに繰り返すのだが、その立体機動が兎に角厄介なんだ。

 

 僅かな気の緩みで木に激突する。

 木に投げた腕が標的を逸れる。

 軌道は上手く行ったけど刺さらなかったり、木の強度によって突き抜けたり引っかかったり。

 

 限られた時間の中で瞬間的に標的の状態を判断して優良な樹木や部位を選出してそこに狂い無く力み無く的確なタイミングで腕を投げるという、脳が疲れ果てる作業の連続。

 

 瞬間的な判別は工場での検査経験を応用できるし、そうした苦行にも耐性がある。

 …が、それでもバカでも宇宙人のアッパレ技術で肉体が健康に保たれていても(よくよく考えたら一日中椅子に縛り付けられてて床ずれしてない時点で異常)やっぱり当然に精神は疲弊して行く訳でして。

 

 それを癒してくれるのが1日に一度のライザさんタイムなのだが。

 

 「………ごくり」

 

 目の前には逆バニー姿のライザさん。

 こないだのブルマやナース、その他諸々のコスプレもヤバかったが、あの時は正直半分脳ミソ死んでたから死体と性獣みたいな反応しか出来なかったのだが、今回は作業に慣れた事と休み明けでまだ精神的にゆとりがあったからか、マジマジとその姿を拝む事が出来た。

 

 薄ぼんやりとした電子機器の光に照らされる裸体。

 ペレさんとの関わりを断ち切られてからはずっとお世話になっているかけがえの無い女性。

 

 性欲に脳が焼かれる。

 だが同時に、随分と遅れて違和感に気付いた。

 

 思い起こせばこの間のブルマコスの頃から慣れ親しんだ無知無恥のムチムチライザさんとは明らかに反応が違っていた。

 恥じらいと屈辱の表情や仕草で要所を隠す立ち振る舞い。小さくて可愛らしい桜色の唇がぷるぷるしてる姿がまたエチチでイロイロとイライラとしたりしなかったりしたのだが、交渉中の反応とか、事後の素っ気なさだとか。

 

 明らかに、ライザさんとは………!?

 

 「ーーー座長…さん?」

 

 まさか、と思うと同時に『間違いない』という確信あって。それは彼女の愛らしい唇の歪みが、その事実を肯定した。

 

 「う、うぅ………!!」

 

 抱きつかれて肩を噛まれる。

 痛いと柔らかいと気持ち良いが同時に味わえるトリプルセット、今ならお得な3.980円(サンキュッパ)! みたいな現実逃避が頭の中で流れたし、多少マシとはいえ今の俺には他人を気遣えるほどの余裕は無い。

 

 …無いのだが。

 

 「うぅ! うぅ〜〜〜〜ッ!!」

 

 彼女は間違いなく、俺の家族だったから。

 

 疲弊した脳ミソを騙しながら、なるべく優しくその細い背を抱いて、頭を撫でたんだ。

 

 

 ◆

 

 

 どうにも、座長さんはあの事件のせいで二重人格になってしまったらしい。

 

 天真爛漫でエチチ大好きなライザさんが身体の主導権を握っているのだが、1日の中のごく僅かな時間だけ地雷座長としての人格が浮上してくるらしい。

 

 ミレンは精神とかその辺りの知識が豊富で、俺の介護要員として地雷座長(タダ飯食らい)を呼び出して「消えたくなかったら働け、身体でなぁ!!」をリアルで強要したらしい。

 

 実の兄相手ならまだしも人様にそんな事をするとか、どんなクソ親に育てられればそうなるんだって言うか俺のオカンだったよね本当に申し訳ない。

 カチカチになったまま制御不能になったアレを片手で押さえて誤魔化しながら謝罪して、必死に泣き声を押し殺す座長さんの背中を撫でる。

 

 「我ッ……我、は!」

 

 「怖かったよな、ゴメンな」

 

 座長さんは小さい。

 いや、一部は大きいのだが全体的にはやはり華奢で、腕なんか簡単に折れそうな細さ。

 それなのに胸に感じる体温はどっしりと柔らかくて、軽いのに大きくて。

 

 単純に言って、女の子なんだよ。

 

 …嫌でも反応する我が息子。

 な〜んで40目前でこんな元気なんだ俺。

 

 まぁなぁ?

 ヤッた相手だし? 柔らかいし? 匂いも好きだし? あの最悪なブッコロ関係だった相手が俺の腕の中だし?

 

 仕方のない要素は星の数ほどあるんだが「ごめん」とぬかしながらニンニンビンビンとか本当に人間としての底が知れるよねとか。

 そんな事をぐるぐると考えながら座長さんが落ち着くのを待った。

 

 

 ◇

 

 ◇

 

 ◇

 

 

 「…あの、ありがとう」

 

 泣き疲れた彼女をあやしながら、言葉を紡ぐ。

 

 「俺の世話をしてくれた事もそうだけど、座長さんがしてくれた訓練のおかげで助かる事が多かった。何というか…出会ってくれて、有難う」

 

 「…棒」

 

 「ん?」

 

 「棒を、立てながら、言う、台詞では、ない」

 

 「あ〜…いや、これはホラ、あれだ。座長さんがエロ過ぎーーーぃてててててて!!」

 

 たぶん、血が出てる。

 (´•̥ ω •̥` )

 

 「なんか最近やたらと身体が元気なんだよ、ホントに中学生かってくらい制御が利かないんだわ、悪気は無いんたわ。ほんとうにスマーーーんぐッ!?」

 

 あ………。

 

 「お礼、貰う」

 

 あ〜。

 

 「………ごめん、我なんか、お前の、ぐッ!?」

 

 スマン、コマちゃん。

 そんな事を思いながらする10年ぶりのキスは。

 鉄臭い自分の血の味がした。

 

 

 ◇

 

 ◇

 

 ◇

 

 

 「くっそエロい」

 

 「…死ね」

 

 「だってお前エロ過ぎなんだよ」

 

 「あー! もぅ! 五月蝿い、ヤツ、死ね!」

 

 一戦交えた後のイチャイチャタイム。

 相変わらず口が悪いのだが、態度が甘々で逆に可愛い。

 なんだこの生き物は。

 可愛いが爆発しておる…ごくり。

 

 予想外の中断()を挟んだのだが、その甲斐はあった。

 

 「フィールドは、並列…使いまわし、基本的には、同じ空間である、これを、前提とし、過去の、データを、重ねる」

 

 「ハッ!? マジか座長さん天才!! こんな美人で可愛くてエッチがうぃいでで! スマンって! スマン!! いや本当にこんな素敵な人が居たら褒めるやろ? 本当に感謝してるからの空回りなのであって悪気は無いぃぃぃぃ痛いってマジで血が出るほど噛んじゃダメだろッ!!」

 

 態度の軟化した座長さんと『だいす』の話題で盛り上がった。彼女の言う通り、過去に浮遊外装を投げた樹木に対して優良・良・可・不可とランク分けしたデータを重ねる。

 

 優良な樹木は腕を投擲した際の命中率や爪を引っ掛けて機体を引っ張る為の強度が十分にある、不可はその逆といった具合で使える木に印を付ける。これにより俺の瞬間判別作業の負担が大幅に軽減した。

 

 「…どうせ、この程度、お前の、ペレさん…とやらが、機能して、いれば、簡単に、処理した…」

 

 「そうかもな」

 

 ーーーけど。

 

 「けど、実際いまココにペレさんは居ない。俺もレンもミレンもギリギリの状態で回してて、こんな当たり前の改善策に気を配る余裕が全然無いのが現状だろ? ………だから本当に助かった。座長さんもライザさんも、他に代わりなんかいない大切な人だと思ってる」

 

 余計な言葉なのかもしれない。

 けれど人は話さなければ、関わらなければ決別も和解もない。俺と座長さんは既に面倒だとか対人怖いとか、そんな事を思えるような距離じゃない。

 

 嫌いな部分もあるし、分かり合えない所もある。

 それでも、歩み寄りたいと思えるだけの魅力が彼女にはある、それを知ったから。

 

 「んー。ライザさんと一緒に遊べたらこのクソゲーも少しは楽いんだろうけどなぁ…」

 

 防衛ミッションなんか特にそう。

 一人と二人では効率は段違いだし、負担も軽減されて良い事尽くめなんだ……が?

 

 「いいのか!?」

 

 目隠れ前髪の下に、彼女の瞳が光って見えた。

 そんな気がするくらい嬉しそうなその様子に。

 

 「へ? いや、当然やろ?」

 

 何か違和感を感じながら頷いた。

 

 ーーーその結果が、こちら。

 

 

 借金合計『300.253.999えん(三億円)

 

 

 盛大に、借金と毎月のノルマが膨れ上がりました。

 借金生活当初の約2倍………うふふ。

 死んだな俺。

 ここは賽の河原なのかしら。

 

 なんで、下手な奴隷より働いてるのに借金ばっかり増えんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 ウワアアァァ 三三(ノ இωஇ)ノ

 





 【太陽(サン)・進撃無双】


 『立体機動機構を駆使し、襲い来る巨人の群れを1匹残らず駆逐せよ!! 貴様こそ! 進撃一の無双者よぉ!!』
 

 1作目の『太陽・進撃無双』は発売当初あまり知名度はなかったが、2作目からは後にモンハン2で使用された疑似没入システムを試験的に取り入れ、上位時空工学と現地応用化学の発展に大きく貢献した。

 当然ユーザーの関心は集中し、『太陽・進撃無双2』は1年間の国内累計販売本数1.000万本を達成。その後も定期的に続編や拡張ソフトが発売されており、新たなジャンルを確立した。

 ◇

 原作は圧倒的な力を持つ巨人とそれに抗う人間たちとの戦いを描いたダーク・ファンタジー漫画。

 作者の地元の大分県日田市は本作品の10周年を記念して、銅像を設置するためのクラウドファンディングを募り、翌年の11月には大山ダムの前に「実寸大超大型巨人神像」が建造され、

 「Japanese is crazy(日本人は頭がオカシイ)!!」

 海外ではそのような見出して取り上げられた。
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