ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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56.【king of kings『王』】

 

 ○月○日 雨

 

 

 「空耳クラブって言う深夜番組があったんだわ」

 

 いつもの座席。

 いつもの空間。

 いつも通りのアシガルに乗って。

 

 「内容はたま〜〜にエロい話があったりなかったりするだけで、子供からすればそんなに言うほど面白い番組じゃなかったんだけどな?」

 

 馴染みの訓練施設で歩行動作の確認から。

 

 「…いや、正直に言うと番組の内容なんてほとんど覚えてなくて、外国の歌が日本語に聞こえるのを面白がってた事くらいしか覚えてないんだが」

 

 足回りは正常。

 ここで異音や指先に感じる負荷の違いがある場合は機体のステータスを修正込みでゼロ点に調整して、それでもダメなら整備班に連絡しながら不具合箇所を特定する。

 

 「オープニングが凄いんだよ」

 

 人間もそうだがロボも足。

 足が良ければ大体行ける。

 足が繋がるその先は。

 

 「尻なんだわ」

 

 尻から胴体、コアを中心として胸部から腕や頭部に繋がる、一連の美しい外装配列。

 

 「メッッッチャ、美尻な女の子達がお尻ダンスしてんの。深夜の時間帯でさ、親は寝てるじゃん? 部屋の電気消して、音量は最小にして、絶対にバレないように頑張りながら心臓をバクバクさせながらお尻ダンスを眺めるのよ」

 

 ゴイン、ゴイン…と、戯れにアシガルのケツを回す。

 うむ、楽しい…!!

 と言うかこの動作めちゃんこ入力と稼働がキレイに繋がったな…脳内領域にメモしとこ。

 

 「大人になってから調べたらな? なんでもあのお尻ガールズはお尻自慢の応募者達を番組のエライ人達がお尻の美しさだけを基準に選考して選び抜かれてるらしくてな? 時代毎に色んなお尻美女やお尻映像のバージョンがあったらしいんだわ」

 

 ケツのキレを意識しながら剣を振るうと、流石に間違いだったらしく普段使わない部分の関節がギシリと呻いた。

 

 「納得させられたよ。そらね? ただエロいだけだったらハイレグポリスでも良かった筈なんだよ。なのに、俺の脳ミソに焼き付いてんのは空耳クラブのお尻だけ」

 

 たぶん、無茶な挙動のせいでギシった関節が痛かったんだろうな? アシガルがガチギレの手前まで来てる。なので猫を撫でるような意識で何時もの剣舞へ動作を変えた。

 

 「思うに、熱意なんだよ」

 

 縦、手首を返し、腰溜めから右横、逆袈裟で左上に切り上げて、再度縦に叩き斬る。

 

 「エロいだけじゃ無くて、楽しんで、本気でエロいを追い求める。そういう情熱ってのはさ、やっぱ子供にも届くんだよな」

 

 本気で楽しむ。

 楽しんで「あーたのしかった」ではなく。

 

 もっと、もっと、そう願う。

 

 願って、夢見て、その夢を叶えるために行動する。

 それはたぶん、大人だけが味わえるーーー。

 

 

 

 

 「ーーーペレさん」

 

 

 

 

 それは夢だった。

 自分の声で目が覚めた。

 その【夢】が切っ掛けだった。

 

 夢の中にはペレさんが居た、ような気がした。

 

 会いたい。

 単純に、単純に、単純に。

 ただ会いたいと、心から思った。

 

 俺が子供だったなら。

 無力で無学で世界を知らない、怖がりの子供だったなら、考える事すらできなかったと思う。

 

 けど、俺は。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 「でもこれ、理論じょーの話なんだよ?」

 

 後部座席にすわってポッキーをかじりながら、レンが不安そうに眉尻を下げて言う。

 

 「理論で出来るなら現実でも行ける筈やろっとぉ!」

 

 襲いかかるタイキングを躱し、ポチの鉤爪が敵の鱗に似せて造られた緋色の外装を殴り裂く。

 タイキング系の敵はオイルが多くて嫌なんだわ。

 ポチは外装が白いから余計に嫌。飛散する赤黒い粘液を避けながら陣地の中央に位置取った。

 

 今回はポチなのでオジボニさんは当然としてレンのフォローも無い。正直今避けれたのは実力よりも運が勝るし、回避運動後にしっかり四つ足で踏ん張ったつもりが、後ろの左脚の脚力が足らずにバランスを崩す。

 

 普通ならヤベぇ。

 余裕で確殺されるミスなのだが。

 

 「すみませんッ!!」

 

 ここが好機と跳ね回るタイキング、そこに横合いから緑の轟剣が突き刺さる。

 

 「いいって、むしろ任せて悪いね」

 

 「いえ! コレが俺ちゃんの任務ですので!」

 

 …くっそ生真面目やのぉ。

 こんな良い子があの工場にいたら…。

 

 会話の相手はあの伝説のラジソード28号を操る『俺ちゃん』さん。ラジソード28号は知っての通り、あの大昔の超有名アニメ『ラジ剣28号』のオマージュで、その完成度は座長さんの愛機『クレイジー・マイン』に匹敵する。

 

 

 

 

 

 彼との出会いは驚きの連続だった。

 

 『あの! ヨシム=ラヒルさんですよね!?』

 

 メチャクチャな、もはやアニメから抜け出して来たような美しい出来栄えのラジ剣さんがラウンド3に横槍入れてきた時はそらぁもおビビったんだが、

 

 『この機体! 貴方のおかげて完成したんです!! ずっと会ってお礼が言いたくて、それでクラン『C.C』さんからの共闘依頼を見て押しかけてしまいました!!』

 

 座長さんの復帰戦となるラウンド3終了後、彼女が始めたのはクエストのレイド化だった。

 

 『そもそもが、間違えて、いる』

 

 このラウンド3は昔から地雷クエストとして有名だったらしい。タイキングの耐久力と数の暴力、そして何より報酬の少なさ。

 普通のプレイヤーならクリア不可能だし、俺とまでは行かなくとも、それなりに火力があっても弾薬費用を考えれば赤字も赤字真っ逆さまなゴミ報酬。

 

 そのせいで単騎防衛を余儀なくされていたのだが。

 

 『報酬なら、ある。雑魚に、とって、垂涎の』

 

 内容は教えてもらえなかったのだが、座長さんの用意した報酬が良かったのか、共闘募集してすぐに数機のオルボーンがラウンド3に参入して、その内の一機がこの『ラジソード28号』だったのだ。

 

 なんでも、俺が破壊し尽くしたスライムくんのドロップアイテムがラジソード28号の特殊中核外装を作るために沢山必要だったらしく、市場の最低価格で大量売却を続けた俺のおかげで完成出来たと。

 

 最低価格、だったのか……、。

 ペレさんもっとふっかけてくれよ。

 そう思ったのは内緒だし、結果的にこんな素晴らしい仕上がりのラジ剣オマージュに出会えたんだから、文句なんか言ったらバチが当たる。

 

 

 

 「叩ぁ〜き壊せっ♪」

 

 「てーんしーの輪ぁか!」

 

 「握ぃ〜り潰せっ♪」

 

 「あーくまーの尻ぃ尾!!」

 

 「「汚れたお手手で触るなリモコン♪!」」

 

 「ラージ剣」「ラ〜ジ剣」

 「「どーこまっでも〜♪!」」

 

 「ザンと」「斬り裂き」

 

 「ストンと」「切り落とし」

 

 「スッと」「突ぅ〜き刺せッ!」

 

 「らー↑↑↑」「じー↑↑↑↑↑」

 「「けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん♪!」」

 

 「「にじゆはっちごぉぉぉ!!」」

 

 唐突に歌っても律儀に合わせてポージングまでしてくれる。うっは、ほんともぉ最高で本当に凄い。

 

 ーーーラジコン、ラジコン、ラージーコーン。この番組は日本超ラブラジコン普及推進委員会の提供でお送り致します。なんて、最後の〆まで完璧だし。

 どこからどう見ても別格の人材だわ。

 

 正直に言えば今でもキツイのだが、若い頃に出会ってたら劣等感で会話できなくなってるレベルのハイスペック人間なんだよ。礼儀も正しくてオジさんを立ててくれるとか、ほんと怖いくらい優秀。

 やっぱ凄い人には年齢なんて関係ないんだよな。

 

 そんな事をぼんやり思っていたのだが。

 

 俺とラジソード28号の隙間を抜けて、木陰から飛び出して来たタイキングにハートレーザーが炸裂した。

 

 「また遊んで! ダメだよ!?」

 

 援護&お説教はいつものアイドル、デューサ銘刀さん。

 俺ちゃん君とはあの伝説のドジラ戦で共闘して、それから意気投合した相棒関係なんだとか。

 いや…この女性(ひと)俺ですら知ってる有名人なのだが。

 

 それにしてもアイドル…アイドルねぇ?

 いや羨ましくはないよ? 俺にはアイドルよりもアイドルな口の悪い美人さんがいるし、むしろ気疲れとか色々と大変だろうなっていう哀れみすらある。

 まぁ本人は神経が図太いのか、まるで気にしてなさそうだけど。

 

 …と言うかな?

 今ラウンド3に居るのってドジラ戦で活躍したクランは全部来てるんだよな。

 なんだろう。

 この、そこはかとない疎外感(ぼっち)

 

 「にーにー?」

 

 レンの声で正気に戻る。

 

 「スマン、そんじゃ頼むよ?」

 

 「任せてください!」

 「オッケーだよ!」

 

 仲良し夫婦に周囲の警戒を任せ、俺はポチの操作に意識を集中させた。

 

 

 ◇

 

 

 座長さんのおかげでラウンド3は変わり始めた。

 ただの防衛クエストがレイド戦へと変化して、守る物も開拓村という点から防衛ラインという線に変わって。

 

 ーーーけど、足りない。

 

 いやね? 彼らは素晴らしいんだよ?

 

 工場時代なんか俺が必死で仕事を最適化して作った余力を「頭が痛いので3日ほど(土日祝含めて5日)お休みします♡」とか、終業の1時間前から掃除と日報に入って5分で終わる作業にキッチリ1時間使い切る正社員の大先輩とか、そんなオワタ\(^o^)/環境を知ってる我が身からすれば破格なんだよ?

 

 各クランのリーダーさんは会話が通じるし(会話が通じる!!)俺よりも遥かに効率的で論理的な最適化をしながら仕事が出来る人間だし、俺に寄ってくるパリピやウェイ系の人種を遠ざけてくれる配慮まで完璧。マジで完璧過ぎて恐縮しちゃうんだが、そこは置いといて。

 

 結局の所、問題は1つ。

 ペレさん不在の現状を打破する為の力。

 【火力】が絶対的に足らない。

 

 『ん〜〜〜〜〜…つまり、友軍機の火力を上げたいんだよね? それなら一応方法はあるんだけど…』

 

 珍しく歯切れの悪いレンが寄越したデータは対【滅・トール】戦で俺のアシガルが見せた挙動。

 

 

 ◆◆◆開戦のロックオンアラート。

 それすら待ちきれぬと『K-アシガル-250』が胸部中核外装のアギトを開く。

 

 【Loooooーーーーーーーー!!】

 

 それは咆哮。

 己を誇り、仲間を鼓舞する獣の願い◆◆◆

 

 

 確かに、そう言えばなんかアシガルが唐突に吠えてビビった記憶はある。

 

 「にーにーが? どぉぉぉぉぉぉぉぉっしても、愛しのスイートナンバーワンハニーである所のペレさんに? 会いたい会いたい会いたいなぁぁぁぁぁぁって! 言うんなら? レンちゃんだって応援しない訳にはいかないんだけどね? けどこれ結構危険なんだよ? ミレンにバレたら絶対に邪魔されるんだよ??」

 

 聞けば、あの咆哮にはオルボーンフレーム機体の火力を上昇させる効果があるらしい。

 

 だが、人間があの状態(戦闘モード・開放)を制御するのは至難の技であり、それ以前に拘束具の(くさび)を抜くだけでも本来ならいちコアパーツでしかない人類には許されない行為なんだとか。

 

 「ミレンはさぁ、俺の事畜生(馬車馬)としか思ってない節があるよな?」

 

 「きゅーわりくらい、そう」

 

 「アイツ、俺の事このままラウンド3で1年くらい働かせる予定なんだろ?」

 

 「3年だよ?」

 

 「キ・チ・ク・・・!!」

 

 危険がどうだの、許される許されないだの、マジでどうでもいいんだわ。

 俺はこのラウンド3(地雷クエスト)を叩き壊す。

 壊して進んで、ペレさん復活の手がかりを手に入れる。

 そんでミレンにザマァする。

 

 その為に、俺はポチを選んだんだ。

 





 世界の至宝、レンちゃん教えて!
 なぜなにコーナー٩(。˃ ௰ ˂ )وイェーィ♡
 どんどんパフパフ〜♪♪♪


 よい子のみんな、こんにちは!
 最近おっぱいオバケのせいで出番が少なくなったイライラレンちゃんだよ☆ミ 座長しね☆ミ

 今日はみんなにラウンド3の矛盾点を少しだけ解説していくから、コアの中身をカラカラ回しながらついてくるんだよ☆ミ



 タイキングについて。
 
 タイキングはオルボーンと同じ生体兵器に区分される存在だね。細胞があって、血が通って、自分の骨と筋肉で戦う兵隊さん。
 グロ系が苦手な人には『だいす』のインターフェイスが自動的にオブラートしてくれるのもあるんだけど、にーにーの場合はもっと深い場所から間違えてて、それでにーにーにはタイキングが魚型のロボに見えてるんだ!



 タイキング・シリーズについて。

 にーにーは頭が本格的にホカホカなので違いがサッパリわかってなかったんだけど、それぞれ全然特徴が違うんだよ。

 まずソルジャー個体。

 この子の特徴は部下の数。
 にーにーは格下を認識しない=存在否定の原理(レンちゃん命名の特殊コア技能【グロンガン】が発動したんだ! 愚者のグに狼でロウ、お目々のガンなんだけど、グロウガンよりグロンガンの方が格好良くてチュキだからグロンガンにした!!)の能力で無効化したんだけど、百匹の部下を使った物量作戦が得意な個体だね、敵の主戦力。

 次にマジシャン。

 この子の部下は十匹。
 ソルジャーに比べれば涙目みたいな数なんだけど、その十匹が一斉に『マッドスプラッシュ(泥遊び)』の魔法を使って攻撃してくるんだ! 直接的なダメージも大きいけど、副次的に『速度低下』を引き起こす地形変化がいち番厄介なんだよ!
 にーにーはグロンガンの能力で全部無視してたけど。

 次、シーフ。

 シーフはレーダーに映らないから、防衛線をすり抜けて拠点に直接攻撃したり、死角から『跳ね回る』攻撃で奇襲してくる厄介者………なんだけど。
 にーにーのケルベはそもそもレーダー機能オミットしてて、にーにーの嗅覚頼りで索敵してたから。
 普通にザコだったね。魚だけに。

 最後にヒーラー。

 広域全体回復使いなんだけど、にーにーは一撃必殺だから存在自体が無意味だった可哀想な個体。レイドになってからは他と同じように機能してるけど…。


 こんな感じでラウンド3の実情を紹介してみたよ☆ミ

 いっぱんピーポーのコアパーツさんがここの開拓地争奪戦を『地雷クエスト』呼ばわりした理由がわかってもらえたかな?

 今日はいっぱい書いて手が疲れた。
 疲れたからポッキー食べる。

 あ、そう! 最近お気に入りのよーかいスケッチのポッキーがコンビニに売ってたんだけど、ポッキーの表面に妖怪が隠れてるんだよ!!
 これはレンちゃんでなくては見逃してたね。
 (`・д́・;)ごくり。

 そんな感じなの。バイばーい(@^^)/
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