ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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57.【king of kings『殲』】

 

 

 【フレーム(frame)】

 この単語には複数の意味がある。

 

 

 (ふち)や枠ーーーつまり。眼鏡の縁や額縁といった、取り囲み固定する物や、テレビ・映画などの画面を指す言葉。

 車や建造物の骨格を指す場合もあればボウリングの区分として使われる事もある。

 

 ゲーマーとしての目線であれば1秒を60分割した数値の単位として扱われる事があり、他にも様々な場面で様々な意味合いに姿を変えて使われる奇妙な単語。

 

 ーーーさて。

 

 今回はその【フレーム】についての話となる。

 『だいす』に於けるフレーム、その意味の。

 

 

 ◇

 

 

 『だいす』と呼ばれる世界でのフレームは人類が扱う単語の中では車や建造物に対する場合が最も近い。

 

 即ち骨格。

 各パーツを取り付ける土台となる部分。

 

 だが『だいす』のフレームには車と大きく違う特徴がある。DD兵器のフレームは外装の影響を受け変化するのだ。

 それは性質、形状、質量にまで及ぶ。

 ラジソード28号の変形機能は特に顕著な一例なのだが、それよりも身近な実例がある。

 

 脚種変更。

 

 ヨシム=ラヒルの日記に書かれたように、オルボーン(DD兵器全般)は脚部の外装を変更する際に内部のフレームが変容している。

 

 ヒトアシ形態のアシガルから、ヨツアシ形態のポチに換装した際の変化は殊更にわかりやすいだろう。

 

 アシガルの胴体がポチの頭部として機能し、アシガルの時に脚として機能していたパーツはポチになった際には胴体から下半身に至る(前足を除く)までの大部分に広がり、それまでとは全く違う存在に変化している。

 

 何故?

 その問に対する答えは無い。

 

 世界に光があるように、引力があるように。

 ただ現象として受け入れる以外に無い世界の理に属する部分なのだ。

 

 だが、解明されている部分も少なからずある。

 例えば彼らの意識。

 

 ヨシム=ラヒルは現在3つの脚種を使い分けている。

 

 アシガル。

 ポチ。

 ケルベ。

 

 この全ては同一存在であり、同じ魂魄で形成されている。しかし、表層的な意識…即ち自我は個々によって異なる。

 

 アシガルは好戦的。

 ポチは好奇心旺盛。

 ケルベは常に空腹。

 

 記憶を共有していても、それは夢や前世と言ったその時の『己』とは別の生命の思考や感情であり『己』とは違うとの認識があった。

 

 

 ◆

 ◆

 ◆

 

 

 

 

 

 ○月○日 雨

 

 

 「確かに…言われてみれば?」

 

 システム・戦闘モード・開放。

  ↑

 これを実行した事があるのは、よくよく考えてみればヒトアシ形態の時のアシガル君だけだった。

 

 「そこが、決め手なんだよっっっ!」

 

 ふんすっ!

 相変わらず訳がわからんのだが、レン的には重要なポイントだったらしい。

 

 ご機嫌で「ふんす」「ふんす」するのは勝手なのだが、膝の上で跳ねるのはやめてほしい。

 お前はタイキングかと。

 ゴリゴリお尻の骨張り装甲で俺の膝を破壊してくる新種のタイキングなのかと。

 

 後ろの補助席が空いてるのに「デバイスの接続コードが届かないからムリなんだよー!」なんて、理由を付けて俺の膝に乗っかる小娘。

 

 まぁ最近は遊んでやった記憶もないし、寂しかったんだろう。そう思って許容したのだが、既に痛みが脳にビリビリ来てて後悔しか無い。

 

 「あーもう、なんでも良いからハヨしてくれ」

 

 ゲームに集中すれば多少の事は気にならなくなるんだが、ポチを伏せさせてからの待機時間が長いんだよ。

 

 周囲では『俺ちゃん』君を追いかけて来たピカリちゃんおじ様のゼロノアが凄まじいプレッシャーでデューサさんと、そのついでにタイキング・シリーズを威圧してる。

 状況が硬直してる今の内に話を進めてもらいたいのだが。

 

 「やってるし! レンちゃんだよ? 世界最高の妹属性がぷりぷりキュアキュアしてる、美少女天才博士のレンちゃんなんだよ!?」

 

 「はいはい」

 

 「ンぬぅ〜〜〜!!」

 

 美少女のうめき声じゃねんだわ。

 

 「あ」

 

 不意にレンの動きが止まり、気配が変わった。

 

 「ん?」

 

 「…に」

 

 「どうした?」

 

 妙な不安を感じでヘッドギアのロックに手をかけたのだが。小さな手がそれを邪魔した。

 

 「この、まま、で…お願、イ」 

 

 「レン?」

 

 「少シ、スペック、、、ナ、イ

 

 何時もの、愛嬌のある声に、機械的な合成音が混ざり。

 ぞっとするような違和感が胸の中心からドロリと溢れた。

 

 俺の手に触れていた小さな手。

 その、柔らかく感じていた■の手触りが、まるで硬質な樹脂のように感じて。

 

 体温が無い。

 いや確かに有る。

 鼓動が無い。

 いや間違いなく有る。

 

 ………だが。

 

 「ニ…ニ………」

 

 ヘッドギアに遮られた視界。

 そこに存在する『物』が、何なのか。

 

 いままでの『当たり前』が。

 前後の脈絡を切り捨てたような唐突さで(おぞ)ましい冷たさの異物に切り替わった。

 

 「………は?」

 

 コレは、なんだ?

 不可思議な、人を模倣した、偽物の。

 

 ーーー記憶が混濁する。

 

 嬉しそうな■。

 目の前にある大型筐体。

 筐体には『にはんぢんコボットだいすち』の文字。

 

 『今日からいっぱい戦えるよ! カイシャ? には2ヶ月前に辞表出した事にしといたから、安心してね!』

 

 2ヶ月前に……辞表を、出した事に(・・・・・)しておいた?

 黒い影で見えない顔。

 嬉しそうな声、見通せない真実。

 

 「お前は……」

 

 ーーーそもそもが、おかしい。

 

 記憶にある■はふわふわ巻き毛の金髪で碧眼。

 名前は『ヘレン』と言う。

 俺も両親も先祖代々日本人。

 俺の親は◆に横文字ネームをつけるようなトリッキーな人間ではない。

 

 「………だれ?」

 

 俺には存在しない。

 

 『俺には歳の離れた【■】なんか存在しない』

 

 ---そうだ。

 ---『僕』はだまされていたんだ。

 

 音を立てて、歪められていた認識が正しい(・・・)現実を思い出す。

 

 ---僕の『妹』は一人だけ。

 ---コイツは偽物だ。

 ---『妹』を偽る、悪辣なる侵略者の手先。

 ---こわい。

 ---危ない。

 ---今すぐ、排除するべきだ。

 

 ---ひと言で殺せる。

 ---簡単だ。

 ---こんな紛い物の人形。

 ---僕に逆らう人形なんか。

 ---お前なんか。

 

 「お前………なん、か」

 

 ---殺せ、殺せ、殺せ…!!

 

 「に、ぃ…」

 

 

 ◆

 

 

 失敗した。

 

 たぶん、ポチへの不法なアクセスがトリガー。

 きっとこの展開を予測していて。

 その上であえて、泳がせていたんだ。

 

 認識改変が、崩れた。

 流し込まれるデータが急増して、素体に付属しているデフォルトの擬態機能すら維持出来ない。

 

 相手はあのミレンだもの。

 それはそう。

 

 どこかで甘えてた。

 なんとかなる。

 きっと許される。

 結果さえ出せばだいじょうぶだって。

 

 ポチと接続して、Round3を陥落させて、にーにーが喜んで、レンちゃんを、すごい、すごいって…言う。そんな、未来が、きっと、ある。

 

 そう思う事だけが、レンちゃんの。

 

 本体(ペレさん)』で無い『端末(レンちゃん)』の、ホンモノでは無いモノの、たったひとつの…どうしても、ダメだとわかってたって、それでも、捨てられなくて、願わずにはいられない………そんな…未来、だったから。

 

 「お前は………だれ?」

 

 もう…取り戻せない。

 こぼれた水は、戻らない。

 にーにーの認識から『(ヘレン)』が消えた。

 

 あぁ。

 どうせなら、座長が良かったな。

 身体をつなげて、心をつなげて。

 にーにーの助けになって。

 にーにーに頼ってもらって。

 空っぽな心を強引に埋めてもらえて。

 

 

 もっと、もっと。

 にーにーと、遊びたかった。

 

 「お前………なん、か」

 

 もっと、にーにーと、いっしょに。

 …遊びたかったなぁ。

 

 

 ◆

 

 

 「お前………なん、か」

 

 排除。

 得体のしれない物を遠ざけ、不浄なる物を吐き捨てる。

 人類が種を存続させる為に繰り返してきた正常な思考。

 

 ---あぁ悍ましい、敵の策略に嵌ったんだ。僕とした事が、なんて恥ずかしい。

 

 間違いは正して、愚行には蓋をして。

 早く、訂正して、世界を、正常に戻さなければ。

 

 そんな混乱が、脳の…いや、魂の表層で荒れ狂う。

 

 ーーーけど。

 

 

 

 「お前………なんか、ふ………ふと…った?」

 

 

 

 「ーーーへ?」

 

 「いや………ほら。たぶ…んアレ、だ、ポッキー………ん、おか、しぐぉ…食いす、ぎ」

 

 「………はぇ?」

 

 違うだろ?

 そんな、馬鹿げた話ではない。

 今は、偽物の処刑を。

 

 「う……ぐ、う、ぁ〜重…てぇ。ほらこ、の腹…肉? 前、は…もう少しす、す、す………ストーンて、感じの? ぷにぷに、だったの、に……。今は、ココココ、レ…育ち、過ぎだろぅぐ…」

 

 そんな筈がない。

 わかっている筈だ。

 コイツは妹を騙って僕を---ッ!?。

 

 音が聴こえる。

 誰かが用意した破滅へ至る『声』とは違う。

 春の日差しにより、氷が解けて、歌うような。

 

 「お前は…本当………ぐぐ、に。どう、なんだぎィ!! うぐ、どう、なん、だろ……な?」

 

 伏せた機獣が頭をもたげる。

 【誰かの都合で創られて】

 

 「頭は良い…癖に、生活態度、最悪…でさ」

 

 四肢に力が漲り、唸るように低い場所から、ゆっくりと…出力が、高まる。

 【誰かの都合で操られて】

 

 「床で…寝る、コタツで溶け…る、飯を食えば散らかして、お手伝いさんがいなけりゃ………家中、ゴミ屋敷になってる…ずぇ?」

 

 フレームを拘束する杭に、亀裂が走り。

 【誰かの都合で嘘をつく】

 

 「菓子ばっか食べて、その癖…食えもしない量の、飯をおかわりして、挙句に残して! 左手でお茶碗を持てって、何回言っても知らん顔で犬食いしやがるし、本っっっ当に食べ方が、そう! 汚いんだ!!」

 

 「に………あ、あの…?」

 

 【巫山戯(ふざけ)るなよ?】

 流れ込む。

 コアパーツであるこの俺に、だからこそ。

 【怒りが!】【殺意が!!】

 

 「「あの」じゃねーのよ、その自堕落な態度の結果がこの脂肪なんだろぅが!? もっと俺の言う事を聞けよ!」

 

 【レンは、(ポチ)を】

 キラキラの衣装を纏い、巨大なハンマーを携えて。

 「いっぬ」とやらを許さないと、そう叫んで。

 【倒した個体だ】

 

 「お前は………!」

 

 【何度も何度も叩かれて】

 そうだ。

 【魂魄を矯正された】

 痛かった。

 【誰かの都合で】

 無邪気で、

 【俺の敵を】

 陽気で、

 【決めさせはしない!!】

 腹立たしい!

 

 system update!!

 

 「…俺の!」

 

 半人≠半神(にはんぢん)circuit双魂起動(並列共鳴)

 dd.o『真辺 ヘレン』登録更新………完了。

 

 「ーーー【妹】なんだから!!」

 

【システム・戦闘モード・開放】

 

 

 【Woooooーーーーーーーー!!】

 

 

 

 


 

 

 

 

 咆哮。

 発狂因子拡散(crazy war cry)の発動により戦況は一変した。

 共鳴連鎖(howling drive)が全域のオルボーンを狂わせ、その根幹たるシステムを壊した。

 

 戦闘システムを『起動』から『限定開放』へと書き換えられた魔獣の軍勢。

 

 外装の内側にフD.Dを封じる拘束杭(restraint point)を打ち砕き。

 本来の、或いは未知の【フレーム(火力)】を発揮した一団は、日を追うごとにその数と練度を増して。

 

 

 

 ーーーRound3の陥落は目前に迫り。

 彼女はただ、ソレを見ていた。

 

 未練に瞳を濁らせて………。

 





 次回で【king of kings】決着します。
 いつも読んでくれて有り難うございます。


 次回!
 【king of kings『滅』】
 覚醒のレンちゃん!
 おっぱいがパンパンになってにーにーはパフパフになるんだよっ! んもぉ〜すんごいんだから!!
 (まだ1文字も書いて無いです勘弁してください)

 また見てね〜✧*。٩(ˊᗜˋ*)و✧*。
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