ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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59.【king of kings『O』ver】

 

 シトシトの祭壇。

 

 正しくは『死と使徒の祭壇』と呼ばれる大空間。

 しっとりと常に湿り気を帯びた石造りの地下世界。

 

 空間へ等間隔で配置された篝火のゆらめき。

 その炎に照らされ、苔生した壁面が赤く染まる。

 

 広大なタイキングアイランド。

 その中央に建造された荘厳なるタイキングキャッスルの、その地下に存在する始まりの座標。

 

 偉大なる『だいす』を守る為に遣わされるタイキング・キングの使命はこの暗闇から始まり、そして終わる。

 

 2つの限定された結末で。

 

 「キング」

 

 祭壇、その最上段に座するは鯛の王様タイキングその(ひと)

 眼前に膝まずき、崇めるように。

 頭を垂れるは屈強なる蛇と筋肉の美しきキメラ、蛇ビルダーの長たる賢者。

 

 

 

ーーー宣告ーーー

 

 

 それは彼の、彼だけに与えられた役割。

 頭上から響く轟音。

 鳴り止まぬタイキング・シリーズの悲鳴と嘆き。

 

 もはや、これまで。

 タイキングは負けた。

 完全に、ただの一個のコアパーツに。

 その魔王が生み出したる魔獣の群れに…。

 

 「横内」

 

 タイキングの声は、しかし。

 ただただ厳格であった。

 姿形は老いぼれ、干からびた乾物のように薄く脆い。

 しかしその瞳は篝火の生みだす炎の、その光すら跳ね除ける力を湛えて。

 

 「我が腹心、老蛇ビルダー横内ジェームス」

 

 「ははっ、これに!」

 

 「貴様には、苦労をかけた」

 

 その言葉に、まさかと横内の思考が止まった。

 あのキングが。

 傍若無人で、愚かで、スケベで、子供をそのまま大きくしたような自己顕示欲の怪物が。

 

 「ワシに遣わされた蛇が、お前で良かった」

 

 嫌な記憶ばかりだ。

 

 無茶な指令に対応するのは知能のある蛇ビルダー。

 その蛇に指示をするのは常にそのトップである横内ジェームス。中間管理職の苦悩すら知らず、与えられた権能で戦果を積み上げ高笑いする雑魚の王。

 

 この結末を何度も望んだ。

 願って、恨んで……それなのに。

 

 「キングーーー」

 

 滴り落ちる液体は。

 唾液なのか、涙なのか。

 

 「ーーー願いを、申されよ」

 

 聞く道理など無い。

 聞いたとて、空手形を切って逃げれば良い。

 

 単純な契約だ。

 タイキングの『だいす』における安寧秩序、その構築の一歩として邪悪なる侵略者の排除を補佐する。

 

 成功すれば良し。

 失敗した暁には、その全てを対価として…。

 

 「自由を」

 

 その言葉に、横内の翁が頭をもたげた。

 視線か重なり、心が震える。

 

 「貴殿の自由を願う」

 

 生きるも死ぬも、闘争も逃走も。

 全てを与える。

 

 それだけが。

 王の名を冠する彼に残された唯一の………。

 

 

 

 

 

 

 ○月○日 晴れ

 

 

 数々と遊んだロボゲーの中での最難関として記憶に残っている敵がいる。

 

 『ナインクロック』

 

 9つの時計をエンブレムとした伝説のオリジナルアームズ。

 アリスの時計ウサギがモチーフとなった純白の機体であり、驚異的な機動力と滞空能力、さらに鬼バズと呼ばれる専用9連バズーカにより桁外れのDPSを発揮する鬼畜の機体。

 

 鬼バズ以外にもミサイル、キャノン、近接武器は広範囲を薙ぎ払う専用ハイパーマナブレードを装備しており、鬼バズを回避した所で簡単に押し潰されてしまう大火力・高命中装備を完備。

 

 前述した通りナインクロックは『ウサギ』をモチーフとした高機動アームズであり、その馬鹿げた火力をプレイヤーの視界の外から超高速で接近して叩き付けてくる機体。

 当時のプレイヤーからは『白い悪魔』の異名で畏れられていた。

 

 一応は倒した記憶があるのだが、もはや何をどうやって倒したのかは記憶にない。

 確かプレイヤーの敗北回数に応じて敵にデバフがかかる仕様があり、そのおかけで勝てたような気もするのだが…。

 

 

 

 さて、ここで俺は考える。

 ナインクロックの強みとは何かと。

 

 火力。

 それもある。

 

 だが、それだけなら超機動要塞『P.O.J(plant of Jabberwock)』の試作機、ジャヴァノートの方が余程高いし、作品をA.Cに限らないのであればキュサノオで鼻水垂れながらペレさんと一緒に攻略した月夜之大蛇だって十分どころか十二分に頭の悪い弾幕と火力を放ってきた。

 

 機動力。

 それは正しい。

 

 以前『絆』で俺とレンのバクゥハウンドが活躍した要因は機動力だった。

 鈍足であり、軍隊行動を余儀なくされる敵MSを翻弄し、ゲリラ戦へと持ち込んで倒す為に活かされる獣脚MAだけに許された素早さ。

 ナインクロックの場合はそのスピードに加えて『空』と言う(CPU)の優位地点から一方的な攻撃を仕掛ける事が出来るのだ。

 

 地形。

 それも間違い無い。

 

 記憶の片隅には市街地だったか、工場の内部だったか。

 少なくとも見通しが悪く高低差の多い場所での迎撃戦を強いられた苦い思い出がある。

 相手はオリジナルアームズ。

 ブースト消費エネルギーを通常スペックの半分とするチート機能で空を駆け回る白い悪魔。同じ土俵での勝負は最初からハンデがあり過ぎる。

 その上相手は優秀なCPU。

 俺に出来る事は狭い地べたを駆けずり回りながら諦めずにコンティニューを続ける事だけだった。

 

 総合的に強い。

 それは間違いないのだが、俺が思うにナインクロックの強さはそれだけでは無いように思う。

 

 

 ゲームデザイン。

 

 

 最近のA.Cは直感的で馴染みやすいコントローラーのボタン配列に加え、簡易的ながらもロックオン機能があり、スタイリッシュでストレスフリーな、とても見栄えのする美しい戦闘システムが構築されている。

 (ついこの間少しだけ遊ぶ機会があって数時間遊んだのだが、あれはもぅ本当にラッキーな一日だった。今度ミレンにおねだりして買ってもらう計画がある位には楽しかった)

 

 ーーーだが、昔のA.Cにはそんな物は無かった。

 

 複雑なボタン操作は当然、FCS(火器管制装置)によってロックオンサイトの大きさや形状が変化する、サイトに敵機を捉えてからもロックオンまでに時間がかかり、その間に逃げられて後ろから撃ち殺される。

 

 そんな状態で武器の選択、EN残量の管理、敵機の把握、地形を掌握、タイミングを見計らって攻撃、敵の攻撃を避けながらーーームリーーーだ。

 

 少なくとも俺には無理ゲーだった。

 それでも、それは過去の話。

 

 今、現在の。

 よく訓練された『だいさー(だいすニストとも)』である俺には当てはまらないーーーと。

 

 ………そんな思い上がりが、どこかにあった。

 それが、今回の敗因だったのだと思う。

 

 

 ◆

 

 

 キリキリと、電子音がコアキューブの内に響く。

 

 「遅いッ!!」

 

 「わかってるのっ!! これでも、精一杯なんだから文句言わないで〜〜〜よっ!」

 

 ピコン!

 

 ロック完了を知らせるシグナルが響くと同時、敵機がギアフロルブースター(首の付け根に巻き付くように設置された計12基からなる大出力の大型ブースター)を発動させポチのロックオンサイトから姿を消した。

 

 「見えんッ!!」

 

 ステージは広大なるタイキングキャッスル跡地。

 倒壊した城の瓦礫を踏みしだき、荒ぶる白狼の咆哮が、虚構の月へと溶けては消える。

 

 闇夜の重い黒雲の隙間、白き天体から溢れた光を弾くは銀なる龍。

 Round3、そのFinal stageを飾る敵の名は『ギアラドス』歯車で組み立てられた真球を繋ぎ合わせて作られた、機械仕掛けの龍なる機神。

 

 『Zuozaaaaaaaaaaaa!!』

 

 大時化の波音のような鳴き声が、豪雨のように大地を叩く!!

 

 「くッ!!」

 

 不安定な足場、夜間戦闘による視界不良、高速飛行ユニットとの戦闘、ままならぬ愛機の運用。

 

 ありとあらゆる要素がヨシム=ラヒルの手足を縛る。

 

 「熱源センサーへの切り替えは!?」

 

 「1分じっとしてたら出来る!!」

 

 「実質不可能やんーーーケッ!」

 

 闇夜を悠々と泳ぐ機龍。

 その口内に見えた光を理解したヨシム=ラヒルが機体を真横へステップさせ、それと同時にヘレンが『全方位中指ミサイル』を発射した。

 

 破壊のレーザーを避けながら放たれた三基の多弾頭ミサイル。その各弾頭が空へ花咲くように、複数の小型ミサイルを射出する。

 このミサイルの長所のひとつに、本体ロックオンの有無に関わらず炸裂地点からもっとも近い位置に存在する敵性存在を自動的に標的とする特性があるーーーが。

 

 「やっぱり…!」

 

 『Zzaaaaaaaaaaaa!!』

 

 機龍が体表に纏う青い輝き。

 ミサイルの尽くが、その光へ届くより早く爆散する。

 

 「龍体電磁パルス…!!」

 

 各種ギアを高速で回転させる事により体内へ取り込んだザ・シークレット・スカイウォーター(タイキング核真希石)が生み出す出力を最大限まで各部位に伝達。

 その際に生じる回転運動をそのまま活かして体表へ電磁パルスを纏うことにより敵性兵器からの攻撃を完全に遮断する戦国龍機システムの集大成。

 

 「…いや、わからん! 日本語で頼む!」

 

 「ばりあー!」

 

 「くっそ理解者!!」

 

 ミサイルは牽制として使えれば御の字。

 残された攻撃手段は。

 

 「………サイト、狭いって!!」

 

 「知ってるのっ!! コレが今の限界だって知ってるでしょ!?」

 

 ポチは『dd.m』=『DD兵器オペレーター(自らの主)』として、ペレの名前がある場所に真辺 ヘレンを上書きした。

 その結果として【システム・戦闘モード・開放】とオジボニ以上、ペレ以下の戦闘アシスト能力を構築したのだが。

 

 機動性能は(コアパーツとして成長したヨシム=ラヒルの操縦系補正込みで)3割減、レーダーや通信、火器管制装置のシステム構築や使用権限に関してはレンに丸投げのバクゥハウンド方式(負担分散)で対応して、それでどうにか動いているような状況だ。

 

 「キタッ!!」

 

 音より早く。

 光へ噛み付き。

 

 世界の大気をズタズタに切り裂きながら、機龍がその白銀の巨体をうねらせ飛来する。

 

 『Zuozaaaaaaaaaaaa!!』

 

 速さ。

 体積。

 

 (おぞ)ましい程のエネルギー。

 その化身となったモノが、ただ駆けるだけであらゆる全てを根こそぎに破壊する。

 

 爆散する大地、瓦礫が吹き飛び、土砂が舞い。

 破壊の権化が牙を剥く。

 

 「耐えて!!」

 

 レンに出来るのは祈るだけ。

 革新的なシステムとストーリーで大ヒットを記録したRPG『Mommy(マミー)2ギークの復讐』であれば、その選択はあり得たかもしれない。

 

 だが、ここは『だいす』だった。

 

 【グォォォオン!!】

 

 ギアラドスが生み出したソニックブーム(衝撃波)により、地表に伏せて防御姿勢を取っていたポチの2種類の背面武装『全方位中指ミサイル』が誤爆し、フレーム耐久の危険水域に迫る被害を生じさせる。

 

 「クソがッ!!」

 

 あとコンマ1秒でも爆発反応装甲を含めた武装パージが遅れていれば、その時点で終わっていたであろう被害。

 

 しかし、問題は。

 

 「本気で、魄裂砲しか無いんだが」

 

 ポチに残された遠距離攻撃手段は頭部中核外装の口内に隠された『魄裂砲』のみ。

 アシガルで使用した場合と比べれば破格の火力を見せる武装には違いない…だが。

 

 「レン、撃てるか?」

 

 「…ムリゲーかも」

 

 天才のレンちゃんをして不可能と切り落とされる、その性能。

 射撃その物は可能。

 だが、射撃姿勢を取るまでに1秒弱。

 そして構え中には移動できなくなるという圧倒的なデメリットを受け入れなければ、命中打は望めないクソザコ性能。

 

 『Zooooooooaa!!』

 

 必勝。

 その道筋の輝きを見定め。

 機神を繰る老蛇が隆々たる背筋を漲らせた。

 





 お知らせ。
 年末の予定については活動報告にあげた通り更新はおやすみ予定です。

 代わりに酷すぎる誤字脱字の撲滅運動活動をするのですが、その際に大きく変更する場所があります。

 ガン○ム
  ↑
 これを、

 ガン○○に変更した上で当て字を。

 ガン○○(リング)とします。

 天下のガン○ム様のパロディをするのなら妥協は許されない…だが、作者は非才。それ故にこの最適解へ辿り着くまでに約半年もの月日を要してしまいました。

 開放軍記ガン○○(リング)!!

 うん、ヨシッ!!

 これでオーガバトルガン○ムとしていたアックス君の正式略称もオーガン○○(リング)となって安っぽさとそれっぽさが当社比1.7倍くらいになりますね!
 他にもアシガルの描写とか見直しする予定。
 まぁ本編の話とは無関係な部分の修正なのでコアパーツの皆様は気になさらず、良いお正月をお迎えください。

 たぶん、次回で第6話と今年の投稿のラスト。
 お越しいただければ幸いです。
 (来年に入るまでに無事に投稿できたら拍手喝采をお願いします)
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