ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録 作:マキシマムとと
対戦、よろしくお願いします。
真辺家の裏山に建設中の施設。
その傍らに設置された簡素なプレハブ小屋に、二人の女性の姿があった。
「主様、Round3攻略軍が最終段階に到達致しました。予測通り多重次元空間への単体強制転送による単騎決闘方式となります」
片方はタイトなスーツ姿の背の高い女性。
黒い長髪を三つ編みに纏め、赤いリボンでキツく縛る。
その表情は厳しい。
手にしたタブレットの構え方、釣り目がちな目に重ね、更に視線をキツく見せる鋭角のメガネ。
優秀な秘書を思わせる彼女の視線の先には、見るだけで温もりを感じさせる少女の柔肌があった。
「ご苦労。それにしても彼らにも困ったものだね」
安っぽい布地のハーフパンツ。
着心地だけで選んだブラトップ。
地味で怠惰で心地良い。
『兄上』の前では決して見せない、趣味と快適さだけを追求した服装のミレンが、軽快な口調とは裏腹に表情を歪めた。
「『施設』の完成度は?」
「未だ13%です」
無駄な言葉を求めない。
そのような主の性質を理解した、彼女の返答。
その言葉に、丸椅子に腰掛けたミレンが唸る。
「はぁ……まぁ、そうだろうね、お前達は十分以上に頑張っている。あの馬鹿で巫山戯た希望の兄上が余計な愚行に走らなければこんな面倒な事にはならなかったのだけれど」
ポッカリと口を開け、虚ろな視線を空に投げる。
その様子に。
「殺しますか?」
冷徹に、事務的に。
体内で鉄すら溶かす憤怒を隠し、ただ主の許しを願う。
「種まきは終わりました。あの様な、主様のご意向に逆らうような駄犬に、存在価値などありませぬ」
「………ふふっ、お前の来歴を思えば、確かにそうなるのだろうね? けれど…ニア」
ミレンが名を呼ぶ。
ただそれだけで彼女の腰は砕け、母に甘える子供のように、ミレンの膝へ身体を寄せる。
「アレはアレでも僕の希望なんだ」
「申し訳っ…あ、あるじ様、わたし、わたしは…!!」
一瞬で赤子のように態度を一変させた女。
その頭をゆっくりと…事更にゆっくりと撫でながら、ミレンが続けた。
「いいよ、僕はお前を許してあげる。そうだね、もしあの犬がRound3の雑魚如きに敗北する醜態を見せたのなら……」
顎を上げる。
瞳を合わせ。
唇を舐めて。
「食べて良いよ」
彼女を愛した。
それは近い未来のじぶんの記憶。
ほとんど確定した未来。
今この瞬間、ギアラドスと戦っているレンちゃんの。
その思考に紛れて光る。
記憶の中の星。
あまりにも星が近くて。
レンちゃんは、さみしかった。
風が叫ぶ。
耳もとで、笛のように鳴る。
ひとりぼっち。
世界は広くて。
どこまでも広いのに。
レンちゃんはどこにも繋がらない。
大気すら薄い、世界と異世界のまん中で。
レンちゃんはずっと、ずっとひとり。
だからかな。
へんな
ここは。
『だいす』は。
かつて閉じられた場所だったらしい。
世界というほど出来てなくて。
次元というほど広がらない。
空はピンクで、大地は平らで。
ビー玉の内側みたいに、全部があって。
全部がなくて。
たったひとりの生き物が、長いのか、短いのかもわからない。
時間…という概念すらないままずっと。
ずっとずっとひとりで生きていた…らしい。
さみしく、なかったのかな?
そんな気持ちも、無かったのかな?
わからない。
レンちゃんには、沢山のことがわからない。
レンちゃんはただ。
この世界で、ひとりだけ。
そんな、へんな事を、考えたんだ。
◆
「龍体電磁パルス、圧縮を観測!」
それは龍舞と呼ばれる
ザ・シークレット・スカイウォーターが生み出すマナを強引に機体内部へ押し込める事により更なる活力を石から引き出し、押し込められたマナは機体の火力と機動性能を大幅に引き上げ、他を圧倒する。
隔絶した暴力。
もとよりの性能差を更に大きく押し広げ。
∞の軌道を輝き描き、龍が虚空を流れて踊る。
『ZaZaaaZaaaaaaa!!』
驕り高ぶる龍は鳴く。
しかして機龍。
その操者である賢蛇の心中は恐れに…いや、
ヨシム=ラヒルの見せる可能性。
愚かな弟子が死ぬ間際に残した世迷い言。
『彼奴は未来を読み取る鬼才』
妄言。
所詮は生命の結晶たる生の筋肉に背を向けて機械化マッスルに逃げた無為無能なる恥さらし。
あの黄色と黒の愚かな弟子が、その言葉が。
【標的、完全にタイキング・ソルジャー本体を識別している模様…というより、召喚個体との干渉係数がまるで、観測されません!?】
【駄目です! タイキング・シーフ全滅!】
【波状攻撃、地雷原を突破できません!】
【タイキングレーク崩壊!! 4割のタイキングシリーズが外界へ放出! 残存勢力も既に各個撃破されています!】
【敵軍タイキングキャッスルへ侵入!!】
ーーー知らず、蛇の首を取る。
有り得ない戦果に幻視する、有り得ない能力。
未来への恐怖。
それ故に選ばれた自己強化。
敵を威圧し、己を鼓舞する。
「…ごめん、レンちゃんが、もっと」
圧倒的な戦力差は敵の心を叩き折る。
ーーーしかし。
「ホンクソ」
「………へ?」
「クリエイターのお節介もここまで来るとエゴだわ」
ーーー彼は、ただの。
「アレだろ? どうせヴォケ門的なやり方で攻略しなけりゃクリア出来ないように仕組んでんだろ?」
ーーーゲーマーだから。
「『壊滅レーザー』『空を裂く』に『龍舞』後は液体系の『波動ライド』かその辺りだろ? どうよレン、あんな見て分かるレベルの『飛翔』『機械』タイプ、どうせアセンで『電撃』持ちのロクソク中肢翼換装型の雷撃系遠距離戦闘機にアセン組み直して
定められた道筋。
そこに悪意はあるのか?
「いや、わかるよ? そらわかる。俺からすればとてつもなく長い時間とゲロと労力の果てにたどり着いたラウンド3の大ボスだが、ヤツらからすればラウンド3なんざチュートリアルに毛が生えた程度のポジションなんだろうし? そらぁここでハッキリとゲームの方向性を示して強引にクリアしようとするプレイヤーの天狗鼻をボキボキにへし折りたい的な魂胆なんだろぅよ? ここで敵の特性にあわせたアセンを勉強しなさい、この先で絶対必要になる敗北だから…と、そんな
無い。
道とは常に、そこを歩く誰かの為に拓かれる。
そこにあるのは純粋な善意。
ーーーだが。
「
喉を守り、内側を支える装甲を脱落させて。
「にっ!?」
「魄裂砲、強制パージ」
人間は雑魚だ。
大衆はケダモノだ。
善意だろうが、悪意だろうが。
誰かの道を歩かされるのは、単純明快に!!
【
威力向上用に追加した専用増設ジェネレーターを含めた遠距離戦闘用の重量物をまるごと捨て去り。
「上等だ、
跳ねる獣は、ただ
○月○日 晴れ(2ページ目)
ーーーと。
そんな感じで戦況は、劣・悪w
爆発反応装甲による外装パージを全身に発動させて、
みたいな妄想を思い浮かべたりもしたのだが、控えめに言ってムリ。
だってお前、
レンはアワアワしてるしポチから伝わる感覚的なアレからは【オペがザコガキな現状で? ワロスw オマエこれ以上外装飛ばしたら中身も吹き飛ぶけどw ヨカですかww】みたいな危険信号がビンビン来ててもはや笑える。
一応シグマ・ブラストを劣化再現した『アルファ・ブラスト』なる機能があったりはするのだが、さっきのソニックブームでズタボロになった機体の制御だけでレンは手一杯だし、とてもとてもそんなオモシロ機能の発動に手を出せる余裕はない。
武器も、体力も、余裕も無い。
(魄裂砲は自分で捨てました)
けどまぁ、アレだ。
ヴォケ門風に考えればまだ目はある。
ストーリー進めてたらたま〜にあるんだが、敵の攻撃でこっちは瀕死寸前、次にどんな攻撃が来ても死ねるって状況で何故か敵がバフやデバフに走るんだよ。
乱数の女神が微笑んでる…的な?
案外こういうチャンスから勝ち目が生まれたりするんだわ。
敵が『龍舞』で火力と速さを「ぐ〜ん」とあげる、ならこっちは『骨折り肉切り』でご臨終してる防御を捨てて(ついでに遠距離も捨てて)火力(知れてるw)と速さを「ぐぐ〜ん」とあげた感じになる訳やん? そうなると素早さ勝負ではギリギリ勝てる(予定)だったんだよ!!
………はぁ。
現実にはドッグファイトで追われっぱなし。
そらそう。
こっちには遠距離武器ないんだし、近付いても敵には『龍体電磁パルス』とやらの電気的なダメージフィールドが発生してるから、考え無しに突っ込んだらギリギリの耐久値がゴリゴリ削れてご臨終。
(脳筋思考で突っ込む直前にレンが教えてくれた。弱点らしき頭部ならダメージフィールドも影響無さそうだが…な? ここで一気に手詰まりしたんだよワロスワロス)
なんで、基本は逃げるだけ。
逃げて、避けて、生き延びる。
けどまぁ、そうすると読めてくるやろ?
敵の攻撃パターン。
長くやればやるほど、こっちが決まったパターンで回避すれば、敵は自然と最適なパターンを構築して、A→B→Cと組んでたやり方をA→Cに変更して来る。
当然、速い。
速いしキツイし肝が冷えるが、最適解はアクシデントがない事を前提としてる分、外部要因への対応力に乏しい。
例えば、そうーーー。
◆
「ホンキでっ!?」
彼女の兄の、特異極まるコアパーツの狂気は今に始まった事ではない。だが、今回の作戦はあまりにも。
「本気もクソもこれ以外に手があるなら教えてくれッ!」
ポチ発案のアイデア。
共鳴する魂が見せた
「
しかし、今回の敵の狙いは直撃では無く。
「タイキングの残骸! 圧縮された腐敗ガスが…にーっ!?」
レーザーが撃つはタイキング、その腹に込められた怨嗟。ソレへと狙い定めた一撃が炸裂し、臓腑を揺るがす轟音激震が巻き起こる。
直撃でなくとも、それに劣ることのない大爆発がポチの痩躯を大地から引き剥がした。
「
間に合わない。
終わった。
己のスペック不足の結果。
その、後悔は。
「ポチーーー」
…しかし!!
「ーーー『ナマズメスプラァ〜〜〜ッシュ!!』」
ポチの前肢に備わった鉤爪が、恐ろしい速度で射出されては空を裂く!
【ギンッッッ!!】
「かかったぁ!」
機龍の壊滅レーザー、その第二射が白狼を飲み砕く直前、獣の機体が悪夢ように消え失せた。
『Zoa!?』
「魂糸…
この声は。
音が伝える恐怖の位置は。
(頭上ッ!?)
巨大なる機龍の心臓、即ち弱点。
魂糸による立体起動を成立させた白狼が、決して逃さぬ愉悦を見せて、龍の頭を優しく噛んだ。
『ZoGhiiiiiiiiiiiiia!!』
効果は劇的。
急所に噛み付かれたギアドラスがのたうち回りながら高度を上げる。
狂乱した。
そのように見せながら。
混乱した。
そのように魅せながら。
狼を恐れて暴れてよじれて。
結果的に高度が上がったと。
そのように、愚かを演じ。
賢蛇は常に策を練る…!!
「くっそ、この、暴れやがって…!」
ヨシム=ラヒルが爪を操り、十重二十重と糸を巻く。
魂糸が巻き付き、星へと近付き。
龍は、夜空で光を放つ。
「これっ! 数値が…あ、アサルトフレアが、龍体電磁パルスが暴走する!!」
それは機体内部に取り込まれたザ・シークレット・スカイウォーターのーーー。
「日本語でッ!」
「ばくはつ!!」
ーーー臨界爆発!!
音は無かった。
多すぎる光の波が『音』程度の小賢しい波を喰い殺し、世界を等しく導くように。
いや。
音しか無かった。
圧倒的なる魂の熱が、大気を消し飛ばす程度の破壊に、世界の絶望に敗れるなど有り得ぬが故に。
【それは、白かった】
【俺は、白かった】
【こころに常に、白があった】
真っ直ぐに伸びた尻尾。
金色に光る6本の魂糸。
【俺は俺であり】
【最初からニセモノだった】
【それでも、俺は】
【だからこそ、俺は】
ポチの胴体は今、風が吹くほどにからっぽで。
だからこそ、音が、満ちて!!
「ポチ、これがお前のロック…」
ソレは、ゾーンを模したもの。
【ゾイド】
ゾーンとアイドルの絆を描く、心に響く物語。
ゾーンは。
ポチの原型はEquipギツァー。
ギターとしての機能を獣の内へ秘めた、伝説の!!
「ポチ・ザ・ロック!!」
尾をギターのネックに見立て、真っ直ぐに伸ばされた6本の魂糸は弦となり、創られた音は彼の体内でぐるぐると満ち、そして世界へ声無き歌を、魂の歌を奏でる!!
【ギャGyァoooooo〜〜〜!!】
弾き手の居ない暴走ギター。
それでも、叫ぶ。
歌えない魂を、歌えないからこそ、弦の響きで叫んで吠える!!
アサルトフレアを相殺した
『ZaGuzaaa!』
単調な周波数を見切り、ギアドラスの怒りが砕く。
尻尾に集めた魂糸、その反面薄くなっていたナマズメスプラッシュの糸がハラハラと千切れて。
【グョルWaaaaaa〜N!!】
弦の悲鳴でポチが鳴く。
龍に振り払われたその空は、スペ体質が無かったとしても、生還の見込めない高高度。
更に!!
『ZoGhiaaaaaaaaaaaaaaa!!』
壊滅レーザー。
龍の怒りが火を吹いて。
「ここで死んだら負けっぱなしやんけ!」
熱い展開。
負けられない。
相棒の頑張りを無駄に出来ない。
なにより、もっと。
もっと、もっと、遊びたい!!
願い、昂るその喜悦。
それこそが!
「ポチ!」
『だいす』に響く、最高の。
「『空を駆ける』だ!!」
魂糸でA地点とB地点を結び、引き寄せる事が出来るのであれば、それは『
そうであるなら踏めるやろ、と。
そんな屁理屈を無茶苦茶に起動し、宙を跳ねては獣が踊る。
「俺は人間をやめるぞ! ポチぃぃぃぃぃ!!」
【双魂共鳴】【反転獣心】
「ナマズメスプラッシュ、フルパワァァア!!」
上下も左右も。
敵機に爪を投げ、龍体電磁パルスにより即座に燃え尽きる、その刹那を捉えて跳ねる!!
ありとあらゆる空中曲芸。
ケルベでゲロにまみれて習得した技能を極限まで研ぎ澄まし、白狼と銀龍が月夜を乱して狂い咲く。
「決めるぞ」
【ズァザZZZZァァァァァァ〜NN!!】
ザンザンザンザンZAGaZaaaahiiiiiiiiiiii!!
弦が擦れて苦しく鳴いて。
その痛みが、大きく、大きく!!
『ZZaaaaaaaaaaaaaaa!!』
しかして機龍は、賢蛇たる横内は知っていた。
ヨシム=ラヒルが操るヨツアシタイプのオルボーン、その必殺技を。
奴らが気紛れに森林を歩き、遭遇したメタルクリボンを一掃する際に見せた挙動。
「シールド」
エネルギーが機体前面に集う。
「バレット」
不足する熱量を、ギターの音で補って。
「ストライク!!」
自身を弾丸に見立てて突撃する。
攻防を兼ね備えた神速の一撃。
されどそれを『知っている…!!』がそれ故に。
光を無くし、音も無く。
ただ質量だけを残した『体当たり』に、
揺らぐ龍など有り得なく。
全エネルギーを消費し尽くした敗者を前に。
龍がそのアギトを厳かに開いた。
本性である蛇を顕現する容貌。
胴体の半ばまで口角が開き。
「
墜ちる白狼を、稲妻となった龍がーーー。
◆
◆
◆
ポチのコックピットは元ネタのゾーンを意識した形であり、つまり頭部の額に位置している。
敵の【アサルトフレア】が発動する瞬間、レンは射出座席により機体の遥か上空へ緊急離脱させられていた。
『お前がヤレ』
馬鹿な話だった。
『ポチから衝撃(笑劇)映像が脳に直送されたんだが、お前変身w出来るんだろ? 馬鹿みたいな威力のハンマーで、お前があの龍を凹ませてやれ』
とても正気とは思えない。
今だって疑ってる。
彼は、兄は、
ただ自分を逃がすための方便として騙ったのではないかと。
ーーーしかし。
「いきて…る」
ポチは、兄は、生きていた。
生きて、踊って、ギターで歌う。
ここだと。
お前のアニキは、ここでいつでも叫んでいるぞと!!
「音なんて届かないよ…バカだな」
ヘレンはひとりで。
世界は広くて広すぎて。
たったひとりのニセモノなのに。
「にーにーは」
燃える。
「レンちゃんが」
付喪神。
日本人という愚かな種族が描いた
「そばにいないと…!」
長く存在した物に。
大切な器物に【魂】が宿ると、願って信じるその妄想。
『ぷりてぃっく・むーんぱぅわ・めいくあっぷ!!』
☆に♪に♡にキラキラ。
人を模した素体が風に踊る。
のけぞり気味に身体を伸ばし、左右の指先は天使の羽を意識してピンと伸ばしてぶれさせない。
「変身っ!!」
光の帯が巻き付くと、次の瞬間にはヒラヒラのセーラー服を纏う金髪碧眼の美少女が降臨していたのだッッッ!!
「ミニ!」
紺色のレオタードで痩躯を包み。
「モニ!」
その上には純白のセーラー服。
「ムーン!」
スカートはキュートなピンク色♡
「ミニモ・・・・・・レンちゃん、参上!」
【むりだ】
きらびやかな衣装が、月夜に映える。
けれど裏腹に。
それは心の影を浮き彫りにして。
【素体だよ?】
【端末だよ?】
【本物ですらない】
【ニセモノにすらなれない】
全身を殴っては通り過ぎるような大気の。
その冷気のもたらす痛みが。
ハンマーを握る指から、戦う意思を削ぎ落とし。
届かない未来への、不安が。
【できない】
【できない】
【できない】
【できないんだよ!!!!!】
ーーーそれなのに。
『チョコ………買いに行かね?』
それなのに。
『アリーナで、やっと勝ったんだが。ほれ、記念…に? いや、お前からすれば何のこっちゃになるのはわかるんだが、せっかくの兄妹なんだし、こう、ヤッタゼ感のおすそわけ的な?』
出来るとか、
出来ないとか。
考えるより切実に、高度が下がり、肉迫して。
『必殺技? 強そうなヤツ? ん〜〜〜それなら』
自然と、研ぎ澄まされていた。
◇
何かが、来る。
白狼を喰らい、決戦に勝利したギアラドスの感覚が何かを捉えた。
「
聞こえる。
声は、己の。
「
直上から落ちた声。
クビをもたげた龍の額へ。
比べればそう、チョコの一欠片のような質量が小さく触れて。
・・・・・・・・・静寂。
ーーーーーーーーーーからの。
【ザン…ZiGaaaaaaaaaaaaNN!】
ギターが。
指にて歌うその音と共に。
「流石はーーー」
銀なる龍。
「ーーー俺の妹だ」
ここに有る。
「超弩級ヘレンミサイル」
「………は?」
墜ちる機龍の背に乗り、地表への衝突直前で飛び跳ねた。
これによりスペ体質という呪いを無事回避したポチと真辺兄妹であったのだが、地表に降り立ってから発覚した不具合に頭を悩ませていた。
「だから、超弩級ヘレンミサイルだって」
ゲームが終わらない。
【Victory】も【You win】も、何一つ表示されずに放置されていた。そんな矢先での、兄の発言。
戦闘システムの維持と現状のデータを洗い出していたヘレンが、忙しなくキーボードの上で踊る指を止めた。
「なんの話なの?」
「え? だからお前のさっきの必殺技、重い方のtとヴォケ門の技をかけて『
「………え。にーにーさ、まさかずっと黙ってたのって、まさかまさかソレを、考えてた…とか?」
「ザッツライ!」
兄らしいといえば兄らしい巫山戯た態度。
「イケ! 超弩級ヘレンミサイルぅ!!」
接続を切ったハンドターミナルをグリグリ回し、頭をホカホカにして兄が叫ぶ。
バカバカしい。
ほんっっっっっとうに、お馬鹿なんだ!!
『だいす』の趨勢を決めかねない決戦に勝利した………と、そのような気概はまるでない。
彼は心から、この
その事実にフッとレンの気が緩み。
【
「あ、ちょ! ポチっ!!」
【
主人も犬も、勝手で気まま。
そんな日常の温もりに、知らずレンの頬が緩みーーー。
【 Pi Pi Pi 】
【 敵性 存在 ヲ 検知 】
アラートが。
【 座標・mtkn356・472 】
それが示す位置は直近。
砕けた機械の龍の残骸が。
うねり、蠢き、地表を揺らす。
「うそ………」
「うっわ最悪、回復無しで2セット目に突入とか初期のA.Cかよ鬼畜ヤロウがクッソ、これだから宇宙人は嫌いなんだよぉ!!」
白銀の鎧を脱ぎ捨てて。
首をもたげたる蛇の長。
「レン、こういう時になんて言うか、覚えてるか?」
答えを待たない。
きっと応える。
そう信じているから。
だから。
「「ファッ○・デカルチャー!!!!」」
二人の声は、重なり、ひとつになった。