ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録 作:マキシマムとと
○月○日 雨
ギターと言う楽器。
もちろん俺も知ってる。
弦があって、指で弾いて、音が出て。
学校の陽キャが持ってて、仲間内でワキャワキャしながら遊んでたっけ。俺みたいな日陰のゲーマーには一生縁がない楽器。
ーーーそう、思っていたのだが。
○月○日 雨
ゲームの練習をしてるのか、ギターの練習をしてるのかわからなくなってきた。
ラウンド3がチャロン的なトウフ空間での1対1のタイマン方式に変更になったのは良かったんだよ。
相手はあのタイキングちゃんだし、実地訓練には最適。
ほれ、俺ってラウンド1&2が強制スキップさせられる呪いにかかってるから、最近ではずっっっと戦闘モード開放中での訓練は出来なくてストレスだったし。
(任意での開放は金がかかるからしない)
だだ、レンがなぁ。
「にーにーもやって!!」
ほら、レンちゃんって天才じゃん?
ギターの仕組みや楽譜の読み方なんかも1発で覚えたんだよ、サスレンっゴイスー! てな話だったんだがそこはギター、知能の高さと演奏の上手さってのはイコールにはならないみたいでさ。
か〜な〜り〜苦戦してるんだわ。
「こんなの、ムリっ!!」
話を要約すると頭で理解出来てるのに指が追い付かないってのが癪に障るらしくてな? かなりイライラを溜め込んでてさ。その八つ当たりで俺にもギター引かせようとして来たんだよ。
「は? 余裕なんだが??」
ついそう返したのが間違い。
いやね?
簡単そうに見えたんだよ。
レンはギターを手にしてすぐ、当たり前の顔してジャンジャカジャカジャカと小粋良く鳴らしてたし?
そんなん見てたら(あ、意外とギターって簡単なんだ)と勘違いするのは当たり前だろ?
だからつい。
「まったく、そうやってすぐ兄貴に甘えるんだから。まったく本当にレンは困ったベイビーちゃんだぜ!」
てな事をほざいてしまいまして。
そんな墓穴の上で手にしたギター。
…ん? 持ち手が逆?
右手がピック? いやいやいや、俺は初心者なんだからその程度の間違いはあって当然だろ?
んで………ふん? なに? ちゅーにんぐ??
俺は英語苦手なんだよぅ!!
とりあえず弦をピックで弾くんだ!!
『ぼよ〜ん』
『ぼよよよ〜んんんん』
な、なるほど?
ギターの先っぽの金具がペグって言うのか。
これを回して弦の張り方を調整して、音を調律する。
これを怠ると音がボヨヨンとなるわけだ。ふむふむ、簡単たんたんタンタカタ〜ンではないか!! ヌハハハハ! ギターなぞ恐るるに足ら………?
なんか、2弦が上手く行かないんだが?
ギターチューナーの故障かな?
とりあえず数字とかのよくわからん要素は無視して、2弦はチューナーの画面に【B】が表示されればOKなんだろ?
………ん?
キリキリ巻いても、プルプル戻しても、CとかAとかしか出ないんだが…?
巻いて、巻いて、巻いて。
最終的に弦が千切れて爆発したのですが。
マジでこのチューナー先生は死んでください。
そんな感じで俺のギター練習が始まってしまった。
○月○日 雨
2弦は諦めた。
いや、昨日のうちに張り直しは出来たのだが、また爆発したらと思うとヒヤヒヤしてピックが巻けなかったんだ。
そんな状態だったのだが、それでも頑張れば6〜3弦までの音を合わせる事は出来るのでその音階からズレてない雰囲気だったらヨシと言う事にして練習を始めた。
(レンちゃん先生は教えてくれない。お世辞でもお菓子でも誘惑されてくれない辺りそうとうキてる)
今日は基礎練習から。
ネックの上から順番に、まずは人差し指で弦を押さえて、次が中指。薬指がキツキツで、最後には小指。
そうやって押さえる場所を少しずつ変えて、本体側に近付けながら音を鳴らすのだが。
………………うん。
無理くね?
バヒ〜ンとか、ポヨ〜んとか。
指が隣の弦に干渉してたり、押さえが弱かったりでまともに音が出ない。
基礎からしてコレなのに、Fコードとかおまえ何だコレミステリアスww。
こんな指配置を連続で変更しながら演奏?
正確に標的の弦だけを押さえて?
ーーー馬鹿かと。
『レンは天才だし、すぐに出来るやろ!』
軽い気持ちで妄言を吐いた過去の俺を殴るべきなのでしょう。
この楽器を考案したのって宇宙人なんだろ? 人間の指や手首の可動範囲、知らずに作ったんやろ??
今すぐにでも投げ出したいと思ったのだが、俺はお兄ちゃんだし、そもそもレンに無理難題を押し付けた張本人。
とりあえず荒ぶるレンちゃん様のご機嫌取り程度にはギター練習をしなくては。
ラウンド4がダメなんだよ。
まぁアレだ。
ギターの音色が心地良いだけマシか。
○月○日 曇り
なんか今日はチューニングが上手く行った。
今までと何が違うのかまったくわからんが、とりあえず上手く行った。
今日はコードをもう一度勉強して、その後また基礎訓練に入った。これは前屈と同じで、最初は出来なくても継続してれば自然と指が動くようになるらしい。
言われてみれば、まぁ確かに?
レンは当然として俺だってギター開始直後よりは確実にマシになってるし、狙い通りの音が出る確率は上がってる。
俺はこういう地味な反復練習は好きだし、1時間程度なら余裕で続けられるから案外楽しい。
最近ではゲームの外でも練習するようになったし、思った通りの音が出たときには脳が心地良くなるから割と夢中で遊んでられる。
けどほら、レンは完璧で究極な天才肌なぶん忍耐力が無いやろ?
だから精神的にキツイらしい。
俺からすれば理解できない成長速度でさ、複雑なコードが無い曲なら楽譜を見ずに演奏する程度の事はやってのけるレベルになっているのだが、指の可動範囲に関する問題だけは頭脳の良し悪しよりも身体への反復訓練が重要になるから、結果として出来る事は相変わらずって感じ。
ここまでイライラしてるレンを見るのは初めてなのだが、俺からすればこれはレンが成長する為の良い機会になってると思うし、この調子で継続して行きたいなと、今日もレンちゃん先生にダメ出しされながら考えてました。
ちなみに現在の俺の持ち歌…楽曲? はキラキラ星やカエルの歌です。
単弦でのドレミファソラシドなら弾けるようになった。
地味に嬉しいんだが、隣に天才様がいると嬉しさがかすむんだよなぁ。
う〜ん、けど…。
ちっちゃくて細い指がしっかりと弦を押さえて、そこから響く音色は堂々として凛々しい。
そんな妹の姿を見ると自分の惨めさなんて気にならん。むしろウキウキするんだわ。あぁ…たぶんコレ、蒼盾ライカちゃんをみてドキドキした感じに近い。
推しの女の子がスゲー事を成し遂げていく、それを応援したくなる感覚。
コイツっていつの間にか俺のアイドルになってたんやなぁ。
◇
◆
◆
◆
ーーーやさしくしてあげるの。
「ライザ…っ、さん」
灯りのない部屋。
ぬくもりは2つだけ。
「うん、だいじょうぶ」
コツはたんじゅん。
「ソレ、やめ…て」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから」
自分を捨てるの。
「ほら、もっときもちくなってよ♡」
逃さない。
逃げられない。
暴力に近い、悪意にすら近い。
そんな欲望を使って、あるじ様の身体をからめとる。
「ライザは人形。
耳元でささやく。
あるじ様の限界を、笑顔でつついて奈落へ落とす。
「あ♡ にーにー♡ にーにー♡」
声色の調律なんてわけない。
あるじ様の大好きな。
好き過ぎて触れられない。
あの醜い偶像の声を汚す。
「もっとして、レンちゃん、にーにーがきもちくなってくれれば、それだけで幸せなの♡」
あるじ様の熱が上がる。
焦がすように、なぶるように。
耳朶を舐めて、囁いて。
…あぁ、嗚呼。
「やめ………っ!」
止められる訳がない。
じぶんの中に蠢くけがれ。
それに苦しみ、あえいで、それでいて快楽の壺に墜ちるあるじ様の、この苦悩。
………まだだよ。
もっと、鳴いてあげる。
あるじ様の好きな声で。
あるじ様を食べる、その日を夢見て。