ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録   作:マキシマムとと

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67.日常回廊

 

 ○月○日 雨

 

 

 やべぇな。

 つまりレイダンって事か。

 

 

 

 

 

 

 ○月○日 雨

 

 

 ようやくエネルギーライフルの撃ち方がわかった。

 

 おかげてAランクで停滞していた勝率が目に見えて向上。

 これまではパルスの直撃狙いやガン○○シールドで殴る、もしくはエネルギーライフルを投げ捨ててOBに内蔵してある魄裂砲をドカン! という具合の近距離武器しか信頼できなくて色々と停滞してただけに、ここで全距離対応の高火力武器が加わったのはデカい。

 

 

 

 『開放軍記におけるエネルギーライフル』

 

 これは身の伏スキー粒子をエネルギー(霊力)で圧縮し、縮退・融合させることで、質量のほとんどを運動エネルギーに変換した「Δ(デルタ)粒子」とし、それをLフィールドによって収束させ打ち出す魔人スーツ用の携行武装、という設定がある。

 

 ミレンとレンはかなりの天才て、びっくりするほどの世間知らず(バカ)だ。

 やるとなったらトコトン突き詰めたとしても、なにも不思議な事はない。

 

 以前俺がライフルを投げて、それを魄裂砲で撃ち抜いて爆弾扱いした後、ミレンが偉そうに説教した時。

 謎過ぎる説教だったのだが、思い起こせばその中に奇妙な台詞があった。

 

 『なぜ龍体パルスを包まない、誰かさん達のおかげで、僕らにはふざけた事をしている余裕など何一つ無いのだけれどねぇ?』

 

 正直に言ってその頃の俺はNEXTに対してまるで向き合っていなかった。

 

 

 

 【勝つ奴は遊び心の一つも無く勝率を高める為のアセンを組んでるだけの面白くも何ともない卑怯者】

 

 【こんなシュミレーターで強かった所で現実に金が稼げるわけでもないのに、無駄な時間だ】

 

 【どうせデブにしてセフィロト撃たなけりゃ勝てないクソゲーなんだから、デブになれない俺が本気になったって馬鹿見るだけだ。適当に下位ランクでロマンアセンの雑魚と遊んでる方が健全だわな】

 

 

 

 なんて。

 文字にするならこんな風か。

 

 本当に、、、、、、、、、、、、クッソ野郎。

 

 本気で戦ってる奴らにとっては『シュミレーター』もクソもない。

 ここが彼等の戦場で、ここ(戦場)が彼等の聖地なんだ。

 

 

 【勝つ】

 【今よりも強く】

 【誰よりも上手く】

 【わずかでも、高い場所へ】

 

 

 ただそれだけを愚直に、本気で願い、研鑽し続ける修羅が集いNEXT(その先)を目指して歩み続ける大切な世界。

 

 勝てない。

 それは何故か?

 

 エネルギーライフルが撃てないから。

 それは何故か?

 

 不具合だから。

 それは本当か? 調べたのか? 『だいす』への問い合わせをして、その上で不具合だと言っているのか?

 

 違う。

 

 これは不具合なんかじゃない。

 身の伏スキー粒子を霊力で包んで圧縮していないから撃てないんだ。

 逆に言えば撃てる時にはその圧縮が成功している。

 

 なら、その成功例と失敗例の比較をして、霊力とやらの存在を認識する。

 それが俺のスタートラインになる。

 現にコレ(産廃ライフル)を扱える人間は存在している。

 

 誰もが同じ装備を選べて、同じ火力を出せる世界。

 そのルールの中で挑む。本気で挑む。

 

 何度も何度もアホみたいに挫折して、それでもどうにかここまでこれたのは誰のお蔭なのか。

 それは家族であり俺自身であり、何よりもこのクソみたいな魔境(クソゲー)で高みを目指して互いを蹴落とし合う愛すべきクソ野郎(コアパーツ)達の存在があったから。

 

 全てここからだ。

 銃の扱いを熟して、その性能を基準にして戦略を組み立て直す。そこにこれまでの経験を重ねて…。

 

 俺はまだ、強くなれる。

 

 

 

 

 

 

 ーーー彼が目覚めた。

 

 分不相応だと感じていた大きく豪奢なダブルベッド。

 彼が起き上がるとその片側に重心がずれ、まだ目覚めない彼女の身体を僅かに揺らした。

 

 彼は裸体だった。

 このベッドで寝起きする際にはそれが常となっていた。

 

 まだ目覚めない彼女。

 トラロープ模様の奇妙な髪を乱して淫らに広げる美しい女性。

 薄い純白のシーツの下は、彼と同じ様相で…ただ一つの違いを上げるならば、そのあどけなさの残る細面であろう。

 美と愛を共存させた桜色のふっくらとした唇。整った顔を縛るのは、拘束具としか表現しようのない黒い革製の帯。

 

 瞳を隠すソレ。

 ベルトのような穴と、それへ差し込み固定する『つく棒』と呼ばれる金属。 

 

 普段は3つのつく棒で厳重に固定されている帯なのだが、今はそのうちの2つが外されていた。

 

 残りの封はあと一つ。

 

 なんの表情も無く、彼がその金具に手をかけた。

 

 「………」

 

 革を撫で、金具で遊び、浮かして、戻して。

 

 「………は………ふ…」

 

 夢現にその感触を感じているのだろう、彼女の肌は赤みを増し、呼気が僅かに荒れる。

 他の部位には触らない。

 彼女の弱点を知り尽くした彼は、焦らすようにゆっくりと、優しく、(よこしま)にその封印をなぶる。

 

 最初は強い拒絶だった。

 触れた瞬間に殴られるような拒絶。

 ーーーゆっくりと。

 溶けるように混ざり合い。

 重ねて、重ねて、重ねる内に、ふとした拍子に彼の指がその封に掠めたーーーその際の、比類ない絶頂。

 

 …とても、楽しい。

 彼はとてもとても、楽しかった。

 

 常日頃から凛々しく端的に。

 優秀で厳格なる指導者としての彼女の側面。

 年相応に恥じらい、喜び、己を慕う女性としての側面。

 そんな彼女は今…。

 

 彼は、彼女との一時をもっと楽しみたかったし、彼女にもっと壊れてもらいたかった。

 

 真綿で首を絞めるように、ゆっくりと。

 害になり得ぬ毒を仕込むように、ゆっくりと。

 

 拒絶された場所。

 許されない場所。

 

 その奥に秘められた快楽を、禁忌を楽しむように、彼は彼女を調教した。

 

 最後のつく棒を、穴から外す。

 

 それだけで、意識の無い彼女は身を震わせ、雫を散らし、背を反らせ、四肢を力いっぱいに伸ばす。

 

 「…かわいい」

 

 棒を穴に刺し、彼が呟いた。

 

 禁は秘められたまま。

 今はまだ、それで良い。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 「うまい…」

 

 彼の休日が始まった。

 寝室からトイレ。

 それから風呂場へ移動して、朝はまずシャワーから。

 

 軽く歯を磨き、テーブルに着くと同時に絶妙にトーストされた食パンが一枚。

 焼き加減を秒単位で調節し、マーガリンを塗り、再度加熱して。その日の気候と提供者の体調までも考慮して最適な種類のハチミツを適量垂らす。

 

 フォル二・ヤララ(人類最強)の名を持つ女子が、ハウスキーパーという隠れ蓑を被り、恋い焦がれる想い人へ捧げる全身全霊の一食。

 その感想は当然ーーー。

 

 「マジでうまい。生きてて良かったと思える味だわ。なんでパン焼いただけでこんなうまい飯が作れるのか理解できん」

 

 「あら♡ そんな、妻だなんて…♡」

 

 彼の休日には欠かさず訪れて料理の腕を奮う女。

 その危険な側面に、彼が気付く事はない。

 

 

 ーーーーーー

 

 

 ○月○日 晴れ

 

 

 マジで生き返った。

 最近は休みの日も休めた感覚が無かったんだが、今日は本当に心の底から休日! 堪能!! て感じだった。

 

 肉体的には平気なんだよ。

 俺って(推定)強化人間だし?

 毎日やってる事も工場で自社製造のボロボロに劣化した金型で造られたゴミ(産業廃棄物)寸前のゴミ(製品)を最低限使えるように手直ししてから検査して騙しだまし出荷するような気苦労だってない。素晴らしい事だよ。

 

 …けど、俺は根本的に人間だからさ。

 毎日毎日カツカツにスケジュール詰め込まれて強制馬車馬生活させられ続けて平気な訳がないんだわ。

 

 だからこそ、朝に座長さんにイタズラして、くっそマジで人生を続けてきて良かったと思えるような朝食を食べて。

 当たり前に人類に許された自由を堪能するだけの、この無駄で無意味で値段の無い時間が何よりも大切なんだよ。

 

 

 

 そんな風な事をぽ〜っと思いながら、しばらく頭を空っぽにしてたんだけどな?

 ふと思い付いてテレビのリモコンをポチり。

 

 劇場版のアダム…とうとう見る日が来たかな、と思ったんだが。サブスクの宣伝で『キャシーBは働かない』*1の実写版が目についてな。

 

 漫画版は2冊ほど読んでた。

 けどそれ以降は生活に追われてフェードアウトしてて、存在は知ってても未読のままだったエピソードがちょうどそのドラマに収録されてたし、前評判も悪くなかったから本命(アダム)前の慣らし運転的な感覚で再生ボタンを押したんだわ。

 

 そしたらまぁなんと言うか、すげぇ。

 

 肉を纏った人間が演じて、肉を纏った人間が創り出す映像でありながら、間違いなくその世界の空気には漫画の成分が混ざってる…とでも言うのかな。

 

 カメラワークというか、構図?

 絵の撮り方からして凡人とは違うんだよ。

 実写と漫画の良いとこ取りをしたような独特な空気感を感じさせる映し方でな?

 世界観を魅せるためなのか、世界観に合わせたのかはわからんが『コレ!』と思わせる映像の中に『コレしかないッ!!』と思わざるを得ない役者さんの演技が光るんよ。

 

 主役のキャシーBは当然として、編集担当者の林君のキャラも好感度しか上がらんし、登場人物全員の演技が上手い。

 誰一人として空気を乱さず、一致団結してストーリーを盛り上げていく。

 

 これは本当に凄いわ。

 

 漫画ってのは基本的に作者が生み出して少数のアシスタントや担当さんの助けを借りて形にするもんだろ? それを2次創作として実写化したのがドラマなんだから、当然そこには無数の人間の思惑が入るし、混ざって絡んでこんがらがるわけやろ? それなのに、まるでそんな気配の尻尾すら見せずに原作と比べてもなんら遜色ない空気を創るとか。

 

 ほんと神。

 

 つーか漫画で読んでて展開を知ってる話を見てる時ですら物語に引き込まれるとか普通ありえねーんだが。

 

 「なぁ兄上…兄上は確か、これの漫画を持っていたのではないかな?」

 

 「んあ? あぁ、ある…かな? 確か引っ越しの時に持ってきたと思うけど…読む?」

 

 気付けば俺の隣にミレンが座ってて、久々に兄妹らしいやり取りが出来た。

 やはり布教。

 兄として生まれた以上の目下の者に人生を素晴らしく輝かせる作品の布教をしなくてはならない(使命)。

 

 「この人、キャシーちゃんの演技めちゃんこ上手いよな…て、ミレンはまだ原作見てないから比較がムズいか…うん、やっぱ原作には原作の味があるし、ここは両方見とくのが正解やろな。ほらあの坂の話とかはーーー」

 

 そんな感じでメチャクチャ語った。

 ペルソナはガチ。

 途中でレンやハウスキーパーさん、あとは可愛い居候の3人組が合流してキャシーBの続き見たりP4のキャシーB初登場回を見たり、あえてP1 に戻ってペルソナシリーズの血統とかの話題で盛り上がった。

 

 かなり楽しかったのだが、座長さん(その時はライザさんにチェンジしてた)が合流したのは昼過ぎだった。

 

 まぁたぶん本人は喜んでたし…いっか。

 

*1
※『キャシーB』はペルソナ4(P4)から登場するペルソナシリーズのキャラクターの一人で、正式名称はキャシーBハロン。

 売れっ子の女流漫画家で、代表作は、1995年から連載中の週刊少年ダッシュに掲載された作品『ダークグリーンの少女』。

 漫画を書くための独特の価値観(ネタの為なら他人を犠牲にすることも厭わない自己中心的で身勝手な性格)と独特な美的センス(お弁当屋に入ってる緑のギザギザ=バラン、に似たヘアバンドなど)を要しており、スピンオフ作品『キャシーBは働かない』では主人公になるなど歴代のペルソナ主人公勢・ボスキャラ勢と同等の知名度を誇るキャラクター。





 
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