ゲーセンファンタジー・俺がプロゲーマーになる迄の記録 作:マキシマムとと
◯月◯日 晴れ
今日は驚いた。
昨日に引き続き抜剣と振り回しの練習に励んでたんだが、新しい操作に集中しすぎてつい剣の握りが甘くなっててな?
横薙ぎに剣を振り抜いたら、途中で急にロボの手先から伝わる重さが消失しまして。
まぁ要するに訓練施設のど真ん中ですっぽ抜けた俺のカッターブレードが目で追えない速度でバビュンと空を駆け抜けたんだわ。
(サブカメラの録画映像で確認した)
反射的に「バッ」(馬鹿なッ!)とか「ベッ」(やべぇ!!)とか口から出たんだが、時間って巻き戻らないじゃない?
『ーーーゴッ!!』
岩山に砕けやすい性質の石をぶち当てたような音でな? 訓練所に幾つもある建物の1つに剣がもろっくそ突き刺さったんだわ。
剣が当たった時の地響きや粉塵の舞いかた、煙のエフェクトも無駄にリアルでゾクッとした。
そしたらさ、なんか意味のあるオブジェクトだったのかどうか知らんがサイレン発動イベントよ。
重低音から始まったサイレンが次第に高音になって、なんか宇宙人語? で避難? 指示? らしき放送が流れてな?
これはゲームって意識はあるんだが、没入感半端ないし? そもそもこれ、ゲームだけどオートセーブ機能完備のロード機能撤廃作品だからほとんど現実。
これ弁償で今までに貯蓄したゲームマネーが吹き飛ぶような請求来たりしないよね?
津波のように重なって唸るサイレンが俺の平常心をガリガリ削る。
だから、
「う…うぅっわ~、こんな隠しギミック入れてるとか、う、宇宙人もやるなぁ?」
なんて。
色々考えると怖いからさ、逆にペレさん相手にふざけてみせたんよ。
「ぉま、おまッ!」
ペレさんもおまおまトークでノリノリ。
流石はペレさんだわーーーと頭を空っぽにした瞬間。
【半神₩ステム、制御LEス、崩JAい】だったかな?
なんかそんな感じの文字化けたテロップが流れて画面が真っ赤。
(あ、これアカン系のヤツじゃね?)
そう思った瞬間に暗転。
お馴染みの【Game Over】デデレテ・デンデーン♪ を引き当ててしまいました。
ーーーいや、なんだ。
今回ばっかりは俺が悪かった。
と珍しく反省したのだが、なんとこの事件には続きがありまして。
とりあえずメットを外そうと、ロックボタンに手をかけた瞬間に画面がパッと光ってな?
斜め上から見下ろす俯瞰画面。
懐かしの、荒くーーーそれでいて強烈に魂を奮わせるポリゴンの3D映像。
そこにはキュサノオの凛々しい背中、そして対面に電空戦神ヨシノオ(シシノオ四四式)のイカした、至上の、カックカクの、グラフィックッ!!
【 R E A D Y 】
五つのスペル。
それを認識した瞬間、俺の手がハンドターミナルへ吸い付いていた。
まるで時間が飛んだような幸福だった。
だってお前、チャロンの元祖だぜ!?
電空戦神グラフィリオン!!
アーケードから消え去って何年、いや何十年だ? 俺が最後に元祖をプレイしたのって二十年よりも前なんじゃねぇのッ!?
家で市販のツインスティックをガチャガチャするのとはワケが違う。
ここだよッ!! アーケードだよッ!! ゲーセンの! この! 馬鹿みたいなクソデカ筐体でプレイするからこそ意味があるんだッッッ!!
「前にぃ? げーむお~べぃの時ぃ? おまはんプンプンぽこぽこやったでおるからぁ? ペレさんが仕込んでおいたんでおるよんてる! ねぇペレさんてんさい? てんさいぃぃい!?」
「天才だと? 生温い、貴様はペレーーー愛と情熱と南国の、ハワイの神と名を同じくする我が最高の相棒神なりぃぃぃぃぃ!!」
「瓜ぃぃぃぃぃぃぃい!!!!!」
だいたいそんな感じのお馬鹿トークしながらキャッキャ言って遊んだ。
ペレさんがここに移植してくれた際にワンコインで2回遊べるように設定してくれててな? なんと太っ腹なことにこの日は20回もコンティニュー出来たんだ!!
にしても、だぜ!? このガバガバ設定!
確かそう、店によって違うんだが基本的にチャロンってコスパが良いんだよ、すげぇ良心的な店だと超低料金で脳ミソがパンクするまで遊べてたんだよなぁ。
うぉーなっっっつかしいぜぁ!!
流石にコンティニュー20回は途中でダレるかと思ったんだが、意外なことにペレさんは俺が以前呟いてた単語を元にソガのデータベースからグラフィリオンを引っこ抜いてきただけで、グラフィリオンの歴史や作中の設定には無知でな?
これがもぉオマハンは一流のキャバ嬢なのかな? てくらい聞き上手に俺の知識に相槌打ってくれてさ。
いや俺の記憶なんてボロンボロンに劣化してるしうろ覚えなのに、目が見えたらキラキラだろうなって、簡単に想像できるくらい楽し気に聞いてくれるんだよ。
おかげで時間の処理に困ることはなかったし、なんだったら物足りなかった。
◇
ちなみに戦績なんだがな?
『ラスボス戦、到達』まで行けてしまった。
いや、昔はこんな上手くなかったんだぜ?
それこそ若い頃は好きな機体を格好良く動かす事が第一優先で、その他はなんとなくダッシュしたり剣で斬ったり、とにかくダメージの高いモーションを連発したり、難しいアクションに挑むこと自体に楽しみを見出してたし? ハンデ機体のキュサノオなんかに乗せられた日にぁRound3の壁で撃沈確定だったんだが。
「おろろんよる! そこの、右の! おろろんよるよっ!!」
相変わらずの謎言語なのだが、最近ではなんとなく理解できる部分が増えててな?
ペレさんのオペレートに従いながら戦うだけで明らかに有利なポジションを取れるんだわ。
それにーーー。
「避けすぎゆる! 目玉んついとるおる!?」
恐ろしいことに、敵の攻撃の当たり判定がわかる。
幻覚的な映像? とでも言うのか。
ゲームでは普通、目の前の映像と当たり判定の大きさに誤差があるのだが、昔のゲームは特にそれが酷かった。
…のだが、今は目の前の映像に重なる感じで本当なら見えない判定部分の攻撃がハッキリと赤く光って見える。
たぶんな? 俺の脳ミソ宇宙人に弄られてんだわ。
敵の攻撃範囲がミリ単位で把握できるから当たらないし、画面外からの攻撃でも敵のダッシュしたタイミングと予測残弾数、あとSEから判断して攻撃が来る方向や避けるべきタイミングがわかるーーーとか。
もろもろ全部、これ明らかに俺のスペックじゃねぇよ。
こんなんプロのチャロナーとか、そっち系の人が何百何千と死闘を重ねてようやく辿り着くような領域であって、十年だか二十年だかの巨大なブランクを背負って遊んでるだけの一般人が出来て良い芸当じゃない。
大昔には存在だけは知ってても、カネ(プレイ回数)や脳ミソのスペック不足でまったく使えなかったテクニックも何故か完備。
キュサノオを本気で使うなら最低限の知識として覚えとけ、と云われる『九層飛び』(八層飛びのキュサノオ限定バージョン)とかの知識も発動方法も頭にある。
キュサノオの『九層飛び』は元々のコマンド入力タイミングが八層飛びやその他のテクニックに比べても非常に(非常識に)シビアなのだが、そこに加えて敵との距離でボタン入力のタイミングが変わるという特性を持つため発動が難しいというか、実質不可能に近いのだが、何故か普通に出来てた。
あり得なくない?
俺が知らない俺の知識によれば一般のテクニックが判定の始まりから±0.051秒(3フレーム)以内でのコマンド入力で成立するのに対して、九層飛びは±0.017秒(1フレーム)なんだぜ?
普通のヤツでさえ出来なかったのにさ。
俺…人間やめてるというか、やめさせられてる??
いつの間に改造されたん??
このワケワカメ状態なのに感想が『驚いた』止まりなのもまた怖い。
怖いんだがまったく恐怖感がなくてなぁ。
…うん。
また明日考えよう。
【九層飛び】(八層飛び)
効果はWT(ダブルトリガー)で発動する主力武器抜刀動作、及び初撃の近接攻撃をジャンプ行動でキャンセルしつつ、機体の周囲へ攻撃判定を発動させるというもの。
抜刀動作が致命的なまでに遅く、抜刀その物を封印せざるを得ないキュサノオにとっては正に神業…なのだが、そこはハンデ機体。
発動タイミングの厳しさは他のテクニックとは別次元なのだ。
この技のみ、敵との距離によってコマンド入力タイミングが異なるのだが、敵の機種により生じる誤差すらもそのタイミング変更に反映されるため『慣れ』程度の感覚では対処出来ない。
一流のチャロナーでさえ成功率は1割程度。
誰もが匙を投げるレベルであり、間違っても素人が成功させられる技ではない。
一応、この技の発動さえしてしまえば抜刀状態に固定されるためキュサノオの性能は格段に上昇する。
ネタ機体の本領発揮として盛り上がること間違いなしなのだが…。