ホシノの同期になって拗らせたいだけのSS   作:watazakana

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ホシノの同期になって拗らせたいだけのSS 1

アビドス高等学校の数少ない新入生だったホシノと私は、最初はあまり仲が良くありませんでした。カリカリしてるしユメ先輩に対する物言いとか強いしやたら強いしで。心証は最悪です。

ユメ先輩が先輩であることを良いことに、ユメ先輩の意見を肯定しつつホシノに対して強く当たってストレスを発散してました。まあそれで喧嘩になることもあったんですけど。

でもホシノも私もユメ先輩の死を止める力なんてありませんでした。ユメ先輩は亡くなって、ホシノも私もしばらく口を効かない日が続きます。

時間が経つにつれて、私たちは立ち直る時期に差し掛かりました。

ずっと二人、無口。心がどうにかなりそうでした。だから、先に私が口を開きました。

 

「ホシノ。これから、頑張らないとね。二人で」

 

ホシノは黙ったままでした。続けて本音を言いました。ムカつくこともあったけど、でもホシノは正しいんだって。ユメ先輩は間違ってたわけじゃないけど、でもホシノのそこにかけた思いは間違いじゃなかったでしょ。私が失敗なんてさせない。ホシノがやることは、私が正しくするよ。私は後ろから舗装するから、ホシノは道を作って導いて。と。

 

そこから、会話はぽつりぽつりと増えていきました。

 

新入生がやってきました。お金持ちな家の娘であるノノミちゃんです。私たちのことを揶揄いに来た、わけじゃないみたい。深刻な面持ちで、実家に借金の肩代わりをさせてくれって言われた時はびっくりしました。まあ、断ったんですけど。

ホシノが明るい口調を始めたのはこの時で、その時、無理をしているのだと感じて、そんなホシノを嫌に思うこともありました。

でも、それがホシノの選択なら、特に言うことはありません。ホシノが成すことを否定するわけにはいかないのですから。

 

ノノミちゃんが来てから、ホシノと私の二人で会話することは少なくなりました。だから、私はいつしかあの口調に慣れました。

冬、独りで暴れていたシロコちゃんを捕まえました。総出で可愛がりました。いよいよ、ホシノの本当の姿は記憶の中だけになりました。

 

一年生が入ってきました。セリカちゃんとアヤネちゃん。本当にいい子たちばかりですが、少し世間を知らないところもあって、「おじさんたち、まだまだ忙しそうだねえ」と、ホシノは保護者面をしました。私は、満たされた気持ちになりました。ユメ先輩には力及ばずできなかった、「正しさの保証」。私は今、それができているのだから。

お互いいい顔じゃない?おじさんとおばさんの貫禄が出てる。と言えば、うへえと返すだけでした。

 

程なくして、連邦生徒会長が失踪して、先生が来ました。アヤネちゃんがいつの間にか先生に助けを求めていたそうで、その場では流しましたが、やはりモヤモヤはしました。ホシノと私じゃ、力不足だったかなって。どうせ詰んでいた学校、先生がどうすることもできないだろうけど。でもこの子達には希望に見えていた。私たち以上の希望に。

 

それって危なくない?私がホシノの正しさを担保できなくなるかもよ。だって、大人は私より正しいのだから。

 

先生を初めて目にした時、つまり、ヘロヘロになってシロコちゃんに背負われてる姿を目撃した時、私は心配は杞憂だったと安心しました。ですが、セリカちゃん救出、便利屋撃退、と日々大人の力を示していく先生は、間違っていなかった。1年生からの信頼を勝ち取った先生は、私の楽園をじわじわ奪っていく悪魔に見えました。

 

でも、アビドスを脅かす本物の悪魔は、何年も前から私達を搾り尽くしていました。対策委員会は、どれだけ返しても返しきれない借金のアリジゴクに、最初からはめられていました。「合法的」に。それが先生のおかげでわかって。わかってしまって。

 

「ホシノ、もう懲りたでしょ。大人が私たちを餌としてしか見てないってことくらい」

「うへぇ、どしたのいきなり……」

 

知っている。あの時からホシノは私と同じ景色を見てきたんだ。ホシノが簡単に大人に靡くはずがないんだ。だって、私がいるから。私が既にホシノの正しさを証明しているから。大人は汚い、信じなくてもホシノが居れば……

 

「さっき言われたんだ。先生から、『大人としての責任を果たす』ってさ」

 

あ、だめだ。

 

「大人なんて、信じきれるわけないのにさ」

「そうだよ。私たちは私たちしか居ない。言ったじゃん、二人で頑張るって。だから……」

 

ダメだ。私、ワンチャン信じたくなってる。

 

「でもさあ、あれだけ堂々としてたら、信じたくなっちゃうよね」

「ホシノ」

「あなたなら、きっと大丈夫。私が居なくても、先生と一緒に正しい方向へ導いていける。あなたが居ると、心強かったよ。今度は後輩たちに、正しい道を教えてあげて」

「待っ……」

 

ホシノの袖を掴みかけ、退げる。止められない。止められるわけがない。私はホシノの選択を正しいものにするのだから。彼女の自暴自棄にも似た行動を否定しない。彼女の思いが間違いだなんてそんなことは誰にも言わせないんだ。それが、アビドスを潰す選択だったとしても。でも、これは詰みです。こうなってしまったら、ホシノはきっと失敗してしまう。私では正しいって言えなくなる。アビドスが潰れる。「その次」は、無くなってしまう。先生のせいで。先生が私たちの間違いを指摘したから。正しいことを教えてくれたせいで、私が正しさを保証できなくなった。だから私は、ホシノを失おうとしている。

先生を呪う気持ちを抑えて、私は即座に頭を回転させる。ホシノ自身が戻ってくるためには。アビドスが助かるためには。ホシノが間違わないためには。

 

気付けば、走っていた。東にずっと。終電過ぎ、配車サービスは砂漠をサービス対象にしていない。走る。走る。先生がどういう大人か監視していた時の記憶とスマホのマップを頼りに。体力はとうに尽き果てて、でも脚は前に出さなければならない。ホシノが居なければ、アビドスもユメ先輩が遺したものも、何も残らない。私はショットガンなんか使えないし、盾を使う戦術なんか覚えられない。前に出るだなんて、到底性に合わない。だから私には、先陣切って皆を守るホシノが必要なんだ。正しくも強くもない私に導くなんて無理なんだ、私は誰かの正しさに依拠しなきゃ生きていけないんだから。

 

無力感で視界が濡れる。私なんか、居ても居なくても一緒。先輩も、ホシノも、守る支えるって言いながら結局肝心な時に引き留められていないじゃないですか。

 

「先生、ホシノを、ホシノを助けてください」

 

今なんか、都合よく大人を頼ろうとしている。私は無力で無駄でゴミカスで、未だに子供なんです。

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