ホシノの同期になって拗らせたいだけのSS   作:watazakana

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「私」は罠で嵌めてケタケタ笑うタイプの戦い方をします。
小規模ですが、かなり編集を行ったため、再掲です。


ホシノの同期になって拗らせたいだけのSS 3

夜が明けると共に、アビドス高等学校へ着きました。誰も来ていない静かな校舎で、先生と私は皆を待ちます。先生は方々に連絡しながら待っていました。私は手持ちのスナイパーライフルの手入れをして、運動場で射撃の練習をしていました。一番最初に来たのはアヤネちゃん。私が銃を扱うところを初めて見たのか、驚いた様子でした。

 

「おはようございます、先輩」

「ああ、おはようアヤネちゃん」

 

今更時間に気付きました。銃をしまい、校舎に戻る用意をします。

 

「私の射撃、見たことなかったっけ。確かに、罠で嵌めるタイプの戦いしかしなかったからなあ……ノノミちゃんくらいかな、ホシノ以外に私の射撃を知ってるの」

 

ボルトアクション式のスナイパーライフル。少し遠出したときに買ったL96モデル。もともと持っていたのはアサルトライフルだったのですが、連射するタイプの銃は反動で照準がブレますから、性に合いませんでした。ホシノがショットガンで前線を張る役だったこともありましたし……まあ、結局罠に頼った戦法になったんですけど。

 

「……何かあったんですね」

「それについては、皆がそろってから話すよ」

 

照準合わせもメンテナンスも終えて惰性で撃っていた銃をバッグにしまい、下駄箱に。アヤネちゃんは深く訊いてきませんでした。

 

一人、また一人と学校に来ます。その度に、私や先生の表情で、何かを察します。

 

「全員揃ったね」

 

対策委員会の部室、ホワイトボードを背に、私は今朝見つけた「退部届」を机に置きました。「小鳥遊ホシノ」が書いた手紙を読み上げます。後輩たちは、言葉を失いました。

 

「ごめん、みんな。引き留められなかった。私がいながら……」

 

噴き上がるセリカちゃん、沈痛な顔でうつむくノノミちゃん。意を決しているシロコちゃん、戸惑うアヤネちゃん。誰もが冷静でいられないこの状況で、正しい判断ができる人なんて、居ませんでした。ですが、世界は判断を待てるほど、情のあるものではないのです。突然砲撃音が耳をつんざき、重い雰囲気は弾薬によって破られました。間もなく部室のドアを蹴破ったのは、PMCの兵士です。

 

「いたぞ、アビドス対策委員会だ!制圧し……ぐぁっ」

 

それについて、何の驚きもためらいもなく撃ちのめす後輩たち。いいえ、驚いてはいました。ですが、非常事態になれば全員が戦闘員になります。一旦思考を打ち切って、目の前の敵であろう目標を撃破する。アビドスなら全員ができました。

 

しかし、この不条理不可解な状況が、「なんとなく」で起きるはずもありません。PMCが動いている以上、こちらを攻撃しても良い理由がある……いや、私たちと戦争になっても、非難されない理由を既に作っている、ということになります。でも、学校を攻撃できる大義名分なんて、学校が企業に対する明らかな侵略行為をしたか、学校がその権利を剥奪されることでしか……

 

「……まさか」

 

最後のアビドス生徒会であるホシノを狙ったのは、それが理由?私が、ユメ先輩が居なくなったときに、生徒会を退会したから……ユメ先輩を捜すために、後ろ暗いことをするために、生徒会を抜けたから?もしかして、私が生徒会に残り続ければ、ホシノが居なくなっても、こんなことにならなかった?

 

だとしたら……

 

「あ」

 

私が、全ての間違いの引き金だ。失敗した。ユメ先輩の死から、ホシノを間違わせないと願った時から、私は間違えていた。正しくなかった。正しくない私が、ホシノを間違わせてしまった。先生なんかじゃない、私が。私が一番正しくない。

 

「私のせいだ」

「ああ、もう!先輩、今は戦いに集中してよ!」

「でも、私が間違わなきゃ、こんなことには……」

「とにかく、アビドスの住民たちの避難誘導を!」

「行きましょう、先輩。今はとにかく、状況をまとめないと。先生、指揮を頼んでも良いですか?」

 

間違った私が支えるホシノは、当然間違いだ。そんなことはあっちゃいけないのに。正しさって?私が掲げる正しさは、滑稽な寓話劇のおバカな主役だったのかな?

 

「ねえ」

 

先生が、私の肩を叩く。

 

「何があったのかはわからないけど、今ここで折れたら、あなたはホシノを助けられないよ」

 

嫌いな人の言葉だからこそ、余計に意識してしまう。そういうのが、私の悪いところで、子供なところなんだけど。

 

「……言われなくても」

 

何につけても、ホシノが助からないと、ですね。スナイパーライフルを担いで、皆の後ろをついていきます。

 

「アヤネちゃん、狙撃ポイントの提示よろしく。場所はアビドス高等学校自治区の都市部」

「は、はい!」

「それと、先生」

「何?」

「ここは私とアヤネちゃんで指揮する。大丈夫、後輩たちは強いから。それに……多分、PMCは合法だって言ってくる。先生が論破する算段をつけて」

「……わかった」

 

さて、と。私は私で、ホシノを助けるために最善を尽くしますよ。間違うことは怖いけど、ホシノが私の間違いで間違うよりはましですから。

 




「私」の名前、出るとしたら「村瀬ニコ」です
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