ホシノの同期になって拗らせたいだけのSS   作:watazakana

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「私」は罠が好きですが、罠のプロというわけではないので、アズサやハルカの罠設営能力よりは劣ります。


ホシノの同期になって拗らせたいだけのSS 4

ホシノがアビドスから離れて、途端に始まったカイザーPMCの自治区に対する軍事行動。

 

……大方、予想はついています。私が生徒会を離れ、ホシノだけがアビドスの楔になっていた。砂の大地に私たちを縫い付けていた。借金の山に縫い付けていた。アビドスは、ホシノありきの存在になっていた。それに気づかなかった私たちの落ち度が、今を作っていること。

 

住民に蛮行を働くPMC兵士をビルの屋上から狙撃します。破壊の規模、兵士の分布からして、おそらく中隊クラス。ゲヘナの風紀委員や、トリニティの正義実現委員会のように「究極の個人」を持っているわけではないけれど、その平均的なレベルはあれらを上回る……。100近い人数を相手に、たった5人で勝てるわけがありません。

 

「……だから、人通りの少ない場所には常日頃罠張ってるんだけど」

 

地雷も岩雪崩の罠もガスも大して効果がなかったようです。風紀委員会には一定の効果を示しましたが……一人一人がイオリ直属と同等の戦力と考えれば、流石に通りませんね。

 

「最大200人と見込んで、活動しているのは概算で100人以上は流石に堪えるって」

 

コッキングの小気味いい手ごたえの後、照準合わせ、引き金を引き、反動を肩で受けます。住民に危害を加えようとする兵士を最優先、次点で後輩たちが戦っている前線に火力投射をしようとしている砲台の破壊と戦車の撃破。あとは指揮官が居れば無力化。場所を変え、罠を変え、クリップでまとめた弾丸を詰め、銃撃。銃の腕は落ちていないようで、少し安心しています。

 

しばらくして、とうとう腹に据えかねたのか、恰幅のいい男が後輩たちを前に姿を現しました。カイザーPMCの理事……丁度いい、拉致して拷問にかけてでもホシノの居場所を聞き出すチャンスです。一旦銃をしまい、後輩たちの元へ行きます。しかし、道中のアヤネちゃんの気勢がみるみる削がれていくのを聞いて、嫌な予感が的中するのを感じました。

 

「ごめん、遅れた」

「先輩……」

「ほう……君がホシノの同期か。名前は確か……すまないね。小鳥遊ホシノ以外は覚えていても仕方のないものだからな……おっと」

 

私が銃口を向ければ、PMCの兵士が何重にも圧をかけてきます。横目で見つつ、引き金に指をかけます。

 

「そ。なら何某とでも呼べばいい。で、説明して?貴方達はどういう名分の元、ここを攻撃してるの?」

「何、と言われても。わからんかね。アビドス高等学校が消滅した以上、ここはカイザーPMCの私有地だ。私有地に無断で滞在している者は立ち退きしなければならない。だが、ここにいる者は聞く耳を持たなくてね……やれ『聞いてない』『突然過ぎる』、うるさく聞き分けのない者には、実力を以って排除するしかないだろう?」

「私有地だとしても、武力による住民の排除は行政機関による執行を待つべき。そういった手続きはしたの?」

「我が社はPMC、民間軍事会社。傭兵企業なのだよ。軍事が全ての世界だ、事業一つ一つが重要な機密になりうる。高度な機密が住民──否、『侵入者』によって漏洩されるなどありえない……自社の裁量で許される範疇だ。法律や規則の議論がしたいなら、それこそ我が社の法務部門と気の済むまで話し合うと良い。我々にとっても時間は有限なものだ。これ以上用がないなら、お暇させていただく」

「……そう、そういう認識なら、私たち対策委員会のことをどうして無視できるの?」

「君たちは、生徒会に認可された公式の部活動ではないだろう?」

「認可してないのかよ、ホシノ……」

 

だろうと思いました。おそらく、ホシノはいつでも自分を切り離せるようにしていたんです。私はこの辺りに口出しはできません。生徒会に所属していないから。そして、そんなホシノを正しくするのが私の役目だから。

 

「小鳥遊ホシノの涙ぐましい献身によって、君たちはアビドス高等学校の借金を返済するという責務から解放された。それでいいじゃないか。全く正しい。だというのに、いったいなぜ、そこまでアビドスに拘る?」

「私は……」

 

本当のことを言うと、私は、ホシノが私の傍に居てくれれば、それでいいんです。アビドスなんかどうでもいい。どうせ詰んでいる学校です。後輩たちがちゃんと学んで、社会に出てくれれば万々歳。志半ばで廃校になって散り散りになっても、それはそれで仕方ないものだと思っています。でも、ホシノは。ホシノは、1年のころからずっとアビドスを想っていました。その想いを、私は否定したくないんです。

 

「小鳥遊ホシノの大切な宝物を、私の間違いで失いたくない。ホシノが愛しているこの土地を、ホシノのせいで失う。そういう未来を避けるためにも、私はアビドスを守る責任がある」

「でも、存在しない責任を、どうして負えるんでしょうか」

 

私の耳元で、アヤネちゃんは言いました。

 

「もう無いんです。無いんですよ。アビドス高等学校は。非公認の委員会に、何ができるでしょうか。私たちはもう、生徒ですらないかもしれない。そんな私たちを、誰が助けてくれるんですか?」

「……」

「だそうだが、何某君?君が成す努力も、君たちが成す努力も、何のためにやってきたんだ?詰んだ学校を選んだ虚しさをごまかし、慰め合うためだと思っていたが……」

 

瞬間、発砲音がしました。私の銃からでした。理事の足元の舗装が抉れます。

 

「ごめん、あんたが煽っちゃうから、つい力んで発砲しちゃった。次当たらない保証はないから、言葉は選んでくれると助かる。ついでに言うと、ウチの後輩たちも完全に制御できるわけじゃないから。そういうの、ホシノの役割だし」

「おお、なかなか怖い顔をするじゃないか」

 

全員が臨戦態勢に入る中、一人だけ、制止する子が居ました

 

「……やめましょう、先輩がた」

 

アヤネちゃんでした。

 

「今戦って、『次』はどうするんですか?」

「……アヤネちゃん」

「今も、凄い数の兵力がこちらに向かって来ています。戦って勝っても、そこから先が見えないんです。勝っても、土地は戻りません。アビドスを取り戻せても、莫大な借金が残るままです……」

 

絶望。私が今まで持っていた、ふんわりとした諦観が、一気に凝縮されて後輩たちに襲い掛かっていました。まともであればあるほど、その仕組みに希望を見出すことはできません。

 

「そうだね」

 

私はそれを否定することができません。その意見は至極正しいのですから。

 

「確かに、アヤネちゃんの言う通り。ここで戦うことが、学校を取り戻したり、借金がチャラになったり、ホシノが戻ってくることに直結するわけじゃない」

「なら……」

「だからこそ、今からアヤネちゃんに、わがままを通す上で『足掻くこと』の重要性を教えます。負けは負けでも、惨めな敗北しかない、なんてことはあり得ません」

 

コッキング。薬莢が地面に落ちます。

 

「ノノミちゃん、面制圧を頼みます。セリカちゃん、装甲車両の優先撃破。シロコちゃんは理事を拉致して、逃走。私が殿を務めます」

「これはまた大きく出たな。できると思っているのかね?」

「できる、できない、じゃあないんだよ。できなくても私は最大限抵抗する。ヘイローが壊れるまでに、どのくらい損害を与えられるかな?軍事に関して素人な女子高生6人を相手にどれほどの資源を投じた?もう既に損得勘定で言えば損してるよね?たった6人のために何十人、何百人と人員を投入する。このことをネットで拡散したらどうなるかな?」

「……なるほど」

 

理事の声色は一段と低くなりました。

 

「軍事が全て、なんでしょう?ゲヘナ風紀委員会と拮抗するか、少し優位程度の実力なら、どこぞの便利屋にでも依頼した方が安いし、信頼できますよね?」

「……君の意図はよくわかった。では、望み通りにするとしよう。これは侵入者の排除などではない。テロリストたちとの戦──」

 

その瞬間です。遠くから、近くから、多数の爆発音が響き渡ります。どうやらカイザーPMCを狙った爆破のようで、たちまちPMCは混乱に陥りました。私も少々混乱しています。

 

「え、何?」

 

全員が首をひねります。が、すぐに高らかな笑いが聞こえてきました。

 

「嬉しいことを言ってくれるじゃない!そのおだてに免じて、今回はタダで仕事してあげる!」

 

爆発につぐ爆発の中、現れたのはいつかの4人組。たしか、アル、だっけ。その子の純粋で清々しい笑顔が、一番目立って見えました。

 

「あなた達、何をしているのかしら?玉砕だなんてらしくない。覆面水着団の名が廃るわ」

「……あんたに何が」

「仲間を助けるんでしょう?助ける前に分の悪い賭けをするのは自暴自棄になってる証拠よ。『目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く』……それがあなた達のモットーだったんじゃないの?そんな余計に頭回してるからドツボにハマるのよ」

 

突然に叩かれたかのような、目の覚める衝撃が、言葉に含まれていました。

 

「それ、ホシノの……」

 

そう、そうでした。ホシノが正しいんだから、その言葉もまた正しいんだ。私は、その言葉に従い、ホシノの正しさを証明する。便利屋は……先生の手配だろうけど。それもまた、利用するまでです。

 

「便利屋さん、少し協業しましょうか」

「言われなくともそのつもりよ、依頼されたら、クライアントの要求には必ず応える。それが便利屋68ですもの」

 

 

 

 

 

 

 

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