ホシノの同期になって拗らせたいだけのSS   作:watazakana

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村瀬メイ

好きなもの(公称):ホシノの好きなもの
本当に好きなもの:毛のふわふわした動物



ホシノの同期になって拗らせたいだけのSS 6

アビドスの砂漠は、大部分が所謂砂砂漠と言われる部類です。え?砂漠にも分類があるの?って?ございますよ。このキヴォトス、砂漠はアビドスの専売特許ではないですから。確かに、大規模な砂漠といえばアビドスですけれど……

 

砂漠には、多く分けて「岩砂漠」「礫砂漠」「砂砂漠」があります。それぞれ頭の漢字が示すものが多い地形です。岩がちな地形の岩砂漠は遮蔽が多く、高低差も激しいです。ここ数十年で急速にその割合を減らしている分類ですね。礫砂漠は礫……つまり、小石や大きめの石がごろごろしています。ここは開けた場所ですが、走るにも、撃つにも、石ころが邪魔をします。砂砂漠は、皆さんが砂漠と言われて最も想像するであろう砂漠です。最悪です。まず砂丘が視界の邪魔をします。灼熱の砂は照り返しによって肌を焼きます。足場は緩く、機動力も半減です。一様な視界や蜃気楼現象の為、遠近感も狂ってしまいます。アビドス砂漠は、私の最も苦手な戦場であり、そのために罠を愛好するようになりました。砂漠の環境は、私には少し逆風です。

 

しかし、それは「灼熱の砂漠で、少人数で奇襲する」という状況だった場合です。先生はトリニティとゲヘナの両校に協力を要請し、彼女らはそれを快諾しました。どういう理屈かはわかりません。トリニティは牽引式榴弾砲で前線を耕し、ゲヘナ風紀委員は耕された前線を踏み越えて、戦線を押し上げていくではありませんか。このような電撃戦じみた大人数での奇襲による混乱の中では、狙撃なんて飛ぶ鳥を落とすよりも簡単です。

 

「……村瀬メイ」

 

さて。私の名前を呼ぶ声です。落ち着いた、少し気だるげな声。そう。風紀委員の中には、空崎ヒナも含まれていました。倒れ伏した兵士たちを背に、ヒナはその顔を私に向けました。

 

「ヒナ」

「これで借りは返した、ってことでいい?」

「まさか、貸しを作った気でいなよ。私としては、あの謝罪で十分だったんだから」

「……ありがとう」

「お礼は私たちに言わせて。アビドスの立つ瀬をなくしたいなら、話は別だけど」

 

ヒナは一瞬ムッとして、「小鳥遊ホシノを、お願い」と言いました。知らないところで関係性が生えてる?

 

「当たり前。『ただいま』って言わせて満点だから」とだけ返して、その場を後にします。

 

 

「……案外恥ずかしいことを平気で言うのね、村瀬メイ」

 

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アビドス高校本校跡地

 

 

さて、気の引き締め時です。敵の本拠地ほど、攻め入ることが愚行になる場所はありません。先生やアヤネちゃんと合流して、全員で攻めます。

 

「ホシノ、どこだ!」

 

どこに居るのか、までは流石に引き出せなかったので(本校はそれだけ広く、迷宮でした。かつてのキヴォトス最大勢力だったころの遺産はすさまじく攻略を困難にしています)、呼びかけとソナー、そして見取り図を頼りに進みます。

 

「いたぞ!囲い込め!!」

 

そして、それは自身の位置を知らせることにもなります。ノノミちゃんの掃射であらかたを排除した後、セリカちゃんとシロコちゃんの同時攻撃。そして気絶した敵に爆弾を仕込みます。もちろん、それで死ぬほど兵士は貧弱ではないので、新しく来た兵士を気絶させたり、気絶時間を延ばす以上はないのですが。

 

シロコちゃんとアヤネちゃんのドローンで偵察を行い、それらしい場所へ直行します。

 

「ホシノ!ホシノ!」

「ホシノ先輩!」

 

奥へ、奥へ。罠を張り、警戒中の兵士を狙撃し、見つかればなぎ倒し、地下へ向かいます。螺旋階段は隠れる場所がなく、辛いですが、ここ以外に経路がないようです。

 

「先輩、地下最深部、大きな鉄扉あり、すごい警備の数……!」

「じゃあ、そこがホシノ先輩の場所だね」

「急ごう、時間がない」

 

先生の真剣な口調で、全員が足を速めます。

 

「時間がないなら、先生は皆と一緒に前へ。私はここで全部の爆弾を使うよ。爆発の煙を盾に突破して!」

「わかった!」

「さあて、待ち伏せしているみなさんですが。そんな時代劇の騎士みたいな作戦で良いのかな?密集しているってことの弱点、大人の指揮官なら理解しているはずだけど!」

 

警備を強化する、そしてこれから来ることが確定している脅威を迎撃する。それなら、『多対一でも勝てる精鋭1体と若干の取り巻きを置けばいい』んだ。でも、そんな戦力は今屋外でしょう?だからそうせざるを得ない!正しい、全く正しい。アビドスだけを相手取るなら満点の正論。門前払いさえできればいいのだから。でも読みが外れたね。私たちが、先生が負け戦に突っ込むと思ってる時点で間違ってるの!

 

「この時のためにとっておいたんだ、ミレニアム製爆弾60号!!」

 

それに着火し、下に向けて手放します。それは重力加速度に従って加速し、敵集団の頭上で弾けました。悲鳴と混乱を見るに、大成功なようです。上から来る追手を狙撃しながら、下へ降りていきました。

 

----

 

降りた先は、倒れた兵士たちの山、そして強引に開かれた扉。

 

「ありがとうみんな、ホシノは無事?」

 

声は自然と弾みます。しかし、皆の顔に喜びの色はありません。動揺と、困惑だけです。

 

「……ああ」

 

自然と理解します。カイザーPMCは、「正解」を選んだ。「私たちと戦争をする」、その気でずっと居たんだ。目の前の桃色を見れば、わかります。その目、大切なものを手放した、その目。

 

「ほんとに来たんだ……メイちゃん、なんで来させちゃったのかな。私を正しくするんでしょ?だったら、私が大人に騙されたことすら正解にするのが、あなたの役目じゃない?」

「……ホシノ」

 

私の犯した間違いと、対峙する時間が来ました。

 

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