2月19日、昨日から続く雨はぬかるんだ地面に川を作った。
「はあっ───はあっ」
霊体化したらそのまま座に帰ってしまいそうなほどの魔力量しか残っていない、願いより、なにより許せなかったのだ。
私を召喚したマスターが、私を召喚したのにも関わらず、あの様なことをしていたのが。
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瓦解した工房、折れ枝垂れた管から電流が音を立てている。
「こんなことをしても無駄だぞアサシン。」
「お前が逃した子供は社会を知らない、この日本において生きる術を知らないヤツらだ、殺したも同然だよ。」
彼は指を鳴らして使いを向かわせた。
「俺はサーヴァントとやらの扱い方をよく分かっていなかった。」
輝く令呪の光が邪悪さを孕んで見える。
「令呪を持って命ずる、俺の命令以外で動くな。アサシン!」
光が霧散して風となってアサシンへと襲う。
チャリン。
数枚の銀貨が床に落ちて響く。
物憂げな表情をしたアサシンは、またか。と溜息を吐いた。
貫頭衣に隠れた手と持っていた麻袋を目前に掲げた。
「
彼は自身に目の前の相手を殺す命令を下した。
「なっ…重ねて命ずる!!止まれ!!アサ」
豪奢な装飾が施された両刃のナイフが胸を裂いた。
白い貫頭衣に直線の返り血が鮮やかになる。
「こんなことをしてもお前に得は無いぞ…」
「アサシン…いや、
呪いのような断末魔でこの工房と共に脈を止めた。
「祝福する者でありたい。」
「それが私を英霊たらしめた願いです。」
マスターが居ない今、ユダには単独行動のスキルによって残された1日のみ。
最後まで自分に出来ることを探そうとする彼は工房を後にし、冬木市の郊外を練り歩き始めた。
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まもなく消滅するこの体、この身を打つ雨がこの場所に立っていることを思い出させる。
立っているのもバカらしくなり、近くの木を支えに膝を下ろした。
「主よ。」
「どうかこの私に誰かを救う力をお与え下さい。」
幸か不幸か、感覚の薄れていく彼に打ち付ける雨を1本のビニール傘が遮った。
あぁ。と理由もなく、納得したような息をついた。
「あの、大丈夫っすか?風邪ひきますよ?」
手を差し伸べた優しそうな好青年。
その手を取るか否か、決めあぐねる間があった。
(ダメだ。ここで、ここで手を取ることは彼を巻き込むことを意味する。)
「あぁ、大丈夫だよ少年。君こそこんな雑木林に居ないで早く、」
「大丈夫なわけ無いでしょ、あきらか血が付いてるじゃないですかその服、言えない理由があるのは何となく分かりますが、尚更放って置けません。」
「さ、俺の家近いんで、ほら。」
下ろそうとした手を厚い手が引き上げた。
救われた気はしなかった。
むしろ、この先彼が私の手を取ったことで巻き込まれる全てに対して私は歯を食いしばるしか無かった。
その時。手を取った彼の左手とは逆の右手に令呪が宿ったことを知る由はない。
その身に刻まれた裏切りは心一つで覆そうとするには重すぎること。
そして
その身に染みる優しさが彼の霊基に染み付いた後悔を思い出させた。
アサシン : イスカリオテのユダ
ステータス
筋力 D 敏捷 B 耐久 C+
幸運 A 魔力B 宝具C+
クラススキル
気配遮断 B
所有スキル
十二使徒 EX
奇跡を起こす人の使徒であることを示すスキル
あの人から授かった権能ということで今回の現界では周囲の耐久ステータスを一時的に一段階上げるものとなっている。
宣教A+
あの人から教えを受けた者としてのスキル
自分の周囲に大魔術を展開することが出来る。
手を伸ばした時にできる円の範囲内に発動できる。
単独行動C
マスターを失った場合でも1日の限界が可能
宝具
(第一宝具)
「三十枚の銀貨」
ザ・ラスト・サパー
擬似令呪のような宝具
彼が生前あの人を銀貨30枚で売ったことが宝具に昇華した。
性能的には「あの人を裏切った」以下のことが銀貨30枚を使用するとこで行使できる。
しかし、ユダ的に「あの人を裏切る」以上のことは決して存在しないため、擬似令呪のような宝具と形容した。
銀貨30枚は1回の契約に1度だけ使用可能でマスターにこの宝具の使用権と銀貨自体を渡すことが可能。
自身に使用することも可能。
自身で発動する際はカウンターのような使い方しかできない。
(本編中の使用は令呪へのカウンターです。)
追記
編集のバグでルビが反映されていなかったので再投稿させて頂きました。