冬木市北西部
アインツベルン城
反射が眩しい大理石の床には、1つの絵画がイーゼルに立てられていた。
[救世主]
男性版モナリザとも言われたその作品は、
ルネサンス期の芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたものである。
光が差し込む大広間に、
水銀で書かれた召喚陣。それと絵画一点。
イリヤを見守るホムンクルス数体を除けば、たったそれだけだった。
それだけでも様になるのはこの城のせいか、それとも。
少女が少女らしからぬ集中力を以って、長い詠唱を始めた。
水銀は揺れ、絵画を中心としたこちらを
光と共に風が止んだ後。
一人の
絵画は儀式中、揺れることはなく、誰かが持っていたかのように、ただそこに佇んでいたという。
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「キャスター」
「レオナルド・ディ・セル・ピエーロ・ダ・ヴィンチ」
「本当はライダーで出てきたかったのだけど、」
「先を越されたみたいでね、」
「気軽にダ・ヴィンチちゃん、なんて呼んでくれたまえ。」
イーゼルを支え、飄々とした口調で現れた彼女?に、一同は唖然とした。
「セラ、リーゼット、下がっていいわ。」
「彼、敵意は無いみたいだから。」
大広間に2人と1作品。
「…イリヤ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。私はキャスターって呼ぶけど、あなたはイリヤでも構わないわ。」
つんけんとした表情に彼はすかさず会話を繋げる。
「それはありがたい!私は「マスター」という呼称が苦手でね、是非そうさせてくれ、イリヤ。」
「それにしても…君は…その魔術回路の多さ、」
「ホムンクルスよ、ここに住んでいる全員。」
一つの沈黙を置いて囁く。
「座というものは少し寂しかったけど、こんな機会滅多にないだろう。私の寂しさなんて安いものだったのさ。」
今にもイリヤをモデルに1枚仕上げそうな彼に対し、すこしやりづらい感触を覚えた。
「触らせないわよ。」
ダ・ヴィンチの変態性に当てられ、呆れて吐き捨てる。
「大丈夫さ、見てるだけでも十分興味深い。特に君はね。」
さて、と一息。
「今回はキャスターだ、早速工房の制作に入りたい、」
「使用してもいい部屋はあるかな?」
こっちよ。そう言って小さく歩幅をきかせる。
後ろを行くダ・ヴィンチは、イリヤのホムンクルスとしての完成度に感動を覚えたと同時に、
白肌の節々から見受けられる、彼女が受けてきた「調整」にかなりの嫌悪感を覚えていた。
「話には聞いていたけど、酷い話だよ。」