Fate/stars night   作:観測者さん

5 / 20
幕間 2月15日、晴れ

監督補助への任命から20時間後

シアトルから成田までの航空機内

 

ロングコートに身を包んだ彼女は、夢の中で雷鳴を聞いた。

雨の街と呼ばれるシアトルでの生活が長すぎたか、ついき夢に出るようになったのか、とため息をついた。

 

CA(キャビンアテンダント)に注がれたコーヒーを飲もうと、紙コップに伸ばした右手を見て心臓が跳ねた。

 

令呪。

3つの正方形が刻印された右手を急いで隠した。

 

なん…で?

要因を捜した、自分が聖杯に選ばれる理由を。

そんなことは探しても意味が無いと分かっていても冷静でない自分では相反する行動を取ってしまう。

 

そういえば、第四次聖杯戦争での監督役は璃正神父。

言峰神父は令呪が浮かんだため1人の参加者と共闘という形で参加したと聞いたことがある。

 

我々(聖職者)でも選ばれることがある…のだと、前例があることにホットした。

 

 

冬木市 教会前

「聞いているよ、来栖 四潔(くるす しけつ)。ようこそ冬木市へ。」

 

器用に車椅子を操るのは、ここの教会神父で元第八秘蹟会、代行者。言峰綺礼神父。

 

「ああ、これに関しては構わないでくれ、10年も付き合っていれば足も同然だとも。」

 

外での立ち話もなんだ、と教会に入る神父に付いていく。

彼の背中には何か、活力というものを感じない。

初対面なのであくまで印象でしかないのだが、なぜかそう感じた。

 

 

「…ふむ、令呪か。」

 

「第四次は私も参加したよ。」

 

「結果は見事、エルキドゥという英霊に打ち負かされたがね。」

 

「しかし今回、私は監督役だ。なので一つ確認しなくてはならない。」

 

「来栖四潔。君は奇跡(聖杯)求めるか。(信じるか)

 

重みがあった、威圧感ではない。

参加者として経験と諦観した聖杯戦争というものへの警告を兼ねた一言だった。

 

「前回私は衛宮切嗣という男と対峙した。」

 

「その男の使う魔術は起源弾という、弾が撃ち込まれた相手の魔術回路を破壊するもの、君も聞いているだろう?魔術師殺しの異名は。」

 

「奴の起源弾が足を掠めた直後、私達は聖杯の泥に飲み込まれた。」

 

「端的に言うと、あの聖杯は中に厄災を抱えている。」

 

「悪性の塊、人類悪になりうる存在。」

 

「そんな物に飲み込まれ、足は遂に形だけの代物となり、衛宮切嗣も私も、この身体はあと五年と持たない程の呪いを抱えた。」

 

言峰神父の独白に固まった私に気づいた顔をした。

 

「…自分語りが過ぎたようだ、つまり、あの聖杯で願いなど叶わない。」

 

「おまけに、君の相対してきた異端者などとは比べ物にならない化け物たちが相手だ。」

 

タイヤのゴムの音がこのやけに広い教会に響く。

 

「それでも君は、この望みの無い戦争に参加するかね?」

 

令呪が熱かった。

じんわりと脈を打つように。

 

「先程、言峰神父はおっしゃられました。」

 

「あの聖杯で願いは叶わない…と、」

 

「この場で争っている聖杯とは、純粋な願望機では無いのですか?」

 

初めて口角が上がる姿を見た。

目の皺が上にあがる。

 

「あれはとても気味が悪かった、1度地獄を見たものでないと狂気に呑まれてもおかしくはない。」

 

口角は上がったまま、重く語る。

 

「あれは、とても歪な聖杯だよ。」

 

緊張と令呪の鼓動で、手汗が止まらなかった。

だが、

 

「わ、私は…」

 

「そんな歪な聖杯、見逃せません。」

 

「私に参加する権利があるのだとしたら、」

 

「願いなど無いです、無いですが。」

 

「その歪んだ聖杯、破壊します。」

 

「それは正義か?」

 

その目には未熟ながら確かな意思が宿っていた。

 

一息。

 

「確かに、君の意思は伝わった。」

 

「とはいえ、君は自身に令呪が浮かぶなどと思いもしなかっただろう、」

 

「触媒の無い召喚の場合、自らと性質の近い英霊が呼び出される…とされている。」

 

彼はゆっくりと教会の奥へと進む。

 

「しかし、アサシンのクラスを召喚できれば、呼び出される英霊はハサン・サッバーハのみと限られている。」

 

「全てが記録されていない過去の聖杯戦争でも、アサシンクラスの真名がハサン・サッバーハであるということだけは判明している。」

 

木製の重い扉を開ける。

そこには中庭と、地下室への階段があった。

 

「より霊脈に近い地下のほうが儀式は安定する。」

 

「参加表明の期限はあと6日程度だ。」

 

彼はまた祭壇の方へ進み出した。

 

「ゆっくりでいい、覚悟が決まったらそこの地下で英霊を召喚したまえ。」

 

「ああ、そう。」

 

「君は正面右の応接室を寝床にするといい、食事が出来たらこちらから声をかける。」

 

扉が閉まり、中庭には私1人となった。

 

 

 

「大聖杯の破壊…か、」

 

「私も丸くなったものだ。」

 

生気をまとわぬ背中は、振り返るように過去に耽けていた。

 




観測者さんです。
少し補足をさせてください。
この世界の第四次聖杯戦争(以下第四次B)ですが、参加陣営は以下の通りです。
セイバー:アルトリア 衛宮切嗣
ランサー:エルキドゥ 遠坂時臣
アーチャー:アタランテ ケイネス
ライダー:イスカンダル ウェイバー
キャスター:ジル・ド・レェ 雨竜龍之介
アサシン:ハサン・サッバーハ 言峰綺礼
バーサーカー:ダレイオス三世 間桐雁夜
監督役:言峰璃正 となっています。
Zeroと同じ結末を辿ったのはケイネスとウェイバーと切嗣のみです。
龍之介は切嗣に早く見つかってしまい始末。
雁夜はイスカンダルとの決着前に魔力切れや刻印蟲の侵食で退場しています。(決戦前にダレイオスが持ってきすぎて)
時臣なのですが、ここで語るには勿体なく。
そこそこ後に明かそうと思っています。
第四次Bのあとの大聖杯も少し原作と違うかも…?なので、それもお楽しみにしていて貰えると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。