カジミエーシュ。
かつては騎士が統治する国だった。
しかし今は資本主義化が進み、騎士道は商業化し、それを行うカジミエーシュの企業は内部の腐敗をもたらしていた。
また、辺境への政府の影響は微々たる状態だ。
国民から感染者への当たりは強く、それらを救済するための競技騎士制度は企業のいいようにまた国民の感染者への当たりを増させる原因となっていた。
そこにかつての名家ニアールの名を持つマーガレット・ニアールが優勝を果たし、その裏でロドスやレッドパイン騎士団、商業連合会、監査会等の思惑が重なり、カジミエーシュの抱える感染者問題に対して少しばかりの光を見せた。
マーガレット・ニアールはその後ロドスのカヴァリエルキ事務所で感染者への治療と保護並びに生活の手助けを行うこととなった。
カジミエーシュの都市はネオンに包まれている。
そこに映るのは様々なゴシップ、天災予報、新商品のCM、感染者問題を討論するワイドショー。
解決への道を歩み始めたとはいえまだまだ理解を得られない。
カヴァリエルキ事務所のオペレータ達は今日も治療や保護、連合や監査会への協議を行う。
そして幾月が過ぎた頃だった。
移動都市の運行を行っていた者は闇夜の先にネオンで薄く照らされるものを発見した。
移動都市の大きさをしていたうえこちらに突っ込む進路を取っていた。
大体3時間余りで衝突するという予想が建てられた。
これはカヴァリエルキの高層ビル群にいた人々からも見えており衝突が起きるんじゃないかという噂話がネット・現実問わず流布し始めた。
カジミエーシュ政府はこの事について緊急会見を開き、衝突が免れないこと、移動都市との連絡が出来ない事を発表した。
それと同時に政府は避難指示を出し、衝突しない区画への避難指示を行った。
感染者のいる区画があるとのことで感染者を追い出す動きがあったもののここを取り仕切っているマーガレットの存在や避難誘導を行う征戦騎士が移動都市の衝突から来るパニックを収め、避難者の収容を行った。
しかしながら感染者への偏見はまだ強いため避難は遅々としていた。
衝突はすぐそこに迫ってきていた。
そこで征戦騎士による移動都市への強襲及び運行停止を目的とした作戦が監査会と商業連合会で立案され、速やかに実行された。
これにはかつての無冑盟の者も有志として参加していた。
強襲軍は接近する移動都市へと歩を進める暇はない為ヘリからの降下で移動都市への強襲を行うこととした。
また、通常の征戦騎士の装備では重量に問題があったため競技騎士用の装備を装着した。
そうしてヘリへと乗り込み移動都市へと飛行していく。
その移動都市は何の光も発していなかった。
恐らく何らかのトラブルで電装品の殆どが死んでしまっているのだろう、と監査会や商業連合会は考えていた。
移動都市付近まで飛行しランディングゾーン確保のためライトで照らした時移動都市の全容が見えた。
それは曲線を描く鉄の装甲で覆われ、ランディングゾーンとなる場所は見当たらなかった。
どうしたものかと監査会が対応を模索していた時だった。
光が伸び、ヘリを貫いた。
あっけなくヘリは墜落した。
ヘリを貫いた光はネオンのように明るく、マーガレットのアーツを想起させるものだった。
これは避難中のカジミエーシュ国民、感染者、監査会、商業連合会の視界に突き刺さった。
移動都市の自己防衛システムに触れたと思った強襲軍ヘリは即座にブレイクするが、次々と光剣に搦めとられ蠟燭の火が落ちる。
残ったヘリからは征戦騎士が地上から槍の投函やアーツ攻撃を行うが外壁には傷一つ付かず光剣を薙ぎ払われ体を蒸発させ、全滅した。
この事態を見た監査会達は追加の派遣を取り止め、残った騎士や要人の避難を開始した。
カヴァリエルキを諦め、なんとか国家の存続を行う方向に舵をとったのだ。
強襲軍が全滅したことは避難民へ伝えられ、国家維持へと移ることを宣言した。
しかしこれをマーガレットはよしとはしなかった。
積もる問題あれど一度この地で掴んだ光は手放したくないと。
マーガレットは避難誘導から外れ、一人あの移動都市へと向かおうとした。
避難した後の無人の路地に出たところある声に呼び止められた。
元無冑盟のプラチナだった。
「あれを一人でどうにかできると?」
「だが、掴んだ光を、手放したくはない」
「あれだけの大所帯が手も足も出なかったというのに?」
「大体、今から行っても衝突までにあんたのアーツで撃破できる見込みは?」
「万一あんたが戻って来なかったとき感染者や商業連合会や監査会との関係がどうなるか」
「今は逃げるしかないのよ」
「確かにそうだ、今の状態は私によって成り立っている」
「感染者保護も感染者への理解も」
「だからといって感染者ではない者達の大事なものを見捨てることはできない」
「それに、強襲軍は上からの攻撃は行っていないだろう?」
「あ”~分かったよ、私も付き合ってあげる。あんたに死なれちゃこっちの仕事が山積になるからねえ。」
「オブザーバが必要でしょ?私がやるから。」
「矢じゃ効果が薄そうだしねえ」
「なんか分かったら伝えるから」
「で、そこまで行くのどうするの?ヘリはないわよ」
「大丈夫だ。この手がある」
そう言うとマーガレットは光になって飛翔していった。
「あんなんあり?」
「こちらニアール。対象へ着地した。」
「見えてるよー」
「と言っても今は何もわからないね」
「上側には光を発してこないようだ」
マーガレットがアーツ攻撃を放つも傷は付かない。
「硬いな」
他に何かないかマーガレットは歩き回る。
と、プラチナから
「なんかやたらと熱を放出している所があるんだけどそこってどうなってる?」
「待っててくれ。そこに行く」
マーガレットが言われた所に向かうとそこは穴が開いており思わず顔を背ける熱風を排出していた。
「どうやら排熱口のようだ。ここならアーツ攻撃が通りそうだ」
そう言うとマーガレットは自身の装備が熱で皮膚に張り付くのを厭わず排熱口にアーツを叩きこんだ。
そうして40分位が経った頃だろうか。
プラチナは一向に応答のない通信機に青い顔をしていた。
もう力尽きているのではと考えていた。
もうすぐそこに移動都市が迫っている。
その時移動都市の装甲の隙間から火を吹いた。
途端移動都市の移動は停止した。
プラチナはすぐさまその移動都市へと向かった。
上面に上りきる頃には征戦騎士がヘリで降下していた。
そこには酷い火傷を負ったマーガレットがヘリへ運び込まれていた。
気絶しているもののどうやら息はあるようだったのでプラチナは安心した。
かくして衝突は避けられた。ニアール家のマーガレット・ニアールによって。
移動都市の調査の結果、無人機だったこと、非アーツユニットで構成されていたこと、"レイレナード"という企業の機動兵器であること、"ORCA"という組織が運用していたことが判明した。
また外部の装甲は現在の技術では加工すらままならないため移動させることもできないことに手を焼いていた。
カジミエーシュはこれをものにしようと躍起になっている。
衝突未遂事件から数月後。
マーガレットはロドスへと治療の為移送され、療養していた。
ウィスラッシュやマリア、ムリナールはマーガレットの看病に入れ替わり立ち代わりで訪れていた。
ウィスラッシュとマリアからは泣いて無茶したことを心配され、ムリナールからは避難に徹するべきだったと言われた。
しかし、マーガレットは後悔はしていない。
自分の選択に、覚悟に。
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リンクスはORCA旅団AF、JETの撃破の依頼を受け作戦領域へと到着しこれを撃破した、が、一機足らなかった。
オペレータはブリーフィングとの情報の相違にクライアントへの説明を求めたが、依頼前までは確かにいたことをデータを持って説明され、オペレータもこれに納得せざるを得なかった。
が違約ではあるためクライアントからは違約金が支払われた。