前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第104話『聖なる錫杖、ベルク・シュテッケン』

 

 

 

 

 

「街に蔓延るゴミ屑たち! 神の信徒たるわたしが裁きを下してあげましょう!」

 

 ヒラヒラコスの少女はファンシーな格好とは裏腹にそういった過激なことを言いだす。

 

 神の信徒……? あの子、なんかの宗教の一員なのかな? やばそう。

 

 

「初対面の人間にゴミ屑だと?」

「女だからって手加減してもらると思うナヨ?」

「かるーく、お灸を据えてやらねえとなぁ?」

 

 

 ゴミ屑と罵られたヤンキーたちは当然憤怒。

 

 くるっと身を翻して俺たちからターゲットをコス少女に変更した。

 

 

「はあああああっ!」

 

 

 コス少女は気合いの入った叫びを上げる。

 

 そして『シャキン』という金属音が鳴った。

 

 

「ほげぇっ!?」

 

 

 次の瞬間、赤色の髪のアロハシャツヤンキーは見事にぶっ飛んで地面に転がっていた。

 

 

「神から力を分け与えられたわたしに街のゴミ風情が勝てると思っているんですか?」

 

 

 ひゅんひゅんっと風切り音をさせながら、コスプレ少女はどこから取り出したのかそこそこ長さのある金属の棒のようなモノを振り回していた。

 

 その棒を振り回す速度はめちゃくちゃ鋭く力強かった。

 あれで人を殴っちゃったの……? 

 こわいなぁ。

 

 

「こ、こいつぅ!」

 

「やっちまえ!」

 

 

 仲間の一人がやられ、残った二人のヤンキーは同時に少女へ襲いかかる。

 

 だが、ボゴッとかベゴッという人体を硬いもので殴打する嫌な音が奏でられ、次々とヤンキーたちは沈められていった

 

 あの少女、格好は珍妙だがすごい身体能力だな。

 男を二人相手取って腕力でも劣っていないように見受けられる。

 キレキレだ。

 

 人間離れしたって表現しても過言ではないクラスの動きである。

 

 

「ふう、また街の浄化に一役買ってしまいました」

 

 

 ヤンキーたちを武器で一方的に叩きのめしたコス少女は額の汗を拭って達成感に満ちた吐息を漏らす。

 

 

 うん……。

 まあ、何となくわかってたけど恐らく彼女が件のヤンキー狩りだろう。

 てか、浄化って風魔先輩みたいなこと言ってるぞ……。

 

 もしかして彼女も対魔人ってやつなの?

 

 そうならあの変な格好と実力も得心がいく。

 

「いや、彼女は対魔人ではないな。あれは登山に使う普通の杖だ。トレッキングポールとかいうやつだろう」

 

 風魔先輩がコスプレ少女の武器について見解を述べる。

 

 すると、魔法少女コスの少女は聞こえていたのかムスっとした表情でこちらを向き、

 

「トレッキングポールではありません。これは聖なる錫杖、ベルク・シュテッケンです!」

 

 棒をぐいっと俺たちのほうに突き出して高らかに言った。

 

 彼女の持っている棒は鳥谷先輩の伸縮トンファーみたいに引っ張ると伸びる折りたたみ式の杖だった。

 

 彼女が剣のように持っているのでそういう武器かと思ったが、逆さにすれば確かに杖だ。

 

 ベルクうんたらは彼女が勝手につけたネーミングっぽい。

 

「あなたたちは高校生のカップルですか? 夏休みとはいえ、未成年者がこんな時間に遊び歩くべきではありませんよ?」

 

 俺と風魔先輩は一見するとヤンキー界隈とは無縁な風体。

 

 ヤンキー狩りセンサーには引っかからなかったらしく、シャバのカップルと見做されて普通な対応でそう言われた。

 

 ふむ……会話が通じるなら少し問いただしてみるか。

 

「なあ、あんたはなんでこんな物騒なことをしてるんだ?」

 

 俺はなるべく刺激しないよう柔らかい口調で言う。

 

「ふっ……それはわたしの敬愛する神がそうやって生きよと仰ったからです。わたしを絶望の底から救い、力を授けて下さった山の神は言いました。『清く正しく美しく強く生きなさい』と……。長きに渡る準備期間を終え、わたしは今こうやって神から与えられた使命を粛々と遂行しているのです!」

 

 高らかにミュージカルでもやってるみたいな感情のこもった声音でコスプレ少女は力説してきた。

 

 ん? 山の神……だと? 

 うっ……何か思い出してはいけないような……。

 思い出したらなんか俺が悪いことになりそうな予感がする。

 

 

 

 

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