前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第107話『戦闘民族の王、キング・トール』

 

 

 

 

 

 

「まったく、戦いの最中に思考を飛ばすなど論外だぞ」

 

「ふん、お礼はいいませんよ。避けようと思えば避けられましたから。わたしが山の神から頂いた身体能力と反射神経を舐めないで下さい」

 

 風魔先輩に説教をされるもコス少女は不遜な態度を崩さなかった。

 

 それだけ自分の力に自信があるのだろうか。

 

「くそっ……なんだこの女ども……今の時代の無毛の猿人族はこんなに強いのか!?」

 

 残ったバッタ男は二人の戦闘力に恐れをなしたのかジリジリと後退りを始める。

 あいつ、逃げるつもりか? いや、逃げてくれたほうがいいのかな? 

 でも、よくわからん怪人を逃がしていいものか……。

 

 俺が考えあぐねていると、彼の背後に二つの人影が現われた。

 

「何を逃げようとしてるんだい?」

 

 後ろから肩を掴んでコウモリ男を押し止めたのは、ホストとかが着てそうな光沢のある白いワイシャツを着た優男だった。ボトムは用途不明のファスナーがたくさんついた白いダメージジーンズを履いている。

 

「キ、キング!? それにデュークまで……どうしてここに……」

 

 バッタ男はその優男に対して露骨にビビった態度を取っていた。

 いや、なんだあいつ? 急にふらっと現れたぞ。

 魔法少女に続き、いきなり現れるやつが連チャンとはクドいぜ。

 

「ちょっと面白そうな力の気配が集まってたからさ。物見遊山で来てみたんだぁ」

 

 優男はいかにも人の良さそうな笑みを浮かべてバッタ男の肩を叩く。

 

「そ、そうなんですか……ふへへっ……」

 

 卑屈な媚びた笑い声を上げるバッタ男。

 

「ところで、強い敵を前にして楽しみを見出せないようなやつはボクらの仲間にはいらないかな?」

 

「えっ? うわっうわっわああああああ―――ッ!」

 

 その瞬間、バッタ男の足下から火が立ち上り、あっという間にバッタ男の全身は燃えさかる炎に包まれた。

 

「ボクはキング……。今は昔――この時代からすれば古代の時代に最強と謳われた戦闘民族リヴァアス族の王、キング・トールさ」

 

 轟々とバーニングしている怪人火柱の明かりに照らされながら、優男は俺たちにそう名乗ったのである。

 

 

 

 

 戦闘民族の王……。

 こいつもやべーやつだな。

 俺はやつの名乗りを聞きながらそう思う。

 

 いきなり知り合いっぽいやつを燃やしちゃうし。

 風魔先輩とコス少女も警戒態勢を取っているが……。

 この白い優男……キングとかいうやつは明らかに先程までの三人とは格が違う。

 

 こいつに限っては、俺がサクッとやってしまったほうが事を荒立てずに終わらせられるのかもしれない。

 

 俺はそう思って秘伝の雷魔法を連中に放つ。

 だが――

 バチッと何かに弾かれたように俺の放った雷撃は対象に届く前に消えてしまった。

 

「へえ、君も雷を操れるんだ? 奇遇だね? 実はボクもなんだよ」

 

 優男ことキングは不気味なくらい澄んだ笑顔で俺に手の平をかざすように向けてきた。

 

 こいつ何やってんだ?

 ん?

 …………?

 

 これはっ! 

 

 俺は慌てて結界を張って『それ』を防いだ。

 

 特に雨雲はなかったはずなのに突如として雷鳴が轟き、俺の真上に青白い稲妻が降り注いできた。

 

 目映く光る路地。

 

 結界のおかげで風魔先輩やコス少女が巻き込まれて感電することは防げたが、周囲の電線には被害が及んでしまい街灯の明かりや建物の明かりが一斉に消えた。

 

「おいおい、やってくれるねえ……。損害賠償発生したらお前が払えよ?」

 

 俺が皮肉を言うも、キングはクリーンすぎて逆に胡散臭い笑みを浮かべるだけだった。

 

 今のをヤツがやったとすれば……。

 魔法ではなさそうだが同様の力で俺の雷魔法を相殺したってことか?

 こいつはマジでなんだ。ダンタリオンみたいな悪魔でもなさそうだし。

 

 勇者や転生者という感じでもない。

 

 なんか古代の戦闘民族とか言ってやがったが……。

 

「この時代は面白いよねえ。多様な種族性は失われて無毛の猿人族しかいないというのにたくさんの面白い文化や技術が生まれている。そして人も……君たちのようなよくわからない力を持った者たちがいる」

 

 両腕を拡げて、悦に入ったような表情をする優男。

 

「おい、その無毛の猿人族っていうの……お前はもしかしてメリタの地下都市と関係があるのか?」

 

 そう……さっきバッタ男が言ったときから引っかかっていたのだが、『無毛の猿人族』というワードは地下都市メリタの者たちが使っていたものだ。

 

 獣人ではない普通の人間を示す言葉のようなのだが、もちろん今の時代に使われるものではない。

 

「メリタ……? ああ、災厄に怯えて地下に閉じこもっていった大国の臆病者たちかな」

 

「臆病者だと……」

 

 グラスやガッツの顔が俺の脳裏を一瞬よぎる。

 

「そうだよ? あの時代、災厄と戦う度胸もなければ違う世界に飛び出していく勇気もなかった連中さ。災厄から逃げなかったボクらと同類にするのはやめてほしいね。まあ、同じ時代に生きていたという意味でなら君にとっては無関係ではないと言えるのかな」

 

 こいつのこの言い方。

 

 つまり、優男……キング・トールとやらは地下都市の祖先たちと同じ時代の人間なのか。

 

 ということは何万年も前の生命体?

 

「ふーん? 君はなんでメリタを知ってるの? あの時代にはいなかったよね? これだけ面白そうならボクが知らないわけないし。あっ、もしかしてメリタの連中ってしぶとく子孫がこの時代まで生きてたのかい? それはそれは……」

 

 キングは一人で納得したように頷きながら、どこか蔑んだように笑った。

 

「まあ、せっかくこの時代に目覚めたんだからさ。ボクとしてはいろいろこの時代を楽しんでいきたいんだよね」

 

 目覚めたということは寝てた……?

 眠りから覚めた的な?

 俺が彼の言葉の意味を吟味している間にコス少女が前に飛び出してきた。

 

 

「先手必勝です! アイスリーゼンヴェルト!」

 

 

 彼女がそう叫んで地面を棒で突き刺すと、その場所からピキピキと氷がキングの方向に伸びていった。

 

「へえ、こういうのを今の無毛の猿人族は使えるんだ。やっぱりだいぶ変わったねぇ」

 

 足下から凍り付いていくにも関わらず、キング・トールは興味深そうな笑みを崩さない。

 

 おいおい、そのままじゃ完全に凍っちまうぞ。

 

 

 

 

 

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