前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第111話『ここで彼女の暴走に終止符を打つ!』

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 まず絶対に人がいないだろう場所……ということで俺は二人を連れて将棋ボクシング文芸部の部室に転移していた。

 

 転移先を俺の部屋にすることも考えたのだが、風魔先輩はともかく得体の知れないコスプレ女を部屋に上げたくはなかったからさ。

 

「お、おい新庄君、これはなんだ? いきなり違う場所に移動したぞ!?」

 

 風魔先輩は突如変わった景色を見渡して狼狽していた。

 

「まあ、ほら、俺は魔王だったんで。そういう魔法も使えるんですよ」

 

「なんと摩訶不思議な……こんなことが現実にありえるというのか……」

 

 木刀を日本刀にできるビックリ人間が何言ってるんだか。

 

「山の神……あなた様に運んでもらうのはこれが二回目ですね!」

 

 コス少女が尻尾を振る犬のようにピョコピョコと接近してくる。

 

 そういえば前回は河原から地元の駅まで送ってあげたんだっけ。

 

 彼女にとっては見知らぬ場所だろうに一体どこなのかとかは全然気にならないっぽいな。

 

「えーと、君はやっぱりあのとき河川敷で会った子で間違いないんだな?」

 

「はい! あのときあなた様に命を救って頂いた者です! おかげさまで今はこのようにすっかり元気になっております!」

 

 やはり、俺が彼女に『傷や万病を治し、人間の能力を大幅に引き上げる幻の神水』を与えたことで馬飼学園のヤンキーたちは狩りの被害に遭ってしまったのだ。

 

 間接的にまた俺が花園を病院送りにしてしまったということでもある……。

 

 せっかく学園のヤンキー共から狙われる心配がなくなったというのに、此度の関与が漏れたらまた敵に回られてしまう。

 

 俺の充実した高校生活のためにも、ここで彼女の暴走に終止符を打つ!

 

「とりあえずだな――」

 

 俺が口を開きかけると先手を打ってコス少女が早口で喋り出す。

 

「体調だけでなく、神の名代としての力まで授けて頂き、あなた様には感謝してもしきれません……。あ、そうです! ご存じだとは思いますが、あの後、あなた様の山に祠を建てさせて頂きました。お気に召しましたでしょうか?」

 

 コス少女は目をうるうるとさせて褒めて欲しそうに見つめてくる。

 いや、俺は神じゃないし、その力は君の眠っていた潜在能力みたいなもんだから。

 というか、あの河川敷にあった祠を建てたのお前かよ……。

 

 そんな予感はしてたけど! 

 なに造ってんの?

 やれやれ……。

 

 こういうとき、どういう態度を取るのがベストなんだろう。

 

 暴走に近い、あまりありがたくない献身に対してのリアクションは非常に難しい。

 

「それでさ、あのヤンキーを狩る活動についてなんだけど」

 

「はい! この四ヶ月間、わたしはあなた様が与えて下さった力を最大限生かせるよう近接格闘術を習っておりました! 免許皆伝に時間がかかって始動が遅れてしまい……ようやく最近になってあなた様から頂いた使命を遂行できるようになったのです」

 

 始動しなくてよかったんだよ! 遂行すんな! 使命与えてねーし!

 

「ねえ、その活動、危ないからあんまりやらないほうがいいかな……なんて?」

 

 俺はチラッと反応を窺いながらコス少女に向かって提案する。

 この応対が正解なのかはわからないし、上手くやれる自信もないが……。

 だが、やるしかないのだ!

 

「ええ!? そんなっ!」

 

「ほら、今日みたいなメチャクチャ強い人外の存在と出くわすこともあるしさ」

 

 迷惑であると言わず、身を案じる風を装うのがミソである。

 

 押し並べて、彼女のような思い込みが強く信仰に近い感情をぶつけてくる存在は本人の行為や理念を否定するとショックで感情が反転し、今度は好意がそのまま憎しみに変換されるからだ。

 

 そのことは前世で似たような配下が数人いたのでよく知っている。

 

 というか、人外と出くわすこともあるってすげーセリフだな?

 

 これまでは都会がやばいって認識で納得してたけど、俺の地元にも地下都市やら200メートル越えの熊がでちゃったしな……。

 

 都会ではなく、そもそも現代の地球が本当はやばいのかもしれない。

 

 最近は若干そう思い始めていた。

 

「そうですね……確かにまだまだわたしは神の名代として力を振るうには力不足でした。あのような者に遅れをとってしまうなどお恥ずかしい限りです」

 

 そういう意味で言ったんじゃないけど。

 でも、結果的にやめてくれるならオーケーかな。

 力をつけたと認識したらまたやりそうな気がするが……どうだろう?

 

 まあ、そのときはそのときの俺に対処を委ねるか。

 

「私も研鑽が足りなかった。そのことをまざまざと思い知らされたよ。これでは魔の者と実際に対峙しても一族の役目を果たすことは出来なかっただろうな……」

 

 風魔先輩は反省タイムの流れと勘違いしたのか、自らの未熟さを勝手に嘆いてきた。

 悔しそうに唇を噛み締めて木刀を強く握りしめている。

 いや、あなたのほうは別にどうでもいいですが……。

 

 俺に責任はないし。

 

 

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