前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第24話『人間だもの』

 

 

 

「統治権は不要と? ならば何を所望する?」

 

「何もいらん」

 

「何も? 無条件で帝国の傘下に入ると?」

 

「いいや、俺は帝国には降らない」

 

「なら、ただ侵攻をただ静観するということ?」

 

「それも違う。俺は帝国とやらに尻尾を振るつもりはないし、攻めてくるなら叩き潰してでも地球を守る。要するに地球に来るんじゃねえってことだ」

 

 俺はしっしっと手を払う仕草をする。

 

 同級生の女の子にこんな失礼なことをする日が来るなんてなぁ。

 

「…………」

 

 江入さんは信じられないといったように目を見開いた。

 

 ほう、鉄仮面と思っていた彼女もこんな表情できたんだな。

 

 

「交渉は決裂と判断……。貴方を帝国の敵対者と認定する。次善手である、惑星との本格的な交戦開始前に対象を排除するフェーズに移行」

 

 

 江入さんは溜息を吐くと、どこからか金属製のベルトのようなものを取り出して腰に巻いた。

 

 

「本星に通信……現地生命体との交戦許可を申請する。こちら先遣調査クローン部隊所属、【エイリア】シリーズ、個体識別記号『ン・NA』。戦闘鎧の使用許可を願う、許諾確認――」

 

 

 そして視線をやや上に向けて見えないどこかにブツブツ呟いたかと思うと、

 

 

「『 ≪インストーリング≫ = ゴルディオン・トマホーク』」

 

 

 スマホみたいな長方形の端末をバックル部分の窪みにカチリとセットした。

 

 

 

 

 

「おおっ?」

 

 気が付くと、黄金に輝く鎧を纏って巨大な斧を携えた江入さんがそこにいた。

 これはパワードスーツというやつか?

 小柄な江入さんが重装歩兵みたいな雰囲気で厳めしくなってる。

 

「この異空間フィールド内では、私の戦闘力は飛躍的に上昇する。さらに戦闘鎧の使用を許可されている今の私は数万の艦隊すら沈めることが可能――」

 

「ほう……」

 

「帝国の理想のために消えなさい」

 

 宇宙で流行ってる戦う前の決まり文句なのだろうか?

 最後の台詞だけなぜか敬語になって、江入さんはズシンズシンと接近してくる。

 彼女は手に持った巨大な斧を振り下ろしてきた。

 

 ま、とりあえず――

 

「消えねンだわ」

 

 ぱしっ。

 俺は斧の刃を指で摘まむようにして止めた。

 おっと、つい手の平に刃が当たらないような止め方しちゃったよ。

 

 今の俺なら手で防ぐ必要もないのに。

 まだ人間としての防衛本能が残ってるんだよね。

 忘れずにいきたい、人の心。

 

 人間だもの――れを。

 

「な……止められた……!?」

 

 一方、驚愕の表情を浮かべている江入さん。

 ふふん、これくらいなら余裕ですわ。

 どんなもんだ。

 

 とはいえ……実はチキって腕力デバフのブレスレット外しちゃったんだけど。

 だって数万の艦隊とか言うじゃない?

 そりゃ警戒もするさ。

 

 まあ、外して正解だったよ。

 

 100%のパワーなら余裕だけど、7割減じゃ止めるのは無理だったと思う。

 

「未開の惑星の現地人に、銀河惑星連盟大帝国の科学力の粋を集めて作られた戦闘鎧の一撃が防がれるなど……異空間フィールドの効果もあるのに……信じられない……」

 

 江入さんは絶え間ない攻撃を仕掛けてくる。

 俺は魔法で結界を張って、それらをすべてガード。

 ドッガンドッガンと重低音が響き、巨大な斧が結界を破壊しようと何度も叩きつけられる。

 

 へえ……。

 これはすごいな。

 多分、俺が戦ったどのチート持ちの勇者たちよりも一撃が重いんじゃないか?

 

 あんまり記憶にないけど。

 

 前世の世界の建築基準で作られた城なら一発で軽く吹き飛ばせてしまうかもしれん。

 

 

「『 ≪スライドインストーリング≫ = シルバリオン・ソード』」

 

 このままではジリ貧と判断したのか、江入さんは銀色の鎧にモードチェンジ。

 バックル部分の端末を入れ替えると装備を変換できるらしい。

 さっきまでの金色のやつと違ってシュッとして軽そうな鎧のデザインになった。

 

 重装歩兵から騎士にって感じ? 

 

 武器も斧から剣に変わっている。

 

「むっ!」

 

 素早く俺の背後に回ってきた江入さん。

 やはり、銀色になったことで機動力が上がっている……のかな?

 金色の性能を把握していないから推測だけど。

 

 俺は背面にも結界を構築させる。

 

 しかし――

 

 ガッ。

 

 江入さんは結界が完成する前に剣の先端を突き立てて内側に滑り込ませてきた。

 

 ベキベキ……。

 

 そして、そのまま剣先を強く押し込んで結界をこじ開けようとしてくる。

 

「ああああああああああ――ッ!」

 

 いつも小声の江入さんが叫んでいた。

 声を張って、必死に結界の穴を広げようと頑張っている。

 まあ、無駄だと思うがね。

 

 でも、結界が完全に展開する前の隙を突くことができたのはすごいと思う。

 自慢じゃないが、俺の結界展開速度は元の世界で最速クラスだったし。

 だけど、こんな工夫をしてくるのは正面から叩き潰す横綱相撲を諦めたということ。

 

 即ち、俺を同格か格上と認めたということ……。

 

「底が知れたな」

 

「な、何を……!?」

 

 俺は結界を解除した。

 もう、こんなのはいらない。

 力量は把握できた。

 

 彼女は――俺より圧倒的に格下だ。

 

「正面から受け止めてやる、カモンベイベー」

 

「…………」

 

 人差し指でクイクイっと煽るジェスチャーをすると、江入さんはムッとした顔になった。

 いや、無表情なんだけどね。

 何となくわかる雰囲気がでてるのよ。

 

 俺はひょっとしたら江入さんソムリエの才能があるのかもしれない……。

 

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