前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい 作:遠野蜜柑
「俺のことをご存じで?」
「ああ、当然だ! 貴様の悪行は聞いている!」
「あ、悪行……!?」
初対面で悪人扱いされていた。
俺が何をやったって言うんだ!
「貴様は花園を倒して名を上げ、最近では鳥谷ケイティと組み、将棋ボクシング文芸部の部室を占領して好き勝手やっているそうではないか!」
「いや、占領してるわけでは……」
外部視点ではそういうふうに見られていたのか……。
「今も善良な女子生徒を強引に連れ去ろうとして! 彼女を一体どうするつもりだった!?」
部室に連れて行こうとしただけです。
そう言ったら余計に話がこじれそうだな。
「あの、あたしは将棋ボクシング文芸部に入ってるんで、ある意味、合意の上というか……」
さすがの結城優紗も、この場面では誤解を解こうとするくらいのフォローはするようだ。
でも、もうちょっとハッキリ違うって言ってくれるとありがたいな。
ある意味ってなんだよって。
「何? 君も部員だと……? なるほど……」
「そうだそうだ! そいつはうちの部員なんだ! 部員を部室に連れてって何が悪い!」
俺の背後に潜んでいた鳥谷先輩が肩口から顔を覗かせた。
おんぶのような体勢で俺にぶらさがってる。
威勢のいいこと言うなら、ちゃんと姿を現したほうがいいと思いますよ。
「鳥谷ケイティ……! そうか、わかったぞ! つまり、彼女はお前たちに脅されて無理やり入部させられたのだな! ますます捨て置けんッ!」
ずん! と大きく踏み込んで間合いを詰めてくる黒髪美人先輩。
違うんです! むしろ無理やり入部されたんです!
俺は声を高らかにして言いたかった。
でも、やめておいた。
この手の思い込みが強そうな人に下手な言い訳は逆効果だ。
「脅されてるとかじゃなくて、あたし、普通に部員で……」
結城優紗はしどろもどろ。
それをどう受け取ったのか、黒髪ポニテの先輩は柔和に微笑み、
「心配はいらない、ちゃんとわかっている。君のような一般の生徒が安心して学校生活を送れるようにするのが我々風紀委員の役目だ。恐れず、私に助けを求めてくれたまえ」
やっぱり、何も理解してない感じのことを言った。
「まあ、そうやって不良どもを叩きのめしていたせいで、不本意ながら私も四天王などという同じ括りにされてしまったが……」
え? 四天王……? まさか、この人も花園や鳥谷先輩と同系統の有名人なの?
「おい、
「鳥谷ケイティ、君は何度言っても男子の旧制服の着用をやめないな? それは校則違反だと毎回注意しているはずだが?」
鋭い視線が鳥谷先輩に向く。
敵意の対象が飛び火した。
「はんっ! 学ランはわたしのポリシーだ! 誰がやめるかってんだ! よく聞け、この旧制服の学ランはかつて――」
「言い訳無用ッ!」
「うひゃっ」
一喝され、鳥谷先輩は再び俺の背後に引っ込んだ。
鳥谷先輩はこの人のことが随分と苦手らしい。
性格的になんとなくわかる気もするけど。
「とにかく、その手を離すんだ」
そういえばまだ結城優紗の腕を握ったままだった。
黒髪ポニテ先輩は俺の手首を掴んで引き離しにくる。
「…………!? これは……貴様……は……!」
俺に触れた瞬間、彼女の様子が変わった。
俺の顔をまじまじ見て、目を大きく見開いている。
「仕方がない、この場は引き下がっておこう……。だが、馬飼学園での度を超した狼藉は風紀委員長である私、
風魔凪子と名乗った先輩は艶のある黒髪を揺らし、くるっと身を翻して去って行った。