前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第31話『対魔人』

 

 

 

 

「本当は一人でいるところを狙いたかったが、人通りの少ない場所はこの先にはないのでな」

 

 風魔先輩は俺たちに歩み寄りながら不穏な発言をする。

 狙うって何!? またストーカーなの!? 

 都会ってストーカー多いね!

 

「風魔先輩? どういうことなんですか? こいつに何か用なんですか?」

 

 結城優紗が訝しむように訊ねた。

 

「なに、大した用事ではないさ。ただ、そこにいる魔の者を滅却しようと思ってな」

 

「滅却……? え、待って下さい、こいつはそのアレな存在ではありますけど……消さなきゃいけないような悪いやつじゃないですよ!」

 

 おお、結城優紗が俺を擁護している。

 これは本格的に和睦が成立したと見てよさそうだ。

 平和な学園生活に一歩近づいた達成感で心がぴょんぴょんする。

 

「ふむ……彼を庇うということは、君は魔の者に魅入られてしまったのだな? ちょうどいい、ここで一緒に魔の瘴気を祓って救い出してやろう」

 

 一方、新たなストーカーである風魔先輩は会話が通じていない。

 結城優紗の説得が逆効果となって余計に使命感が刺激されてしまった様子。

 というかさ、なんなの。

 

 その恐らく俺のことを言っているであろうそれは。

 

「マの者ってなんですか?」

 

「とぼけるな!」

 

 ふえん、一喝された。

 理不尽だ。

 

「貴様は魔の気配を随分と巧妙に隠していたようだが……私にはわかるのだ! 貴様の肌に触れた瞬間、全身が震えるようなおぞましい力の波動を感じたのだ!」

 

 力の波動?

 それって結城優紗が俺を見つけた魔力の波形ってやつか?

 じゃあ、この人も勇者なのか?

 

「風魔先輩、こいつの魔力がわかるって先輩も勇者だったんですか?」

 

 俺が抱いた疑問を結城優紗も感じたらしい。

 

 先んじて訊いてくれた。

 

「勇者? 何の話だ? 私は対魔の力を受け継いだ古の一族……対魔人(たいまにん)だ!」

 

「た、対魔人だって!?」

 

 俺は大声を上げて後ずさる。

 そんな……勇者じゃなくて対魔人だなんて!

 

「あんた、知ってるの?」

 

「いや、知らないけど」

 

「紛らわしいわね!」

 

 だって、驚く場面かなって。そういう空気読むところかもしれないなって思って。

 

「白々しい! 魔の者ならば我らを知らぬはずがあるまい! 何百年にも渡って互いに殺し合ってきた宿命の敵同士なのだから!」

 

 その対魔人? とかいうのが先輩の虚言や妄想じゃなかったとして。

 俺は別に魔の者ではない。

 だからそんな宿命は知らぬのだ。

 

「先輩は俺が魔の者だって確実に言えるんですか? 魔の者に会ったことがあって、それと俺が同じだって間違いなく言えるんですか?」

 

「ふむ、確かに近年は魔の者もすっかり衰退し、実際に私が魔の者を見たのは随分と昔に一度きりしかないが――」

 

 ほらやっぱり。

 不確かな記憶しかないんじゃないか! 

 それでは俺がそうだと言い切れるわけがない。

 

「先程も言っただろう? 私は貴様に触れて力を感じたのだ。あの禍々しい力の波動は魔の者以外あり得ない」

 

 恐らく、風魔先輩は魔力やそれに類似する力を察知する能力があるのだろう。

 

 だから俺に流れる魔族の魔力を感知することができた。

 

 けど、風魔先輩が魔の者とかいうやつらに会ったのは一度だけらしいから、きっと魔族の魔力とそいつらの力の区別がつかなくて間違えているに違いない。

 

「我らは魔の者を祓い、人々を守ることが使命の一族だ。邪なる力を持つ者よ、観念して対魔の力で浄化されるがいい」

 

 勘違いをどうやって正そうかと思いつつ。

 現代日本にもこういう人たちいたんだなぁ……と俺は少し感動していた。

 要するに風魔先輩って陰陽師とかエクソシストとか、そういう系統の人だよね?

 

 宇宙人も実在したし、空想の産物もあながちバカにできないな。

 

 心霊特集って嘘っぽくて下らないと思ってたけど、本物がいるならこれからはもっと楽しく見れそうな気がする。

 

「奥義を習得してからは一回も会えたことがなかったからな……。これでようやく修行の成果を発揮することができる」

 

「…………」

 

 風魔先輩は喜色に満ちた表情を浮かべていた。

 

 あれ? この人、自分の力を試したいだけでは?

 

 

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