前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第39話『端末個体』

 

 

 

 入った瞬間、船内の警備システムが俺たちを歓迎してくれた。

 ドローン式の小型銃みたいなロボットが浮遊しながら10体ほど待ち構えていたのだ。

 警報がビービーうるさい中、ロボットたちはビームをぶっ放してくる。

 

 俺はビームを魔法障壁で防ぎ、聖剣を取り出して宙に浮かぶロボットを片っ端から叩き斬っていった。

 

「またつまらぬものを斬ってしまった……」

 

 すべてを撃退した俺はクールに呟く。

 

 人生で一度は言ってみたい台詞だったのでござる。

 

 

 

 船内は想像より遙かに広かった。

 思わず見回しちゃったレベル。

 いや、だって100平米は軽くあるんだぜ?

 

 しかもメゾネットタイプらしく、さらにもうワンフロアあるんだとか。

 

 高さと面積が外観に比べて明らかにおかしい。

 

「この探査船は空間を歪曲させる技術で内部が広げられている。船体の大きさと船内の体積は一致していない」

 

「ふうん、それって魔法じゃないの?」

 

「この技術がそういう呼称をされているのは聞いたことがない」

 

 じゃあ違うのか。

 

 似たようで異なる進歩を遂げた何かということなのだろう。

 

「これがコックピットか?」

 

 壁沿いにモニターと椅子が三つずつ等間隔で配置されていた。

 

 だが、この宇宙船はすべてタグを介して操作するよう作られているため、ボタンやレバーはないそうだ。

 

 カタカタッターン! ってやる感じのハッキングはできないのね。

 

「私に探査船のAIに干渉する手段はない。ここはあなたに任せる」

 

「じゃあ、ちょっといじってみますかね」

 

 俺はモニターに触れて魔力を行き渡らせてみた。こう、なんか探っていく感じで……。

 

 

『未知のエネルギーからの浸食を確認――』

 

 

 宇宙船のAIが俺の魔力を検知した。

 

 

 

 

「おお! 反応したぞ!」

 

 俺は手応えに喜ぶ。

 だが、まだ魔力を送り込んだことを相手に認識させただけである。

 ここからハンドパワーならぬ魔力パワーでイジイジしていかねばならないのだ。

 

 多少の互換性はあるみたいだが、規格とは異なる能力で作業するのですべてが手探りとなる。

 難易度は召喚魔法解除のクロスワード以上に高いだろう。

 でも、やるぞ、やるぞ、やるぞ……!

 

 えいえいむんむんと念じ、送り込む魔力に意思を込める。

 

「クラウドにある共用データのいくつかを私個人にコピーするようAIに指示して欲しい」

 

 江入さんが横から要求を入れてきた。

 

「今作業中なんだけど……まあいいや。それをするとどうなるんだ?」

 

「タグなしでデータの力を使えるようになる。こちらで悪目立ちしないためにも、衣類や身体の浄化を行なう機能は備えておくべきだと思う。あと、もし探査船を失っても生活環境を確保できるような作業ツールを保持しておきたい。自衛のための戦闘スキルデータもあるといい」

 

 どうなるのかを訊いたのに何が欲しいかという話になっている気がする。

 けど、まあ主張の意図はわかった。

 これまで江入さんは宇宙人パワーのすべてを外部のクラウドに頼って使っていた。

 

 しかし、クラウドにアクセスできなくなったことで江入さんは無力な少女になってしまった。

 

 今後、クラウドと自由に接触できないことを考えればここで持ち出せるものは持ち出しておきたいと考えるのは必然だろう。

 

「やれるだけやってみるよ」

 

 タグがなくちゃ繋がりが云々って彼女は言っていたけど。

 それがなくても移せるのかな?

 SIMカードがなくてもスマホで動画や音楽再生くらいはできるってノリなのかも。

 

「江入さんにクラウドにあるデータをあげたいんだけど」

 

 気持ちを込めて魔力を注ぐ。

 

『タグを認証することができない端末個体の存在を船内に確認しました』

 

 お、返事があった。

 端末個体……?

 ふむ、それがきっと江入さんなのだろう。

 

『クラウドに保存してある機能をデバイス端末にコピーしますか?』

 

 オッケー! グーグル、やっちゃってくれ。

 なんか、案外普通に魔力で操作できてるな。

 宇宙の科学って魔力でハッキングできるんだ……。

 

 

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