前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第40話『ドンマイではない』

 

 

 

 

 

「本当にクラウドのデータをコピーできるとは思わなかった」

 

 どうやら今現在、必要なものが江入さんのなかにダウンロードされていっているらしい。

 

 傍目には何も起こっていないように見えるが、当人曰く絶賛入手中だそうだ。

 

「テストではカンニングしないようにしろよ」

 

「カンニングではない。参考にしているだけ……」

 

 まだ言うか。

 これ絶対またやるつもりだろ。

 俺が使用に制限かけられるようにできないかな……。

 

 てか、思ったんだけど。

 力を持った状態の江入さんを自由にさせるのって危険だよな?

 一応、この宇宙少女は侵略者なわけだし。

 

 何かしら首輪になるものをつけておくべきだろうか……?

 

「クラウドにあるデータを個々のドライブにコピーする許可を与えられるのは大佐以上の階級を持つ者だけ。あなたはその制限を容易く突破することができた。これはあなたが物理的な戦闘力だけでなく、情報戦においても銀河惑星連盟大帝国の脅威になり得るということ」

 

 江入さんが何か言い出した。

 

「はあ」

 

 戦うだけが能の輩じゃないって褒めてくれてるのか?

 

 どうやらインテリジェンスな男の風格が滲み出てしまっているようだ……。

 

「ところで進捗は?」

 

「地球上で文化的に活動するために必要な最低限のツールはまもなく落とし終わる。次は知識のデータベースから優先順位が高いと思われるものを順番にダウンロードしていく」

 

「順調そうだな」

 

 だったら俺はその間に宇宙船の操作を少しやってみるかね。

 最初にしてあった船体を透明にする細工なんかもやり方を覚えておかないと。

 まずは宇宙船の場所を移動させてみるか。

 

「パワー! ハッ!」

 

 魔力を注入。

 

 ギュォオオオオォオゥウウゥウゥウウゥウウウッゥウゥッン――

 

「な、なんだぁ?」

 

 ガタガタッ。

 船体が異音を放って大きく振動した。

 まあいいか。

 

 とりあえず動かしてみよう。

 

「新庄怜央、今のは一体……? 何か問題があるのでは?」

 

 江入さんが懸念しているが多分大丈夫だろう。

 さっきも適当に念じて上手く操作できたんだし。

 行くぜ! 急上昇だ! 

 

 俺は宇宙船を操縦できるという高揚感でちょっと浮かれていた。

 そのため、少し力を入れすぎていたのだと思う。

 

 

 ドゴーンッ!

 

 

「ふべっ!?」

 

「うっ」

 

 

 凄まじい速度で浮遊した宇宙船は、その激しい勢いのまま何かに衝突した。

 

 船内にいた俺たちはすさまじい衝撃にすっ転んで変な声を漏らす。

 

 

『船体上部に大きなダメージを確認……機能の維持に……もん……だ……』

 

 

 ブツリとAIの音声が途切れる。

 

 

「あっ!」

 

 

 落下していく感覚。

 俺は慌てて魔力で宇宙船を浮かせ、ゆっくりと不時着させる。

 これは宇宙船としての機能に支障をきたし、飛行が継続できなくなったということか?

 

 それだけの損傷を与える何かが宇宙船の上空にあったのか?

 

 俺たちは船体の損傷具合を確認するべく外に出た。

 

「うわっ。これはひでえや」

 

「…………」

 

 絶句する江入さん。

 そこにあったのは屋根部分がひしゃげて無残なスクラップになった宇宙船だった。

 一体、なんでこんなことに――

 

「まるで何か硬い壁のようなものにぶつかったような……」

 

 あっ!

 そういえば周囲に被害を出さないように張った魔法障壁がそのままだった!

 なるほど、俺が作った頑強な魔法障壁に勢いよくぶち当たったから潰れたんだな。

 

 結構、暴走気味のスピード出しちゃってたもんなぁ……。

 しかし、屋根部分がぶっ壊れるだけで済んだのは何気にすごい。

 中の俺たちは全然怪我とかしなかったもん。

 

 宇宙なんとか帝国というのは大した技術力を持っていると俺は感心した。

 

「ここまで破損しては拠点として使うのは不可能……。タグがあればどうにか修復できたかもしれないが――」

 

「うーん、なんつーか、ドンマイ?」

 

 キッ! と江入さんが明らかに強い目つきになって睨んできた。

 

 あの空間での戦闘時を除けば、過去一番で江入さんの感情があらわになった瞬間だった。

 

「ドンマイではない」

 

「ごめん、だね……」

 

 彼女が求めていたのは慰めではなく謝罪でした。

 

 

 

 

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