前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第45話『そんな抗争』

 

 

 

 

 現場から少しでも遠ざかるために俺は早足で歩く。

 

 あそこにいたら手は出していなくても厄介なことになるのは確定してるからな。

 

「おい待てよ!」

 

 …………。

 花園一派の不良たちが後ろをついてきていた。

 ちっ、ついてくんなって……。

 

 こいつらにも電撃を浴びせておくべきだったか?

 

 追いかけられていたやつらと同じ場所で身動きが取れなくなったら可哀想かと思って何もしなかったけど、それは失敗だったかもしれん。

 

「聞いてんのか!」

 

「無視すんなよ!」

 

「おい!」

 

 しつこいな……。

 

 仕方ないので俺は振り返る。

 

「なんだよ、礼ならいらないぜ?」

 

 俺は不良三人組に言った。

 ちなみに『礼ならいらないぜ?』は一生で一回は言ってみたかった台詞のひとつだ。

 せっかくの機会だから言ってみた。

 

「くっ……確かにさっきのは助かったけどよ……」

 

 なんだか歯の奥にものが詰まったような言い方である。

 

 はっきりありがとうって言えばいいのに。

 

「つーかよ、元はといえばお前のせいでこんなことになってんだぞ!」

 

「そうだ! むしろ責任取れよ!」

 

「花園さんがいればあんなやつらから逃げる必要もなかったんだ!」

 

 ええ……?

 なんなのこいつら……。

 というか責任取れってさぁ。

 

 それ、この間も言われて厄介なことになったばかりのやつなんですけど。

 嫌な予感がする。

 

「俺のせいってどういうこと? 心当たりが全然ないんだけど」

 

 俺が訊ねると、

 

「お前、こんなことになってるってのに……。ふん、まあいいだろう。教えてやる。すべてはお前が花園さんを病院送りにしたところから始まったのさ……」

 

 巨漢デブが語り始めた。

 どこか感傷的な口調なのが少しシャクに障る。

 こう、古強者が過去の戦いの歴史を語るような雰囲気出してるのがなんかね?

 

 

 

 

「馬飼四天王はこの辺りじゃ最強の代名詞だった……。それはお前も知ってるよな? けど、花園さんが一年生のお前に倒されたことでその威光にヒビが入っちまった。これまで絶対的と思われていた四天王が無名の新入生に負けた事実は他校の連中に隙を見せる形になったんだ」

 

「ふーん?」

 

 それでこいつらは今までのお礼参りで追われてたわけ?

 幅を効かせていた強者が落ちぶれて狩られる側になる。

 正直、自業自得なのではないかという感想が……。

 

「しかも新庄怜央、お前、どうやったのか鳥谷だけじゃなく風魔まで誑かしやがっただろ?」

 

「誑かす?」

 

 何のことを言っているのやら。

 

「あの堅物の風魔が校舎でお前を見かけると積極的に話しかけに行くじゃねえか」

 

 あれは俺が魔の者の性へk……性質を取り戻していないか確認しにきているだけなんだが。

 

 いろいろと誤解を生んでいるようだ。

 

「女子の四天王とは目立った争いもせず懐柔したってんで、他校から見たお前は女の扱いが上手いタラシということになってる。おかげで花園さんは軟派な一年にしてやられた情けないヤツ扱いよ……」

 

「鳥谷と風魔も四天王なんて言われてたけど、結局は女だったとかなんとか言われて実力を疑われ始めてんだ」

 

「お前の外での評判は狡猾に要領よく花園さんを病院送りにした女タラシの一年坊主。そんなお前に制圧された馬飼学園の四天王はメッキが剥がれたって見くびられちまったのよ」

 

 鳥谷先輩は最初から友好的だったが、あくまで戦力として俺を引き入れたにすぎない。

 風魔先輩との戦いは人払いがされていたから目撃者がいないだけ。

 なのにそんな捉え方をされているなんて……。

 

 さっきのやつらが言っていたタラシ野郎とはそういうことか。

 

月光(つきみつ)の野郎もなんでか学校に来ねえから、お前にビビって逃げたってコトになってるし」

 

 月光っていうのは四天王で俺がまだ会ってない最後の一人のことか?

 

 そういや有名人のはずなのに校内でそれっぽい人物を一度も見かけた覚えがない。

 

 なるほど。

 そもそも学校自体に来てなかったんだな。

 何で来てないんだろう?

 

 まさか本当に俺にビビってるわけじゃあるまいし。

 

「お前だって他人事じゃねえはずだぜ? なにせ、オレたちが全滅したら次は鳥谷の派閥が狙われるはずだからな」

 

 どこか自分には関係ないと思って聞いていた俺の内心を悟ったのか、巨漢デブが釘を刺すように言ってきた。

 

 なんだと? 鳥谷先輩が狙われる……?

 

 それは看過できないことである。

 

「当たり前だろ? お前が掻き回したせいで舐められたのは花園さんだけじゃねえんだ。馬飼学園の四天王そのものが大したことないって思われちまったんだからな!」

 

 他校の不良たちがターゲットにしているのは花園一派だけではないらしい。

 

 手始めにボス不在の花園一派から崩されているというだけで、馬飼学園の四天王すべてが対象になっているそうだ。鳥谷先輩や風魔先輩にも刺客が送られるのは時間の問題だろうと……。まさか花園を病院送りにしたことがそんな余波を生み出しているとは思わなかった。

 

「花園さんが入院中で、鳥谷と風魔は侮られて。月光も消息不明の今が馬飼学園を落とす好機と見たんだろう。やつらはここぞとばかりに動き出したんだ」

 

 花園一派もボス不在のなかで抵抗を続けていたが、少しずつ数が削られていき、今ではこの三人だけになってしまったらしい。

 

 俺が高校生活を送ってる裏でそんな抗争が繰り広げられていたのか……。

 数十分前まで期末テストが近いから勉強しなきゃとか考えてたのに。

 世界観の落差が激しい。

 

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