前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第48話『段田理恩』

 

 

 

 

 

 

 俺たちが連れてこられたのは、声をかけられた地点から徒歩で数分ほどの場所にある閉業したライブハウスだった。

 

「くっそー段田のヤロー」

 

「馬飼学園のシマに拠点を構えてやがったとは……」

 

「舐めたマネしてくれやがって」

 

 ぶつくさと言ってる花園三人衆。

 うちの学校のシマとかあったのか……。

 俺たちは入り口から薄暗い階段を降りていく――

 

 

 

 

 階段を降りて、段田理恩が待っている地下のステージ空間に辿り着く。

 そこにはまた二十人くらいの不良たちが待ち構えていた。

 迎えに寄越したのが約二十名。

 

 ここにいるのも約二十名。

 合計四十名くらい。

 勢揃いしてやがんなぁ……。

 

 

「馬飼学園の諸君、よく来たな。オレが出美留高校のアタマを張ってる段田理恩だ」

 

 

 チリチリして束になったような髪――いわゆるドレッドヘアの男が、ステージ上に置かれた玉座みたいな椅子に腰掛けていた。

 

 あれが段田理恩……。

 対峙したドレッドヘア野郎を俺はじっと見つめた。

 とてもじゃないが、いじめられっ子だったとは思えない風貌と雰囲気だ。

 

 

「よっこらせっと」

 

 

 段田理恩はステージ上から身軽に飛び降りて俺たちの前にやってくる。

 

 

「せっかく遊びに来たお客様に飲み物を用意してやるよ。おい、あれを持ってこい!」

 

「うっす!」

 

 段田理恩が指示すると、子分が吸い殻の入った灰皿とブランデーの酒瓶を持ってきた。

 

 子分からそれらを受け取ると、段田理恩は灰皿にトクトクとブランデーを注ぎ、

 

 そして――

 

「ほら、飲めよ」

 

 段田理恩はできあがった灰皿ブランデーを俺に差し出してきた。

 

 

「こ、この野郎! ふざけやがって!」

 

「どこまでコケにすれば気が済むんだ!」

 

「新庄怜央、受け取ってやる必要ねえぜ! 叩き落としてやれ!」

 

 

 花園三人衆は段田理恩の挑発に声を荒らげる。

 

 

「遠慮しなくていいんだぜ? グイッといっちゃってくれよ? 歓迎のキモチだからよ」

 

「…………」

 

 

 俺は無言でその灰皿を受け取ると――

 

 

 パシャッ。

 

 

 バキンッ!

 

 

 中身を床に捨て、両端を掴んでステンレス製のそれを二つに引き裂いた。

 

 

「はあああああああ!?」

 

「う、うおっ……!?」

 

「どんな指の力してやがんだコイツ……!」

 

 

 花園三人衆も含め、ライブ会場にいた不良たちがどよめきの声を上げた。

 

 よしよし、いい感じで威嚇になったな。

 

 

「ほう、おもしれえじゃねえか」

 

 

 だが、肝心の段田理恩は愉快そうに笑っただけで一切動じていなかった。

 ふむ、この程度ではビビらないか……。

 そこそこ肝の据わったやつらしい。

 

 しゃーない。

 さっきと同じように雷魔法で片付けよう。

 ノー暴力主義です。

 

「跪け」

 

 俺は威厳があるように思わせる声音でそう言った。

 

 

 ビリビリッ。

 

 

「ぎゃあっ」

 

「ふがっ」

 

「ほげっ」

 

 

「おお、さすがだぜ!」

 

「また気迫だけでやっちまいやがった!」

 

「ウチの新庄怜央を舐めんなよ!」

 

 

 花園三人衆が歓声を上げる。

 いや、ウチのって……。

 お前らはどの立場なんだよ。

 

 バチンッ。

 

 ん……?

 

 一部、魔法が弾かれたような感覚があった。

 

「なにっ……!?」

 

 段田理恩サイドの不良たちが軒並み地面に這いつくばっているなか、当の本人……段田理恩だけは悠然と立ったままだった。

 

「お前、今、何をしたんだぁ?」

 

 段田理恩はニヤニヤと余裕に満ちた表情を俺に向けて訊いてきた。

 

「お前は……」

 

「ククク、まさか魔法とはね? まったく、こっちで使うヤツに出会うとは思わなかったぜ。ただ、あんなレベルの低い魔法がオレに通用するわけねえだろ?」

 

 段田理恩は俺が魔法を使ったのを見抜いていた。

 こいつ、何者だ?

 やっぱり、元勇者か転生者だったのか?

 

「そういう戦い方をしようってんなら……余計なギャラリーはいないほうがいいよな?」

 

 段田理恩はそう言うと、パチンと指を鳴らした。

 その瞬間、俺は何かの力の動きを感じた。

 これはもしかして……魔力……?

 

 だが、俺の知っているものとは少し違う気がする。

 

 結城優紗と違って俺はそこまで識別能力が優れているわけじゃないから確信は持てないけど。

 

 

 バタン。バタン。バタン。

 

 

 倒れる音が三つ聞こえた。

 

 

「おい、お前ら……!」

 

 

 花園三人衆が意識を失って倒れていた。

 し、死んで……!? は、いないようだな……。

 すうすうと寝息を立てている。

 

 なぜいきなり眠りだしたんだ?

 

 見れば、俺の魔法でビクンビクンしていた段田理恩の子分たちも寝ていた。

 

「他の連中は寝かせておいたぜ。事情を知らねえやつらが見てるとやりにくいだろ?」

 

 不敵に笑う段田理恩。

 こいつがやりやがったのか……。

 つまり、目の前の男は魔法が使える存在ということだ。

 

「お前は一体……」

 

「フッフッフ、聞いて驚けよ? 段田理恩とは世を忍ぶ仮の器、オレの正体は……魔界最強の悪魔師団『ソロモン72柱』に名を連ねる一人、ダンタリオン様だ!」

 

 いや、誰だよ。

 

 

 

 

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