前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第54話『馬飼学園四天王で最強の男』

 

 

 

 

 

 

 段田理恩もとい、ダンタリオンとの勝負から日は経ち。

 

 今日は七月上旬、期末テストの最終日である。

 

 朝、校門の前で偶然にも鳥谷先輩と会ったので俺は彼女と一緒に昇降口まで向かっていた。

 

 並んで歩きながら、テストが終わったら試験休み期間でどっか行こうぜ! みたいな話を二人でしていると、

 

「姐さーん! てーへんだ! てーへんだぁ!」

 

 鳥谷先輩の舎弟の一人が息を切らしながら駆け寄ってきた。

 

「な、なんだとぉ! 誰の成績が底辺だッ! 言っておくけど、昨日のテストは40点か50点くらい取れた手応えがあるんだからな!」

 

 鳥谷先輩は舎弟さんの言葉に憤慨した態度を見せる。

 

「いや、違うんすよ! 底辺じゃなくて、大変なんすよぉ!」

 

「はあ? 何が大変だっていうんだよ」

 

 鳥谷先輩に凄まれた舎弟さんは泣きそうになりながら話を続けた。

 

「実はオレ……昨日、駅で見ちゃったんすよ! あいつが戻ってきてるのを……!」

 

 あいつ……?

 思い当たるフシがなくて俺は首を傾げる。

 あっ、もしかして花ぞ――

 

「あの男……馬飼学園四天王で最強の男、月光雷鳳(つきみつらいほう)が帰ってきたんですよぉ!」

 

 全然違ったわ。

 

 

 

 

 

「わたしは別にあいつが最強だなんて認めてないけどな! まあ、対外的な評価がそうだってのは知ってるし、結構……そこそこ紙一重でわたしより強いのはそうだけど……」

 

 テストが終わった後、将棋ボクシング文芸部のメンバーは何となく部室に集まっていた。

 

 溜まり場っぽい感じだから、自然と足が向いちゃうんだよな。

 

 鳥谷先輩は今朝の話題を蒸し返しながら不平を漏らしている。

 

 唇を尖らせて椅子の上で上体を前後に揺らす姿はちっちゃい子供が拗ねているようでどこか微笑ましい。

 

「ねえ、その月光って人、ずっと学校に来てなかったのよね? 一体、今までどこで何をやってたのかしら?」

 

 結城優紗がもっともな疑問を口に出す。

 

「そうっすね、なんかキャリーケースとバックパックを背負ってて……どっかに旅行でも行ってたんじゃないかなぁって出で立ちでしたよ」

 

 今日のお茶汲み係は朝、鳥谷先輩と俺に報告をしにきた舎弟さんであった。

 

「旅行? 一学期を丸々休んでまで旅行って、普通そんなことするもんか……?」

 

 俺からするとありえないことなんだが。

 

 出席日数とかテストとかぶっちして旅行って進級できないじゃん。

 

「うーん、でも、あいつは少しおかしいからなぁ……」

 

「そうだな、あの男は常軌を逸している。彼奴ならさもありなんといったところだ」

 

 鳥谷先輩と風魔先輩、この二人がそこまで言うのか。

 ん……?

 風魔先輩だって?

 

「月光が帰ってきたとなれば、ほぼ間違いなく君に勝負を持ちかけるだろうな」

 

 開かれたサッシの向こう側に風魔先輩が立っていた。

 

 当然な顔で外から会話に参戦してきてるの何なの……。

 

「風魔先輩……」

 

「窓が開いていたのでな。部屋の中に失礼してもいいだろうか?」

 

「アッハイ」

 

 俺が頷くと、風魔先輩はドアを開けてスムーズに入ってきた。

 

「どうしてうちの部室に……?」

 

 そこはかとなく怖いなぁと思いながら俺は訊ねる。

 

「月光は……あの男は弱者には興味がないが、少しでも強いと噂になった者には片っ端から戦いを仕掛けにいく危険な性質の持ち主だ。恐らく、入学してから一気に名を上げた君は狙われてしまうだろうと思って警告に来た」

 

 風魔先輩が部室の椅子に座りながら言う。

 

 凜とした雰囲気の容姿のせいか、ただ腰掛けただけなのにその所作には気品のようなものが感じられた。

 

 ああ、武道とかやってて姿勢がいいせいでもあるのかな?

 

「おい、何が警告だ! そういうのはわたしが教えてあげるからお前はいらないんだ! しんじょーの先輩はわたしだぞ!」

 

「私も彼の先輩だが? ついでに言えば君の先輩でもある」

 

「わ、わたしは部活においても先輩だ! 繋がりがダンチなんだ!」

 

 張り合う鳥谷先輩。

 

 彼女の中で先輩風ブームが来ているのだろうか。

 

「ならば私もこの部に入ろうか? 確か、馬飼学園の校則では学期の途中からでも入部は許されていたはず」

 

 風魔先輩が恐ろしいことをのたまいだした。

 

 鳥谷先輩が論破して断ってくれないと、俺は放課後にひたすら不浄の穴についての布教をされてしまうかもしれない。

 

「悪いな、風魔、この将棋ボクシング文芸部は六人用なんだ!」

 

 …………。

 

 これは無理か……俺が諦めていると、

 

「むむ、そうなのか……? そういうしきたりがあるのなら致し方あるまい……」

 

 鳥谷先輩の適当な言い分で納得する風魔先輩。

 

 この人、見た目に反して簡単に良くない人に騙されそうだね……。

 

「別にそういう決まりはないんだけどなぁ」

 

 黙々と棋譜並べに勤しんでいた丸出さんが静かにツッコミを入れる。

 ホントだよね。

 今年、人数不足で合同になって誕生した部にそんなルールあるわけないのに。

 

 

 

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