前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第56話『ざまあするってなによ』

 

 

 

 

 

 

 夏休みに合宿という名目で行なう旅行について話し合ったりしているうちに夕刻となった。

 

 俺たちは部室に施錠をして下校する。

 

「あれ? 江入さんって帰りこっちだったっけ?」

 

 俺と帰り道が同じ方向の結城優紗が、付随してきた宇宙人少女の存在に疑問を抱く。

 

「あ……これはえーと……」

 

 マズい、テストが終わった開放感に浮かれて油断していた。

 

 これまでは別々に登下校して気をつけていたのに。

 

「致し方ない事情により、こちらの方面から帰宅することになった。恐らく、今後もそうなることが予想される」

 

 はあ? なんでカミングアウトしちゃうの!?

 たまたま今日はこっちに用事が……とかで誤魔化したりすればいいじゃん。

 いや……。

 

 彼女はもしかしたら毎度時間をズラすのがいい加減面倒になっていたのかもしれない。

 

 無表情系キャラのくせに手間を億劫に感じる感情を持ち合わせていたのか……。

 

「へえ、江入さん引っ越したの? どこら辺? あたしのウチと近い?」

 

「どちらかといえば、彼の家と近い」

 

 江入さんは俺を指差して言った。

 危ういところまで開示しなくていいから。

 近いというか、俺の家の中だし。

 

「ふーん? こいつの家と……」

 

 怪しむ結城優紗の視線。

 

 吊り目の大きな瞳が何やら口ほどにモノを言ってきている気がした。

 

 

 

 

 分岐点で結城優紗と別れ、俺と江入さんはマイハウスに帰宅。

 ちなみに江入さんは玄関からではなく窓から俺の部屋に出入りします。

 姿を認識させなくする何かをやってるらしいので通報されたりとかは今のところないです。

 

 

「ん……? 電話……?」

 

 

 夕飯を食べ終えて風呂に入り、自室でくつろいでいるとスマホの着信音が鳴り響いた。

 

 ディスプレイを見ると、発信者は結城優紗となっている。

 こいつがこんな時間に電話してくるなんて珍しいな。

 何の用だろう?

 

「もしもし?」

 

 俺が電話に出ると、

 

『新庄ッ! あのクソ腹立たしい月光とかいうゴリラヤロー! もしあんたに喧嘩を売ってきたら絶対ボコボコにしてやんのよ!』

 

 開口一番、結城優紗はめちゃくちゃな怒鳴り声でそんなことを言ってきた。

 

「は? どうしたんだいきなり? 月光と会ったのか? お前、何かされたの?」

 

 彼女と最後に会ったのはほんの数時間前である。

 そのときは月光と面識なんてなかったはず。

 つまり、俺と道で別れてから……?

 

『何かって、そんなの本人の口から言わせるつもり!? あ、あの男は……あたしにとんでもない屈辱を与えてくれたわ……あたしは……くっ、酷い辱めを受けたのよ……』

 

 感情のこもった震える声で語る結城優紗。

 え……? それって一体……?

 シリアスに沈む彼女に俺は何と声をかけたらいいのかわからなくなった。

 

「えと、あれだ、病院とか行ったか? なんなら警察に一緒に付き添おうか?」

 

『あ、いや……い、いらない……そういうのはいいから……』

 

 結城優紗は言葉を濁しがらも拒否の意思を明確に伝えてくる。

 あまり大事にはしたくない様子だ。

 これはマジな案件なのか……? 何をされたってんだよ……。

 

『あいつに勝てるとしたら、きっとあんたしかいないわ。それくらいあいつは強い。実際にやりあって、よくわからせられた』

 

 先にやっつけてやると息巻いていた彼女がここまで意見を翻すなんて……。

 

 勇者の力を持つ結城優紗が完全に力の差を認めている。

 

「もしかして月光も転生者とかチート持ちだったのか? もしくは悪魔とか」

 

『悪魔……? ううん、そういうのは知らないって言ってた。でも、実際はどうかわからない。だって、あんなの人間じゃありえないもの。あいつ、まるであんたと戦っているかと錯覚するほどだったわ。あの非常識な感覚は本当にそっくりで――』

 

「…………」

 

『とにかく、やるなら油断しないで戦いなさい! そんで絶対ざまあするのよ! あたしの仇を討ちなさい! 言いたかったのはそれだけ!』

 

 一方的に捲し立ててから、結城優紗はぷつりと通話を切った。

 …………。

 ざまあするってなによ。

 

 

 

 

 結城優紗はどういうわけか、月光雷鳳と対決したらしい。

 

 そして、その強さに敗北し、酷い辱めを受けたと……。

 

 結城優紗が語ろうとしなかったのでどんなことをされたのか詳細はわからないが、もし本当にシャレにならないことだったら俺は――

 

「…………」

 

 月光雷鳳は俺を彷彿とさせる強さだと彼女は言っていた。

 俺でなくては倒せないはずだと。

 それは要するに月光が魔王クラスの力を持っているということか?

 

 そんなことってあり得る?

 だって、いくら学園最強とか言われててもしょせんは日本の高校生だぜ?

 段田理恩みたいに実は悪魔が憑依していたとか、そういうわけでもなさそうだし。

 

「うーん……」

 

 考えてもモヤモヤするだけだった俺は寝ることにした。

 

 試験勉強で疲れも溜まっていたしな。

 

 

 

 

 

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