前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第86話『ぶっ飛ばしに行くんでしょう?』

 

 

 

 

 カブトムシを回収するだけのつもりが、予定外に遅くなってしまった。

 それでもようやく帰宅。

 鳥谷先輩と共に家の前に着いて一安心。

 

 あれ? 酒井先輩が軒先に立っているぞ。

 

 あれ? なぜか結城優紗もいる……。

 

「酒井先輩、どうしたんですか? 先に寝ててよかったのに」

 

 ひとまず結城優紗はスルーして酒井先輩にそう言うと、酒井先輩は頭を掻いて言った。

 

「いや……実はお前たちが行った後、丸太で徹底的に潰されたあの熊が液状化して消えちまったんだよ。まったく信じられないことだがな……」

 

 死体が液体になって消えた?

 

 地底人は死んだ後は肉体がそうなる性質でもあるのか?

 

「正直、常識から乖離しすぎたことが重なってどうしたらいいのかわかんなくてよ。一人では決めかねるからお前らに相談するために待ってたんだ。新庄はなんだかこういうことに慣れている感じだったし」

 

 酒井先輩は洞察力が鋭いな。

 

 俺が少し不思議な場に慣れてることを見透かしている。

 

「うーん、普通に考えたら物証がなくなった以上、猟友会に報告してもどうしようもないんじゃないですかね」

 

「じゃあ、熊に会ったことはオレたちだけで留めておくのか?」

 

「まあ、いろいろトンチキな方向に話が流れているんであんまり他言はしたくはないというのもあります。ただ、警戒もなく森に入っちゃう人がいたらそれはそれで面倒なんで難しいんですけど……」

 

 グラスの話が事実なら、明日の正午には熊の軍勢が地上侵攻のために森をうろつきだす可能性が高い。

 

 地上が戦場になる前にカタをつけられればいい。

 

 だが、うっかり突破されて山菜採りをしている村人が出くわしたら一大事だ。

 

「追いかけていった連中と何かあったんだな?」

 

「ええ、あいつらは問題なさそうな感じでしたけど危険なやつらは存在してるみたいで。その勢力を抑えるのに協力することになりました」

 

 俺は掻い摘まんでグラスたちとの会話を酒井先輩に伝えた。

 

 具体的には地下都市の存在とか地底人の話とか侵攻の企みとかそこら辺を。

 

 目の前で丸太攻撃や忍者を見ていたんだし、今さら酒井先輩に誤魔化す必要はないと思ったのだが、一般的なボクシング部の高校生である酒井先輩にはだいぶキャパシティを越えた話だったらしく、酒井先輩はこめかみを抑えたまま『すまん、ちょっと情報を整理させてくれ』と言って黙り込んでしまった。

 

 ふむ……。

 

 まあ仕方ないね。

 

「で、結城? お前なんでいんの?」

 

 酒井先輩が黙ってしまったので俺は結城優紗に話を振る。

 

 彼女はようやく自分にお鉢が回ってきたと表情を輝かせた。

 

「あんたたちがなかなか帰ってこないんだもの! 心配になってちょっと外に出てみたら酒井先輩が帰ってきてたから一緒に待ってたの!」

 

 一応、彼女の善意から発露した行動だったらしい。

 

「それより、その危険な勢力とかと戦うのよね? 戦うんでしょ!? ぶっ飛ばしに行くんでしょう?」

 

「…………」

 

 ぶっ飛ばすってなんか好戦的ですね……。

 結城優紗はやけにテンションが上がっている。

 夜に友達と一緒にいる非日常で気分が高揚しちゃってるのかな?

 

 その気持ちは結構わかるよ。

 

 

 

 

 

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