前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第90話『頼もしい後輩』

 

 

 

 

 

 どうしよう。

 

 鳥谷先輩の中で俺の人物像が人知れず仲間を守るナイスガイとして一人歩きしている。

 

 てか、鳥谷先輩が段田理恩と一戦交えたことを把握してたのが意外なんだが。

 

 そういうネタを仕入れる不良の情報網とかがあるんだろうか?

 

 よく考えたら一学期の終盤、鳥谷先輩がやたら先輩アピールし始めた時期があったけど、それってその件で思うところがあったから……?

 

「今はしんじょーからすれば見ていて不安になるような実力かもしれない。でも、わたしはいつかお前に心配されないような力を身につけてみせる。それでお前にきちんと先輩として見てもらいたいんだ」

 

「鳥谷先輩……」

 

 彼女の表明を聞きながら、俺は彼女がひとつ勘違いしていることに気がついた。

 いや、正確にはひとつどころではないけど。

 訂正しておくべきところがひとつってことで。

 

「俺はちゃんと今でも鳥谷先輩のことを先輩って思ってますよ? 困っているときに手を差し伸べてくれた鳥谷先輩には頭が上がらない思いでいます」

 

 器のデカさ然り、花園一派から助けてくれたときはマジで天使だと思ってた。

 マイエンジェル・ゴッド・メシアですよ。

 リスペクトしてますマジで。

 

「俺は先輩扱いしてない月光とか花園には普通に呼び捨てでタメ口じゃないですか」

 

「ん……? おお、そういえば確かに……そうか……?」

 

 鳥谷先輩は首を傾げて考え込む。

 

 一理あるかもと思っていそうだが、あまり納得はしていない様子。

 

 やはり彼女の中で身近な相手が自分より力を認められていたことはショックで、いくら口で伝えても素直に響くことはないのかもしれない。

 

 頭ではわかっていても感情は別みたいな?

 今後も彼女との間にモヤモヤした距離が残り続けるのは避けたい。

 俺は鳥谷先輩に屈託ない笑顔を向けられるのが好きなのだ。

 

 この状況を打破するには……。

 

 いっそ、逆に大きなショックを与えてムードを吹っ飛ばしてみるのも手か?

 

 中途半端に濡れたご飯はマズいが、おかゆになるまでビショビショなら美味くなる原理。

 

「鳥谷先輩、考えたんですが、やっぱり今日は一緒に来てくれませんか?」

 

「え? でもわたしが行ったら危ないんだろ? 戦いについて行けないと思ったから一緒に来るなって言ったんじゃないのか? わたしはお前に迷惑はかけたくないぞ」

 

 確かに鳥谷先輩は馬力的に考えて戦闘に参加するのはきついだろう。

 しかし、俺がこの提案をしたのは別の理由がある。

 それは――

 

「鳥谷先輩に俺の力の底を見て欲しいんです。俺がどれくらい強いのか。鳥谷先輩にはきちんと知ってもらいたいんです」

 

 今までは彼女には力の全貌を見せずにいた。

 そんな機会もなかったし。

 

 だが、こうやって変にこじれるくらいならすべてを曝け出してしまったほうがいい。なんなら、魔王であった過去も話してもいいとさえ感じている。圧倒的な力を見せれば呆れて引け目を感じることが馬鹿らしいと思ってくれるかもしれない。

 

 前世でも俺との力の差を感じて自分は魔王四天王に相応しくないと悩む四天王がいたのだが、俺の本気を見せたら考えるだけ無駄だと悟ってプレッシャーから解放されたと喜ばれたことがある。

 

「まあ、相手の実力によってはちゃんと底まで見せられないかもしれませんが」

 

「おいおい、なんだよ、そんなに自信があるのか?」

 

 別にうぬぼれとか虚勢ではない。

 客観的に見て俺が負けることは考えにくいのだ。

 鳥谷先輩の身を案じながらでも十分戦えるはず。

 

「フッ……まったく頼もしい後輩だよ、お前ってやつはさ」

 

 鳥谷先輩は苦笑しながらそう言った。

 

 

「じゃあお前の本気を見させてもらおうかな。わたしの目指す地点がどこにあるのか、この目で確認してやるさ。そんでわたしはその領域まで強くなるからな! 二度とお前がわたしを置いていこうと思わないくらいに! 一緒に来て下さいって土下座するような力をつけてやるんだから覚えとけ!」

 

 

 ビシッと指を向けられて俺は頷く。

 

 

「話は丸く収まったかい?」

 

 実は聞こえていたのでは? と思えるような絶妙なタイミングで祖母が斧を担いでのっしのっしとこちらにやってきた。

 

 距離や祖母の聴覚からすれば多分大丈夫だとは思うが……。

 

「まあ、なんとかね」

 

 俺は少々ドギマギしながら祖母に応じる。

 

「そうかい。なら朝ご飯を食べにいこうかね。そろそろできてる頃合いだろうさ」

 

「そうだな! 早起きして身体を動かしたから腹減ったぞ!」

 

 祖母と鳥谷先輩はスタスタと母屋に向かっていく。

 

 二人の背中を眺めつつ、俺も行こうとすると江入さんがスッと隣に立った。

 

「私の加勢は必要?」

 

 小声で囁く江入さん。今回、彼女に事情は説明していない。

 

 だが、何となくそういうことをすると察して申し出てくれたようだ。

 

「いや、大丈夫だよ。俺だけで基本どうにかなる相手だと思うからさ。江入さんはゆっくりして待っててよ」

 

「そう、わかった。なら今日も私は幸一の家に行かせてもらう」

 

 特に食い下がることもなく江入さんは先に歩いて行った。

 いや、幸一って……。

 この宇宙人、隣のおじさんとそんな気安いフレンドになってんの?

 

 そういえば江入さんって今どれくらい戦えるんだろう。

 あの変な空間とか鎧ってまだ使えるのかな。

 まあ、そこら辺は俺の関知するところではないか。

 

 

 

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