前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい 作:遠野蜜柑
◇◇◇◇◇
俺たちは森の木の上を移動して、グラスたちとの待ち合わせ地点に向かっていた。
「しかし、優紗もすごいとは聞いてたけど本当なんだなぁ。しんじょーのスピードについていけてるもんな」
昨日と同じく俺の背におぶさりながら、俺と併走してピョンピョン枝を移っている結城優紗を見てそう言葉を漏らす鳥谷先輩。
「いやぁ、ははは……」
結城優紗は自分の発言でいろいろ拗れたことを気にしているのか苦笑いで受け流す。
まあ、チートやスキルもない普通の人間であのくらいの身のこなしができる鳥谷先輩も十分異質と思いますけどね。
俺なんて前世を思い出すまでは体力テストで平均行くかどうかみたいなレベルだったし。
「お、あいつらもう来てるな」
俺は視線の先に頭巾を被った忍者ファッションの二人組を確認した。
「ふーん、あれが地底の獣人なのね……」
結城優紗は異世界以来の獣人を感慨深そうに見つめている。
日本に帰ってきてまさかまた出会うとは思っていなかっただろうからな。
俺たちは木から飛び降りてグラスたちの前に立った。
「レオ殿、ケイティ殿、よくぞ来て下さった」
頭巾を脱いでグラスが好意的な応対をしてくる。
もう一人の頭巾はやはりガッツで彼女も素顔をあらわにして会釈してきた。
「おや、そちらの淑女は……?」
予定の二人から三人に俺たちのメンツが増えていることにガッツが気付く。
「あたしは結城優紗よ。こいつの知り合いだからついでに手伝ってあげるわ」
自分を淑女だと思っているらしい結城優紗は迷うことなくグラスたちに挨拶をした。
「まあ、こいつは俺に挑む資格があるくらいには強いよ」
俺が言うと、グラスは安心したように微笑む。
「そうか、今は一人でも力のある戦士がいてくれるとありがたい。よろしく頼む」
「で、ここからどうするんだ?」
「これからそなたらをメリタの門まで案内しようと思う。そこで我々は門の地上側から紅鎧一派の軍を迎え撃つ」
地下都市から地上に通じる入り口は一本道。
そこで地上に出る前に敵軍を殲滅させるつもりらしい。
「すでに我らの仲間の半数が門の前で張っている。もう半分は地下都市から紅鎧たちを追随し、前方で戦闘が始まるのと同時に後方から仕掛けて挟み撃ちにする予定だ」
なるほど、挟撃はなかなか理に適った戦略だと思う。
しかし、それを読まれていた場合の対策はあるのだろうか。
俺が訊ねると、
「いや、その心配はいらぬ。彼奴らは己の力に絶対的な自信を持っている。我々の戦略が読まれていても連中は戦略すら上回る力で正面突破しようとしてくるだろう。紅鎧の一派は相手の裏をかく読み合いは弱者の戦い方だと思っているのだ」
「すごい脳筋一派ね……」
「わたしはそういうの嫌いじゃないぞ!」
結城優紗と鳥谷先輩がそれぞれ感想を述べる。確かに下手な小細工をしないぶつかり合いが好きなところは俺としても好ましい性分である。しかし、仮にも地上の支配者を目指す派閥がそれでいいのだろうか?
地下では敵なし集団だったのかもしれない。
しかし、現代には重火器を用いて統率された動きをする軍隊とかがあるんだぜ。
何となく、連中にはここでしっかり大海の広さを教えてやらないといけない気がした。