前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第94話『コレ、もしかして研無刀ってやつですか?』

 

 

 

 

「は……? いや、レオ殿、これは一体……」

 

 グラスが呆気に取られて目を丸くしている。

 

 強力な戦士揃いのはずだった軍勢がものの数秒で死屍累々(実際に死んでるかは不明)になったのは想定外だったのだろう。

 

 命を懸けた戦いをするぞと気合いを入れてたのに一瞬で勝勢にさせてすまんな。

 

 

『ど、どうなってやがんだ!? なにをやられた!?』

 

 

 意識を失って横たわる同胞たちの中心に佇む紅鎧が咆哮めいた声を上げた。

 

 デカい図体でキョロキョロと途方に暮れた様子を見せておるわ。

 

 

「やれやれ、とんだチート魔王よね……あたし必要なかったかも」

 

「す、すげえー! 何が起こったんだ!? しんじょーがやったのか?」

 

 

 結城優紗と鳥谷先輩がそれぞれの知見に見合ったリアクションをしている。

 

 

「それじゃあ、残りのあいつらは肉弾戦でぶっ倒すんで」

 

 

 雷魔法で全員一掃してもいいんだが、それだと鳥谷先輩に俺の戦ってる姿を見せられないんだよね。

 

 魔法でパパッとやっても強さは伝わらないかなって。

 

 だから、紅鎧と四天王には雷撃を浴びせないでとっておいた。

 

「しんじょー、見せてもらうぞ、お前の本気をな!」

 

「はい、しっかり見てて下さい」

 

 鳥谷先輩の期待を背中に受け、俺は空間魔法のストレージから聖剣を取り出した。

 

「あっ、それあたしの聖剣じゃない! また勝手にぃ!」

 

 結城優紗が不服の申し立てをしているがスルーする。

 

「どりゃああああ!」

 

 俺は立ち往生する熊四匹に突撃した。

 

 そして、なんとなく一番手前にいた虹色のタテガミをした一匹に斬りかかった。

 

 

「ふんぬっ!」

 

 

 ズバアアアアッ!

 

 

『グアアアアアアアッ』

 

 

 熊の肩口に剣を振り下ろし、股下まで両断する。

 断末魔を上げながらズシィイィンと倒れ込む巨体。

 ふむ……。

 

 この聖剣とやら、思ったより斬れ味悪いな。

 強度はあるから力技で両断できたけど……。

 どっちかっていうと叩き潰した感が強い。

 

 頑丈だけど斬れにくい性質。コレ、もしかして研無刀ってやつですか?

 

 俺も詳しくないが、研無刀とは『見た目なんかは真剣とほとんど変わらねぇがあえて斬れない様に鋭く研がない分硬度と重量をかなり増加させて斬るより破壊を目的とした玄人好みのあつかいにくすぎる刀』らしい。

 

 何年か前に幸一おじさんの家にあった漫画でそう読んだ。

 

 

『馬鹿な! 彩雲のやつが一撃で!?』

 

『チビで非力な無毛猿人族が我ら熊人族の表皮を斬り裂いた……?』

 

 

 驚いている紅鎧以外の四天王の残り二匹。

 

 

『うっ、てめぇはまさかあの時の……! オレ様の目を潰したてめぇがなぜここに……!』

 

 

 紅鎧は俺の姿をまじまじと見て、以前対峙した存在だと気付いたようだ。

 

 

「そりゃ助っ人だよ。昨日、グラスたちと森で偶然出会ってな。お前らの地上侵攻の話を聞いたのさ。住んでる場所が攻め込まれるって知ったら止めに入るでしょ」

 

 

 俺が簡単に経緯を説明すると、

 

 

『貴様のような矮小な存在が我々を止める? 笑わせてくれるな! よくわからん罠を張って雑兵を一掃したからといって単騎の実力差が覆ることはない!』

 

『そうだ! こちらには無敵の存在に進化した一騎当千の紅鎧殿がいるのだぞ! 不意打ちで彩雲を倒したくらいで図に乗るな!』

 

『…………』

 

 

 威勢のいい四天王二人とは裏腹に紅鎧は黙りこくっている。

 

 地上侵攻の意思は揺るがなかったとはいえ、負け知らずだった者が初めて植え付けられた敗北の恐怖はそう簡単に拭えるものではないはずだ。

 

 俺と実際に向かい合うまでは想像もしていなかった緊張感がフラッシュバックしているに違いない。

 

 モフモフの毛でわかんないけど、人間だったら冷や汗とか垂らしてそう。

 

「御託はいらんよ。地上に出て好き勝手やりたいなら俺を倒してからにしな」

 

 俺が剣の切っ先を向けると、

 

 

『く、くそがああああっ! どきやがれ、このクソ生意気な無毛の猿人族め! オレ様は地上を支配するんだ! てめぇなんかに構っていられるか!』

 

 

 紅鎧はどこか焦ったような口調でそう言うと、その巨体からは想像もできない瞬発力でロケットスタートをした。

 

 そして――

 

 

「うおっ!?」

 

 

 俺を弾き飛ばし、四天王を置いて単独で地上に通じる門を抜けていった。

 

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