前世が魔王だったことを思い出して最強の力を得たけど、そんなことより充実した高校生活を送りたい   作:遠野蜜柑

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第96話『名声カードバトル』

 

 

 

 

 

「俺は地上に行った紅鎧をぶっ飛ばしてくるぜ」

 

「レオ殿……! では我もそちらに……我には熊人族に特化した秘技が……」

 

「いや、こっちは俺だけで大丈夫だ。それより、結城を手伝ってやってくれ。あいつ、しっかりしてそうでドジることがあるから」

 

「う、うむ……そ、そうか……ならこの場は我らに任せておけ! ユサ殿と協力して必ずや極夜を討ち倒してみせようぞ! なあ、皆の者!」

 

 

「「「「おおおおおおっ!」」」」

 

 

 なんかグラスも忍者たちもやる気を出している。

 そうだな、俺がパパッと全部終わらせたら彼らも張り合いがないだろう。

 苦境を共に乗り越えた一体感みたいなのが人同士の絆を強くすると聞いたこともある。

 

 新たな世界に踏み出す一歩となる彼らの共同作業を奪うのはよくないよな。

 

 

「紅鎧を追跡させた者たちが何人かいる。外で待つ彼らの案内で追いかけてくれ。レオ殿の武運を祈っている」

 

 

 グラスは仲間に紅鎧の後をつけさせていたらしい。

 そりゃ助かるぜ。

 どっちに行ったかわかんなきゃ見つけるのは難儀だったからな。

 

 

「鳥谷先輩、行きましょう」

 

「おうよ!」

 

 鳥谷先輩に声をかけると彼女はぴょいんと俺の背中に乗ってくる。

 

 もはや手慣れたライディングだ。

 

「優紗、頑張れよ!」

 

 鳥谷先輩が結城優紗に声援を送った。

 

「任せておいて!」

 

 結城優紗がそいやーと威勢よく熊に飛び掛かる姿を尻目に俺は門を出た。

 

 

 

「レオ殿、こちらです!」

 

 門の外で待っていたガッツが俺たちを先導してくれている。

 

 どうやら忍者同士で場所を伝え合う技というものがあるようで、紅鎧をこっそりつけている者が位置を逐一教えてくれているらしい。

 

 

「いたな……」

 

 

 ズシンズシンと森を駆ける70メートル熊の後ろ姿を発見する。

 うわ、やべーって。

 こんなん誰かが近くまで来たらすぐバレちまうよ絶対に。

 

 今は立ち上がらず四つ足で移動してるからまだ目撃されてないと思いたいが……。

 速攻でカタをつけないと。

 俺は転移でサクッと紅鎧の前に躍り出た。

 

 

「うわわっ、いきなり場所が変わった!? どうなってんだ!?」

 

 

 俺の耳元でそんな声が聞こえた。

 そうだった。

 背中に鳥谷先輩がいたんだった。

 

 鳥谷先輩はいきなり周囲の景色が変わって驚いている。

 

 ちょっと説明している暇はないんで申し訳ないが驚きっぱなしでいてもらおう。

 

 

「よう、そんなに焦ってどこへ行くんだ?」

 

 

 俺は紅鎧がしっかり気づけるようにやつの数メートル手前に雷を落としながら言う。

 

 

『ぐっ!? ハッ……き、貴様ァ! 一体どうやって先回りを!?』

 

 

 紅鎧が慌てて急ブレーキをかけるように立ち止まる。

 

 巨体が勢いよくズザザーっと停止した勢いで周囲に砂埃が舞う。

 

 

「お前の仲間はほぼ全滅だぞ。たった一人じゃ支配なんてもう無理だろ? この辺で諦めたらどうだ?」

 

『何を馬鹿なことを……オレ様はかつて地上で栄華を誇ったキョクロン国大公家の血筋を受け継ぐ存在なんだぞ……! 日の光に照らされた地上を統べる資質を誰よりも持つオレ様が諦める意味がわからん!』

 

 彼はまだ遠い先祖の立場を持ち出して意地を張るらしい。

 

「やれやれだな」

 

『てめえは一体何者だよ! どうしてオレ様を前にして平然としていられる! メリタでは誰もオレ様に一対一で勝てなかったというのに!』

 

 紅鎧は必死に吠えて地下で自分がどれほど強かったかを語る。

 

 そんな地元での評判なんか言われたって知らんわ。

 

「俺は……魔王だけど」

 

 評判勝負ならということで俺も過去の肩書きをオープン。

 

 名声カードバトルだ。

 

「そうだ! しんじょーは最強の馬王なんだぞ!」

 

 鳥谷先輩が言ってるのは文字違いですが。

 

 

『てめぇが王だとぉ……王に相応しいのは高貴な血筋を引き、圧倒的な力を持つオレ様なんだ! グラスの野郎でもなければ、ましてや貴様のような地上に取り残された卑しい血筋の末裔でもねえんだよぉ!』

 

 

 へえ? ここでグラスの名前が出てくるということは、やはり彼も地下都市ではロイヤルな身分なんだな……。

 

 

『オレ様の前から消え失せろ小虫がぁ!』

 

 

 紅鎧は腕を大きく振り上げ、ギラリと硬質そうな爪を俺に向かって叩きつけてくる。

 

 

「ひとつ聞いていいか?」

 

 

 俺は迫り来る巨大な魔手をまっすぐ見据えながら、

 

 

「血筋は知らんがな――」

 

『吹き飛べ、地上民がああああああっ!』

 

「お前の力のどこが圧倒的なんだ?」

 

 

 右手をかざして魔法の結界を張り、紅鎧の攻撃を受け止めて言った。

 さすがの巨体から振り下ろされる一撃はやはり重かったらしい。

 風圧や衝撃で周囲の木々がいくつか倒れた。

 

 俺は全然重みを感じなかったけど。

 

 

 

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