無窮の果てに   作:雀盆

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ai絵どうしよ
アンケートしたけど、特段キャラのイメージよりも武器とか街に力注いでるからなんだろ…うーむ困った困った


憧憬の先に

憧憬の先に

【何故邪魔ヲスル!!!コノ世界ハ人ガ増エスギタ!淘汰スルベキ存在ナノダ!】

 

「随分と流暢に喋るじゃないか。それも人間の知能を奪って得た機能か?」

 

【黙レ…黙レ…黙レ!!!!森籠リノ塵風情ガ!】

 

「ハハ、そう怒んなよトカゲ君。まぁ、陰キャなのは否定しないがな」

 

 と言っても、あまり余裕はないんだけどな。自身の魔力を度外視した大型魔法の行使のせいでガス欠寸前。

 倒そうとすれば奇跡の復活劇を起こすなんて在り来りな茶番のせいで意味が無い。

 正直、無理ゲーの負けイベをやらされてる気分だ。

 

「簒奪者としての権能が、取り込んだ存在の知能を自分のモノにするなんて単純なモノじゃないんだろ?─────ッ?! ちぃッ!!」

 

 ナルキソスは3つの口から毒霧を吐く。

 続けて、2つの口から火を吹き、毒を含んだ大爆発を引き起こす。

 

 爆発に堪らず近くの建物まで退避せざるを得なかったシキは、寸前でナルキソスの首を1つ切り落としてから、その場を離れた。

 

 怒り狂ったナルキソスは、シキが退避したのを確認すると、すかさず足元から泥を生み出し辺りを染めていく。

 雷撃による黒泥(ケイオスタイド)の蒸発が無い以上、自身の力の根源となる泥を排出しない理由はない。

 泥によって建物は倒壊され、跡形もなく沈んでいく。

 

 ナルキソスの存在強度は最初に目覚めた時よりも格段に上がっていることに、シキはずっと疑問に思っていた。

 悪役イベントによくある「攻撃し続けると覚醒して強くなる」なんてことはあるが、それにしても強さが格段に違うのだ。

 

 最初に首を切断した時は豆腐を切ったような感覚だった。

 しかし今、切断した時の感触は岩を斬ったような感覚で、シキは思わず太刀を握る右手を見る。

 

 明らかに硬さが変わっているソレに、シキの頭に2つの考察が浮かんだ。

 ひとつは、敵特有の「本気になったら力が増して防御力も上がった」。

 もうひとつは、泥によって吸収された対象の力を、そのまま自分の強度に繋げている。

 

 シキの目に先程から嫌という程流れ込んでくる情報によって肯定される。

 成長に上限が無く、成長速度も自分より圧倒的に早く、学習して上回るという結論に、諦観の視線を向けるしか無かった。

 

 本来、毒竜ナルキソスという存在は神として崇められる存在でもなければ、竜としての格も高くない。

 毒竜と言うよりはトカゲの魔物である。

 それもタチが悪いのは、数千年もの前に神が戯れに「8つも首があったら面白い」とかいう理由で作って、下界に捨てた竜擬きのトカゲである。

 

 食べた存在を学習するように作られ、その在り方を教えられずに、このレルネーの大沼に廃棄された。

 

 そして、ナルキソスは力無い無能だった故に、大沼に住む魚のみを食べ、水中で生活する方法を学び、毒を持つカエルや火を吐く犬を餌にここまで成長した。

 声を聞ける勇者の死体を食べて言語能力を培った。

 戦う力を、戦い方を理解したナルキソスは、無能体から知性体へとのし上がった。

 

 何も無い存在故に、力を身につけたトカゲは簒奪者と世界に認められ、その力を後天的に身に付けた。

 

 『簒奪者』は取り込んだ存在の技能と知能を吸収して、自分の能力へと書き換える。

 ナルキソスは生物であれば取り込むだけで強くなるのだ。

 そして、同じ存在を取り込んでも意味がなかったから、この数千年、脅威となるレベルまで成長しなかったのだ。

 

 そこに精霊と神の力が取り込まれたことで急激に成長を果たして、黒泥を取り込んだことで、黒泥に飲み込んだ存在を生物、無生物関係なく自己のものへと変換する権能へと昇華させたのだ。

 故に、泥によってレルネーの街の約7割を侵食し、シキの魔法を喰らった以上、その存在はLv3相当へと格上げされた。

 

 存在強度は魔物ではなく、精霊と神の血(イコル)を取り込んだことによって、正真正銘ナルキソスは『神霊』へと昇華している。

 つまり、シキがマトモに戦っても勝てないのである。否、現人類が束になっても勝てない存在。

 何せ、地上でフルスロットルの神の力を使える以上、正しく天災。

 

 諦めもするだろう。

 絶対的な目が、この世界の全てが詰まったとも言ってもいい目が、そう証明しているのだ。

 無数に広がる未来は勝利する未来が無いと肯定する。

 這いずり立ち上がった(トカゲ)に1歩届かない。

 レルネーの街にはシキ以外に戦えるものが居ない。

 明日まで増援は来ない。

 

「(冒険者たちが救援に来るまで耐久レースでもしろと?)ハハハハハ! 神に勝てないからって諦めろって? ふざけるな! 結果が知れてる戦いほど詰まんないことはねぇだろうが!」

 

 ほんとに嫌になるさ。

 確定した未来は覆せない。

 過程を変えることが出来ても、収束する未来は固定されている。

 俺がこのまま戦ってもこの街は滅ぶ。

 力を十全に扱える神にどうやったら勝てるのか、元凶の神に訴えたいレベルだ。

 

「あぁ、いいさ。やってやるよ! てめぇはどこまで行っても偽物だ。なら、偽物の神に勝てない道理は無い。俺が見たのは本物の神の存在であって、お前じゃない。お前がどれだけ神として存在を定義しようと、お前には死が付き纏う。神に有るまじき死の概念が付き纏う。なら唯一、ソレがお前の弱点だ」

 

 目が訴えてくる情報には、確かに目の前の存在は死の概念がある。

 それは下位レベルの神造生物故の欠点だろう。

 かの大英雄ヘラクレスも神であるヒュドラーを討伐したのだ。

 なればこそ、倒せない道理は無いのだから。

 

 

────────────────────────

 

 

 場所は移り、守衛広場近くの建物の屋上。

 

 そこには避難してきた傭兵たちと女神ヘスティアが、固唾を呑んでナルキソスとシキの戦いを見ていた。

 

「あれだけの魔法を喰らって、まだ起き上がれるのかよ!」

 

 誰かの嘆きに、避難してきた住民たちは絶望した。

 ここまで離れていても、轟音と地面を揺らす衝撃による戦いの余波が届くのだ。

 先の旅人が我らの街を守るために戦ってくれている、と皆分かっている。

 それでもまだ元気に暴れている土地神に恐怖するのは当たり前だ。

 

 人々の多くは街の外へと避難するために行動を移し、屈強な傭兵たちは殿として最後に街を後にするために、シキの戦いを観戦していたのだ。

 

 最初は善戦していたシキに歓声を上げていた男たちだが、何をしても倒れず、ましてや明らかに強くなっているその様子に、次第に喜びの声は失せて、ネガティブな雰囲気が漂い始めていた。

 

「もう…もうこの街は終わりなんだ」

「俺たちが何をしたって言うんだ」

「俺は今日ここで死ぬのかな」

「早く…早く逃げないと!」

 

「もう泥がそこまで来てる! 逃げれる者は早くこの街から離れるんだ!」

 

「女神様! 貴女も早くここから避難した方がいい! おい! 誰かアンドラ運ぶの手伝ってくれ!」

 

「ボクはここで、シキ君が生きて帰ってくるのを待つよ」

 

 レルネーを放棄する声が聞こえ、ヘスティアにも逃げるように傭兵の男が言った。

 ヘスティアの傍には意識が無いアンドラが倒れていた。ヘスティアは変わらず、シキの戦いを見ながら答える。

 

「ボクの…ボクが認めたシキ君が、自分の信念を持って戦っている。シキ君は『後は任せろ』って言ったんだ。なら、せめてボクはあの子の親として、シキ君の勇姿をこの目に焼き付けたい」

 

 ヘスティアの言葉に、崩れ落ちていた男らは顔を上げる。

 

「俺もここに残る。ここは俺が生まれた街だ。最後までここに残る」

 

 屋上にいる誰かが言った。

 その声で「俺も」「僕も」と同調する声が上がる。

 街から避難しようとしていた者たちも、その声に思わず足を止める。

 

 

────────────────────────

 

 

 俺は英雄に憧れていた。

 どうしようもなく自分の命を救ってくれた英雄に、俺は憧れたんだ。

 俺がまだ何も知らないガキの頃の話だ。

 両親に連れられて近くの森に山菜を取りに行った時だ。

 

 俺はガキだったから、初めての森で楽しくなっちまったせいで、気づけば親の元から離れて迷子になっていた。

 泣き叫びながら親を呼んだのをよく覚えている。

 右も左も分からず変わらない風景を只管(ひたすら)歩いていた。

 

 暫く歩いていると、近くの茂みからガサガサと草木が揺れる音が段々と近づいてくるのを感じて、ガキの俺は両親だと思って、バカ正直に「ママ!パパ!」って近づこうとした。

 勿論、音の正体は両親でもなんでも無くて、ヘルハウンドっていう狼みたいな魔物だった。

 ヨダレを垂らし獰猛な声を出す目の前の脅威は、俺に襲い掛かってきた。

 

 俺は必死になって狼から逃げるために、不安定な足場を気にもせずに走り続けた。

 ガキの俺よりも狼の魔物の方がよっぽど足が速く、簡単に追い付かれた。

 

 狼は口から火を吐こうとするのに気づき、俺はもうここで焼け死ぬんだって死を悟った。

 だが、いつまで経っても熱気だけは伝わるのに、自分には怪我ひとつなかった。

 どうやら俺はなにかに救われたらしいと思い、目を開け顔を前に向けると、大剣を盾にした大男が前に立っていた。

 大男はその大剣で軽々と魔物を両断して見せたのだ。

 

 俺はその姿に憧れた。

 元々、英雄譚が好きで魔物を薙ぎ倒す姿に、そのカッコ良さに俺は英雄の姿を幻視した。

 当の本人はそんなすごい存在じゃないって言ってたけど、俺からしたら立派な英雄だった。

 だから、いつか俺もこの人みたいに強くなって誰かを守るために、英雄のような男になりたいって思った。

 

 でも現実はそんな甘くなかった。男が軽々と魔物を屠れたのは神の眷属になっていたからだろうな。

 俺はその男に命を救われてから毎日、自分を鍛えようと走り込みや木の棒の素振りをしたり、腕立て伏せをやったりと、少しでも自分を強くなろうと頑張った。

 そのおかげで人並み以上には強くなっただろう。

 

 だけれど、魔物を相手に大立ち回りすることなんてできなかった。

 ゴブリン程度なら剣のおかげで勝てたが、それ以外のデカイ魔物やすばしっこい魔物には勝てなかった。

 

 現実を理解してからは英雄を目指すなんてことは忘れて、故郷を守るための傭兵になった。

 何もしないよりかは街を守るために戦っている自分は凄い、と思い込ませていた。

 英雄に憧れ続ける人生を送るんだって、自分を誤魔化して毎日この沼地で過ごしていた所に、つい最近、かつて英雄を幻視した命の恩人の姿に似たようなオーラを醸し出してる男と出会った。

 

 オーラと言うよりは雰囲気が似ていた。

 その立ち振る舞いから歩き方、そのどれを取っても強者の風格が滲み出ていた。

 その男はエルフにしては白銀の髪色と不思議な目の色を持っていた。

 ハイエルフ故の王者の風格に、隙のない姿に俺は自分の憧憬を思い出した。

 止まっていた心に響かせてくれた。

 

 次の日の夜、その男と女神ヘスティアと一緒に酒場でお互いに語った。

 好きな英雄譚や自分の夢について。

 ほとんど自分語りをしていたが、それでも2人は真剣に俺の話を聞いてくれていた。

 

 暫く経ち、酔い覚ましも兼ねて解散することになった。

 そのすぐ後のことだ。

 俺の故郷が一瞬で業火に包まれたのは。

 

 目の前には猛る炎を放つ八本首の竜。

 一目で伝承に伝わる竜だってことは分かるが、事実を飲み込むことが出来なかった。

 混乱で真っ白になった頭で俺は仲間たちと一緒に竜に立ち向かうことにした。

 この街で育った俺たちが街を救わなきゃいけないんだって、そう思った気がしたから。

 

 でも、たかが普通の人間が、神みたいな存在を相手に手も足も出なかった。

 仲間は簡単に火で溶かされ、劇毒に侵され、泥に呑み込まれた。

 俺は痺れる手で意識が朦朧とするなか、初めてその竜に痛手を負わせることが出来た。

 まぁ、すぐに治されて殺されかけたけどな。

 

 また俺は死ぬんだろうなって思ったら、ガキの頃の記憶が想起した。

 なぜなら、今度は昨日出会ったハイエルフの男に、同じような状況でまた助けられたのだから。

 

───あぁ、カッケェーなぁ。ほんとに……ほんとにどうしようもなくカッケェよ。後は任せろなんて一度でも言われたら頼りたくなっちまうだろうが!

よえーな…自分の弱さを呪いたい。悔しい。悔しい。悔しいよぉ。もっと強くなりてぇ。

 

 

────────────────────────

 

 

「おい! 正気か? 俺たちに何が出来る?! 力も才能もない傭兵崩れが何が出来るって言うんだ!」

 

 誰かの嘆きが聞こえた。

 覚醒する際の薄れた意識の中、俺は確かに誰かの声を聞いた。

 自分たちには無理だと決めつけた声に、俺の意志は燃えたぎるように熱くなった。

 

「──俺はまだ諦めちゃいねえ! 俺たちは確かに弱い。だけど、それは目の前の戦いから逃げていい理由にはならねぇだろうが!!」

 

「アンドラ君! 起きてたの?!」

 

「アンドラ…テメェ、気でも狂ったか?」

 

 仲間の1人がアンドラに怪訝な表情を浮かべる。頭でもおかしくなったのか、と問いかける。

 

「ダッハハハハ! そうだなぁ、頭でも打っちまったみたいだな。俺は戦うぜ。旅人があんなカッコよく俺たちの街のために戦ってくれてるのに、俺たちは情けなく背中見せて逃げろって?」

 

「だが、俺らに何が出来る? また無惨に殺されていくだけだぞ」

 

「じゃあ俺だけでも戦う。何も出来ないし足を引っ張ることしか出来ない。だけどそれでも、今ここで逃げたら俺は胸張ってこの街の傭兵だって言えなくなっちまう。今戦わなきゃ俺は一生…一生英雄になりたいって夢を叶えられない気がするんだ!」

 

 アンドラの決意は尻込みしていた傭兵たちの心を突き動かす。

 若手の男が戦おうとしている。

 他所の人が戦おうとしている。

 ベテランの傭兵が逃げる選択をしたら、先人達からプライドがないのかと鼻で笑われるだろう。

 

 鎧を着直して落とした武器を、仕舞っていた武器を構え直す。

 屋根を伝って男たちは竜の元へ駆け出していく。

 命を散らす覚悟でこの街を守った英雄になるために走り出す。

 

 アンドラも戦いに行くために準備をしているが、愛剣がないことに気づく。

 どうやら先の戦闘で粉々に砕け散ったらしい。

 

「アンドラ。お前さん武器がないんじゃろ? ほれ、これを使わんかい」

 

 アンドラの元へギュルスが手に持つ剣を渡す。剣の見た目はグレートソードと呼ばれる両刃の大剣。

 特別な装飾も特殊効果もないただの剣。

 それでもギュルスの持ちうる全てを掛けて鍛造した作品。

 

「これは?」

 

「無銘の剣だ。儂の全てを掛けて造った最高傑作だ。トカゲ程度の首、簡単に撥ねてくれる」

 

 ニィッと笑うギュルスにアンドラもつられて笑みを浮かべる。

 

「助かるよ。大切に使わせてもらう」

 

「フン! 壊したら弁償じゃがな。勿論後で感想(ヴァリス)を請求するがな」

 

 ヘスティアとギュルスはアンドラ含め傭兵たちの後ろ姿に、必ず生きて帰ってこいと願う。

 

「君たちの行く末をボクは見守るよ。悠久の命を持って君らの描く英雄譚を見届ける」




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