無窮の果てに   作:雀盆

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説明回…
長い…泣きたい


奇奇怪怪

 

 

 外の2人を中に入れても特に何かある訳じゃないため、夕食の時間になったら呼びに来るよう言いつけ、寝室へと戻る。

 長距離の移動と寒さによるストレスで身体も精神もだいぶ疲れていたようで、夜まで仮眠を取ることにした。

 

 

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 カザヌに滞在して大体1週間が経った。

 それなりに街を観光し、カザヌの人達と触れ合ってきた。

 シキ一行(メイド2名含む)は、リュエルより勧められた観光地の1つ、学区の聖意図書館に訪れていた。

 

 カザヌ・キーテッジは9区画に分かれている。

 中心に位置する円状の街区『│央区《おうく》』。

 央区を囲うように国を等分した区画が8つ存在する。

 

 入出国が唯一出来る『商区』。

 農業や酪農を主とする者たちが住む『農区』。

 工業地帯となっている『鉱区』。

 教育の中心地『学区』。

 死を弔う『霊区』。

 娯楽に生きる『遊区』。

 騎士団や傭兵団、ギルドがある『闘区』。

 ()()()()()()()()『荘区』。

 

『央区』-皇城は勿論、大聖堂や神殿、貴族院などがある。上級役職の仕事場や行政の中心地でもある。催事や神聖礼拝を取り仕切る国の中心地。

 

『商区』-カザヌ唯一の入出国できる関所が存在し、一般市民や行商人などが商売を行っている市場が存在する。また、各街区から物を売り買いしに来る国民の中心地でもある。

 

『農区』-山岳や都市外含め、カザヌの農業を支えている街区。皇城を見て商区の左隣に位置し、畑や林産、漁業などを生業とする者が住む。

 

『鉱区』-農区よりも上の位置にある山岳の大半を土地とする街区である。鍛冶場や魔道具作成、大工、鉱業など男臭い感じがする街区。

 

『学区』-商区の右に位置する教育の中心地。カザヌ唯一の図書館や学校、託児所、児童館などがある街区。

 

『霊区』-カザヌで一番小さい街区で住む者も居ない。あるのはカザヌで死んだ者が入る墓と礼拝堂、火葬場や葬儀場がある死を弔う街区。

 

『遊区』-カジノや普通の公園、誰でも使える安全安心な魔道具公園、劇場、博物館などがある街区。割と裕福な家庭がここに住んでいる。

 

『闘区』-騎士団や傭兵団、ギルドが存在する街区。一般市民上がりの騎士や移り住んできた傭兵の住まいがある。また、貴族や市民が娯楽としている闘技場もある。

 

『荘区』-情報は特になく、一般市民すら近づかない街区。カザヌで罪を犯すとここに収監される。

 

 これら各街区には、その街区の住人が毎週行われる『祈祷の刻』の際に利用する教会が1つ設置されている。

 その教会には1人の司教が管理を行い、司教が選出した司祭が何人か常駐して運営を行っている。

 勿論、荘区にも設置されているが、果たしてそこの住人が神に祈りを捧げるかと言われたら精神的に有り得ないと言えるだろう。

 また、央区には皇城があるが、それとは別に豪華絢爛な教会が設置されている。

 

 教会の話になるが、祈祷する際に祈りが捧げられる向きというのは、天上の主が居座る方向、つまり皇城の『神の間』に全教会が向いている。

 

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 聖意図書館に着いたシキは、カザヌの歴史について触れたいと司書に取り次ぎ、案内してもらっていた。

 一方、ヘスティアの方は学区で遊ぶ子供たちと触れ合うとシキに一言告げた後、付き人のエレナを連れて公園へと向かっている。

 

 聖意図書館はバロック建築の図書館で、規模数で言えば約21万冊に及ぶ文献や書籍が集うほどの大きさ。

 一部は魔道具によって施錠封印している禁書を置いている部屋などがある。

 恐らくこの世界で一番の大きさと文献の多さを誇るとされる修道院図書館である。

 現職の司書の人達ですら全ての書物を制覇した者は、一人を除いて居ないほど書物が貯蔵されている。

 

 

 真なる英雄が誕生するよりも古代、穴から溢れる悪魔に為す術なく蹂躙されていた時代。

 この地─カザヌは、この世界において最北端の文明と言われていた。他所からやってきた吟遊詩人によって英雄の存在は知れど、北ノ町カザヌには英雄など現れる訳がなかった。

 

 北国故に、一年を通して暖かい日など一週間あるかないか。

 暖かいと言っても薄手のコートを羽織る必要があるくらいの涼しさだ。

 寒さゆえに野菜は育たず、魚は氷面下に生息する小魚から中程度の魚程度。

 主食の毒性の強い芋とアザラシやクマを生食で食べる以外には、食事の確保は三月に一度やってくる商人から買う程度しかできない。

 

 環境によって強制的に貧困な暮らしをしてきたカザヌの民たちにとっては、天災の吹雪や雪崩、穴の悪魔による襲撃は神の逆鱗に触れてしまったものだと考えられてきた。

 よくある話だが、神に祈りを捧げることで災いを起こさせない。信仰心が足りないから神がお怒りになり、罰として人々に試練を与える。

 

 

 祈りの方法は何種類かあるが、1つは行事・行為の度に神に対して感謝や救いの祈りをする。

 もう1つは、供物を祭壇に備えることで恩恵を受けるものだ。供物はなんだっていい。

 その土地で取れた作物や木の実、魚や獣、酒でもいい。

 地域によっては人間すらも供物として儀式儀礼に捧げる地域だってある。

 

 カザヌには現在の荘区より少し北に進んだところにある遺跡に黒い獣が眠っているとされており、史実にはしっかりとその獣の容貌が伝えられている。

 曰く、闇を貫く光は常に我らを監視する神の遣い。

 その姿を見てしまったら、永遠の夢へと誘われるとも言われる。

 

 大人が子供に対して「悪さしてるとサモディヴィに食われてしまう」と言いつけるくらいには恐怖の対象になっている。

 故に、昔のカザヌではサモディヴィから身を守るために、毎月一日になると犯罪者を生贄に捧げていた記録が実際に残っていた。

 また、天災のために、修練を積んだ初心で処女な女性を極寒の湖に聖衣1枚で人柱として祈りに捧げていた記録も残っている。

 

 現在では国家として築いたカザヌ・キーテッジになってから、人間を犠牲に儀式行為は執り行っていないが、サモディヴィの他に湖の魔女が死へと誘惑するなんて言う都市伝説が出回るほどになっている。

 

 

 司書に聞いた話だが、現在の教皇はヴィジェニヴァ=サバトス・キヴァルニチというらしく、前教皇を退位に持ち込んでその玉座についた出来る王様という話だ。

 今までは最高神ベロボーグの絶対君主制だったが、現教皇がそれに異を唱え、カザヌの道を指し示し、支えるのが神の仕事であり、カザヌの民を導くのは王の務め、と圧倒的カリスマ力を見せつけた。

 国民からの支持も厚く、37歳にして教皇となり15年カザヌを良き国へと発展させてきたと言う。

 

 そんな教皇の下に内政を執る枢機卿団があり、これが所謂、大臣的役割を担っている。また、街区長である司教も枢機卿団に数えられている。

 

 国を守護するスヴァクト聖王騎士団は、

 

 1:街の治安を守る警察

 2:入出国の監査を仕切る駐屯兵

 3:行政機関を警備する憲兵隊

 4:外部からの入国者の監視を担う外交機関、特に神の眷属や神自身の場合、特務外交機関という公安的な組織が関わってくる

 5:文官として行政機関の運営に携わる行員

 

 大きく分けてこの5つにそれぞれ独立して分かれている。

 

 

 カザヌ・キーテッジのすぐ側にある巨大湖はルコモリアと呼ばれているらしく、カザヌの民からは湖底には『理想郷』があると信じられている。

 

 かつてカザヌの人々は湖の先には世界の果てがあると考えられていた。

 しかし、カザヌ・キーテッジの過酷な環境下で過ごしてきた者たちにとって、温暖な気候で様々な種類の作物や動物が育つ外の世界は希望に満ちていた。

 そんな世界を目の当たりにした民は何を思うか。

 過酷で貧しい生活より良き生活になると信じ、カザヌから離脱するちょっとした離反革命が起きたのだ。

 

 それを国の危機と悟った当時の教皇は、外の世界について吹聴する者を片っ端から排除し、湖の先に広がる世界を伝説『世界の果て』として世間に公表することで、国民の言う理想郷は「世界の果てに存在する」とした。

 

 教皇は民の流出を防ぐために壁を建築し、民の認識を壁内へと移し、外の世界へ関心を向けさせないように仕向けたのだ。

 壁外に出ることはカザヌにとってタブーとなり、最初こそは多くいた壁外に出ようとした者たちは気づけば居なくなっていた。

 ─────────D.ステュアクス『理想郷伝説』

 

 

 

 どの歴史書を見ても黒い歴史が綴られているのが気になるが、カザヌで行われている儀式についてはあまり分からなかった。文献が少ないってのもあるが、意図的に儀式について隠しているように思える。

 加えて、歴史を見ても男神の記述もあれば、女神だという記述もある。特に最近の文献には女神としか書かれていない。

 

「あの、シキ様」

 

 本を読み漁り思案に耽っていたシキの元にシスター・ノンナが話しかける。

 

「もう昼刻の鐘が鳴りましたが、休憩と致しませんか」

 

「もうそんな時間か。そうだな、美味い飯屋でもあるか?」

 

 シキは凝り固まった身体を解すように身体を動かして立ち上がる。

 そこに司書の女性がやってきて、

 

「片付けておきますので、本はそのままでお願いします」

 

 と言っていたので、シキはノンナを連れて聖意図書館を後にした。

 

 それにしても最後に読んだ湖についてだが、なぜ湖の先にあった世界を理想郷と呼んでいたのに、今では湖の底に理想郷があるとされているのか。

 言い伝えが広まるにつれて曲解されてきたのか。それとも意図的に変えたのか。もしくは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 荘区についても調べてみないとな。

 

 

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「───それで報告は以上か?」

 

 ここは蒼銀の城『王の間』。

 玉座に座るのは│聖神福音大聖《ショウシンフクインタイセイ》国家カザヌ・キーテッジの偉大なる法皇。

 教皇ヴィジェニヴァ=サバトス・キヴァルニチが頬杖をつきながら、スヴァクト聖王騎士団の特務外交機関に配属されているリュエル・アルスートの報告を流し聞きしていた。

 ヴィジェニヴァは歴代最高の法皇と謳われ、魔導師としても為政者としても才覚を持っている万能人である。

 

「えぇ。警戒心は強いようですが、観光目的できた彼らには必要以上の待遇に違和感を抱いているようです」

 

「ふぅむ、種族ゆえの警戒心か……。実在する伝説の最後の子孫であり、精霊の愛し子。極東での逸話は本物のようだからな。リュエルよ、引き続き監視は怠るな。彼らの目的がなんであれ、我らが主神の()()()()()()()()()()()十分注意するように」

 

 ヴィジェニヴァに対して一礼した後、リュエルは王の間から出ていった。

 後姿を眺めていたヴィジェニヴァは、玉座の左側に控えていた男と視線を交わすと、その男は部屋内にいる者たちに出ていくように伝えた。

 

「はぁ、難しいものだな。人の世を変えるというのは」

 

 男2人だけとなったその部屋で、ヴィジェニヴァは深い溜息をつくと気の抜けた声で男と会話を始める。

 

「余り表に出さないでくださいよ。あなたは我々の輝ける星なのですから、しっかりしてください」

 

「分かっておる。はぁ──リュエルめ、しくじったら│徒《ただ》では済まんぞ」

 




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