2週間弱少し海外旅行してました。
暫くは毎週投稿に戻りますー
皇城地下。
地上の白と青の光は、ここには届かない。
灯りは魔導灯の青白い残光だけ。壁を舐めるように揺れ、石の湿り気だけを浮かび上がらせていた。
階段を降りていく足音が、やけに綺麗に反響する。
それは足音ではなく、儀式の拍子のようだった。
「……フフ……フフフフフ……」
笑い声が漏れる。
湿った空気の中で、鎧の継ぎ目がわずかに鳴った。
コシン・チェイスは、地下の回廊を一人歩いていた。
護衛はいない。必要がないからだ。
ここは皇城の“裏”であり、そしてこの国の“芯”だった。
壁には古い紋章が刻まれている。
かつてベロボーグの名で飾られた、光の象徴。
その上から、別の文様が重ね彫りされていた。
深緑と黒。
円環。
蟠る蛇。
ヴェレスの
「全く、
愉しげに呟き、指先で蛇の輪郭を撫でる。
そこに祝福はない。
あるのは、痕跡。触れたという事実だけ。
回廊の奥、重い鉄扉が現れる。
錠前は二重、魔道具の封印が三重に折り重なっていた。
普通の侵入者なら、ここが終点になる。
だが、彼は鍵を持っている。
腰に
鈍い音が響く。
刻まれた魔法陣が、呼吸するように脈動する。
封印が解ける音は、祈祷の終着のようだった。
「……さて」
扉の奥は広間だった。
玉座の間と似通った大広間。
天井は低く、柱が多い。
柱の1本1本に術式が細かく刻まれていた。広間全体が一つの魔道具、一つの儀礼祭壇と化していた。
“国そのものを祭壇とする”為の骨格。
中央には黒い水盤。
水ではなく、泥のような何か。
周りには魔力が溶けた液体金属が魔法陣のように地を這っていた。
水盤の周りには黒いローブ装束を纏った者たちが、等間隔で並び祈りを捧げていた。
水盤から伸びる導線は、東──ルコモリア湖がある方面。
地下でありながら、川の流れのような、水の流れを感じる。
地上の祈りが──懺悔が──悪性が、ここに流れ着く。
「美しい」
コシンは舌先で甘露を転がすように言葉を転がし、嗤った。
異邦の旅人を想起する。
彼等が動いている事実に興奮する。
迷い込んだ英雄を殺したら、リュエルがどんな顔で嘆くのか。
祈るだけの脳しかない国民の悲嘆に、悲壮にくれた顔がどうなるのか。
神と崇めていた存在がずっと偽物だったと知ったら、信心深い彼等は何を思うのか。
「視える者は視える。……だが、視えていても遅い」
彼は水盤の縁に、主神ヴェレスより賜った黒い杭を打ち込む。
何処かで手に入れた、黒い竜の鱗を加工した杭。
杭に絡み付くように泥が昇り、緑の紋が走る。
広間の床に刻まれた魔法陣が連動して光り始めた。
──儀式の調律。
「祈りは浄化ではない。
祈りは排水だ。
民はその身に塗れた悪を捨てる。
いや、捨てたと思い込む。
その確信こそが、儀式を成立させる。
200年の妄執。
我が麗しき主の願いは漸く叶った」
荘区。贄の祭壇。
己の自我を失って尚、その身に悪であることを強制された者たち。
「必要悪、などと。便利な言葉ですなぁ。
だから我々のような純粋悪に利用されるのですよ」
コシンは水盤の表面に指を落とす。
液状の魔力が、指先に絡みついた。
──甘い。
──苦い。
──そして、どこか懐かしい。
「人は自分を善だと信じるために、悪を“外”へ押し出す。
だが押し出した悪は、消えはしない。
ならば集め、磨き、形にする」
彼は立ち上がる。
彼が視線を向ける先には両手両目を拘束された一人の人間、いや一柱の神。
「貴方が導いた答えがここにありますよ。光と秩序の神ベロボーグ」
「──っ?!何をする気だ!!
無辜な民を、カザヌをどうするつもりだ?!
ヴェレス!!」
黒い鎧が軋む。
マントの裾が床を擦れる。
「口を慎んだ方がいい。
うっかり殺しかねない」
拘束され、床に転がされたベロボーグはヴェレスの気配のする方へ抗議を行った。
だが、コシンによって顔面を地面に叩きつけられてしまう。
「ッ?!神殺しは重罪。法ではなく、世界の則で定められているぞ」
「フフフ、フフハハハ。私に神が殺せないとでも?」
彼の言葉に嘘はないと知り、驚きを隠せない。
その様子を愉しそうに眺めていたヴェレスは、教皇の玉座を模したソレから立ち上がり押さえ付けられる彼に近付いていく。
「そう怒らないで。これはカザヌ、いえ世界の救済よ。
貴方が用意した悪性排除の法律を利用しただけに過ぎないの。恨むのなら、200年前の貴方自身を恨みなさい」
「巫山戯るな!こんなことが許されていいはずがない!
分かっているのか?!神が人間に干渉し過ぎた世界の末路を!神が───」
「あら、妾は何もしていないわ。妾はただ、救けて欲しいと言われたから助けてあげるだけ。
死ぬほど辛いと言われたら、殺してあげた方が幸せでしょう?」
可愛げに首をコテンと傾げた彼女は自分に悪気が一切無いと思っている顔だ。
「お前は…」
後に続く言葉はない。
彼女の顔を見て、言葉を失ってしまった。
「人の世を終わらせるのは何時だって人よ。妾はただその道を示しただけ。
堕ちた精霊の嘆きを聴いた。
救いを求める魂の叫びを聞いた。
なら、妾が出来ることは、その終着を教えること。
だから200年も掛かってしまったけれど、
「何を…馬鹿なことを」
「アハハハハハハハハハッッ!!これが貴方の目指した世界でしょう?!
荘区を作ったのは
──だから、妾はそのシステムに手を加えた。
秩序を望んだのは
──だから、妾は秩序を壊す。
救いを求める教典を産んだのは
──だから、妾は悪の教典に塗り替える。
貴方がこんな小さな国で作り上げた森のドールハウスごっこはもうおしまい。
この国は本当の色を取り戻す」
コシンは片手に握る銀の短剣をベロボーグの左手に当てる。
短剣で貫かれ、少なくない悲鳴を上げる。
「ガャアアアッッ────────」
「ああ、そうだ。最後に貴方には私の真実をお伝えしましょう」
痛みに震え上がるベロボーグは、目隠しを外され、突然の光に困惑をするも目を開ける。
そこには頭の鎧を外したコシンが短剣を握り立っていた。
褐色肌で白髪の男。
顔には大きな斜め傷があった。
「かつてカザヌ・キーテッジが建国するよりも以前、三柱の精霊を祀った夢想の一族がこの地にいた。
初代教皇ペルーン・アレクセーヴィチ率いる流民が、我々一族を蹂躙した。私はその生き残り。
全ては貴方の甘言から始まった物語。
我々が崇めていた精霊は何れも、貴方が下界に降臨した際に、支配する足掛かりとして送ったものだと知らず、身勝手にも縋った憐れな一族の成れの果てが私だ」
風の精霊サモディヴィ
水の精霊ルサールカ
森の精霊リーシー
三柱はベロボーグが魔物に苦しむ子供たちのために下界に送った精霊。
コシン・チェイスの一族はカザヌにある山岳に古くより住まう部族。
精霊は彼等部族を救い、彼らによって祭壇が設けられた。
信仰の対象として。
しかし、信仰は長続きしなかった。
救いを求める声、全てに精霊は答えられなかった。
人の余る欲望の果てに精霊の純粋さは薄れ、穢れていった。
そして、人の時代が終わり、神の降臨によって神の時代が到来した。
かつてのベロボーグもこの地に舞い降りた。
そこで出会ったのが初代教皇。
自分の土地に戻るために、精霊の助けを呼ぶ声を聞き、カザヌへ訪れた。
古くよりこの地を守った部族が突然現れた外部の人間を受け入れることはなかった。
精霊を遣わせた神と名乗る不届き者を見る目で追い出した。
原初の罪。
初代教皇が、ベロボーグが抱えるべき、最初の罪業。
「軋轢は仕方ない。我々の勘違いと貴方達の勘違い。文化も思想も異なる者同士。
相容れないのは仕方ない。
だがっ!!蹂躙を良しとし、我々を荘区に収容した!」
そう、ベロボーグは、彼等部族が精霊を悪しきことに利用しているのでは、という勘違いから始まった。
ただ、力を行使しすぎて疲弊していただけの精霊の呼び声を救難信号だと受け取ってしまった。
武力で制圧し、荘区に押し込めた。
全てが終わった頃には、精霊の存在は感じられなかった。
星の内海に消え去った精霊。
己の罪に気づいた時には部族に残ったのは憎悪の怨嗟のみ。
それが、ベロボーグと初代教皇の罪。
「200年だ。200年の時間苦汁を舐め続けてきた!」
胡散臭さは無い。
あるのは一族の復讐の念。
「だから、我々は同じ苦しみをお前たちにも与える。世界に終焉を齎し、亡き一族の悲願を達成させる」
「そうか…そうであったか」
「アハハハ。あら、諦めちゃった?」
「ヴェレス。お前は子奴らの肩を持っただけか」
「ええ、元々オラリオで闇派閥として活動していたけれど、貴方が面白そうなことをしていると聞いて来てみたら、
ベロボーグは力無く項垂れる。
もう彼に反抗する気は無い。
元々、200年近く地下に軟禁されていたのだ。
いくら悠久の神とはいえ、疲弊する。
コシンはベロボーグの腕を取り、水盤に近づける。
ドクドクと神の血が流れ堕ちる。
泥は脈動するように
「神の贖罪を持って夢想の一族の悲願は漸く叶う。
泥を被り、穢れた精霊よ。
目覚めの時だ」
背後の壁――そこには、もう一つの扉があった。
皇城から荘区へ続く、隠し地下回廊。
国の表からは存在しない道。
魔力を帯びた液体金属が川のようにその回廊を流れる。
コシンは扉を開けながら、空を仰ぐように呟く。
「上流の石像。精霊の“器”。
封じられたままでは困るのです。
今夜は解放しなければならない」
自身は精霊の“受肉”のための依り代。
奪い取るのではない。取り込むのだ。
最後の鍵――最後の精霊――それを体内に沈め、儀式は完成する。
「さぁ、始めましょう。
善を纏った悪の、完成を」
コシンは地下回廊へ足を踏み出した。
愉悦の仮面の奥で、憎悪だけが乾いていた。
その背中の影が、蛇のように伸びる。
────────────────────
ルコモリア湖沿岸にある高台。
ここは、漁を生業としている住民や市民権を与えられなかった貧民街で暮らす人々が住まう場所を一望できる。
シキとヘスティアは騎士団の避難誘導が行われる様子をそこで見ていた。
「嫌な気配がする」
ヘスティアがポツリと呟いたそれは、静かに空気に溶けていく。
全身毛が逆立つような感覚に襲われる。
草木が揺れ、湖面が激しく揺れる。
夕暮れに近付きつつある空はいつの間にか灰色の厚い雲に覆われていた。
濃密な魔力が聖都中心から吹き上がる。
「シキ様。貴方は一体何をなされるおつもりですか」
不安げな表情で此方を見上げてくるのは、この数週間世話係をしてくれたシスター・エレナ。
彼女はナイフを握り、静かに言った。
「私達の役割はカザヌ・キーテッジの安寧を保つことです。貴方がこの国に来てから、この国の空気が変わりました」
「見なくてよかったことを見てしまった息苦しさ。喉に何かが引っ掛かっているかのような感覚に蝕まれているのです」
シスター・ノンナもまた、大きなハルバードを此方に向けてきていた。
「その原因が貴方だと言うのなら、私達の命を賭けてでも刺し違えます」
「突然だな。見ない振りはよしたらどうだ?」
静かに言葉を紡ぐ。
ヘスティアは後ろに下がらせる。
彼女たちは教会が遣わした執行者。
教会側は、この事態は折り込み済みってことか。
「この国は最初から壊れてたんだよ。この地にいた先住民族と初代教皇率いる流民による争い。
すれ違い、勘違いから始まった物語だとしても、其処に眠る因縁は長い年月をかけて当人の手によって目覚めさせられた」
図書館で調べた歴史。
初代教皇の残した謝罪文。
荘区に掲げられたシンボル。
失われた精霊の声。
ベロボーグは自分の子である精霊を助けるために戦った。
そんな勘違いから始まった軋轢は、もう埋められないほどに深く広がっていた。
「人には人の正義がある。
歴史に揉み消された妄執の鬼。
原罪を受け入れ、それでも尚国の為に立ち上がる正義を志す勇者。
200年も練られた物語の完結に、俺という部外者は不要だろうよ。
だがな、リュエルが俺を頼った」
「何を…言って」
「エレナ、お前も知ってたんだろ。この国の歴史を。枢機卿団に属しているのなら尚更だ。
その身に刻まれた女神の痕跡がベロボーグのものでは無いと」
ベロボーグを騙る女神ヴェレス。
その名を口にした瞬間、エレナの睫毛が微かに震えた。
ノンナの握る柄が軋む。
心無しか彼女達の目が黒く濁っているように思えた。
「……その名を、軽々しく口にしないでください」
エレナの声は静かだった。
怒りではない。祈りの抑揚だ。
彼女はナイフの刃を、まるで聖具のように扱っている。
「迷いは悪性。悪性は穢れ。穢れは流さねばならない」
ノンナが淡々と続ける。
どこか、教義を読み上げているようだった。
ヘスティアが小さく息を吸った。
嫌悪ではない。理解したからこその冷えだ。
「シキ様」
エレナは一歩、踏み込む。
ノンナは腰を沈める。
「貴方が何者であろうと関係ありません。英雄?旅人?そんな肩書きは、ここでは意味を持たない」
「この国の安寧のために、貴方を沈めます」
それは宣告だった。
刃を振るう前に、結論だけを置く言い方。
──同時。
湖面が、沈むように揺れる。
遠い聖都の中心で、魔力が一度だけ脈打った。心臓の鼓動みたいに。
「時間切れだ」
シキは呟く。
そして、エレナを見た。
「エレナ。お前も知ってるはずだ。背に刻まれた蛇の
「それは光の神のものじゃない」
エレナの呼吸が止まる。
止めたのは恐怖ではない。
“触れられた”という事実だ。
「……黙りなさい」
「黙れない」
シキは一歩だけ前に出る。
「リュエルが頼った。だから俺は動く。正義のためじゃない。見てしまった者の責務として」
ヘスティアが、背中越しに言う。
「ねえ、シキ君。──来るよ」
次の瞬間。
聖都の中心から吹き上がった魔力が、雲を裂く。
灰色の空に、深緑の稲妻のような光が走った。
祈りの匂いが、甘く腐りはじめた。
空に浮かぶは巨大な魔法陣。
構造式は不明。解明は不可。
大地から風が舞い上がり、空から雷が降り注ぐ。
魔法陣の輝きに照らされ、聖都全体が光に包まれる。
魔力の流れから人々の精神力を吸い上げているのが分かる。
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許されよ、許されよ。
汝の罪を、許されよ。
悪と断罪された者たち。正義と騙った者たち。
お前達のカザヌは栄えるでしょう。
沢山の無辜な死を積み上げて、永遠に、永遠に。
でも、どうぞ、いつまでも忘れずに。
世界が新しくなるほど根は古び。
見て見ぬふりをして、この通り。
取るに足らない報復の鬼の一振で崩れ去るのです。
許されよ、許されよ、汝らの罪を許されよ。
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荘区にいた人の形をした生命は、訳も分からず息絶えた。
ミイラのように全身の水分を抜かれたかのように干からびた。
「おや、貴方が此方に来たのですか?私も舐められたものです」
荘区の中央。
ヴェレスのシンボルが置かれている広場。
コシン・チェイスは地面に広がる死屍累々の前で、静かに祈りを捧げていた。
リュエルは騎士団の精鋭と共に荘区に押し入っていた。
「この国の問題は僕たちの手で片付けるべきだ。君の思い通りにはさせない」
「フフフフハハハハハ!正義の味方気取りですか?相変わらず、気に食わない人だ。貴方に私を止められるとでも?
私が何者かずっと探っていたのでしょう?どうです、答えは見つけられましたかな」
ケタケタと嗤うコシンは大きな鎌をリュエルへと向ける。
「コシン・チェイス。君のことは知っているさ。212年前にこの土地で産まれた先住民族の生き残り。
主神ベロボーグの勘違いによって奴隷のように扱われた悲劇の男。その身に精霊を取り込み、魔物を喰らい、生き永らえた妄執の鬼。それが君だ」
「フフフハハハハハ!!愉快愉悦!傲慢地獄!正義の味方は大変ですなぁ?!同情ですか?憐憫ですか?随分と舐められたものです。
神にでもなったつもりですか?!
たかが、二十数年生きただけの餓鬼が、私を理解した気で語るな!」
軽薄な声は鳴りを潜め、鎌を構えたコシンの眼だけが、静かに怒りに燃えていた。
低い声だ。
芝居掛かった抑揚も嗤いもない。
鎌の刃先が地を滑る。
血と泥と干からびた死体の上を撫でるように引き摺る。
「私が欲しかったのは、救済ではない!
断じて!許しでも、同情でも、
視線が、転がる死体に向く。
「──同じ景色だ
私が見た景色。
奪われた歴史。
私が200年見続けてきた夢」
鎌を持ち上げる。
「だから、私は国を壊す。何もしなかった世界を終わらせる」
言葉には激情はなかった。
あるのは事実を告げるような結論だけ。
「コレが、私の正義だ」
リュエルは一歩、前に出る。
「──それでも、僕は僕が育ったこの国を守る。
国が犯した罪は僕たちで清算する。
君の正義がこの国を殺すのなら、僕の正義で君を止める」
騎士たちが構える。
だが、コシンは見向きもしない。
無駄なことだと嘲笑うように、視線は森の石像に寄せる。
「君に、私を裁く資格があると?」
「無いとも。僕は何処まで行っても原罪を犯した国の一員だからね」
「何を…訳の分からないことを」
「この国の歪みを知った。
この国の罪を視た。
だが、この国で生きている限り、黙って殺される訳にはいかないんだ」
一拍。
両者の間に緊迫した空気が流れる。
極上の間合い。
達人同士の駆け引きのような空白。
「……いいでしょう。ならば、止めてみてください。英雄気取りの騎士団長。正義の味方を夢見た男よ」
ガコンッと何処かで何かが回る音が聞こえた。
聖都で展開された魔法陣が更に発光すると、比例して荘区内の魔力が濃密になっていく。
「フフフ、目覚めるまで、相手をしてあげましょう」
もう時間はない。
深緑の光が、コシンの背中を蠢く。
自身に刻んだ精霊──水の精霊ルサールカの刻印。
眠る精霊に呼応するように湖と森に光が灯る。
精霊の在処を指し示すように。
そして――
空が、鳴った。
聖都の上空に浮かぶ巨大魔法陣が、
第二の拍動を迎える。
後6話でカザヌ編は終わって、漸くオラリオの話に持ってける。
今オラリオ編執筆しているのでお楽しみに!
シキの現在の実力について質問がありましたので、レベル1時点での強さを追記します。
まず、世界観的に精霊の力って法外みたいな印象があるので、これ位は大丈夫かな、という偏見があります。
精霊や某ロクデナシお姉さんのせいで、通常戦闘時はレベル4上位くらい。
ただ、アストレアレコード時のオッタルさんには技術で勝てる位強いです。
魔法とスキルのせいで耐久力と治癒力が高く、魔眼もあるので、相手の動きも読める。持久戦に持ち込めば同じ攻撃は二度と当たらないので、遠距離魔法で完封されない限り倒されない。魔法と切れ味は神話級の刀でバターのように切り刻まれるので、女神のケツしか見えない猪さんでは勝てないという算段です。