無窮の果てに   作:雀盆

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興が乗ったので更新します。


呪樹受胎

 

 

 懐かしい夢を見た。

 異邦の旅人が観光にやってきて、暫くが経った時。

 忘れかけていた家族との思い出。

 

「忘れていたよ。そうだった。僕は……」

 

 聖都郊外で産まれ、物心つく頃には親と呼べる人は孤児院のシスターと血の繋がった姉だった。

 貧民街では無いが、孤児として育てられている以上、地位は低く、裕福な暮らしを眺めるだけだった。

 

 唯一の楽しみは大好きな姉が童話を読み聞かせてくれることだった。

 その中でも印象強く覚えているのはアルゴノゥトの冒険とウェールズの伝説。

 いつかこんな冒険をしたい。里を守った英雄に成りたい。

 子供故の大きな願望があった。

 孤児院で暮らす子供達で勇者ごっこなんてしてたこともあったっけ。

 姉の微笑ましそうに笑う姿を見たくて、馬鹿していたな。

 

 そんな馬鹿っぽく楽しい日々が永遠と続くと思っていた。

 

 僕と姉で孤児院のご飯の買い出しに出掛けていた日。

 今日は屋台のおじさんが沢山オマケしてくれたから皆喜んでくれるかな、とワクワクしながら孤児院に帰宅した。

 普段は固く施錠しているはずの門が開けられ、孤児院の扉も強引に開けられた痕跡があった。

 

 そこで引き返しておけばよかったのだ。

 好奇心に負けた僕は姉の静止を聞かず、恐る恐る中に入ってしまった。

 

 其処には昼一緒に遊んでいた男友達が無惨に殺されていた。

 何時も騒がしい僕たちを世話してくれた優しいシスターが、傭兵の男達に犯されていた。

 近くには女の子たちが目隠しと両手足を拘束され、叫ばないように口元にも布が巻かれていた。

 

 姉はすぐに僕の手を引っ張って孤児院の外に出た。

 当然、音に気づいた男達はこちらを追っかけてきた。

 

 子供の足と大人の足。

 早いのは大人に決まっている。

 それでも死ぬ気で走った。

 口の中に血の味が滲む程走った時、姉が足を縺れて転んでしまった。

 

 姉は僕の手を離して、すぐに憲兵に伝えに行ってっと告げてきた。

 

「英雄になりたいんでしょ?!なら行って!私の可愛いリュエル」

 

 意味が分からない。

 理解が出来なかった。

 もうすぐ男たちが追い付いてくる。

 

 僕は姉を置いて走った。

 泣きながら、「ありがとう。ごめんね。大好き」と最後に背中に届いた言葉が姉の最後だった。

 

 憲兵、もとい騎士の人達に事情を伝え、急いで貰ったが、彼等が着いた頃には姉は殺されていた。

 胸を一突き。

 

 孤児院は一部の子供たちと壊れてしまったシスターだけが無事だった。

 犯人は最近流れてきた冒険者だったらしい。

 彼等は騎士団にすぐ捕縛され、荘区に収容されたと聞いた。

 

───カンッ

 英雄に憧れていた僕に姉が微笑みながら肯定してくれた。

 

「リュエルなら出来るよ。じゃあまずは強くならないとね!」

 

 三日三晩泣いた。いや、それ以上かな。

 姉の言葉を信じて、僕は騎士団に入った。

 強くなることを信じて。

 もう二度とあんな悲しいことが起きないように。

───ドンッ

 

「姉さん。僕強くなれたかな。立派な英雄になれたかな」

 

──んち───い──だ────

 

 ああ、さっきからやけに騒がしい。

 こんな朝っぱらから騒がないで欲しいな。

 今日はシキ殿とヘスティア様が教皇様と謁見する日なんだ。

 

「団長ッ!!避けてください!!!」

 

「──ッ?!」

 

 大切な部下の声で現実に戻ってくる。

 ああ、そうだった。

 今はコシン・チェイスとの戦闘中だった。

 目の前には死を纏わせた鎌が迫っていた。

 

「───ッしまっ!?…ガァ゙ッ……フッ…」

 

「戦闘中に上の空ですか……余り面白みのない終幕でしたね」

 

 左肩から斜めに掻き斬られ、吐血しながら地面に倒れ伏す。幸い内臓に届くことはなかったが、出血量故に放置していたら普通に死ぬ。

 何人かが駆け寄り、ポーションや軽い応急処置をする為に抱えて下がった。

 コシンは追わんと前に出るが、その間に入るように残った騎士達が躍り出る。

 

「仕方ないですね。他の方々を先に首を落として差し上げます」

 

 くるくると軌道を読み取らせないよう鎌を回し、固まっている他の騎士たちへと襲い掛かる。

 カザヌの騎士は基本的にレベル1が大半だ。リュエルでさえレベル2。

 対して、コシンはレベル3。

 神の力によるステータスでは埋めようの無い差がそこにある。

 ましてや、コシンは精霊の力の一片をその身に宿している。同レベルであっても相手になるかは分からないレベルだ。

 

 騎士団はコシンの目的を足止めなんて出来る訳もなく、彼は直に儀式の最終段階に移るだろう。

 精霊の召喚。

 かつてカザヌの大地に根差した善悪関係ない純粋な精霊。

 何時しか欲望のままに吸い尽くされ、忘れ去られた憐れな精霊の亡霊。

 

 荘区の風は、もう風ではなかった。

 祈りの残滓と悪性の澱が、空気を粘らせ、肺にへばりつく。

 

 騎士たちの剣が折れ、盾が砕け、悲鳴が途切れていく。

 血は黒い泥に混じり、泥は血を吞み、区別を失っていった。

 それは、一瞬。瞬きの間に全てを終わらせた。

 胴体は泣き別れ、死んでない者は苦悶の声に喘ぐ。

 

「……さぁ、終幕です」

 

 コシンは淡々と告げた。

 鎌の刃先を、広場の中心──ヴェレスの紋が据えられた台座へと向ける。

 

 川の上流にある石像は魔力に呼応するように静かに震えていた。

 振動によって覆っている石が徐々に崩れ落ちる。

 

 連動するように台座が横にずれ、その下にある空間が空に晒される。

 地中に埋まるように鎮められた石像が、微かに震えている。

 封印されていた石像は森の精霊、風の精霊、水の精霊の三柱を模していた。

 

 精霊の“器”。

 木でも石でもない、朽ちない素材で造られた像。

 樹皮のような紋様が、血管のように広がり――その中心に、空洞があった。

 

 コシンは膝をつく。祈るように、抱きしめるように、像へ額を寄せた。

 

「ルサールカ。

 冥い水底の仔。

 哭き濡れた魂を抱く者。

 我らが一族の──始まりの鍵」

 

 川は皇城より流れてきた黒泥によって黒く染まり始める。

 

「リーシー。

 命芽吹く森の仔。

 境界を護る者。

 我らが一族の──行末を見届ける鍵」

 

 魔力によって嵐のように風が吹き荒れる。

 世界に終わりを告げるように、大地が悲鳴をあげる。

 

「サモディヴィ。

 天を渡る仔。

 歌と告発を運ぶ者。

 我らが一族の──終末の鍵」

 

 詩を紡ぐように音を鳴らす。

 黒い杭が、地面に打ち込まれる。

 

 ─────カンッ

 

 甲高い音が一つ。

 世界が応えるように、地面から黒い光が伸び、コシンへと纏わりつく。

 

 地面が呼吸を始める。石像の表面に走った紋様が脈を打つように光る。

 深く、暗い、深淵を覗くような黒い緑。

 

「水は血を記憶し、森は沈黙を守った。風は我らが罪を赦しはしない。お前たちの原罪を赦しはしない」

 

 黒い緑の光がその身を包み込む。

 像の空洞から、霧が溢れた。

 森の匂い。水の匂い。腐葉土の匂い。

 それは生の香りで、同時に死の香りだった。

 

 霧は形を持ち、腕となり、爪となり、枝となり――

 空を掻くようにのたうつ。

 

 悲鳴を上げたのは騎士たちではない。

 森そのものだった。

 

 樹が鳴る。

 大地が呻く。

 遠い湖岸の草木が、見えない手で引き裂かれるように揺れた。

 

「我々の宿願を叶えるために、お前達の力を使わせて貰おう」

 

 コシンが、胸元の鎧を外す。

 そこには人間の肌ではなく、古傷のような黒い紋が絡みついていた。

 蛇の(しるし)。精霊の徴。

 幾重にも重ねられた、受肉の痕跡。

 

 霧が、コシンへと流れ込む。

 

 最初は口から。

 次は鼻から。

 次は眼から。

 そして最後は──胸の内側へ、突き刺さるように。

 

「ッ……!」

 

 コシンの背が反る。

 骨が鳴る。鎧が歪む。

 喉の奥で、何かが裂けた音がした。

 肌が割れた。

 血ではない。

 黒い樹液のような液体()が、裂け目から溢れ出す。

 

 同時に、()が生える。

 肩甲骨のあたりから、枝のような突起が突き出し、

 背中の皮膚を内側から押し破る。

 肋骨が膨らみ、胸郭が“樹”の形に作り替えられていく。

 筋肉は筋肉ではなくなり、繊維になる。

 血管は血管ではなくなり、根になる。

 

 呻きは笑いへ変わった。

 痛みは悦びへ変わった。

 

「フフフ……フフフハハハハハ!!!」

 

 顔の傷が、縦に裂ける。

 裂け目の奥から覗いたのは白い歯ではなく、

 樹皮のような歯列だった。

 

 眼球の黒が、森の闇となる。

 瞳孔が細く縦に伸び、獣のものへ変わる。

 

「これでいい……これで、ようやく」

 

 鎌が鳴く。

 ただの武器ではなくなった鎌が、コシンの魔力に呼応して形を変える。

 

 刃は鋼ではなく、黒い樹皮と骨で構成され、

 柄には蔓が絡み、蛇のように脈打った。

 かつて水の精霊を喰らい、──森の精霊喰らった、死の鎌。 

 

 もう人ではない。

 鎧を被った司教ではない。

 

 200年の宿願の果てに手に入れた祝福(呪い)の異形。

 ウダイオスに匹敵するレベルの黒い鎧を纏った巨人が降臨した。

 

 

────────────────────

 

 

 魔力の濃度が精霊並みに高くなっている北にある荘区を見やれば、そこにおわすは見たことの無い鎧の巨人だった。

 

「アレがオタクらが頑張って無駄な時間を費やした200年の結晶ってやつか?」

 

 ヘスティアを左手で守りつつ、杖を構えたシキが黒装束の襲撃者を相手していた。

 

──遡るは数分前。

 メイド達の問答の最中、突如黒装束の襲撃者が4人を囲うようにやってきた。

 明確な敵意を剥き出しになっていたので、シキは問答無用で雷霆(ケラウノス)を叩き込んだ。

 その結果何人かが直撃し、既に戦闘不能状態。

 

「ざっと50人ちょっとってところか。聖者謳う騎士たちが都市の破壊に加担するとは、騎士道の誉れは無いみたいだな」

 

 長杖を構え、いつでも魔法を放てるように魔力を練り上げる。

 彼等はシキの軽口にゲラゲラと嘲笑いで応える。

 

「騎士道?ハハハハハッ!良い格好するのはスカシ野郎だけだ!んなもんハナから持ち合わちゃいねぇよ!」

 

 黒装束軍団の中でも一際体格の良い男が一歩前に出て応えた。

 両手には長さが異なる片手剣が握られており、彼が戦闘の意思を示すと、他の騎士たちも囲うように展開していた。

 

「それでアンタらは何者なのか名乗ってもらっても?」

 

「冥土の土産に教えてやるよ。俺たちは冥界の女神ヴェレスの信徒。この国ではスヴァクト聖王騎士団だよ、英雄さんよ」

 

「リュエルの部下って訳じゃないよな」

 

「当たり前だろ。あんな善人顔した正義の味方にぁ、俺達みたいな崇高な思想を持った信徒よりも、ドブを啜っている方がお似合いだ」

 

「何人か奴に引っ付く若いモンがいたがな」と小さく零す。

 すると、横からエレナが付け足すように補足する。

 

「リュエル様や現教皇派閥の騎士の方々は特務外交機関に所属しています。それ以外の騎士は総じて女神ヴェレスの信徒と思って頂いて構いません」

 

「へぇ、そう。じゃあお前達はどっちだ?敵か、味方か」

 

「……」

 

 多方予想は着く。

 そもそもリュエルが選抜したと思われる娘達だ。加えて、既に彼女たちからは周囲を囲う連中のような敵意は感じない。

 彼等もまたエレナとノンナに刃を向けているというのも答えの一つだ。

 

「俺たちをここで殺す為に、剣を向けてるってことでいいんだよな?」

 

「んぁ?なんだ?この期に及んでまだ殺されないとでも思ってんのか?」

 

「いやだな、ただの様式美だよ」

 

──Anfang(セット)雷霆(ケラウノス)

 

 杖を前に振るう。

 超短文詠唱と星霊王印・始源(ガイアス・レギナ)による『魔導』での魔法威力に対する補正。

 

 魔導師に対して最も対処のしやすい戦い方は、魔法を放たれる前に接近して止めること。

 彼等も一介の騎士だ。魔導師相手の戦い方は心得ていた。

 セオリー通り、重心を深く構えた状態から高速での接近を試みた。互いに重ならないように連携を取りながら、詠唱を紡がれる前に接近しようとした。

 

 だが、シキの魔法は先述したように超短文詠唱。

 彼等が迫る前に、詠唱は完成されていた。

 地面に展開された幾重の魔法陣から雷撃が大地を焦がし尽くす。

 

「お前らが不意打ちで魔法を放ってきていたら勝算はあっただろうが、特に策を弄さずに正面からやってきたのは間違いだったな」

 

 雨が降っているお陰で地面は濡れていた。

 雷が伝導し、直撃してない者には感電するので、簡単に身体が麻痺(スタン)してしまう。

 

「…っ!?これはっ!」

 

「生憎と、お前らのような有象無象に構っていられる程、暇じゃないんだ」

 

 所詮はレベル1の騎士たち。極地の国の一般騎士相手に、シキが劣るとは思っていない。

 

「君たちはアレが何か分かった上で、この騒動に加担しているのか?」

 

 ヘスティアは大好きな眷属の後ろから騎士たちを睨みつける。

 

「俺たちゃ別にこの国に思い入れなんて何もねえよ。ヴェレス様に傾倒した連中の子孫。なら、俺たちは最初からヴェレス様の悲願のために戦うんだよ」

 

 彼の声は機械的だった。

 そうあれ、と育て上げられた人形のようだった。

 

「…そうか。可哀想に」

 

──Anfang(セット)雷霆(ケラウノス)

 

 轟雷と共にルコモリア湖沿岸の広場が光に包まれる。

 シキはヘスティアを抱えて、荘区へと駆けていく。エレナとノンナも合わせて離脱していく様子を確認する。

 

「シキ君…あれは…」

 

「まぁそういうことだろうよ。仮に巨人を止めても元凶を叩かないとこの国は変わらないな」

 

「僕は、僕のやるべき事が何となく分かった気がする。シキ君はシキ君のすべきことをするんだ!」

 

 聖都は魔力暴走の原理で抱えきれなくなった魔力が爆弾のように各地で衝撃と共に爆ぜていた。

 鎧の巨人から放たれた精霊魔法が聖都を直撃していた。

  

 荘区を囲う壁の上に降り立ち、ヘスティアを降ろす。

 彼女は爆発の中、聖都に佇む皇城を睨みつけていた。

 上空に展開された魔法陣が出現してから、神の力(アルカナム)が微かに皇城より漏れ出ていたのを感じたのだ。

 ヘスティアの意図を汲み取ったシキは彼女を送る為にはどうすべきかルートを算出する。

 そこにエレナとノンナが再び現れた。

 

「シキ様。どうかヘスティア様を私達に預けて頂いてもよろしいでしょうか」

 

「それは俺の命を預けるも同義だぞ」

 

「はい、心得ています」

 

 2人は静かにシキの前に躍り出ると、深々と頭を下げる。

 彼女たちの思惑が読めず、訝しげに観察してしまう。

 

「どういう風の吹き回しだ?先程まで俺たちと敵対してるように見えたが」

 

 十数分前の出来事を思い返す。

 彼女たちはヴェレスの齎す脅威に怯え、それに従わざるを得なくなった側。言わば、被害者の位置でもある。

 しかし、彼女たちは明確に一度、シキに剣を向けたのだ。警戒しない訳がなかった。

 

「ヴェレス様はどうやらこの国を一度焼き払うおつもりのようです。私たちは従うだけで平穏を維持出来るのであれば、彼等の目的に従いましょう」

 

「ですが、彼らは私達の暮らす国を破壊すると不敬にも宣言した。であれば、私達がそれに従う道理はなくなります。私達は支配されるだけで偽物の幸福の上に成り立つ狂気の国を、在るべき姿に戻したいのです」

 

 爆発の二次被害により火事が発生していた聖都では、教会に属する善良な市民たちが率先して避難誘導をしている。

 白い格好をした騎士たちも見える。恐らく、リュエルの属する特務外交機関の騎士なのだろう。

 

 シスター2人の眼から、ヴェレスという恐怖から脱したい思いは本物のようだった。

 ヘスティアは「心配いらないさ」と親指を立てたハンドサインをしてきた。

 

「……はぁ。エレナ、ノンナ。分かっていると思うが、ヘスティアが死ねば、俺の恩恵は消えて文字通りただの人間に戻る。命を賭してでも、ヘスティアを頼む」

 

「承知致しました。この命、尽き果てるまでお守りすると誓いましょう」

 

 一瞬、目が点になっていたが、すぐに気を取り直して礼を告げる。

 

「それじゃあ、シキ君!お互い頑張ろう!君の勇姿、遠くからでも見ているからさ!」

 

「ああ、ヘスティアも成すべきことを成せ。俺の女神なんだ。信じてるさ」

 

 エレナがヘスティアを抱え、ノンナと共に聖都へと駆けていく姿をみとめる。白い騎士たちも状況を理解したのか、ヴェレス派を近づけさせないように援護に回っていた。

 

「さて、俺は状況把握から始めようかね」

 

 壁下に広がる蹂躙の跡。

 ウダイオス級の大きさを誇る黒鎧の巨人はまだ制御出来ていないのか受胎時の魔法攻撃を放ってから一歩も動いていない。

 〈霊源の淨眼(プロビデンス)〉はあの巨体を精霊種と人間の融合体と結論付けた。

 融合済みの精霊は水の精霊ルサールカ、森の精霊リーシー。

 胸元にある欠片からは風の精霊サモディヴィの気配を感じ取れるが、融合は出来ていないようだった。

 そして、素体となった核はコシン・チェイス。ヴェレスの眷属であり、その身に黒泥を被った超人。

 

「融合が出来ていない精霊は…もしかしてまだ生きているのか?」

 

 シキは似たような魔力をつい最近見たことを思い出す。巨人に纏わりつく呪いに似た精霊の気配は欠片から滲み出している。

 しかし、今回に関しては巨人以上の気配を放っている場所があった。

 

 ──ルコモリア湖。

 荘区の川から黒泥が侵食を始めていたが、それ以上に視線を集めたのが、其処にあった。

 湖の中央。

 大きな水の波紋と共に地獄への扉が開かれた。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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