沼沢都市レルネー
シキとヘスティアの2人が極東の故郷から旅立ってはや1ヶ月。
襲いかかるヘスティアと金銭目当ての盗賊とヘスティア目当てのモンスターを軽くいなし、漸く人の気配がする街へと向かっていた。
「シキくん、まだつかないのかい?もういい加減休みたいよ。全くなんなんだよ!この世界は!どこいっても心安らぐ場所がないなんて過酷すぎるよ」
シキにおぶられ、愚痴を零す女神ヘスティア。
彼女が何故こうもやさぐれているのか。
この1ヶ月襲撃にあい続けただけならともかく、その内容が実に濃かった。
野宿しているとこをモンスターに襲われ、ようやく村っぽい場所を見つけても既に野党の手に落ちた廃村。
途中で出くわしたアマゾネスに決闘を申し込まれ勝利し開いた宴で自分の眷属が襲われ、その後もしばらくストーカーのように追いかけられた。(これは余談だが、アマゾネスは闘争に使用するモンスターと種馬を探している最中であり、この時の決闘を後世に語り継ぐのはまだシキは知らない)
楽しい旅だと思っていたのが、気づけば戦うか逃げるかの日々に次第に自分で歩くのが億劫になったヘスティア。
シキはシキで経験値が得られるので特に嫌な顔せずに背中に感じる女神の感触を楽しんでいた。
「もうすぐ街に着く。今度こそ大丈夫なはずだ」
「ほんとかい?今度こそ大丈夫だよね」
「見ろ、あんな頑丈な作りの都市だぞ。あれが陥落してるように見えるか?それに商人も何人かいる。それなりに大きい街だろう」
これまでを思い出しながら次訪れる都市こそは安心したいと不安げに城壁を見上げる両者は街に入るために並ぶ人に倣い順番を待つ。
特に入管検査みたいなことはされずにスムーズに列が進み自分たちの番になる。
「ようこそ『沼沢都市レルネー』へ!!!この街に女神様が訪れるのはすげぇ久しぶりだな!フードの兄ちゃんは冒険者か?」
「いや、ただの旅人だよ」
「強そうな気配がビンビン伝わってくるぜ。旅人の兄ちゃんらにこのレルネー最強剣士のアンドラからアドバイスだ!
この街は中心部にでっけぇ沼地が広がってんのよ。この街の観光名所だが、絶対沼には入るなよ。
1度入れば底なし!おっかねぇ竜に喰われるって話だ」
「竜?そんなやばいのがいて大丈夫なのか?」
「ダッハハハハ!安心しろって兄ちゃん。竜ってのは童話だ。ジジババ共がガキに沼遊びさせないための怖い話だよ。生まれて29年、そんなもの見たことねぇからよ。この街は沼地って暗い印象あるがあったけー街だから存分に体を休んでいってくれ!」
「感謝するよ!アンドラくん!」
快活な門兵アンドラのおかげか、さっきまで荒んでたヘスティアが嘘のように元気になった様子を見て、少し安心したシキはアンドラに序に安くていい宿がないかと聞き出した後、レルネーへと足を踏み入れた。
───沼沢都市レルネー
またの名を死毒回遊アルゴリス、毒に侵された竜住まう街。
広大な沼地に建つ木造建築。
家と家を繋ぐ橋、沼地を進む小舟。
沼地を抜ければ外周を覆う石造りの建築群と外壁。
大沼自体は半径1.5kmに及び、家が建ち並ぶのはその外周部に建立している。
中心地には大きな祭壇がある洞穴があり、その祭壇には水蛇と思わしきシンボルと共に街の守り神として祀られている。
人々は1日に1度祈りを捧げる。
第一特異点『死毒回遊都市 レルネー』
屍帝の陰謀
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