無窮の果てに   作:雀盆

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ヘスティアの口調ってなんだろうね…
アニメ見直そうかなと思いました


鍛冶師ギュルス

 

 

「役割って言っても大層なもんじゃないし、誰かに言われたからやらなきゃいけない、みたいな使命感はないんだ。

 ただ、生まれた時から自分の存在について、なんとなく親からナニかを継承して、その力を世界のために有効活用しなきゃいけない強迫観念があった」

 

「強迫観念?それは使命とは違うのかい?」

 

「使命ってのは方向性があるものだ。だが、コレは違う。形容しがたい不安感が襲ってくるんだよ。

 その先に何があるのか分からないけれど、“あぁ、こうしないとやばい”、“これをやらないとダメだ”っていうナニかの強い意志を感じるんだ」

 

「シキ君は何を感じるんだ?」

 

「ウェールズの継承者は皆等しく、ナニかを救わなければいけないと思うことがある。

 正確には困っている者を助ける正義の味方が近い。だからこそ、我ら一族は多くのエルフから英雄として信仰されているし、閉鎖的なエルフと違って他種族との交流も深い」

 

 元々、俺たち継承者は救世主、英雄、勇者、それらに数えられるように造られたと考えられている。

 そして、全員が淨眼という見えざるモノを見ることが出来る瞳を持って生を受ける。使えるかどうか個人差があったみたいだが。

 精霊との親和性が異常に高かったとも言えるが、淨眼により精霊の力を過分に行使できたことも、英雄に起因されるものと考えられてきた。

 

 そして、16年前生まれた俺はどうやら過去最高傑作とも言える存在だったらしい。

 俺は淨眼と共に千里眼と呼ばれる魔眼を持って生まれた。

 その千里眼が少々特殊だったのだ。

 遠くのものを見通すとかだったらまだ良かったが、現在から未来までの万物を見通す目としての機能を持って生まれたことで、無意識の内に世界の渦に触れた。

 

 それが根源だったのかは後から知った。

 少なくとも、こちら側に戻ってきたってことは、根源に浸ることを捨てたということ。

 だから、俺は現世に留まっている。

 

 見てしまったものは変えられないし、その内容を全て理解するほど出来た頭じゃなかったしな。気にしなくていいと切り捨てた。

 

 話は戻すが、俺は根源と接続したことで本来あやふやだった役割が明確となったし、世界から別の役割を押し付けられた。

 先代と同じようにちょっとした英雄になって生涯を終えるんじゃなくて、世界を救う役割を与えられた。

 あのグランドろくでなし女が言うには、

 

 「根源と繋がったことで世界の、正確には抑止力から強いバックアップを受けたことで魔眼が変質し、英雄としての才能は人類において過去最高傑作となった。

 つまり、君はヘラクレスやアキレウス、アーサー王やギルガメッシュ王のように英雄になるべくして生まれたのさ」と。

 

「俺が眼について知ってるのはここまで。後はステータスに記載されてる通りの力を持ってるだけだ」

 

「そのグランドろくでなし女って誰のこと?ヘラクレスとかアキレウスとかギルガメッシュ王とかは色々と聞いたことがあるけど」

 

「マーリンと自称していたな。真っ白で女神みたいな容姿をしていた」

 

「うーん、なんか聞いたことあるような、無いような。ゼウスがやばい奴がいる!って興奮してた話にそんな名前があったような…」

 

「とにかくこの眼のせいで神や平行世界、別時空の世界を色々と見たから、神しか知らないようなこともある程度は知ってる」

 

「まぁそうだろうね。ヘラクレスにアキレウスなんて本来、オリュンポスの神が管轄する世界の英雄だからね」

 

「今わかってるのは、7つの獣に類する世界を終焉へと齎す災厄がいること。三大クエストほど簡単なものじゃない。もっと脅威となる存在を討伐することが俺に与えられた役割。これから先危険が伴う旅になると思う。だからヘスティア、君には───」

 

「馬鹿なことは言わないでくれよ!ボクは天界で君を見た時にビビッときたんだ!その時から変わらない!

 ボクは君の英雄としての道を応援するし、絶対見届ける!

 たとえその場所が地獄でも!ボクは、ボクは君の()として君を英雄に導いてみせる!」

 

「──あぁ、だから君には俺の傍にずっと居て欲しい。俺が君の英雄である限り、俺は世界の英雄としてあり続ける」

 

──契約はここに成立した。これは英雄が導く奇蹟の物語。人類最高峰の英雄が一柱の神と共に織り成す英雄譚──

 そんなナレーションが入るような盛り上がりを見せるタイミングで

 

「夕食の時間でーーす!!」

 

 物語で言ういい所に邪魔が入って台無しにされる。そんな状況に見つめ合っていたシキとヘスティアは吹き出してしまった。

 

 

 

────────────────

 

 

 次の日、朝食を済ませた2人はレルネーを観光しており、現在は露店が並ぶ大通りを歩いていた。

 レルネー名物の沼魚の姿焼きや山羊を使ったギロなどを食べ歩き、活気溢れる街並みを楽しんでいた。

 

「沼地って聞いてたから、てっきりどんよりしてるものだと思ってたけどいい街だね。それにどこか懐かしい雰囲気を感じる」

 

 ヘスティアは串焼き肉のスブラキを片手に、天界で自身らが管轄していた領域に思いを馳せていた。

 シキはシキでこの街に気になったことがあり、先程から感じるねっとりと絡みつく魔力のような気配を感じ取っていた。

 

「ヘスティア、昼の祈祷の時間まで少し時間があるから、それまで鍛冶屋に寄ってみたいんだがいいか?」

 

「ん?そういえばシキ君のその刀もうボロボロだったね。ボクは全然構わないよ」

 

 シキの持つ武器は刀と鞘。

 刀の銘は『神影(みかげ)』。

 鞘の名は『虚飾(ヴァニティ)』。

 極東に降臨したアメノマヒトツ神によって鍛造された大太刀であり、刃長は97cm、柄長約22cmの全長約119cm。

 ウェールズの王家が代々王位継承の儀を執り行う際に、同時に献上される宝具である。

 また、シキの王位継承後、水浴び中に出会った(不審者)から貰った鞘は、大太刀が綺麗に収まるサイズであり、鞘自体が魔法を行使する上で良い媒体となる杖としても機能する。

 貰った当初、形状は不審者の持つ杖と似通っていたので、嫌な顔をしてしまったのは懐かしい思い出。

 

 大太刀が綺麗に収まるサイズであり、鞘自体が魔法を行使する上で良い媒体となる杖としても機能する。

 ステイタスを授かったことで魔法を十全に使うことが出来てから杖としての機能は知った。

 本来は杖としての機能が強く、ただ刀を収納出来る杖の認識の方が強い。

 

 この1ヶ月で刀は出来るだけ磨いてきたが、それでも鍛え直す必要があるほどボロボロになっていた。

 流石に神が鍛えた刀を完全な補修ができなくても、素人の自分が行うよりはマシだろうという思いと、予備の武器となる投げナイフや防具なども取り揃えたかった。

 

 シキの戦闘スタイルは基本的に牽制で魔法を飛ばし、その間に雷霆(ケラウノス)を付与して大太刀で両断する速攻型のスタイル。

 しかし、魔法の制御が完璧でなかったり、精神疲弊(マインドダウン)の恐れがあるので、他にも手段が欲しいとずっと思っていたのだ。

 

 レルネーに一つしかない鍛冶屋は槌と金床がシンボルとなっていて、レルネーを拠点にする傭兵にとっては欠かせない場所となっている。

 鍛冶屋を経営してるのは67歳のドワーフのおじいさんで、鍛冶師あるあるの頑固な爺さんで有名らしい。

 鍛冶屋に着くと中から怒号から逃げるように3人ほどの男たちが文句を言いながら店から出てきた。

 

「二度と来んなとこに来るかよ!武器を売らねぇ鍛冶屋なんて聞いたことねぇよ!

 っ!!てめぇ!どこ見て歩いてんだ!!」

 

 前を歩くヘスティアに、先頭を走る男がぶつかりそうになったので軽く腕を掴み静止させるが、完全に止めることが出来ず軽く当たってしまった。

 男は血相を変えて怒鳴るが、相手が神だと分かるとまた逃げるように立ち去っていった。

 男たちの後ろ姿を見ながら鍛冶屋の戸を潜ると、引き締まった身体のドワーフが奥にあるカウンターでどっかりと座っていた。

 

「まったく、最近の若いやつは何も分かっとらん!」

 

「大将、武器を見て欲しいんだが」

 

「なんじゃ!エルフなんぞに売る武器はこの店にはない!」

 

 耳を震わせるほど大きな声で怒鳴る大将に苦笑いしながら、シキは己の武器をカウンターに置く。

 

「まぁまぁ、そういうこと言わずによ。武器を見ることは損じゃないだろ?見てから売るかどうか決めてくれ」

 

 鍛治最高峰の神に鍛えられた刀と精霊によって造られた神秘そのものな鞘。

 鍛冶師であれば目標にしたいと思えるような夢の最高傑作。

 頑固な爺さんと言えど、コレを前にすれば頑固で居られる訳がない。

 目の前の鍛冶師はかつて夢みた芸術品を前に童心を思い出したように目を輝かしている。

 

「──?!これは、お前さん…コレをどこで手に入れた?」

 

「つい先日滅びはしたが、ウェールズのハイエルフといえば理解できるか?」

 

 ウェールズの伝説は何もエルフ間にのみ伝わっている訳ではなく、童話として世間に流れているのでエルフの中でも有名な一族である。

 それ故にドワーフの男は驚いたのだ。

 目の前のエルフがハイエルフで、童話のウェールズ出身にプラスして滅んだということに一層驚いたのだ。

 

「…それは嫌なことを聞いた」

 

「気にすんな。少なくともウェールズ直系の俺が生きている限りウェールズの血は絶えない。

 さて、俺がここに来たのはこの刀を鍛え直して欲しい。それといくつか作品を見せて欲しい。

 俺は合格か?」

 

 シキと鍛冶師は互いに見つめ合い一歩も譲らない視線の攻防の末、鍛冶師は大きく溜息を吐く

 

「ギュルス…儂の名はギュルス。鍛治の神シユウの師事を受けLv2となり1人前となって30年。誇りを持ってこの仕事をしておる。いいだろう。この子らを最高の状態に引き戻してやろう。武器はそこらにあるやつを適当に見繕っておけ。儂は高いぞ?」

 

「ふっ、俺は王族だぞ?」

 

 シキとギュルスは互いに不敵な声で笑うさまにヘスティアは「ピッ!」と震え上がり、陳列されている武器の値段に更に震え上がる。

 万を優に超えるヴァリスで売られている武器はどれも精巧に造られており、Lv2の鍛冶師が造った武器とは思えないくらいの完成度となっている。

 

「とりあえず適当に貰っていくよ。修繕までにどれくらいかかる?」

 

「ふん!修繕費込みで150万ヴァリスだ。明日この時間に取りに来い」

 

 投擲ナイフや装備品、修繕費込の金額。若干高い気がしたが、まぁそれもよし。

 こういうのは面倒だから大人しく金払って退散した方が良さそうだ。

 

「じゃあな、ギュルスの旦那。また明日来るよ」

 

 シキとヘスティアはレルネー観光へと戻るのであった。

 

 




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