君は大食いで最強のえっちゃん   作:月の餅

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評価、コメント、お気にいりにしおり!!!
本当にありがとうございます!!!!泣いたよ作者は!!!!!(土下座)


STAGE02

 

 

 

 

斉藤壱護は苺プロの社長である。

 

社長というからにはそれなりに色んなものを見てきたし、人間の裏も表も知っている。

 

知っている………はずだったのだが。

 

「待て、訳がわからん。え?」

 

「えー、一回で理解してよ。私だってまだよくわかってないけどさ」

 

「無茶言うな!んなとんでもねえ話、一発で理解なんざできるわけねえだろ!!!」

 

「ちょっと、声のボリューム落としてよ!二人が起きちゃう」

 

「〜っ!!」

 

絶賛混乱中。

 

そりゃそうだ、電話口でいきなり

 

「ちょっと刺されちゃってさ、血の処理がやばいから来てくれない?」

 

なんて言われたと思ったらこれである。

 

ただでさえドーム公演直前の朝、打ち合わせ等々で大忙しだったにも関わらずタクシーかっ飛ばしてマンションまですっ飛んできたのだ。

 

エレベーターの中なんてほぼ半泣きだった。誰か褒めてほしい。

 

 

「……わかった、とりあえず落ち着け。なんもわからんけどとりあえず落ち着け」

 

「自分に言い聞かせてるだけだよね、それ」

 

「どら焼きおかわりいただいても?」

 

「いいよいいよ、つぶあんのやつでいい?」

 

「ありがとうございます」

 

笑顔で個装のどら焼きを受け取る少女の真横には、既に二箱分近い量の空袋が山となっていた。

 

どら焼きどんだけ食ってんだ。

 

後にどうしても気になってアイに聞いてみたところ、

「目が覚めたときは自前の栗まんじゅうだった」らしい。なんだコイツ。

 

 

「…………ストーカーに刺されて死にかけたお前を、この子が助けてくれたんだよな」

 

「うん」

 

「えーと。君、名前は?」

 

「謎のアイドルXオルタです。えっちゃんと呼んでください」

 

「いや、本名」

 

「謎のヒロインXオルタです」

 

……なんだコイツ。

 

 

 

もっきゅもっきゅ、とどら焼きを頬張る謎の少女。

 

どうやらコイツ、普通の人間じゃないらしいーーーーというのが、開口二番目に言われた言葉だ。

 

ちなみに一番目は「刺されちゃった」。

 

あまりにも普通に言うもんだから嘘かと思ったが、玄関前のドアが(トマト祭りでもこうはならんだろというレベルの)地獄と化していたので信じざるを得なかった。

 

 

あの出血量は尋常じゃない。

 

『人間は1リットル以上の血液を失うと死に至る』とはたった今ググった検索結果の教えだが、それを余裕で越えているだろう。

 

更に言えば凶器の包丁。

 

床に落ちていたそれは、半ばくらいまで血に濡れていた。あれだけ深く刺さっていたなら臓器損傷だってありえる。

 

 

 

なのに何故、アイは生きている?

 

 

 

『そこのどら焼き娘が救ったから』。

 

素人目にも輸血が必須、かつ縫合しなければならない程の刺傷をどうやって?

 

『サーヴァントユニヴァースとかいう謎の世界の技術を使って』。

 

であれば彼女は一体ーーーーーー

 

 

 

「社長」

 

不意に声をかけられる。

顔を上げれば、アイが静かにこちらを見つめていた。

 

「この子、私を助けてくれたんだよ」

 

「いや、それはわかってるけども」

 

「たぶん、嘘もついてない」

 

「……本気で言ってんのか?」

 

「だいたいわかるよ、嘘つきだもん」

 

それにね、とアイは続ける。

 

「この子、アクアとルビーのことをすごく優しい目で見てたから。多分悪い人じゃないよ」

 

ーーーーーここまで言われてしまえば、訝しむこともできない。

 

肩の力を抜き、自称『謎のアイドルXオルタ』に目を向ける。

 

視線に気付いたらしく、目をぱちくり。

 

その間もどら焼きを食べる手は止めない辺り、天性の食いしん坊なのだろう。苦笑が漏れる。

 

(何者かはわからなくても、言わなきゃならんことはあるわな)

 

「あー……えっちゃん。うちのアイを助けてくれて、ありがとな」

 

「ひへ、ふぉーふぇんふぉほふぉほひははへへふ(いえ、当然のことをしたまでです)」

 

「食ってから話せよ……」

 

 

 

 




天丼ですわ……失格ですわ……

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