紅介「あー此処のカフェ美味かったなー。なあシユカ、お前もそう思うだろ?」
現在離貅達はアクシズ教団の実態を文字通り身を以て味わっている事を知らず、紅介は肩に乗せている蒼い瞳の紅いリオルことシユカに話しかけ、シユカは大いに同意するように何度も頷いていた。
紅介「次は何処に行こうかなー……」
紅介はそう言いながら空を見上げると、前から歩いて来た女性とぶつかってしまった。
紅介「あ!すいません!」
女性「いえいえ此方こそ!」
そんな小さなトラブルに遭って、両者はお互いに去って行った。
しかし━━
紅介の背には、義人式がいつの間にか貼り付き、這いずる様に紅介の服の内側へするりと入り込んでいき、紅介とシユカはそれに気付く事はなかった。
その後、紅介は自由気ままに散歩し、夕方になり、宿屋へ戻ったが……
紅介「…お前ら、どうしたんだよ……」
アクアを除き、離貅達はぐったりしていた。なお、ダクネスは何故かうっとりしていた。
離貅「…アクシズ教団に何度も入信しろとせがまれて……。」
木葉「私とゆんゆんは饅頭を買ったら入信書を渡されそうになったり、詐欺紛いな事をやってきた……。」
カズマ「幼い女の子までもが入信書を持ってたんだぞ……。」
その空気は非常にどんよりとしていた……。
紅介「…そう言えばアクアは?居ないけど……。」
めぐみん「流石に限界なので逃げてしまいました……。」
紅介「あー…えっと……俺、温泉に入ってくるよ。みんなも落ち着いたら入れば良いと思うよ。」
紅介はそう言ってその場を去り、温泉へ入りに行った。
紅介「…混浴があるのか……。」
男湯と女湯、その間の入り口に混浴への入り口があった。
紅介「…一度くらい、良いよな。」
紅介は魔が刺して、混浴の入り口に入り、脱衣場に入ると、空の籠があった。
紅介「………。」
紅介は周囲を見渡すと、服の入った籠は一つも見渡らない。
そして紅介は確信した。実質的な貸し切り状態だと。
紅介「…丁度良いな。」
紅介は内心必死にそう決め込んで服を脱ぎ、籠に入れ、シユカを抱えながら扉を開けて浴場に入り、温泉に浸かった。
紅介「…あー…生き返るーー……シユカ、熱いか?」
紅介はそう尋ねるが、シユカはあからさまに心地良さそうな顔をしていた。
紅介「そうかー良かったなー。後で綺麗にしてやるぞー。」
すると、紅介の背後で扉を開ける音が聞こえた。
紅介(お…二番目か?まあいっか。今はただ、温泉を楽しんで━━)
???「ごめんなさい、ちょっと隣良いかしら?」
その時聞こえた声は、明らかに女性の者だった。
紅介「…あ、ああ。良いです…よ。」
紅介は心優しい性格故に、それを快く受け容れた。
???「ええ、ありがとう。こう見えて結構疲れてるのよ。」
女性はそう言って紅介の隣に居座り、温泉に浸かり、反射的に女性から目を背ける。
???「…あら?あなた、この街の人じゃないようね。」
紅介「え、あ……はい。仲間と一緒に湯治に来ているんです。こう見えて冒険者で、最近強大な敵と連戦続きで流石に疲れちゃいますのでこうして湯治をしに来ているんですよ。」
???「一切こっちに顔を向けずに話してるのが気になるけど……奇遇ね、私も湯治なの。私は自分の半身と戦った際に、力を完全に奪い切れなくてね。それで本来の力を取り戻す為にこうして湯治をしているの。」
紅介「…うちの仲間、紅魔族が居るので、大喜びしそうですね。」
???「…そうね。
紅介「…え?」
紅介はその女性の言葉に違和感を感じた。
???「何にしても、その片割れが見つかれば、湯治はしなくて済むんだけどねー。」
紅介「…そう……ですか。見つかると良いですね。その片割れが。」
???「ええ。…それと、この街の温泉、今後はあまり入らない方が良いわよ。」
紅介「え…それってどう言う━━あ!」
紅介は思わず女性へ目を向けようとしたが、咄嗟に両手で目を覆う。
???「大丈夫わよそんな事しなくても。バスタオル巻いてるから。」
紅介「………。」
女性の言葉を信じた紅介は恐る恐る目を開くと、バスタオルを纏った紅い髪の女性が居た。
紅介「よ……良かった……です……。」
???「あなた、優しいのね。じゃあ、良い湯治を。」
紅い髪の女性はそう言って浴場から出て行った。
紅介「…し、シユカ、身体洗ってやるよ。」
紅介の言葉にシユカは頷く。
そうして紅介はシユカの身体を綺麗に洗い、そしてマッサージしてもら事に……
マッサージ師「どうですかお客さん。」
紅介「あーそこー!そこらへんお願いしますー。」
マッサージ師「この石鹸凄い泡立ちでしょう?」
紅介「ええ。すっごい泡立ちですねー」
マッサージ師「でしょう?どんなステータス異常だって治るし、しかもこれ食べても大丈夫なんですよ!」
紅介「そうなんですか!?流石に抵抗が湧くと思いますよ?」
マッサージ師「まあせめて気が向いたら食べてくださいよー。天然素材で神聖な物ですのでー。」
紅介「は…はい。でもこれだけの泡立ちとなると欲しくなりますね。」
マッサージ師「でしょう!是非買ってくださいねー!」
そうして紅介は気持ち良くマッサージを受け、見事にリラックス出来た。
紅介「あー気持ち良かったぁ!」
シユカと共にリラックスした紅介はシユカを抱えながら脱衣場へ入り、自分の服が入った籠へ向かったが、紅介は異変に気付く。
紅介「…これは……?」
それは、石鹸だった。いつの間にか五個の石鹸が入っていた。
紅介「…まあいっか。もうけものだなー。」
紅介はそう言って服を着て、脱衣場から出て行った。
そして日は完全に沈み、夜……
アクア「あんまりよぉおおおおお!!!」
アクアが帰って来たが、何故か大泣きしていた。
紅介「どうしたんだよ……」
アクア「だってぇ!私温泉に入ってただけなのにぃーー!」
アクアはそう言って紅介に泣きついて来た。
紅介「ど、どうしたんだよ……。」
アクア「だってぇ!本部の秘湯に入っただけなのに追い出されたのよぉー!」
紅介「…お前まさか秘湯の水をただのお湯にしたのか?」
アクア「そうよ!どうして私を崇めている教会から追い出されなくちゃならないのぉ!?ねーどうしてよぉーーー!!!」
紅介「その体質のオンオフが出来ないのかよ……。」
アクア「一番腹が立ったのはね私が女神だと明かしたのにフッって鼻で笑ったのよ!!女神なのに!女神なのにぃ!」
紅介「…正直言うと、普段の言動が全然女神じゃないから信じてもらえないと思うぞ。」
アクア「わぁあああああああああ!!!紅介酷いいいいい!!!」
紅介「だ、だけど!だけどだよ!俺はアクアが女神だって事は信じるし、それに、ほら!俺を生き返らせてくれたせめてのお礼としてアクシズ教に入ったからさ!」
紅介はそう言って弁明してアクシズ教徒の証となる御守りを見せた途端、場の空気が凍った。
離貅「紅……介……?」
紅介「え?」
木葉「あなた……アクシズ教に入ったの……?」
紅介「あ…ああ。そうだけど、前に言ってただろ。俺が今こうしていられるのはアクアのお陰だって━━」
アクア「わぁーーん!!紅介ぇえええええ!!」
アクアを慰めるしようとしたが、アクアは慰められ過ぎてより一層泣いて紅介に抱きついた。
紅介「うお!?」
カズマ「…俺もう寝るわ。」
離貅「僕もです……。」
木葉&ゆんゆん「私も……」
カズマ達はこれ以上考えたくないのか逃げる様に寝屋へ行った。
紅介「え!?ちょっと!?俺悪い事した!?ねえ!?おーーーーい!!!」
そして翌朝……
アクア「この街の危険が危ないみたいなの!」
朝食の最中、アクアは唐突にそう言った。
紅介「危険が危ないって……具体的にはどう言う事だよ……。」
多少寝不足気味ながらシユカに朝食を分け与えながら紅介はそう訊ねる。
アクア「管理人のおじさんが言ってたんだけど、どうも温泉の質が最近悪くなっているようなの!これは、我が教団を危険視した魔王軍が真っ向勝負では勝てないと踏んで、温泉と言う大切な財源を奪いに来たのよ!」
離貅&木葉&カズマ「そうなんだ凄いね。」
アクア「信じてよー!」
めぐみん「まあ、アクシズ教団がドン引きされて疎まれているのは確かですが、そこまで回りくどい事しますかね?」
アクア「私はこの街を護る為に立ち上がるわ!と言うわけで、みんなも協力してくれるわよね?」
アクアはそう言うが……
カズマ「俺は街の散歩だとか、色々忙しいから。」
離貅「僕は暫く外に出たくありませんし、速く帰りたいと思います。」
木葉&ゆんゆん「私も……。」
めぐみん「私もアクシズ教徒の恐ろしさは嫌と言う程知ったので、もう関わりたくありません。」
紅介「何でよぉおおおおおお!散歩とかどうでも良いじゃないの!!めぐみん達もそんなにうちの子達を嫌わないでよぉ!じゃ、じゃあ紅介は!?私に恩を感じているなら付き合ってくれるわよね!?」
紅介「…解った……付き合うよ。」
アクア「よっしゃー!じゃあ、私に考えがあるから、着いてきてね!」
紅介(嫌な予感しかしない。)
紅介はそう思いながらアクアに協力し、各地の温泉をある程度巡って仕上げに入る事に。そしてその仕上げとは……
アクア「悪魔倒すべし!魔王しばくべし!我が親愛なるアクシズ教徒達よ!この街では現在、魔王による破壊活動が行われています!」
紅介「います!」
演説である。
アクア「何が行われているかと言うと、この街の温泉に毒が混ぜられています!既に多くの温泉で、破壊工作が行われていた事を確認しました!」
紅介「えー…こちら各温泉の管理人の協力を得て、水質調査の経歴です。そしてこれらの位置を確認したところ、まるで徐々に広がっているかの様に各温泉の水質が下がっている事が判明しました!」
紅介はそう言いながら紙を集まった民衆に向けて見せる。
アクシズ教徒A「さっきそこの温泉に入って来たけど、何も無かったですよ?」
アクア「それは、この私が温泉の毒を次々と浄化して回ったからです!でもまだ安心は出来ません!そこで皆さんにお願いがあります!この事件が解決するまでが、温泉に入らないでほしいのです!」
アクシズ教徒B「ここは温泉街だよ?プリーストの姉ちゃん。一番の目玉である温泉に入るなだなんてこの街が干上がっちまうよ!」
アクシズ教徒C「大体何の目的で魔王軍が?」
アクア「それは、アクシズ教団の収入源を潰す為です!そう、魔王軍は貴方方アクシズ教徒を恐れているのです!これは、私が温泉に入れず、悔しい思いをしているのにみんなだけずるいと嫌がらせで言っている訳ではありません。さぁ!敬虔なるアクシズ教徒の皆さん━━」
???「こんな所に居やがった!」
すると突然、この街の何処かの温泉宿の店主と思わしき男がアクアを睨み付けていた。そしてその男も他にも、険しい表情をした男が並んでいた。
温泉宿の店主A「そいつは街中の温泉をお湯に変えるって言うタチの悪い嫌がらせをする女だ!」
アクア「え…ちょ━━」
温泉宿の店主B「みんな、捕まえてくれ!」
温泉宿の店主C「簀巻きだ!おい!簀巻きにしろ!」
温泉宿の店主達の言葉に罵詈雑言の嵐が巻き起こった。
温泉宿の店主A「おかしいと思ったんだ!」
温泉宿の店主B「俺達を騙そうとしたんだ!」
アクシズ教徒D「新手の詐欺ね!何企んでるの!?」
アクア「ちちち、違うの!これにはちゃんとした訳があるの!ねえー違うの!みんな落ち着いて!私の話を聞いて!」
紅介「あ、アクシズ教を!アクシズ教をお願いします!どうか信じてください!!」
紅介が必死に説得しようとするが、何も効果が無かった。
アクア「あーもう!なら私の正体を明かします!」
紅介(あ……)
アクアの言葉に、紅介はこの先起こるであろう事象を悟った。
アクア「お集まりの敬虔なるアクシズ教徒よ!…私に名はアクア。そう、貴方達が崇める存在、水の女神アクアよ!貴方達を
アクアはそう名乗ったが……
アクシズ教徒E「ふざけんな!」
アクア「ン!?」
アクシズ教徒D「蒼い髪と瞳だからってアクア様を騙るだなんてバチが当たるよ!」
温泉宿の店主C「やっぱ簀巻きだおい!簀巻きにして湖に放り込んじまえおい!」
案の定、その事象は起こった。
紅介「…クソッ……!」
アクア「え!?ちょ!?紅介!?」
紅介「ここは退くぞ!」
アクア「なぁんでよぉおおおおおおお!!!」
紅介は咄嗟にアクアを連れて無理矢理この場を脱出した。
そしてその夜、宿屋にて……
アクア「わぁあああああああんん!!!」
またもやアクアは泣いていた。
アクア「私が此処の女神なのに!あんまりよぉおおおお!!!私、どうして信者の子達に虐められなきゃいけないの!?わぁああああん!!!」
紅介「ほら、ホットミルクだよ。」
紅介はそう言ってテーブルにホットミルクが入ったカップを置く。
アクア「…お酒が良い。」
紅介「はいはい。」
紅介はそう言ってお酒を取りに行った。
カズマ「お前実はそんな気にしてないだろ。」
めぐみん「一生懸命なのは解りますが、流石に無理がありますよ。」
アクア「でも、あんな汚染された温泉に入ったら病気になっちゃう……。」
離貅「…あんな目に遭いながらも、それでも助けたいんですか?」
アクア「当たり前よ!私の可愛い信者だもん!でもこのままじゃ……。」
紅介「ならどうするんだ?源泉に行くとかか?」
話が聞こえていたのか、紅介はお酒の入ったコップを持ちながらそう言って戻って来た。
アクア「…源泉……そうよ源泉よ!きっとそこに汚染の原因があるかもしれないわ!」
紅介の言葉に活路を見出したアクアは椅子から立ち上がってそう言う。
木葉「源泉って……そこ普通の人でも行ける所なのかな……。」
すると、外から民衆の声が聞こえて来た。
離貅「何でしょう……?」
離貅はそう言って窓を覆っていたカーテンを開けると……
アクシズ教徒達「悪魔倒すべし!魔王しばくべし!」
大勢のアクシズ教徒達が宿屋の前に来ていた。
離貅「これは……」
アクア「なになに?うちの子達が、私の話を信じて━━」
離貅「アクアさん!今は姿を見せないでください!」
離貅は咄嗟にアクアを制止しようとしたが……
アクシズ教徒B「居たぞ!」
アクシズ教徒D「女神の名を騙る魔女め!」
間に合わなかった。
アクシズ教徒達「魔女狩りだぁあああああああ!!!」
紅介「…最悪だ……。」
湯治の筈が、災難に陥ってしまった紅介はそう呟いた。
to be continued………
ミサトさん「紅介の言う通り、湯治のつもりが、こんな事になるなんて最悪よね……。…それでは次回予告をするわね。アクシズ教団に追われながらも、温泉の汚染の原因を突き止めるべく源泉へと向かう紅介達。しかし、そこにある事実に、紅介は再び憎悪に呑まれ、暴れ狂う。そして、紅介達に前に現れるのは━━次回、『妖美なる万象の舞』。次回も、サービスサービス!」