フランの噛み跡の止血を終え、いつの間にか起きていたレミリアに別れを告げる。
そして玄関先から外に出た私が見た光景は・・・頭の上にナイフが突き刺さりうつ伏せに倒れる美鈴の姿であった。
「・・・生きてるか?」
「・・・」
「返事がない、ただのしかばねのようだ。」
「生きてます・・・」
むくりと起き上がる美鈴、頭にナイフが刺さった状態でもピンピンしているのはさすが妖怪と言うべきか。
「いたた、やっぱり怒られちゃいましたね。」
「年頃の少女の体を拭くのは私としても色んな意味で心臓に悪いし、咲夜にも悪い。そりゃあ怒られるだろう。」
「でも私を怒っている時も、まんざらでもなさそうな笑みを浮かべて(グサッ)ぎゃっ!・・・」
美鈴にナイフが再度刺さり地に沈むと同時に私の真横に咲夜が現れる。
「咲夜。もう体は大丈夫なのか?」
「ええ、詠知様。元気すぎるくらいですわ、午後から働くことにしました。」
「ならいいんだが、美鈴も悪気があってやったわけじゃないでしょうし大目に見てやってくれないか。」
「分かっていますわ。ただあれが美鈴の掌の上だったことが癪に障るだけです。」
「・・・そうか。」
「では、私は失礼します。ちなみに、妹様のつけた傷の包帯は巻き直しておきましたので。」
「お、本当だ。ありがとう、また会ったときにでも何かしらの礼をしよう。」
「ふふ、期待して待っていますわ。それでは。」
こちらに一礼し、咲夜は消える。
「いたた・・・2本目は堪えますね。」
「改めて思うが、本当にタフだな。頭に刺さってピンピンしてるなんて考えられない。」
「あはは、タフなのが取り柄なので。そういう詠知さんもかなりタフじゃ・・・」
「ん?どうした。」
「いえ、咲夜さんもやるなぁって思いまして。」
「?咲夜は確かに有能だが。そういえば、今から帰るんだがいつも通り手合わせするか?」
紅魔館を訪れる際の一つの目的として「美鈴との手合わせ」がある。中国拳法という武を極める美鈴から学べることは非常に多い。初対面の時はほぼ不意打ちの一撃で沈めたものの、普通に闘えばかなり苦戦を強いられる。
「ぜひって言いたいところなんですが詠知さんはお嬢様や妹様の相手でお疲れだと思いますし、怪我もしているので無理はさせたくないです。また次回にしましょう。」
「そうか?そこまで気を遣ってもらわずとも・・・いや、ご厚意に甘えようか。だがせっかく来たのにあまり会話できていないからな、何かできれば良いんだが・・・」
「それなら庭の周辺でも散歩でもしながらお話ししませんか?」
「ああ、そうしようか。」
「綺麗な庭園だな・・・」
「丹精込めて作った庭ですからね!でも詠知さんの家の庭も色んな植物や花が咲いてて綺麗ですよ。」
「それは嬉しいな。でも自分の家なのに私ほとんど関与してないからな・・・いつの間にか妖夢が来て手入れしてたり幽香が季節に合うらしい花を植えてたりで、気付いた時には綺麗になってる。しれっと無許可で宴会開かれてることもあるし。」
「あはは、あの花の妖怪がガーデニングしに来るなんて詠知さんくらいですし、それだけ皆に信頼されていることの表れだと思いますよ?」
「それはそうなんだがな・・・」
「結構フラン様の吸血、強かったですか?」
「普段の比にならないくらいの強さだったな、噛みちぎられたと錯覚するほどだった。」
「ごめんなさい、フラン様も悪気があるわけでは決してないので・・・」
「あれだけ協力してもらっておいて、狂気を結局抑えきれなかった私の責任でもあるさ。それにレミリアの噛み跡を見せてしまったのが原因だろう、それも含めてフランは何も悪くない。」
「・・・優しいですね本当に。」
「咲夜さんのこと、どう思いますか?」
「?どうした急に。」
「いや、同じ人間として咲夜さんをどう思うかなって。」
「咲夜は・・・そうだな、すごく魅力的な子だと思う。能力とかメイドとしての技能を抜きにしてな。慌てたときに見せる年相応の姿や、少し天然な部分が「完璧なメイド」から人間らしさが垣間見えて惹かれる人間は多いんじゃないかな。"ぎゃっぷもえ"ってやつだ。」
「そうですか・・・もし詠知さんが結婚するとなったら、やっぱり同じ種族の人間がいいんでしょうか?」
「うーん・・・私は種族的には人間だが、寿命が人間の域ではなくなおかついつ寿命が来るのかも分からない異常な存在だからな。人間と結ばれても先に逝ってしまうし、妖怪とかの寿命が長い者と結ばれても何かしらの要因で私の能力がなくなってしまった時が不明瞭すぎる。でも、強いて言うなら同じ種族の人間が良いかな・・・。」
「・・・そうですか。」
「・・・」
「・・・」
「・・・美鈴は面倒見が良くて、人当たりが良くて子どもに好かれるタイプ。それでいながら武人としても一流で、その姿には凜々しさも覚える。時に優しく、時に美しくな存在に、心惹かれる者も多いだろうな。人間の里でも「霧の湖で荷物がぬかるみにはまってしまったとき、紅魔館の門番が助けてくれた。」のような話を何度も聞いたしな。」
「え・・・」
「・・・さ、もういい時間だし私は帰らせてもらおう。また来るよ。」
そう言って去ろうとすると・・・美鈴に袖を掴まれる。
「まだなに(ぎゅっ)・・・か。」
振り向いた瞬間、正面から抱きつかれる。私より身長は小さいが、幻想郷では高身長の部類に入る美鈴。首筋に顔を埋めるような体勢で、数十秒の時間が流れ美鈴は離れる。
「・・・すみません、いきなり。気にしないでください。・・・またお越しください。」
「・・・」
「随分と長いハグだったわね。」
「咲夜さん・・・」
「それでさらにあんなに大きいキスマークまでつけちゃって、包帯が取れる前に詠知さんの知り合いが見たら大騒動になるわね。・・・まあ私が言えたことではないけど。」
「すみません、咲夜さんが巻き直した包帯の上に付けたキスマークを見て・・・嫉妬しちゃいました。詠知さんと咲夜さんが結ばれてほしかったはずなのに・・・」
「知ってたわよ、最初から美鈴も詠知さんが好きなの。」
「・・・え」
「美鈴の差し金で、私は素直になった。それなのに美鈴が全く素直にならないのは卑怯じゃない、だからお返しよ。」
「・・・あはは!完全にやり返されちゃいましたね。そっか、知ってたんですね。」
「バレバレよ。ちなみにお嬢様もパチュリー様も知ってるわよ。」
「え、嘘?嘘ですよね?嘘だと言ってください咲夜さ(シュンッ)、ちょっと消えないでください!咲夜さん!咲夜さーん!?」
首筋の右側をレミリアに噛まれ、左側をフランに噛まれ、止血用の包帯の左側に咲夜のキスマークがつき、右側に美鈴のキスマークがついた状態で帰宅する詠知くん。
友人の好きな人のことが自分も好きだけど、それを隠して友人の恋路を応援するっていうシチュエーションが好きなのでそんな感じのお話です。
美鈴と咲夜って身長そこまで変わらないというね、美鈴の方が圧倒的に高いイメージがあった。
アンケートの結果次は永遠亭に行きます、圧倒的人気。
何話か過去編や無所属勢のお話を書いてから向かうので少し時間はかかります。次は未定
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