「・・・庭に誰かいる?」
時間は夜更け。居間にて人間の里の状況に関する報告書を書いているところ、庭に気配を感じた。
場所は正門裏門どちらからも離れた位置。誰かが忍び込んできたのだろうか、人間だったら泥棒。妖怪だったら迷い込んできたのか。
外に出て気配の方向を見る。が、動いている影は全く見当たらない。
「気のせいか?・・・ん?」
気のせいだったかと思いながら近付いていくと、草陰に何かいることに気付く。
「やっぱり皆虫が嫌いなんだ。何さ皆さっちゅうざい?とかかとりせんこう?とか使ってさ、わざわざ殺す必要ないじゃん。あげく何さゴキブリって、私蛍なのに・・・」(ブツブツ)
「・・・大丈夫か?」
全身土まみれになりながら横たわり、ブツブツと言葉を発する蛍の妖怪"リグル・ナイトバグ"であった。
場所は風呂場、あまりにも汚れているリグルを風呂に入れようとする。
「ほら、汚れてるし服脱いで風呂入りな。・・・水大丈夫だよな?」
「・・・」
無反応なリグル。相当なショックを受けているらしい。
「おーい、聞こえてるか?」
「・・・」
「・・・服脱がすぞ。」
とりあえず土まみれの服は着替えさせないといけない。土色に変色したシャツと、半ズボンを脱がす。
そういえばズボンを履いている子って幻想郷ではかなり少ないかもしれない。思い出すだけで妹紅、美鈴、リグルに・・・霖之助*1。
服を脱がし、可愛らしいフリルの付いた下着姿になったリグル。女の子なので当然なのだが、リグルにある「男の子らしさ」が少し不思議な感覚にさせる。
初対面からしばらくは完全に男の子だと思い込んでいた。
顔立ちは中性的で声も少年らしさがある。服装も幻想少女の中では数少ないズボン姿、失礼だが胸も無かったので男の子に間違われても仕方の無い気もする。
「頭にも結構土付いてるな。とりあえず風呂に入れ、いいな?」
「・・・」(コクッ)
リグルが風呂に入った後、とりあえず私のTシャツと下着代わりの褌を置いておく。そして居間にいるとその服を着たリグルが戻ってきた。ワンピースみたいになっていて意外と似合っている。
「はいスープ。で、どうしたんだ?」
夕食に作ったスープをコップに注ぎ、リグルの前に置いておく。そしてリグルの正面の位置に座る。
「・・・虫たちが元気な時期になってきたし、様子はどうかなって里に久しぶりに来たの。」
「あー分かった、辛そうだしこれ以上は言わなくて良い。」
大方虫たちが里の人間に駆除されていく姿を見てしまったのだろう。
「うぅ・・・何で殺すのよ。嫌ならせめて逃がしてくれてもいいじゃない。」
「うーん、それは中々難しい話だと思うぞ。」
「何で?外にちょっと持って行くだけでいいのよ?」
「もし外に逃がしてもまたすぐに隣や近くの家に行くのが目に見えてる。じゃあ駆除してしまおうっていうのが暗黙の了解になっているんだ。」
「詠知は基本逃がすじゃない。」
「私の場合は庭があるからな、逃がし先があるからいいが他の家ではそうはいかない。」
実際庭を持っているほど広い面積のある家もそう多くない。家を出ればすぐに道、真横に他人の家という構図のため虫が入り込んでしまうと駆除する以外の選択肢が取りづらいのだ。
「でも・・・」
「思ったがリグルの能力で逃がすこともできるんじゃないか?」
リグルの能力は"蟲を操る程度の能力"で、ありとあらゆる虫を操ることができる。リグルの能力を使えば駆除される虫も救えるのではないか。
「私の近くではできるけど操れる範囲には限りがあるし、なるべく虫たちが過ごしやすい環境でいてほしいの。」
「人間にも人間の生活がある、虫がその生活を妨げる要因になるのなら駆除されるのは仕方の無い。」
シロアリに浸食されクモが巣を張りゴキブリが歩き回る家に住みたいと思う者はいない。ある程度の生活において虫の駆除というのは必要なことなのだ。
リグルが庭で見た時のような泣きそうな表情になる。
「やっぱりダメなのかな・・・虫はいらない、嫌われもので終わりなのかな・・・」
「そんなことない、人にとってありがたい存在の虫もたくさんいる。ミツバチのおかげで蜂蜜が作れる、テントウムシは農作物にとって害になるアブラムシを捕食してくれる。家庭の範囲で見れば虫は嫌われているかもしれないが、それ以上に人のためになっている。」
事実虫がいないと人間が生活していけないのは確かだ。例えば蜂がいなければ外の世界の1/3の農地で収穫高が減るとまで言われているらしい。
「だから虫への認識を変えたいのなら、虫の良いところをアピールしていくことが良いと思うぞ。」
「でも私あちこちで嫌われてる*2し、何をすれば良いか分からない・・・」
「知り合いの農家にでも掛け合ってみるか・・・そこで収穫高が上がったりすれば、そこから評判が良くなるかもしれない。」
「いいの・・・?私のせいで詠知が居辛くなったりしない?」
「それだけで里に居辛くなる関係ならとっくにいなくなってる。私も元々リグルの謂われのない悪評は可哀想だと思っていたからな、解消できるなら手伝いたい。」
「・・・ぐすっ・・・ありがとう・・・」
「まあ細かいことは明日考えよう。服もないし今日は泊まっていけば良い、明日までに洗っておくから。」
頼みに行く農家を誰にするか考えながら、泊まることを促す。
「ごめんなさい、何から何まで。」
「構わない。さて・・・何かもう少しちゃんと着られる服を探さなければな・・・」
リグルのサイズに合う寝間着になるものはあっただろうか。霊夢や妹紅の服は置かれている*3が、彼女らよりも背丈が小さいリグルにあうものがない気がする。
「良いよ、このままで。着心地も結構良いし。」
「そうか?でもそれだと少し小さいかもな、もう少し大きいのを取ってくる。」
Tシャツがかなりリグルにとって大きいとはいえ、膝上ほどまでしかない。もう少し余裕のあるものがいいだろう。そう言って立ち上がろうとする前にリグルから声を掛けられる。
「・・・このままでもいいよ?」
「でもそれだと短すぎるからな、無理矢理風呂に入れておいて何だが下着を見られるのは嫌だろう。」
「この姿を見てドキドキするの?」
「・・・ああ、さすがにその姿の女の子にいられるのは緊張する。」
さすがに下着が見えそうなほど際どい姿で常にいられるのは緊張するものがある。
「・・・ふ~ん、そっか。でもこのままで良いよ!詠知になら見られても気にしないし!」
「・・・まあリグルがそのままで良いんだったらそれでも良いんだが・・・」
「やった!」
立ち上がって私の左横にやってくるリグル。
「ね、私蛍だから夜行性なんだ。色々お話したりしようよ!」
「良いぞ、仕事しながらになるがそれに関してあんまり詮索しなければいくらでも付き合う。」
「やった!ならたくさんお話ししよう!」
「ああ。」
机に置かれたままだった報告書を開き作業に取り組みながらリグルと話をすることにする。
満面の笑みを見せながら喜ぶリグルに無邪気さとかわいらしさを覚える。能力を有効活用できるのならば、寺子屋の子ども達と遊ぶ日が来るのかもしれない。そんなことを考えてると・・・
「ねえ・・・」
私の左耳に口を近付け、囁くように喋りかけてくる。
「ん?なんだ?」
「私、下に何も着てないよ。」
「!?」(カラン)
唐突なリグルの告白にペンを落としリグルの顔を見る。
先ほどのような笑みとは少し違った雰囲気の、からかいを混ぜたような表情でこちらを見るリグルがいた。
「褌の着方なんて知らないもん。」
「何で言わなかった!?今すぐ代わりを・・・」
「『私がいいならそのままでいい』でしょ?今持ってきても着ないよ。」
「さすがにそれは・・・」
「私を心配してくれて、加えてドキドキしてくれるってことが知れてすごく嬉しかった。初めて会ったときに男の子に間違われたりしてたから、魅力ないのかなって思ってたの。でもちゃんと女の子だと思ってくれてた、だからこれは恩返し。私でいっぱいドキドキしてね?」
ボーイッシュな見た目だけど女の子なリグルの描写を書きたかったが、私の文章力ではこれが限界だった。人気投票の一推し率を見ると分かるけど根強い人気がありますねリグル。
アンケートの結果。超ギリギリで地霊殿+旧都になりました。守矢神社と命蓮寺惜しかった、多分旧都後は守矢→命連の順で行くと思います(アンケートまたとるかもしれない。)
評価や感想等もらえると嬉しいです。
次話はお燐と霊夢
次に行く場所
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命蓮寺
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神霊廟
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守矢神社
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妖怪の山
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地霊殿(旧都)