「・・・で、今から向かうのか?」
「わー!変な声!」
「あはは・・・」
「ちょっと調子に乗りすぎたわ・・・ごめんなさい詠知。」
夕食を食べながら霊夢とお燐を愛で、風呂に入りながら霊夢とお燐を愛でる(強制)といつの間にか丑三つ時に迫ろうかというほどの時間が経っていた。
ヘトヘトで変な声になっている私と申し訳なさそうにしているが楽しそうなお燐と霊夢。あまりにも元気すぎる・・・。
「・・・ゴホゴホッ! ・・・で、どうしようか。別に今から向かっても良いんだがな・・・」
「やっぱり眠いよね、明日の朝でも良いよ?」
「眠気があるが多少はまだ起きてられる、だがこの状態で旧地獄に行くとなると鬼と会うことになるからな・・・」
鬼達とは、彼女らが妖怪の山の支配者だった時代からの付き合いだ。彼女らが旧地獄に引っ越した後も、定期的に会うこともある。
「あー、また手合わせとか喧嘩だ!とか言い出すかもってこと?」
出会うたびに喧嘩を吹っかけられる、殺し合いというほどのものではないがかなり体力を消耗するのだ。
「ああ、今の状態で鬼に出くわすとさすがに辛い。」
眠気有り、疲労(色々な意味で)の状態では鬼達を失望させかねない。"鬼と殴り合える"という存在であるからこそ私は旧都に出入り出来ると言っていい。鬼に会うならできれば万全の状態でいたい。
「なら鬼にバレないようにすればいいんだね!ちょっと待ってて!」
そう言って境内の裏の方に走っていくお燐。
「気をつけてね、何かあったらこれですぐに呼んで。破けたらすぐに知らせるように作ってあるから。」
寝間着に着替えている霊夢がお札を差し出してきたため、受け取って懐にしまう。
「ありがとう、今日は一緒に寝られなくてすまないな。」
「今日は大満足よ、ほんとはもっと一緒に居たいけど・・・さすがにお燐に悪いしね。それじゃあおやすみお父さん、帰ってきたら教えてね?」
「ああ、おやすみ霊夢。」
「いいなぁ・・・親子みたいで」
霊夢が寝室に入っていったタイミングで、お燐が何かを引っ張ってくる姿が見える。
「これに乗ってけばいいんだよ!」
「これは・・・猫車?」
お燐は"火車"の妖怪であり死体を持ち運ぶのが趣味だ。かといって死体にするために人を襲うことはなく、野ざらしになった死体や葬式の死体を持って行ったりする。迷惑ではあるにはあるがそこまで人間にとって害のない妖怪なのだ。
その際にこの猫車で死体を運搬しているらしい・・・つまり死体に扮せば良いというわけか。
「なるほど、死体のように乗っていればバレないという寸法だな?」
「その通り、布を被せばもう全くバレないよ。」
「だが私の体格はかなり大きいぞ?入りきるか?」
「なんと運の良いことに、この前新調したちょっと大きめの猫車を持ってきたんだよ!ちょっと寝てみて?」
「分かった。」
実際に猫車に寝そべってみると、すっぽり頭から足まで入る。相当大きいサイズの猫車だ。
「結構快適だなこれ。」
「私も一緒に乗ろっと!」
「でしょ?じゃあ出発!」
「しゅっぱ~つ!」
お燐に上から布を被せられ、そのまま押して連れて行かれる。
「縦穴からでいいんだぞ?まだ乗せなくても・・・」
「お客様なんだからこれくらい遠慮しなくていいよ!詠知は寝ててくれれば目を覚ました時地霊殿さ!」
あたいが地上と地底を繋ぐ縦穴についた頃には、猫車の中にいる詠知の反応が無くなった。どうやら完全に眠ったらしい。
「やっぱり疲れてたんだね。さ、地霊殿までの運搬ミッションの始まりだよ!」
縦穴。地上と地底を繋ぐ穴であり、数百メートルの深さを持つ。そこを猫車を持ちながらゆっくりと下っていく。
「あれ、お燐じゃないかい。こんな時間にそんな大きな猫車を持ってどうしたんだい?」
「ヤマメ。いやぁ、上物の死体が手に入ったから早く運びたいんだよ。」
「へー、それは良かったね。人間の気配がした気がしたけど、死んだ人間だったか。久しぶりに人間を見れるかなと思ったんだけどね~。」
「あはは・・・悪いね。」
「あーあ、前の異変の時の巫女や魔法使いに、詠知くらいだからねーここに来るような人間は。・・・そう言えば詠知って最近来てないけど、地上で見たことあるかい?」
「あー、元気だよ。ちょっと忙しそうだったけど。」
「そうかい、詠知に会ったら言っておいてくれよ「そろそろ来ないと次降ろしてやらないぞ」って。私がいないと地底に行けないんだから。」
「次会ったときに伝えておくよ~。」
ヤマメと別れ、地底に到着する。いきなり詠知の話題を出されたのにはひやりとしたが、なんとか隠し通せて良かった。
さ、次の関門だ。縦穴と旧都を繋ぐ橋に立つ水橋パルスィがこちらに気付いた。
「やあパルスィ。元気?」
「ええお燐。元気すぎて妬ましいわ。」
「いつも通りで安心だね、良い死体が手に入ってはやく運びたいんだ、通してくれない?」
「勝手に通れば良いわ・・・あなたは今幸福なのね、ああ妬ましい。」
「・・・昨日詠知に可愛がってもらってたんだあたい。」
「!!??・・・だからどうしたの。」
「妬ましくない?」
「・・・ね、妬ましくないわよ。なんで詠知の事で妬ましいと思うのよ。」
「ふ~ん、じゃあ詠知に「パルスィは嫉妬もしないほど詠知に興味がないからあんまり関わらないであげて」って言っちゃおうかな~?」
「・・・・・・す、好きにしたらいいじゃない・・・。」
「嘘嘘、ごめんねパルスィ。「いっぱい甘やかして」って言っとくね、バイバーイ!」(ダッダッ)
「ちょっ待ちなさい!・・・勝手に言うだけ言っていくなんて妬ましいわ・・・ふふ、本当に妬ましいわ。」
パルスィを置いて橋を抜け、旧都の入り口横で一息付く。ちょっと悪戯心が出過ぎてしまった。
「ふぅ、反省反省。もう少しで到着だし気を引き締めないとね。」
「何か急ぎの用事でもあるのかい、お燐?」
「!!・・・勇儀、久しぶりだね。どうしてこんな旧都の端に?」
「最近ずっと地上にいただろう?久しぶりに顔が見えたから挨拶でもしようかと思ってね、で、どうしたんだい?」
星熊勇儀、旧地獄温泉街の元締めを務める鬼。元々は妖怪の山の支配者の一人だった勇儀は詠知との関係も深いらしい。
(まずいね・・・)
鬼達の統括のような存在である勇儀に、詠知のことを気付かれればその後連れ去られるのは目に見えている。ここはなんとかごまかさなければ。
「いやぁ、上物の死体が手に入ったから早く運びたくてね。」
「それにしては結構大きい猫車だね、一体どんな死体だい?」
「えーっと・・・そう、すごく綺麗な状態で手に入れることができたんだよ!」
しまった、どんな死体という設定を考えていなかった。
「へえ・・・それは気になるね。一目見せてもらってもいいかい?」
「え!?それは困るよ、ほらあまり外に出すと鮮度が悪くなるからさ!」
「・・・そうかい。」
勇儀の表情が怪訝なものになり、声色が低くなる。・・・これはもうダメかもしれないね。
「お燐、鬼が嘘が嫌いだってことは知ってるだろう?そこまで隠したいものが入っているのかい?」
「・・・そうだよ、鬼には見せられないのさ。」
「そんなものをここに持ち込む気なのかい?なら私はここのまとめ役として確認する義務があるだろう、見せてくれ。」
「・・・後悔しないでね。」
(ごめん詠知。あたいじゃ無理だったよ・・・)
心の中でそう詫びながら被さっていた布を取るのであった。
初めてちゃんとプロットを書いてみたら、いつもの文量じゃ一話にまとまらなかった。
活動報告で意見箱みたいなのを置いてみたので何か要望等があったらどうぞ。
次回は勇儀。ちょっと曇らせあるかも。
次に行く場所
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守矢神社
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妖怪の山
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地霊殿(旧都)