「詠知!待ってたよ~!」
地霊殿の正門をくぐると、正面奥の玄関口でお燐が手を振っているのが見えそちらへ向かう。
「さっきは急に走り出してビックリしたぞ・・・。」
「あはは、ごめんね。私も一緒にいると勇儀が躊躇うかもって思ってさ。勇儀には次会ったときにあたいもちゃんと謝るよ。でも詠知の顔を見た感じ誤解?は解けたみたいだね。」
「・・・確かに2人だったからこそ話せることもあったかもな。」
「でしょでしょ?・・・ごめんね詠知、こんな大ごとにしちゃってさ。」
「元を辿れば、私が鬼と会いたくないなんて我が儘をいったからこうなったんだ、お燐は何も悪くない。むしろよくあそこまで運んでくれたよ、ありがとう。」
しゅんとした耳を撫でながら語りかける。むしろ運んでもらった分際で寝てる私の方が悪い。
「うにゃぁ・・・まだ眠いでしょ?地上ではまだ朝日も昇ってない時間だし、客室を準備したから少し寝てきたらどうさ。」
「やって来て早々寝るのは失礼じゃないか。せめて挨拶を先にしたいんだが・・・」
「ごめんね、実はさとり様は今就寝中なんだ。」
「あぁ・・・確かに随分就寝時間は不安定だしなさとりは。」
「お姉ちゃんはちゃんとした生活を送るべきだと思う!」
普段地霊殿に引き籠もっているさとりは、結構不安定な就寝時間になりやすい。本の虫なのも相まって気付いたら朝になっていたというパターンもあるらしい。・・・パチュリーみたいだなそう考えると。
「加えてお空は起きてるんだけど、今灼熱地獄の温度調節中ですぐには離れられないんだ。」
「お空は偉い!」
「なるほどな。」
お空は仕事中。どちらも不規則なものなのでタイミングが悪かったらしい。
「じゃあちょっと寝させてもらおうかな。」
「ぐっすり寝てね!」
「オッケー!こっちだよ!」
「・・・結構寝たな。」
目が覚めた時点であった眠気も完全になくなっていることが分かる。かなり寝てしまったようだ。
それと同時に仰向けで寝ている私の体に何か乗っておりそれを抱きしめていたのに気付く。随分と軽く、寝てる途中にも殆ど重量を感じなかった。
(・・・温かいな。お燐かお空あたりが忍び込んだのかな?)
客室に鍵もかかってなかったし、やってくると言ったら主にお燐やお空だろう。悲しいかな他の妖怪化しているペットはともかく、他の普通のペットには割と嫌われている、どうして。
少しずつ意識が明確になっていき、顔の両側にも何か居るのが分かる。
左横を見る。・・・黒猫、猫状態のお燐が丸まって寝ている。
右横を見る。・・・鴉、鳥状態のお空が足をたたみ寝ている。
(なんだお燐とお空か・・・ん?)
じゃあ体の上に乗っているのは?私の予想の2択どちらともこれでなくなった、抱きしめている感触からして人間に近しい形はしている・・・だが他に私の寝ている場所に来るような存在などいない。
おそるおそるゆっくりと目線を下に持って行く。
私の胸に顔を押しつけるようにうつ伏せになって寝ている、桃色と紫色の境目のような髪、ボブカットの髪型、そして体から伸びるコードと横に浮かぶ象徴的なサードアイ・・・
(・・・さとり?)
地霊殿の主である覚妖怪、"古明地さとり"が私の上で寝ているのであった・・・
(さて、どうしようか・・・)
しばらく状況が飲み込めずさとりを抱きしめたまま数分の時が経つ。その間も抱きしめているのは離すと転げ落ちる可能性があるからだ。
胸に顔を押しつけている形になるので顔は見えないのだが、動かないのと胸に伝わる息遣いからおそらく寝ている。
(まずさとりが何故ここにいるかだが・・・)
自らここに来たということはあり得ないだろう。お燐が戻ってきたときには就寝中だったはずだから私が来たことも知らないだろうし、そもそもそういう性格でもない。寝ぼけて来た可能性は0ではないが、この部屋とさとりの私室は距離があるため現実的ではない。寝ているときはこいしのように無意識を操りだす可能性が・・・これも違うだろう。
(・・・多分お燐かお空あたりの悪戯だな。)
大方お燐かお空が「みんなで寝た方が楽しい!」みたいなことを言い出したか、私かさとりを驚かせるために悪戯をしたのだろう。
(それにしても随分軽いな。)
妖精達とそう変わらない重さだ、あと10人くらい乗っても問題ないくらいだ。「ふふ」
(・・・ん?)
何か笑うような声が聞こえた気がしたが、周りを見渡しても誰もいない。・・・気のせいか。
(こんな小さな体で、旧地獄の主なんだもんなぁ。)
地霊殿というのは、かつて地獄であったこの地に残る蔓延っている怨霊と旧灼熱地獄の跡地の管理を行なうために存在する館であり、もしここが無くなれば旧地獄は人妖が住める土地ではなくなるのだ。
そこの主であるさとりは実質的な旧地獄の主となる。
(ま、見た目なんて何の意味も無いのは今更か。)
それこそさとりと同じ身長が小さめの子でもレミリアにフラン、萃香、諏訪子に・・・と上げだしたらキリが無い。
旧地獄を統べるさとりも、立派な大妖怪なのだ。弾幕でも他の大妖怪達の強力な弾幕をコピーできたりと戦闘能力も高い。
・・・身体能力はあまり高くないが。こいしを心配し地上に来ることが何度かあり、その際にこいしの捜索の協力をすることがあるが毎回こいしに翻弄され息も絶え絶えになっている。同じ覚妖怪でも外を動き回るのと中で執務に取り組むので体力の付き方が違うのを実感する。・・・同じように姉妹であるフランとレミリアだと外に出るレミリアの方が体力はあるのだろうか?
(・・・可愛いな。)
改めてこうして見ると幼い少女にしか見えない。普段の落ち着いた雰囲気と思慮溢れる喋り方からして見た目以上に大人に見えるため、こうやって見た目相応の姿を見るのはあまり多くない。
・・・今みたいな機会はないな。
(さとりは凄いな。多くのペットに好かれてて、それだけ皆のことを慮る優しさがあるんだろうな。こいしを心配して、地上にまでやって来て探すくらい家族愛に溢れてる。考えていることに対しての答えを出す速度も速くて頭の良さが抜きん出てる。文章力に優れているからお燐から聞いたが本も執筆してるらしいじゃないか、ぜひ読んでみたい。思考を読んでからかってくるところもお茶目で良い。)
普段対面してこんなこと考えてると気持ちの悪い人間に思われかねない。だからなるべく抑えるようにしているが今はさとりが寝ている、つまり無礼講だ。頭をゆっくり撫でながら思いの丈をぶつけてみる。
(私も人の心が読めるようになりたいな。)
心を読める。それが覚妖怪が嫌われてしまっている要因になっているが私は全くそうは思わない。確かに精神面が大きく影響される妖怪からしてみると好ましくないのかもしれないが、一人間として見れば心を読まれたとて別にどうでもいいのでは?と思う。
私の周りに心読んでる?って思うほど察しが良い者ばかりなのもあるが、正直私程度の浅慮を読まれたとて別にどうでも・・・くらいの感覚になる。せめて失礼のない思考をしたいと心がけるくらいだ。
「ん・・・」
(!!)
さとりが少しうめき声をあげる。まずい、この状況をさとりが認識してしまうと多分記憶を読まれてお燐かお空が怒られる。早々に部屋を出なければ。後々心を読まれた際にバレることは確定するが、現行犯よりはマシだろう。
ゆっくりさとりを横に仰向けに寝かせ、お燐とお空をそっと抱えドアに向かう。
「・・・おやすみ、さとり。」
そう小声で言い外に出てドアをゆっくり閉める。さて、お燐とお空をどこに寝かそうか・・・
・・・そういえば、覚妖怪って寝ている時もサードアイは開いたままなんだな。
原作さとりんの立ち絵が好み。あとスリッパ履いてるのも好き。
この話に関係ないですが、
霊夢→詠知くんの飴と鞭(ほぼ飴)によってで鍛錬するようになる。
魔理沙→詠知くんの紹介で早い時期から紅魔館の大図書館に出入りし魔術書を読み漁る。
そのため原作の比にならないくらい主人公勢が強くなってたり・・・
あと一部異変が詠知くんのせいで大分変化したりします。それ関連もいずれ書きたい。
次回は別視点
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